CINDERELLA BRE@KER~BUILD THE FUTURE 作:wataru012
「お疲れ様っス、泰葉ちゃん! 初プレイの身で
格上相手の対人戦に勝っちゃうなんて、
もう凄いとしか言葉が出ないっス!」
「いやー、まさにその通り! CPU相手の時から
初心者とは思えない立ち回りで凄いなって思ってたけど
まさかあいつに勝っちゃうなんて驚きだよ!」
泰葉が初めてのガンプラバトルを無事に勝利で終えて、
ポッドから外に出ると比奈と女性客から笑顔で
興奮気味に称賛の言葉を一気に浴びせられる。
「くっそぉぉぉぉぉ!!!!!」
そんな様子の泰葉達から離れたポッドから出て来たタイガーは、
盛り上がる泰葉達の様子を一瞥すると悔しさを隠す気のない
絶叫を大声で叫びながら逃げるように全速力で退店していった。
「情けないなぁ…ま、これに懲りて初心者狩りから
足を洗ってくれれば良いんだけどね」
「同意っス」
「私はゲームセンターでこういった人相手の
対戦ゲームをプレイしたのは始めてですが…
そんなに忌み嫌われる行動だったんですか、比奈さん?」
「そっスねぇ…こっぴどく負かされた初心者が
心折れて早々にゲームをやらなくなっちゃったり、
そういうプレイヤーが横行してる話が広まって
ゲーム自体を新しく始める人が減っちゃうと
プレイヤーが増えなくなってそのゲームの
寿命が短くなっちゃいまスから」
「そうそう…って、え? 今、ヒナさんって…?」
泰葉からの質問に比奈が返答し、女性客がそれに
相槌を打っていると…先程までタイガーの乱入に
慌ててた事や観戦に集中してた事、泰葉が勝った事への
喜びなどで上下していた感情が落ち着きを取り戻した事で
泰葉の口から出た名前に引っかかりを感じた為に改めて
比奈の顔を見る。その直後、女性客の顔が比奈の顔を
真っ直ぐに見る姿勢のまま驚きの表情となり固まっていた。
「…あのー、もしもーし?」
「…はっ! あ、あのー…ええと、そちら…もしかして、
346プロのアイドルの『荒木比奈』さん…?」
「はい、その通りっス」
「えええーーーっ!?」
比奈からの声掛けで硬直状態から脱した女性客は、
恐る恐るといった様子で比奈に質問を投げかける。
そして比奈の返答で自分の予測が当たった事を知った
女性客は先程のタイガーにも負けない大声を上げていた。
「何だい、うるさいねぇ…」
「だ、だってイラト婆ちゃんこの人アイドルなんだよ!?」
「こんなダッサい服装のボサボサ頭に野暮ったい眼鏡を
かけてる奴がアイドルだって? 信じられないねぇ…」
「まぁ…この姿でアイドルだと言われても信じられないという
お婆さんの気持ちはわからなくもないですが、
比奈さんは紛れもなく私と同じ事務所のアイドルですよ」
「ふぅん…ま、あんたはキチンと金を落としてくれたし
その言葉を信じさせてもらうよ」
女性客の大声に迷惑そうな様子で3人の元に寄って来た店主が、
女性客の驚きを隠せない言葉を聞くも比奈の見た目から
怪訝な反応を示す。それに対して泰葉がフォローすると、
実際にガンプラバトルシミュレーターのプレイの為に
泰葉が金を払った事もあってかすんなりと信じてくれると
再び店の奥に引っ込んで行った。
「…泰葉ちゃんって言ったっけ、あなたもアイドルだったんだ…」
「はい…失礼ですがこちらからも1つ尋ねさせてもらいますね」
「は、はいっ!」
「『彩渡商店街』へ行きたいんですが、ここからどう行けば良いでしょうか?」
「…へ?」
店主が引っ込んだ所で、直前までの会話の中で泰葉も
アイドルだとわかり驚きの反応を見せる女性客。
そんな女性客に泰葉がこれからの目的地への道を尋ねると、
呆気に取られたかのような顔で間の抜けたような声を返していた。
「あれ、もしかしてこの辺りの人じゃなかったっスか?」
「あーいえ、そういう訳じゃなくて…私の家、その商店街の店の1つでして」
『ええっ!?』
比奈が尋ねる相手を間違えたかと思って声をかけると、
女性客が目的地に住んでいる事が判明し2人揃って驚きの声を上げる。
「名乗るのが遅れてしまったけど、こちらからも…
私は『五月野美沙(さつきの・みさ)』、彩渡商店街の
『五月野模型店』の看板娘…といった所です、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします…あまり畏まらなくて良いですよ?」
「そうそう、こちらがアイドルだとしてもガンプラバトルに関しちゃ
そちらの方が先達なのでそれで相殺という事で…気楽な話し方でOKっスよ」
「…そうですか? それじゃあ…改めてよろしくお願いしますね、比奈さんに泰葉ちゃん」
「それじゃあこちらも改めて…商店街への案内よろしくお願いします、ミサさん」
「はいっ!」
2人がアイドルだという事がわかり、表情や口調が硬くなった
ミサに対して畏まる必要はないとリラックスするように返す泰葉と比奈。
その言葉に甘えて表情も口調も再び柔らかくなったミサに泰葉が
商店街への道案内を頼むと、ミサは笑顔で元気に返事をした。
~~~~~
「そう言えば、ミサさんが来店した理由は何だったんですか?」
「…そういや、一切ゲームのプレイはしてなかったっスね」
「あー…タイムズユニバースって企業、知ってる?」
「名前は聞いた事ありますね…確か、アメリカの企業でしたっけ」
「小売業から宇宙開発まで幅広い分野を手掛けてるともアタシは聞いてるっス」
「そうそう、実はそこの経営する百貨店が商店街の近くに出店しちゃってね…」
「…客を奪われてしまった、という事っスか」
「そうなんだよねぇ…だからって黙って潰される訳には行かないと思って、
うちが模型店だったから商店街の名前を背負ったガンプラバトルチームを
結成して勝ち進んで有名になる事で客足を取り戻そうって思い立ってさ」
「凄い負けん気と行動力の持ち主なんですね、ミサさん…」
「ありがと、泰葉ちゃん…でも活動資金を大量に準備できるって訳じゃないし、
チームメンバーもなかなか集まらなくて…少し前には1人だけながら
メンバーも居たけど、環境が不満だって言って抜けちゃったもんで
再度メンバーをスカウトする為にあのゲーセンに毎日通い詰めてたんだ」
「負けん気と行動力に加えて折れない心まで持ち合わせてるとは…
これは素直に尊敬に値するっスよ、ミサちゃん」
「ま、大袈裟な言い方かもしれないけど故郷が消滅するか否かの
瀬戸際と言ってもいい状態だから簡単には諦められなくてね…
それで今日泰葉ちゃんの動きの良さとタイガーに勝った姿を見て、
『これだ!』って感じてチームにスカウトしようって思ってたけど…
さすがにアイドル相手じゃ、無理がある話だよね」
3人で商店街へ向かう道すがら、泰葉の質問をきっかけに
ミサの来店理由と抱える危機…そしてそれを乗り越える為の
行動についての話題にまで広がり、それらの理由から
泰葉がミサの目的にうってつけである事を話すが
泰葉がアイドルである為にミサの目論見は
実現不可能だろうと察し落ち込み気味に言葉を零す。
「…いえ、もしかしたらもしかするかもしれませんよ?」
「…え? あ、着いたよ2人とも」
そんな様子のミサに、泰葉が微笑みながら返答する。
その返答にミサは疑問を浮かべるが…それと同時に目的地である
「彩渡商店街」の文字が書かれたアーチがそびえ立つ
アーケードの入り口に到着した事で、会話は一旦打ち切られる。
「うーん…ミサちゃんには申し訳ないけど、見事なシャッター通り状態っスね…」
「奥の方に見える黒い建物が、話に出てたタイムズユニバースの百貨店でしょうか」
「そうなんだよね…それにしても、何でまたうちの店に?
こういう事を言うのも何だけど、ガンプラを買うなら
23区内に模型店だけじゃなく家電量販店とか中古プラモの
取扱店は沢山あるし…それこそガンダムベースだってあるでしょ?」
「いえ、ミサさんには申し訳ありませんが…今回は買い物が
目的ではなく、ミサさんのお店を待ち合わせ場所に指定されまして」
「…へ? まぁ、3月とは言ってもまだ肌寒いし…待ってる間、店の中に入っててよ」
泰葉と比奈の商店街の様子をその目で見ての率直な感想に対し、
ミサは返答と同時に2人がここに来た事に対する疑問をぶつける。
それに対する泰葉の返答にミサは予想外といった感じの反応を返すが、
外の寒さを感じ取った事で2人を凍えさせまいと店へと招き入れた。
~~~~~
「ただいまー」
「帰って来たみたいですね」
「ああ、それじゃちょっと失礼して…
お帰りミサ、それとそちらは…」
「初めまして、岡崎泰葉と申します」
「ども初めまして、荒木比奈と申す者っス」
「ああ、君達が…こちらこそ初めまして、ミサの父の
『五月野雄一(さつきの・ゆういち)』と言います」
「ユウイチさんと言いますか、どうぞよろしくっス」
「よろしくお願いします…プロデューサー、どうやらつい先程まで
今回の件についての話し合いをされてたみたいですね」
「ああ…それはそうと、初めてのガンプラバトルはどうだった?」
店内に入りミサが店の奥の人影に声をかけると、
2人のうち1人のメガネをかけたエプロン姿の男性…
ミサの父親がやって来て泰葉と比奈の自己紹介への
返答として自らも自己紹介を行う。それに続く形で
奥に居た2人目のスーツ姿の男性も泰葉達の元へ
やって来て泰葉にガンプラバトルの感想を尋ねる。
「予想外のアクシデントもありましたが、
十二分に楽しめましたよプロデューサー」
「そうそう、最初のステージをクリアかと思った所に
初心者狩りに乱入されてどうなるかと思いましたが…
ある程度殴られはしたものの見事に返り討ちにしてたっスよ」
「おお、そりゃまた凄いもんだな…昨日初めてガンプラを
完成させて最初のプレイで対人相手に勝利するとは」
「昨日初めて完成させたって、つい最近始めたとかじゃなくて
本当に今日が初めてのプレイだったんだ…だとしても、
何でまた急に始めたわけ? プロデューサーが知ってると
なると、やっぱりただの遊びじゃなくて仕事関係で?」
スーツ姿の男性…泰葉のプロデューサーの問いかけへの
泰葉と比奈の返答を聞き、泰葉が本当に今日が初プレイと
聞いて驚くと共に始めた理由を泰葉に尋ねるミサ。
「そうですね…プロデューサー、確認しますが
ミサさんと共にガンプラバトルの大会に出て
勝ち進む事でこの商店街の名前を広める事が
今回の仕事の内容…という事で合ってますか?」
「ああ、その通りだ」
「…という事なので、よろしくお願いしますねミサさん」
「え…えええーーーっ!!!」
ミサからの質問を受けた泰葉がプロデューサーに
仕事の内容の確認をし、それを聞いてミサに向き直し
笑顔で今回共に歩んでいく事への挨拶をすると
ミサは驚きの表情で店外に漏れる程の絶叫をしていた。
比奈:ひとまず今回で、ようやくアニメやマンガで
いう所の第1話が終わったって感じっスね…
P:ああ…本当にここまで分割する事になるとは思ってなかったよ
比奈:さて、今回はミサちゃんとユウイチさんの
フルネームが出て来ましたが…読みは
バトローグで明かされたものが使われましたが
漢字表記はプロデューサーが考えたものっスか?
P:ああ、こちらで適当に…と言ってもオーソドックスな
名前と受け止められるような字を当てておいた。
ちょうどいい機会なのでここで話しておくと、
この作品でのガンブレ3キャラの名前に関しては
一部を除き「作中で明かされている部分」+
「担当声優さんの名字or名前」という組み合わせに
しており…漢字表記に関しては「作中で明かされてる部分」は
こちら独自の設定、担当声優さんから取っている部分は
公表されている表記に従うといった形でフルネームを
設定するが…呼ばれ方はゲーム中のものを使うという形になる
比奈:なるほど…
P:話のついでという形になるが、これから先使われるかが
不明瞭なのでここでこの作品におけるタイガーと
イラト婆さんのフルネーム設定を明かしておく…
タイガーは「布施川虎彦(ふせがわ・とらひこ)」、
イラト婆さんは「衣良渡れい子(いらと・れいこ)」だ
比奈:ふむふむ…タイガー君は名字を声優さん(布施川一寛さん)から
拝借して、名前は「虎」の字が入る人名…イラト婆さんは
名前を声優さん(鈴木れい子さん)から拝借したという形っスね
P:ああ、ここから先は大体の面々がゲーム内のイベントシーンに
当たる場面で名乗る形になるからその時を楽しみにという事で…
今回も読んで頂きありがとうございました、それでは第5話で