遊戯王ARC-V 次元戦争なんて冗談じゃない!!!   作:皐月の王

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次回は少し開くと思います!


槍兵の御旗

遊希が目覚めると見覚えがありそうで、無さそうな部屋に寝かされていた。首を動かし外を見ると、日が落ち月が昇っていた。身体をゆっくりと起こすと頭に激痛が走る。思わず頭を抑えると痛みはマシにはなるが、重たい。

 

「うっ……痛ったぁ……何よ……何でこんなに頭が……重たいのよ。……は?」

 

『♪〜♪〜♪』

 

頭の上で緑髪の少女が外の景色を見ながら鼻歌を歌っていた。遊希は頭に?を浮かべ、大きく深呼吸をして

 

(気のせいだ。きっと、色々頑張りすぎているだろうから見える幻覚だ。きっとそうに違いない!)

 

そしてもう一度頭の上を見ると

 

『……いい景色だなぁ、というかベットふかふかで良さそうだねぇ』

 

「幻覚じゃなかった……!」

 

哀愁を纏わせて絞り出すように言う遊希。それに気がついたのか

 

『あ、起きた?体調はどう?ボクは大分寝たから気分がいいよ?』

 

(しかも、アストラルみたいにふよふよしてるし……!でも、)

 

チラッと改めてリオの顔を見る遊希。

 

(……確かに似てる……。間違う程じゃないけど、確かに顔は似てる。まぁ、これで騙される方がどうかしてるけど)

 

内心ため息を吐きながら分析をする。

 

「それで、貴女は?そんなにアストラルみたいにふよふよされても困るんだけど……」

 

『ボク?ボクの名前はリオ。ユーゴのDホイールの主なメカニックをしてるよ。よろしくね遊希』

 

「なんで、私の名前を……」

 

『そりゃ、君の中で眠っていたからね。あとは、ユーゴとの自己紹介聞いていたからさ』

 

それを聞き思い出す。遊希はユーゴとのデュエルの途中、激しい頭痛にみまわれ、意識を保つことすら困難な状況になった。その時に聞こえた声が

 

(リオの声だったんだ……。おかげで、正気というか、色々保てた訳だけど)

 

『ねぇ、ボクからも聞いていい?』

 

「何?」

 

『あのデッキどうやって作ったの?ボクのデッキと差異はあるけど、大まかに一緒だし。教えてくれない?』

 

そう言われて困る遊希。現状のデッキは遊希が使っていた頃のデッキの弱体化版である。日が経つに連れて……もしくは何かがあった日の後に徐々に解放されてカードを入れ替えたりそんな日々だ。

 

「別に、私が以前に組んでた奴だけど?」

 

『……だよね、展開の仕方を見てると何となくわかるよ。あれは、何度もあのデッキ使った人の動きだったし』

 

「なんで、嬉しそうなのよ」

 

リオは嬉しそうに言っていたそれを疑問に思った遊希は質問する

 

『だってさ、似たような考えな人が居て、似たようなデッキ使ってるって親近感わくじゃん』

 

「分からない訳じゃないことも無いけど、難しいね」

 

遊希は自分でデッキを考えることはあるが、大抵はレシピを見て作っていた。そんな風に話していると、扉がノックされる。

 

「はい?」

 

「失礼する」

 

扉が開かれ入ってきた人物は

 

「あ、赤馬零児!?」

 

「久しぶりだな、星風遊希。気分はどうかな?」

 

「ええ、まぁ、ボチボチですけど……」

 

「そうか、それならば問題はない。外傷は特に無いがキミは二日間気を失っていた。担当医からは異常はないと伺っている」

 

「ふ、二日!?それじゃあ!遊矢とか柚子とかに連絡しないと!」

 

「キミのことは遊勝塾…柊塾長を始め塾生皆に連絡済みだ。もっとも、それは見舞いの品を見れば分かることだが」

 

チラリと見舞いの品を見る。

 

「そうだったんだ……」

 

迷惑かけたなぁと肩を落として顔落とす遊希。零児は椅子に座り、足を組み遊希を見て話し始める。

 

「…さて、目覚めて少し混乱している状況ではあるだろうが、幾つか質問をさせてもらおう」

 

「し、質問ですか?まぁ、良いですけど……?」

 

零児は眼鏡を上げて聞く

 

「まず、断りもなくキミのデッキを調べさせていただいた事について謝罪させていただく」

 

「し、調べた!?私のデッキを」

 

遊希は自分のデッキが無いことに気づき抗議の目を向けるが、先に謝罪された故強く出れない。それを見越してなのか零児は話を続ける。

 

「その結果、デッキ内に存在し得ないカード、効果テキストに差異のあるカードが多数見受けられた。……これらのカードはどのようにして手に入れたのかな?」

 

「え?」

 

沈黙が生まれる。

 

「え、ええと……か、カードショップですかね?」

 

「……そうか」

 

零児は視線を少しずらし思考する。沈黙が場を支配した後に足を組み直して遊希に視線を再び戻し、

 

「…では質問を変え、単刀直入に問おう。キミはどの次元から来た決闘者だ?」

 

 

「ど、どの次元!?」

 

遊希はその質問をされて大いに動揺する。それもそのはず、どの次元からも来た訳じゃなく、どちらかと言えば死んで気づいたら転移、転生していたからだ。だから、どの次元と言われても答えることが出来ないのである。

 

「ええと……(なんの事?とは言えないよなぁ……向こうもそれなりに把握してるだろうし……腹の探り合いなんて大っ嫌いだってのに)」

 

言い淀む遊希に零児は、さらに切り込む。

 

「君は融合次元から来たのか?」

 

と質問する。が、其れに対しては

 

「あ、それは無いですね」

 

あっさりと返す。が、

 

「そうか……だが、別次元が存在する事は既に知っているようだ」

 

遊希はしまったと顔を顰める。ユートやユーゴには話したが、この人物に話すのは難しいはずなのにと

 

「あっ……その、今のは聞かなかった事には」

 

「出来ない相談だ」

 

「ですよね」

 

薄暗い部屋に居るのは二人、窓の外は雷が鳴り、雨が降り出す。零児は眼鏡を光らせ遊希と対峙する。遊希はそんなに零児と対面し胃が痛くなるのを感じる。

 

(本当に16歳!?実年齢私の方が歳上なのに何この状況!?)

 

「我々にとってもキミは不可解であり不確定要素だ。キミが放った凄まじい召喚エネルギー、キミの操る三つの召喚方、そしてその召喚法に特化したデッキ…。そして実戦的な決闘(デュエル)ペース、一切隙の無い繊細で緻密な決闘戦術(デュエルタクティクス)。加えて、強者故か少しの余裕もある。しかし、これまでの決闘(デュエル)ログにも、大会記録にもキミの名は無く、またキミ自身からもそういった『風格』はなく一般人と相違ないだろう」

 

でしょうね。と内心つぶやく遊希。零児達から見れば不可解な謎の決闘者であるのは間違いは無いが、遊希本人は何処まで行ってもただの一般遊戯王プレイヤーに過ぎない。

 

「だからこそ興味がある。…キミは、いったい何者だ?」

 

その一言に遊希は泣きそうな、辛そうな、そんな儚さをまとった笑顔で、本心の言葉を吐く。

 

「そんなの……私の方が知りたいよ」

 

その言葉が遊希の現状を語るものだった。自分と似た存在、夢の光景、そして、死後に辿り着いたこの世界。本来居るのはずの無い自分を含めた四人。遊矢達、柚子達、そして自分。

 

これから始まる……既に始まっている次元戦争。そしてその先に待つ、次元統合からのズァークの復活。それだけでも厄ネタなのに、謎に追加された自分達の椅子。思考を止めたい、止めたい。何度もそう呟き、何度もそう思い、その度に

 

「でも、所詮は私は私でしかない。エクシーズ次元の惨劇は聞いたし、それをしているのが融合次元の人達ということも……。シンクロ次元の話も聞いてその一部は知っている。でも、所詮はその程度……。その上で逆に聞くよ。貴方は、私に何を望む?」

 

遊希は冷静に零児を見据えて言う。零児はその時だけ、遊希を年下、格下とは思えなかった。様々な経験、何かを沢山見てきた人物に見え、少なくても歳上だと、その姿も見えた。

 

「なるほど、ある程度、いやそれ以上に我々の置かれている事情にも詳しいと見える。では端的に答えよう。私がキミに望むのは戦力だ。キミの腕を見込んで、私の作る新たな組織に加入したいただきたい」

 

「それは貴方が警戒している……融合次元に打って出るための?」

 

「そうだ君なら、先陣を切って御旗を振るう存在になれると、私は確信している」

 

遊希は一度外を見る。その直後、雷が轟く。そしてその雷を背に

 

「貴方より弱い私がなれると思う?」

 

そう聞く。それは遊希から見た客観的な感想だ。遊希は自分自身の実力が一番信用出来ないのである。相手の考えを読むことも、立て直すのもあまり得意ではない。プレイヤーとしての腕前は、多分平凡かそれ以下と考えている。

 

「私はそうは思わない。キミに預けた決闘(デュエル)、あの決闘(デュエル)は…あのまま続けていれば私の方が負けていただろう。キミの決闘(デュエル)は、先も話した通り実践的な決闘ペース、隙のない決闘戦術(デュエルタクティクス)を併せ持つ。幾度の敗北から学び、自身の決闘(デュエル)スタイルを確立させた者の目をしていた。おそらく、敗北以上の決闘(デュエル)の経験がある。我々にはその知識と経験が今後必要となるだろう。勿論、戦力としてもだ」

 

赤馬零児は立ち上がり手を差し出す。

 

「我々と共に戦ってくれないか、星風遊希」

 

再び轟く雷鳴。窓打つ雨音と、雷鳴の音が部屋を支配する。

 

「避けられないのは……もう、分かっているの。塾対抗戦や、エクシーズ次元のレジスタンスとデュエルをしたその日から……。目を逸らしたいし、関わりたくないと何度も思ったし、今も思い続けている」

 

暗がりの部屋では遊希の表情は伺うことは出来ない。その言葉に零児は何も言わない。それを見ているリオも静観している。

 

「だったら……」

 

「でも、この思いを抱いたまま力を貸す」

 

零児の手を握る。零児はその時感じ取る。その手が震えているように感じた。だが、その決意を無にする訳にも行かないと感じた。

 

「そうか、協力感謝しよう」

 

「その代わりじゃないけど、エクシーズ次元のレジスタンスに会ってもらってもいいですか?」

 

「ほう、エクシーズの面々とは面識があるのか。なるほど、その話を彼らが受けるのであれば、話し合いの場を設けよう。敵は共通している。こちらとしても戦力は多い方がいい」

 

零児は手を離し、遊希に背を向けて扉を開ける。

 

「では、ゆっくり休みたまえ。明日、精密検査を受けたら退院出来る」

 

そう言い残すと部屋を退室する。

 

「はぁ、自分のお人好しに嫌気さすし……何でここまでしないと行けないのさ……」

 

近くのタオルを目元に被りながらに呟く。

 

『いいの?あんなの受けて』

 

「遅かれ早かれ……。ああ言うのは、そういうもんでしょ。それにユーゴと一緒にリンを取り戻すなら、どの道よ」

 

『潰れない?』

 

リオは心配そうに遊希に声をかけるが、

 

「……その時は、その時でしょ」

 

遊希はただ淡々と言って見せた。何度目かの雷が部屋を照らす。リオはその時、遊希の表情を見る。その表情は何処か憂いを帯びたような翳のある表情だった。




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