遊戯王ARC-V 次元戦争なんて冗談じゃない!!! 作:皐月の王
翌日、精密検査を終える頃には昼過ぎになり、病院には修造が迎えに来ていた。
「大丈夫か!?遊希!」
「はい、ご心配お掛けしました……。検査の結果は特に異常無しでした」
「原因不明か……。まぁ、ともあれ、こうして無事に退院できたのなら万々歳だ。私から言うこととしては無理はするな。私や柚子、他の皆は家族も同然だ。頼ってもいいんだぞ遊希」
その言葉を聞き、胸を痛める遊希。それが出来るほど図太くなく、隠しきれるほど心知らずでも無い。それ故に心を痛める。
「それと皆怒っていたが、特に柚子と遊矢はかなり怒っていたぞ?大人の私から言えることは素直に謝ることだとアドバイスをしておこう」
修造が笑いながらに言うが遊希からしたら聞きたくなかった情報の一つだ。あの二人がかなり怒っていたと言う文言は確実に面倒事待ったナシだからだ。
「顔……合わせづらいなぁ」
「それも青春だ!」
「そんな青春嫌だぁああああああああ!!!」
車の中で遊希の悲鳴だけが木霊したのは言うまでもない。
そして……
「……」
「………」
「もういいんじゃないの?」
塾にて遊希は案の定、怒られることとなった。素良は飴を舐めながらに助け舟を出すが、
「ダメだよな?柚子」
「ええ、きっちり反省してもらわないと行けないわ」
遊矢と柚子は厳しい表情で正座している遊希を見下ろす。柚子に関してはハリセンを持ち出し、何時でも準備はできている形相である。流石の小学生組も遠くから眺めながらも
「遊矢お兄ちゃん、柚子お姉ちゃん!遊希お姉ちゃん病み上がりだから程々にしてあげてね!」
「そこはもう止めてあげようよ」
「アユも痺れるくらい容赦ないんだぜぇ」
二人は引き気味にアユから少しだけ距離を取っている。それを見ているリオは羨ましそうにその光景を見ていた。
『良いねぇ。こうして仲間に囲まれているの』
それは遊希の耳に聞こえているわけであり、
(嫌味ではないんだろうけど、状況的に嫌味にしか思えないのが恨めしぃ。本当何見てんだか!)
「聞いてるの遊希?」
「ひゃい!?」
気づけば柚子が笑顔で両肩に手を置いていた。
「とりあえず、言うことがあると思うんだけど?」
「ええと、心配かけて……ごめんなさい」
それを聞くと、遊矢と柚子は大きくため息をついて
「本当に心配したんだからなぁ。柚子なんて、泣いてパニックになってたし」
「そ、それを言うなら遊矢だって!連絡くるまで街中走り回ったじゃない!素良がヘトヘトになるまで!」
「師匠凄い形相だったよねぇ」
「素良それを言うじゃない!」
賑やかな塾の仲間のやり取りを見ると、遊希は自然と笑っていた。その隣にいるリオもその光景を見て懐かしさに浸っていた。
「何はともあれ……」
「「「「「「おかえり!遊希(お姉ちゃん)!!!」」」」」」
「うん、ただいま!みんな!」
そしてつかの間の日常が戻る。遊希がジュニアユース選手権出場資格を得るまで残りのデュエルも抜かりなくとりあえず勝つ精神で塾で体を動かす。のだが
『凄いねアクションデュエルって!こんなに動き回ってするなんてボク関心するよ!ライディングデュエルもいいけどこれもいいよね!』
『今度あそこ乗ってみようよ!ほら!ボールの!』
「……」
リオの好奇心の声が耳に入り、遊希は集中力を乱される。
(黙っててくれないかなぁ……。想像以上にうっさい……)
遊希はジト目でリオを見る。リオはそんなものに気づくはずもない。
(声に出したら、拗れるしなぁ。本当に胃が痛くなる)
お腹を抑えて大きなため息をつく。
「お腹でも空いたの?お菓子食べる?」
「うん、食べる」
素良からお菓子を貰い一段落着く遊希。
「そう言えば、遊希ってデュエルの時アクションカードを積極的に取りに行かないよね?どうしてなの?」
「別にぃ?単純にまだ、慣れてないからかなぁ」
「アクションデュエルに?」
「というか、スタンディングデュエル自体にかな。私のいたところは座って机でしてたし」
「どんな田舎に住んでいたの?」
うっそだーっと言わんばかりの表情で素良は遊希を見る。遊希は素良から貰った飴を舐めながらに
「嘘じゃないよ。だから、こうしてモンスターに乗って動き回るのは新鮮だし、立ってデュエルすることすら新鮮だよ。だから、偶に座って、ゆっくりとデュエルをしたくなることもある。さてと、糖分の補給もできたことだしもう少し体動かそうかな」
そう言って遊希は再びアクションの練習に励む。
「うーん」
素良はその様子を見ながら首を傾げていた。
「どうしたんだ?素良」
そんな素良の様子を見た遊矢が素良へ話しかけに行く。
「なんて言うかさぁ、遊希って違うよね?」
「違う?何がだ?」
「何がって言われると難しいけどさぁ……僕達とは違う感じがするんだよね」
それを聞いた遊矢は少し眉をひそめ、素良に質問をする。
「はぁ?違うって何が違うんだよ?」
「それを言われると分からないんだけどさぁ……決定的になにかズレている気がするというか、何か隠しているというか……」
「何だそれ、何かのドラマとかでも見たのか?」
遊矢は半分呆れながらに言う。だが、遊矢もなんの疑問もない訳では無い。記憶喪失と言うには、決闘での確立された動き、対応の速さ、それと同じ歳とは思えない行動力。時折歳上じゃないかと思ったりすることもある。
(馬鹿馬鹿しいって片付けるには何かありそうだよ……なぁ。でも、今はそんなことよりジュニアユース選手権に向けての練習が先だろ!)
遊矢は首を横に振り気合を入れようとするが視界に遊希が映る。時折、気になって目で追いかけることもある。頼りになるし、楽しんでいるし、柚子に怒られた時にフォローもしてくれる。柚子と共に注意もしてくることもあるが……。自分にことを知ってくれて応援してくれる大切な塾の仲間だと思っている。だが、それと同時に自分は遊希の事を何も知らないのではと思った。
(いや、知らないのは語弊だよな?)
人並みに甘いものが好きで、負けず嫌いで、時折変な行動したり、意外に緊張してたり、決闘では手を抜かれるのは嫌がり、誰よりも楽しんでいるそんな少女という認識だが、赤馬零児とのデュエル時も楽しんではいたが、何か違和感を感じた。それが引っかかっている。遊矢がそんなことを考えていると、遊希が驚いた顔で遊矢に何かを言っていた。
「遊矢!前!前見て!」
「前?うわああああああ!?」
アクションフィールドの柱に激突してズルズルと落ちる。
「ちょっと大丈夫遊矢!?」
「顔からいったね……」
「痺れるくらい痛そうなんだぜ」
塾のメンバー全員が集まる。遊矢は痛そうに鼻を抑えていた。
「大丈夫?遊矢?」
「だ、大丈夫、大丈夫!痛ってぇ……!」
幸いなことに鼻血などは出ておらず、軽傷に済んだ。遊希は手を出して
「珍しいね、遊矢が顔から行くなんて。ほら、立てる?」
「あ、あぁ、全然大丈夫大丈夫!」
その手を取って立ち上がる。
「少し休憩したら?」
「さっきまで休憩してたから全然大丈夫!今のはオレが集中しきれてなかっただけだからさ!」
そう言うと遊矢は急いで立ち去るように再び練習に励む。
「大丈夫かな?」
「珍しいけど、大丈夫よ。遊矢はああ見えて頑丈だし」
「柚子がそう言うならいいけど、気が向いたら話聞いてあげてね?」
「え?」
首を傾げる柚子に遊希は耳元で
「好きならアピールするもんだよ?」
と囁く。それを聞いた柚子は顔を真っ赤にして
「な、ななな!何言ってるのよ!遊希!」
ハリセンを取り出して叩こうとするが、遊希に当たることなく空を切り
「そこまで顔を赤くしなくてもいいのに!本当にからかいがいあるなぁ!」
そう言うと遊希は楽しげにアクションフィールドを駆ける。
「待ちなさい!遊希!」
それを追いかける柚子。そんな光景を楽しげに見るのが小学生組と素良であった。