遊戯王ARC-V 次元戦争なんて冗談じゃない!!!   作:皐月の王

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奏者の決意

「まさか、仕組んでいるとは……いや、兄さんらしいか」

 

ゆっくりと立ち上がりながら、ユイはユートに近づき手を差し出す。

 

「ああ、ありがとう。デッキが異なるとは言えど、お前にあそこまで追い詰められたのは久しかったな。初めて使うだろうによく使いこなしたな」

 

ユートはユイの手を借りて立ち上がる。それと同時に今度はユイがふらつく。ユートと呆気に取られてた柚子が支えようとするが、ユイは制止する。それでも傍から見ればかなりしんどそうだ。

 

「とりあえず、二人には今の私達の現状を話すべきだね」

 

「え、えぇ。色んなことが起こりすぎて混乱してるから……お願い教えて!貴女の事、遊希のこと!」

 

「オレもだ。ユイがどうして遊希と立ち代る様に姿を現したのか……分かる範囲で教えてくれ」

 

柚子とユートに促されユイは話し始める。

 

「私の主観の話だが、現状、私、そしてシンクロ次元のリオという私に似た人物が遊希に宿る形で存在している」

 

「なんだと!?」

 

「――っ!」

 

その言葉に驚愕する二人。さらにユイは言葉を続ける。

 

「そして、それぞれの召喚法のに対応していることが考えられる所から、融合次元のそっくりさんの人格も眠ってるはず。流石に、どんな人物かは知覚できない。そして、何故私達がこの肉体に主、遊希に宿っているかも分からない。ただ、分かるのは、自分の状況、遊希が私達以上に他の次元について知っている事だ。まぁ、これに関しては私達が宿ることで共有された記録かもしれないがな」

 

ユイは自身の手を見るがその視界はボヤけていた。自身の時間が少ない事を悟ると

 

「兄さん。再会もここまでらしい……。遊希が無茶をして私を呼び起こしたからだ」

 

「そんな!ユイ!俺は……!」

 

弱々しいユイの手をユートは握り何かを言おうとするが言葉が出ない。そんなユートを見て。

 

「情けないことを言ってくれるな兄さん。今生の別れでもあるまいに。そんな事では……瑠璃さんにドヤされるぞ?」

 

「そ……だな。……隼もこっちに来ているが、会わなくていいのか?」

 

その名を聞いた時ユイは少し遠い目をして。

 

「そうだなぁ、会いたいものだ。そして強くなった私と決闘してほしものだ」

 

力無く笑う。そして柚子の方を見る。

 

「確か、柚子だったな。本当に瑠璃さんに似ている」

 

ユイは不安げな柚子の頬を触りながらに言う。

 

「ユイ……」

 

柚子はその手を拒むことができなかった。そしてユイは続ける。

 

「遊希は私やリオですら把握出来ないものを抱え込んでる。その重責を知る事は彼女に宿る私達ですら不可能だ。私達の記憶が共有されたとしても、彼女の記憶は私達に共有されてない。つまり、私達は彼女をわかることが出来ない。だから……」

 

ユイは真っ直ぐな瞳で柚子に言う。

 

「仲間であろう君達が……助けてやってくれ」

 

柚子は何も言えなかった。自分が思っている以上に遊希は何かを抱えていた。遊希を助けたあの日から一緒に暮らしてきた仲なのに、塾を守るために赤馬零児とデュエルをした時も、遊矢に発破をかけるためのデュエルも様々な所で自分たちを助けてくれた。そして、この前に倒れた話と今回の話。そこから分かることは

 

(私……遊希の事を何も知らない…!他の皆より長い時間一緒に居るのに!)

 

柚子はユイの手を握り

 

「分かった!私にできることをする!」

 

そう答えた。ユイは少し嬉しそうに微笑み。

 

「ああ、ありがとう。では、兄さん。また暫しの別れだ。隼によろしくお願いするよ。瑠璃さんを助ける時には遊希と共に馳せ参じるから」

 

「ああ、待ってるぞユイ。そして俺の進みべき道も分かった」

 

「じゃあ、頑張れ」

 

そういうとユイは意識を失う。それと同時に、姿が遊希に戻る。

 

「……柚子。着いてきてくれないか。この先に隼が居る。彼女もここに置き去りに出来ない」

 

「分かったわ」

 

ユートと柚子が遊希を腕を肩にかけて進む。そして路地裏を通り抜けると、赤馬零児と黒咲隼が話をしていた。そして三人の登場に零児と隼が気づく。

 

「ユート!そして、瑠璃……に似ているやつ。……っ!?ユイ!どうしてユイが!!ユート!」

 

「落ち着け隼、その話は後で話す」

 

ユートは隼にそう言い、マフラーをなびかせメガネを光らせる赤馬零児に声をかける。

 

「お前が赤馬零児だな!俺はレジスタンスのユートだ!遊希から話は聞いている!俺たちレジスタンスと話をさせてくれ!」

 

その言葉を聞いたその場の全員が驚く。零児も予想外だったようで

 

「ほう、レジスタンスの君から申し出があるとは思わなかった。それも、遊希の功績か……」

 

「ユート!どういう事だ!?赤馬零児と話だと!アイツは赤馬零王の息子だぞ!アカデミアの……!」

 

「それはこれから確かめる!俺は……遊希を信じてこの話し合いにかける!」

 

「ユート……!」

 

零児は一歩前に出て言う。

 

「良いだろう。その申し出は受けさせていただく」

 

チラリと遊希を見て、メガネを指で弾いて掛け直す

 

「…ただし、話し合いの場はこちらで設けさせていただく」

 

「そんなの敵陣で無防備を晒す……」

 

「ほう。つまり君は、気を失った彼女を置き去りにし、覚悟を決めた彼の意志をかなぐり捨て、私と戦う……と?……勿論、私はそれでも構わないが」

 

と、最後にはフッと小さく嗤った。隼は拳を強く握りしめ何かを言おうとするが、ユートが隼の肩を掴み一歩前に出て。

 

「それで構わない」

 

「ユート…!」

 

「隼、お前だって分かっているはずだ…!」

 

ユートの目を見て隼は黙る。零児は話が纏まったのを見届け

 

「では行くとしようか」

 

そのまま背を向け歩き始める。隼はその後を歩く。その時、

 

「わ、私も着いていくわ!」

 

柚子も叫ぶ。零児は思考を巡らせて

 

「良いだろう」

 

「しかし、社長!」

 

「遅かれ早かれ、こうなる事は分かっていた。遊希の現状と塾での一件を見る限り、ここで無理に帰らせるのは得策では無い。それが分からないお前では無いはずだ」

 

零児は塾での結束を思い出しながら中島を黙らせて柚子に言う。

 

「同行には許可を出す。君が話を聞くのは遊希が目覚め、彼女の言葉でだ。それで構わないな?」

 

柚子は遊希の顔を一度見て

 

(決めたんだ。だったら迷う必要は無い!)

 

決心して真っ直ぐに零児に言う。

 

「それでも構わないわ!」

 

「そうか……。では案内しよう。中島、怪我人と遊希を搬送してくれ」

 

「分かりました」

 

そして、LDSの本社に向かう。その道中、柚子は修造に遊希と友人の家に泊まることになったとメールをして事なきを得る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……また、このパターンか……」

 

遊希が目を覚ます。痛む頭を抑えながらに周りを見渡す。自分がベットに寝ているのを理解するのにそう時間は掛からなかったが、すぐ隣のソファーで柚子が寝ている事に驚く

 

「え!?柚子……。あっ、そうか、あの後すぐに……」

 

『そういうことだ。気がついたみたいだな遊希』

 

「ユイ……」

 

ユイが半透明でベットに腰掛けて足を組んで遊希の方を見ていた。遊希は遊希で嫌そうな顔をしながら

 

「私に言いたいことあるの?」

 

『そうだな。まずは、礼だな。お前が私を呼び起こしてくれたお陰で兄と会い、会話することが出来た。感謝する』

 

そう言い頭を下げてきた。流石の遊希もそれには驚く。まさか1番に飛んでくるのはお礼の言葉とは思わなかったからだ。

 

「い、いや、礼なんていいよ。私だって半分は仮説を試しただけだし。でも、助かったのは私も一緒だし。ありがと」

 

『お互い様だな』

 

「みたいだね」

 

『ズルいよ!何でボクの時には呆れたような感じだったのに!』

 

我慢出来なかったのかリオも参戦する。

 

『それは君が喧しいからじゃないのか?』

 

『元気いっぱいって言ってくれないかな!?と言うか似た存在どうし仲良しで行こうよ!』

 

『仲良くは良いが、お前と一緒にアホの子見たいに見られるのはイヤだな』

 

『あぁん?上等!決闘でボコボコにしてやる!』

 

『やるか?良いだろうねじ伏せて……』

 

二人の言い合い(?)を聞き頭を抱えながら遊希は

 

「二人ともうっさいわ!少しは静かにしてよ!!」

 

「遊希?」

 

「え?」

 

遊希の二人に対しての怒りの叫びは奇しくも柚子を起こす事になった。

 

「遊希!もう起きて大丈夫なの!?」

 

「う、うん。大丈夫、少し頭を痛むけど…」

 

「良かったぁ……。もう、本当に心配したんだから」

 

柚子は心底安心したように言う。その姿に罪悪感を覚える遊希。自分の仮説の検証に巻き込んだ事にもなる訳だからだ。

 

「ご、ごめん。私どのくらい眠ってたの?」

 

「え?ええと……3……4時間ね」

 

「4時間……今回はそんなにか……」

 

遊希は考える。前回が2日に対して今回は4時間。大幅に短縮されているのは覚悟ができていたからかと。そんな様子を柚子は見ながらも、意を決して

 

「ねぇ、遊希。教えて、今何が起こっているのか、ユートと赤馬零児の事……教えて」

 

遊希の手に自分の手を重ねて言う。遊希は少し目を逸らし

 

(うーん、知る権利があると言ったしなぁ……。言わないと引き下がらないよねぇ)

 

観念したように話す。それぞれの召喚法で分かれた次元があり、融合召喚を扱う融合次元がユート達が居たエクシーズ次元に侵攻しているということ、赤馬零児が後にこの次元に来ることを危惧して対策を立てているということ、それでユート達レジスタンスと協力するという話をする。

 

「と言う感じだね」

 

「そんな事が起こってるんだ……」

 

柚子は驚愕して顔を青くする。別の世界じゃそんな事が起こっているなんて夢にも思わなかったのだから。だが、それと同時に気づく

 

(遊希は自分の事を話してない?『自分のそっくりが居るって驚くよね』くらいしか言ってない)

 

柚子は意を決して言う。

 

「遊希はどこから来たの?」

 

「え?そ。それは記憶が無くて……」

 

遊希は苦笑いをしながら目をそらすが、

 

「遊希がどうして他の次元について詳しいかも、……3つの召喚法に詳しいのかも…遊希の事を教えて……!」

 

手を取り真っ直ぐに言う。しかし、遊希は少し顔を顰め、直ぐにおどけて誤魔化すように言う。

 

「ほ、ほら、次元戦争についてはユートに聞いたし、その時に逆説とかで推察しただけで……」

 

柚子は悟る。遊希が話したくないということ、そして話したくない理由は

 

(私達に気を使っているからというのもあるんだ……)

 

遊希の優しがあるから重荷になる様なことは知ることが出来ていない。自分じゃ役不足だと言われている気がした。だが、何を言っても答えないだろうとそんな気さえする。だから

 

(こういう時は強引に……よね)

 

柚子は遊希の目を真っ直ぐに見て言う。

 

「私と決闘よ!私が勝ったら!全部話してもらうから!」

 

挑戦するように真剣に遊希という一人の少女と向き合い言う柚子の姿がそこにはあった。




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