遊戯王ARC-V 次元戦争なんて冗談じゃない!!! 作:皐月の王
「遊矢、柚子、素良、遊希、タツヤ、アユ、フトシ、遂にこの日が来たぁ!!」
塾長である修造が塾前にて手を腰に構えて各メンバーの前で話をしていた。
「我が遊勝塾の塾生全員が舞網チャンピオンシップに出場できるとは……!俺は…俺は!誇りに思うぞ!!」
感涙を流しながら皆を抱きしめようとした修造だったが、皆に避けられて地面にダイブし、さらに追い打ちに自転車に踏まれる始末。
「な…なぜ避ける……」
「お父さんテンション高すぎ……」
「まだ会場にも行ってないのに…•」
柚子は苦笑いしながらに言う。アユは少し困惑したように
「あ、ああ。そうだったな。ゴホン!」
修造は咳払いをして仕切り直す。遊希も苦笑いしながらも説明を聞くことにした。
「改めて説明しておくぞ!舞網チャンピオンシップはジュニア、ジュニアユース、ユースの3つのクラスに分けられて行われる。タツヤ、アユフトシはジュニアクラス」
「「「はい!」」」
小学生組は元気よく返事をする。
「遊矢、柚子、素良、遊希はジュニアユースクラスで出場だ」
「「「はい」」」
「はーい」
ジュニアユース組も各々返事をする。
「言うまでも無いが、LDSが主催する舞網チャンピオンシップには舞網市内全ての決闘塾だけじゃなく、日本中、いや世界中から出場資格を満たした強者共が集まってくる。我が遊勝塾のエンタメデュエルのアピールのため何がなんでも全員優勝を目指せ!!」
修造が熱く語り、さらに両腕を広げて
「今ッ!この瞬間から共に学んだ仲間であるのと同時に互いにライバルとなるのだ!皆全力で戦え!!迷うな!悔いるな!自分が学んできた全てを信じて燃えろ!熱血だあああぁぁ!!!」
燃え上がる修造を他所に皆は車の方に足を進めていた。そして乗車した面々はシートベルトを締めて、各々意気込んでいた。
「よーし!」
「頑張る!」
「痺れさせてやるぜ!」
小学生組はやる気十分。フトシの隣で素良は飴を舐めて自分ペースを保っている。
「絶対勝つ!」
柚子は自分の頬を叩いて気合を入れる。
「よぉし皆!準備はいいな!」
「「「おおおお!!」」」
「燃えろ!エンジン始動!」
そしてバスは会場に向かうのだが
「あああ!!」
柚子が驚いた声を上げる。その声に反応して車は急停止する
「ど、どうした柚子!?」
「ゆ、遊矢と遊希が!!」
皆が席を確認すると、遊矢と遊希が居なかった。
「「「居ない!!」」」
「なにぃ!!!?」
遊勝塾は前途多難な大会初日を迎えていた。
一方、その行方をくらませた片割れの遊希は普通に歩いていた。
「別に距離はそんなに遠くないし、集中がてらに歩いても良いでしょ。こっちはこんな大きな大会は初めてなんだし。上がらない訳はないし」
そう言いながらもマイペースで歩いて会場に向かおうとするのだから肝は据わっているのだろう。
「にしても、盛り上がってるねぇ。そりゃ、修造さんの話を聞く限り規模が規模なだけにこれくらい盛り上がらないと嘘というものなんだろうけど」
通り行く道すがらには無数の屋台が立ち並んでいた。衣服が売られていたり、グッズが売られていたりと様々だ。
『すっごいねぇ!ボクこういうの間近で見るのは初めてだからもっと見て回りたいよ!!』
『ああ、こういう風景は久しいな。学校対抗とかにもこれほどじゃないが盛り上がったものだ』
目を輝かせるリオと昔に思いを馳せるユイ。そんな二人に少しでも楽しんでもらおうとの配慮なのか徒歩で向かっていたと言うのが半分ある。自分が当事者となって見て回りたかったというのが、もう半分である。そんな呑気な気持ちで歩いていると、デュエルディスクが通知音を鳴らす。
「そう言えば思いつきで歩いてる訳だし、そりゃ来るよね」
相手は柚子からだった。
「柚子からね……。置き手紙でもすればよかったかな……」
遊希は観念したような溜息をつきながらに応じる。
「もしもし?」
『あっ、遊希!何処にいるのよ!!ふらっとどっかに行って!!』
「ごめんごめん、初めての機会だしさ。つい、見て回りたくてさ。一声かけておくべきだったよ」
遊希はアハハと笑いながらに謝罪する。柚子は心底心配したような声で
『本当に心配したんだから……。だって、遊希……』
「…ごめん。もう、大丈夫だよ」
遊希は今度は笑わずに真面目なトーンで謝り大丈夫と伝える。
「柚子が手を引っ張ってくれたから。大丈夫、信じてよ。柚子が信じる私を」
そう言われた柚子はデュエルディスクの通話越しに息を吐いた。そして
『分かったわ。遊希だもんね。開会式には遅れないでよ?』
「もちろん」
『それと、遊矢もまだ来ていないの。遊希は遊矢を見てない?』
そう言われて心当たりは無い訳はない。確かな記憶を探し思い当たる節のある場所かと思考する。
「いや、見てないかな。遊矢を見つけたらとりあえず引っ張って行くから。だから、遊矢の到着を待っててね。しっかり遊矢を捕まえとかないとダメだよ?」
『何を揶揄ってるのよ!!』
そこで遊希は通話を切る。柚子が顔を色んな意味で赤くしていたのは言うまでも無い。
「さてと、行こうかな」
『居場所は分かるのか?』
「何となくね」
遊希は歩みを進めていた舞網チャンピオンシップのスタジアムが見える橋に向かった。そこには手すりに座り、ゴーグルを着けた遊矢が居た。ペンデュラムを揺らして会場の方を見ていた。
「父さんに近づくための大会が…始まる。……俺らしさを大事にして……」
「そんな所に座ってたら大事なもの落とすよ?」
遊希が声をかけると遊矢は少し驚いた様子で遊希の方を見る。
「遊希……」
「車に乗ってなかったみたいだね。柚子が居ないって連絡くれたよ?皆心配してると思うよ」
「連絡くれたって、遊希も車に乗ってなかったのかよ」
遊矢の指摘に少しばつ悪そうにいながらに答える。
「私は観光したかったしね。よっと」
遊希は遊矢が座る手すりに、遊矢の隣に立つ。それと同時に優しい風が吹き抜ける。
「うーん、いい風。実際に来るといい風景だ……」
背伸びをしながらに呟いた。その言葉を聞いて遊矢は嬉しそうに笑い
「だろ?」
二人は言葉を交わした。そのあとしばらく黙り、スタジアムを見ていた。そして遊矢は遊希に話す。
「ここさ、よく父さんと来ていたんだ。ここで夕日を見て話したり、このペンデュラムもここで貰ったんだ」
「ここが、遊矢と遊勝さんを繋ぐ場所なんだね」
「繋ぐ場所…そうだな!」
笑っていう遊矢に微笑む遊希。遊希は手すりから下りると、
「それじゃあ、そろそろ行こっか」
「行くって?」
「真にお父さんに今の自分を伝えることが出来る、うってつけの場所にさ」
遊希はスタジアムを指さして答える。
「スタジアム……」
遊矢はゴーグルを外してスタジアムを見据える。そして再度、遊希を見ると手を差し出していた。
「そうだよ。あそこが私達が主役のステージだよ。さぁ、行こうよ!」
差し出される手に見覚えがあった。どこか懐かしさすら感じる。
「ああ、そうだな!皆を決闘で楽しませないとな!」
そう言うと遊希は
「自分も楽しんでこそのエンターテインメントだよ、自分も楽しまなきゃ、人を楽しませることは出来ないよ!楽しんでいこうね!」
「ああ!」
遊矢はその手を取り手すりから下りて、走り出していた。
「ちょ!?遊矢!?」
「遅れるんだろ?だったら早く行こうぜ!」
「そうだね!」
二人は走り出しスタジアに向かう。遊矢の手が温かく感じる遊希は笑っていた。遊矢は
(遊希と話すと心が軽くなる…!不思議なだよな。柚子は違った安心感があるし……って何考えているんだ!顔が熱いな!絶対赤くなってるよオレ!)
遊希に顔を見られないように走りスタジアムに向かう。柚子と同様に遊希の存在も大きくなっていたのだ。
「あんたらこんな所に居たの!」
「母さん!」
走り出して暫くすると遊矢の母親こと榊洋子が車で二人の前に現れる。
「早く乗りな、遅刻するわよ」
「ありがとう母さん!遊希も!」
「ありがとうございます!」
二人は車に乗り込みスタジアムに向かう。
「アンタが星風遊希ね、話は遊矢から聞いているわよ」
「私の話ですか?」
「母さん!」
洋子が遊矢が遊希の事を話しているということを言おうとすると言わせないように遮るが無駄な努力に終わる。
「アンタを病院に運んだ日から、柚子ちゃんと心配して毎日見舞いに行ったり、アンタと決闘した後なんかアンタのとの決闘を話したり、立ち直らせてくれた時の話とか、帰らないとなってアンタを探すのに必死になったりと、色々アンタが来てから慌ただしくも楽しそうに話していたのよ。頼りになるけど、心配ばっかりさせる大変な奴だって」
「アハハ……まぁ、間違ってないですね。でも、遊矢がそんな風に話してたんだ?」
遊矢は顔を真っ赤にして
「もう良いだろ!?この話は終わりだ!終わり!」
「何照れてるんだか」
そしてしばらくして遊希と遊矢はスタジアムに到着する。遊矢は大きく深呼吸して車での事を一度、頭の隅に追いやろうとする。そして平静を保とうとして柚子がいる所に駆け寄る。遊希は温かい目でそれを見る。
「柚子達は何処だ?」
「あっ!あそこだよ遊矢!」
遊希が指さす方に柚子達が居る。遊矢と遊希は走り駆け寄る。
「いたいた!おーい!柚子!」
「皆お待たせ!」
「「「遊矢お兄ちゃん!遊希お姉ちゃん!!」」」
「遊矢、遊希……!」
柚子はホッとしたのか少し泣きそうになったが顔を横に振り
「もう!遊矢、遊希!こんなに心配させてどこ行ってたのよ!遊希は直ぐに連絡繋がったけど!遊矢は!」
「ごめんごめん!ちょっと用事があってさ。用事先で遊希と会ってここまで来たんだ。そろそろ入場だろ?並びに行こうぜ」
入場ゲートの方を指さして歩いていく。柚子は呆れた表情で
「アンタって人は……」
「まぁまぁ」
後ろを向いていたため大きい背中に当たる。
「いって…」
「久しぶりだな弱虫」
下駄を履き黒い学ランを着た少年と言うにはガタイがいい人物が立っていた。
「お前は……!」
ある種の因縁。遊勝が赤馬零王の計画を止めるために先走った影響で遊矢に突っかかって来た人物。暗黒寺ゲンだった
「大切な大会前だから逃げ出したと思ったぜ。お前の親父みたいに」
「なに!?」
それを聞いている遊希は表情は険しくなる。普段は黙っているか呆れた表情を見せている彼女だが、
「ナメやがって……!」
「遊希?」
柚子が遊希の様子に気づいた時には歩き出し、
「お前みたいな奴が、ストロング石島を破ったなんて俺は認めねぇ!」
「認める認めない以前に事実でしょ?間抜け」
二人の間に割って入り、暗黒寺と対峙していた。暗黒寺は怒気をにじませた表情で、遊矢達は驚いた表情で
「あぁん?」
「遊希?」
柚子は遊希の表情は見ていないが直感的に
(怒ってる……!あの遊希が)
「なんだてめぇ、関係の無い部外者が割って入って来んじゃねぇよ」
「私と遊矢は同じ塾の塾生。さらに言えば私の大切な友人なの。アンタがストロング石島の敗北を認めないのは勝手な話だけどさ、それを理由に私の友人を貶めるのは……話が違うよね?」
暗黒寺を睨みつける遊希。遊矢を庇うように立ち暗黒寺と真正面から睨み合う。
「文句があるならお前から叩き潰してやるよ!」
「……やれるもんならやってみなよ!」
一触即発となったが、
「そこまでだ、暗黒寺ゲン、星風遊希!」
暗黒寺の肩を掴み暗黒寺を止める人物が現れたその場にいる三人は驚く。
「権現坂!」
暗黒寺は肩を竦ませ、遊希は退る。
「兄弟子を呼び捨てか、偉くなったもんだな権現坂」
権現坂を睨みつけながらに言う。権現坂は真っ向から見据えて
「アンタはもう、兄弟子ではない…!」
と言い切った。それと同時にアナウンスが鳴る。
『まもなく入場です。選手の皆さんは各チームのプラカードの前に整列してください』
暗黒寺はそれを聞くと権現坂の手を払い除け
「フン、俺がぶっ潰すまで精々頑張るこったな!」
そう言い残して去っていく。暗黒寺の去る背中を見ながら権現坂は呟いた
「ここでアイツと会うとはな……」
因縁があるのは遊矢だけではなく、権現坂もその1人なのだ。
「権現坂!お前出場出来たんだな!」
「おう!この男権現坂!登録締切ギリギリで勝率6割を勝ち取った!」
それを聞いた遊矢は心底嬉しそうに笑い
「そっか…!よかった!よかったなぁ!!」
そして互いに握手をしていた。一方の遊希は
「無茶して割って入って喧嘩売るなんて!危ないじゃない!」
柚子に怒られていた。しかし柚子も暗黒寺の言葉には思う所があり、遊矢の為に動けなかった後ろめたさもある。
「だって我慢出来なかったもん」
「出来なかったもんじゃないわよ……。でも、ありがとう。遊希が代弁してくれた見たいでホッとしたわ。でも、本っ当にああいう手合いは危ないんだから!!」
「分かったって!とりあえず並ぼ!」
そう言って遊希は先に行く。リオとユイが遊希に話しかけてくる。
『珍しいね。君がここまで感情的になるなんて……』
『ああ、お前らしくないと言うか』
それに対して遊希はため息をして
「実際問題……私もらしくないとは思うけど……大好きな友人を馬鹿にされて黙ってられるほど、大人じゃなかったってだけだよ」
そう言い残して列に並ぶ。各チームが順番で呼び出され始める。そして、
『続いてはエンタメデュエルで話題の遊勝塾です!』
遊矢達が入場する順番が回ってくる。
(いよいよだ。始まるんだ……!始まってしまうんだ……ここからは本当に引き返せない!)
入場する時、特等席の零児と目が合う。そして互いに頷く。権謀術数渦巻く舞網チャンピオンシップが幕を開けた。
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