遊戯王ARC-V 次元戦争なんて冗談じゃない!!! 作:皐月の王
遊希が転生し、柊家に住むようになって数日が経った。生活にも慣れてきてすっかりと馴染んできた。街は現代とあんまり変わらないため、慣れるのに時間はかからず平穏に過ごしていた。平日は学校……という訳ではなく、塾で準備をしたり、昼ごはんを作ったりして過ごしている。暇になる昼下がり、割り当てられた部屋にてカードと睨めっこをする遊希。
「紫のカード……融合モンスターらしき何も描かれていないカードが数枚、白いカード……シンクロモンスターらしき何も書かれてないカードも数枚、さらに黒いカード、エクシーズモンスターらしきカードが数枚。転生する際に何があったんだろ……」
失われたカードの中身には思い当たるものがいくつもあるが、現状使えない以上どうしようもない。
「こうして……生きていることが、奇跡とも言えるだろうし、このカードはしばらくはケースに入れておこ」
紫のカードは融合デッキへ白いカードはシンクロデッキへ、黒いカードはエクシーズデッキへ入れる。そして、その後のことを考える。遊矢と柚子は学校に行き、小学生組も学校に行っている。素良は不明と頭の中で整理をする。これからのことを考えながらカードを見る。
「舞網チャンピオンシップ……ランサーズ、オベリスクフォースの襲来……あの場に居るメリットが何も無いじゃん。遊びで命かけるなんてどうかしてるし、考えたくない。でも、もう関わった以上そういう訳には行かないよね」
ため息を漏らしながら、仰向けに寝転がる。ここは自分がいた世界とは異なる。似通っていて決定的に違う。なら、生前居た世界の常識の半分は捨てざるを得ない。それに遊希は
「お世話になっている以上……出来ることはするしかないよね」
受けた恩を蔑ろにできるような人物ではない。彼女はそう言う人物である。
「でもなぁ……。一般プレイヤーの私に何ができるんだろ。それに、シンクロ召喚の講義もしないといけないんだよねぇ。何をどう教えればいいんだろう」
唸りながら枕に顔を埋め再び頭を抱える。今のカード構成ではそこが知れている。だが、一番信用していないのは、自分自身の実力である。相手の考えを読むことも、立て直すのもあまり得意ではない。プレイヤーとしての腕前は、多分平凡かそれ以下である。最初のドローからどれだけ勢いよく最善を走れるかに任せている。そんなプレイヤーである。
「とりあえず、持ってるカードを見せながら、端的に教えよ……。シンクロ召喚を教えるのであって戦略は私の管轄外だしね」
そう言い訳をすると、遊希は立ち上がり部屋を出る。時間帯は、そろそろ下校時間。塾での時間が始まる頃合である。今回は、シンクロ召喚について教えたあと、アクションデュエルの練習を行うという流れになっている。
遊希は部屋を出て塾に向かう。いつも通り、デュエルディスクにはシンクロのデッキを、デッキケースにはエクシーズのデッキを入れて。
「シンクロ召喚は、第一に自分フィールド上にチューナーとチューナー以外のモンスターを並べる。そしてその素材を墓地に送って条件の合ったシンクロモンスターをエクストラデッキから特殊召喚するの」
遊希は遊勝塾にてスライドを使ってシンクロ召喚について教えていた。スライドを使いながらの講義だ。遊希は緊張しながらもシンクロ召喚について教えていた。
「例を言うなら、ドッペル・ウォリアーはLv2、チューナーのジャンク・シンクロンはLv3。この二体を墓地に送って出せるとなったら、私の手持ちなら、Lv5のシンクロモンスターのジャンク・ウォリアーとかジャンク・スピーダー、TG ハイパー・ライブラリアンだね。まぁ、要約すると条件合わして足し算で出せだね」
「要約で台無し感あるけど、凄くわかりやすい!」
「痺れるくらいに分かったぜ!」
「うん!これなら、分かりやすいね」
「そう言って貰えたら頑張った甲斐はあったよ。シンクロ召喚の講義はこんな感じでいいですか?塾長」
「ああ!すごく分かりやすくまとめられていた!自分のカードを出しながらの説明もイメージがしやすく良かったと言える!これで遊勝塾もシンクロ召喚を教えられるぞおおお!!!」
塾長である柊修造は燃え上がり凄まじい熱気を放っていた。皆は苦笑いをしながらそんな修造を見ていた。その後はアクションデュエルのアクションの練習を行う。講義ばかりじゃなくて実際に体を動かしてのデュエルもこの塾での醍醐味だ。だが、
「はぁ……はぁ…疲れる!走りながら喋るのもそうだけど、アクションカードもう少し取りやすい位置に置いてよ……!……だけど、こうもイメージと動きが合わないなんて!」
遊希は肩で息をしながら思わず文句を言う。そんな遊希に
「大丈夫?遊希。退院してそんなに経って無いんだし、無理しない方がいいわよ?」
「柚子の言う通りだよ。話に聞いたら病み上がりなんでしょ?」
柚子と素良が遊希にタオルやスポーツドリンクを渡しながらに言う。遊希は礼を言いながらその2つを受け取り呼吸を整える。
「そんな訳には行かないよ。鈍った体を慣らすのと、イメージと実際の動きのズレを修正しないと行けないし」
「遊希は負けず嫌いなんだな……にしても……今日は暑いなぁ、なんだかアイスが食べたくなってくるよ」
遊矢が汗を拭いながら言い出す。それを聞いた素良も便乗して言い出す。
「ボクもアイスを食べたい!」
「オレも!」
『アイス!アイス!アイス!』
やがてアイスコールになり、女性陣はアイスを買いに行くことになった。
「全くもう!皆アイスが食べたいなら自分たちで買いに行けってのよ!」
アイスを買った袋を持ちながら文句を言う柚子。遊希はそんな柚子を見ながら律儀に人数分買っている優しさに苦笑いしていた。
「文句言いながらもこんなに買って優しい!」
「ごめんね疲れてるのに付き合わせちゃって」
「ううん、この位大丈夫だよ」
遊希もアイスの袋を持っている。食べたいと言われた時用に予備で買い溜めをしようと提案して買った分だ。
「予備の分も買ったことだし、しばらくはアイスには困らないよね」
「だといいね」
そんなふうに話していると、柚子が何かを見て立ち止まる。
「お姉ちゃん?」
アユが柚子の方を見る。遊希も足を止める。柚子は遊希にしゃがむように手招きをして、アユと遊希に静かにするように口元に指を立てて
「シー」
そして視線を戻す。その先には学生服を着た少年が歩いていた。
「沢渡さん、気合い入りまくりじゃね?」
「どんな手を使っても榊遊矢をぶちのめすってな」
「あの人相当卑劣な事やりそう」
「ウィークポイントを徹底的に攻めるってよ!」
そんな話を聞いた柚子は険しい顔になり
「沢渡……!」
取り巻き二人の後を追いかける。
「柚子お姉ちゃん!」
「沢渡って誰?」
遊希は知っているが知らない体で話を聞く。前回、塾のメンバーを人質にとり遊矢とデュエルをした人物であること、ペンデュラムカードを奪ってデュエルをした二流デュエリストと柚子は機嫌が悪そうに言う。後を追いかけると港の倉庫まで来ていた。
(なんで、みんなこういう所に潜んだりするんだろう。不良やマフィアとかじゃないんだしさ)
遊希は一人どうでもいい感想を心の中で漏らしながら、柚子、アユと張り込んでいた。柚子は何かを決意したように
「アユちゃん、遊希、先に戻ってて」
そういうとアイスの袋をアユに渡し先に行く。遊希もアユに渡し
「ごめん、私も心配だから行ってくる。重いだろうけど頑張って塾までね!」
「あっ!遊希お姉ちゃんまで!」
柚子の後を追いかけて倉庫の前まで来る。そんな遊希を見て柚子は驚いたように
「遊希なんで!?」
「シー!そんなに大きい声出したらバレるって。それに、相手は複数でしょ?一人で乗り込むより二人で乗り込んだ方がいいしね」
「それはそうだけど……!これは貴女が塾に来る前の……!」
「守りたいんでしょ?遊矢を」
遊希がそういうと柚子は顔を赤くする。
「い、いや、その!これは前の一件で助けてもらったから今回は私がという意味で決して!」
その様子を見た遊希はしてやったりという顔を内心して
「はいはい、ご馳走様。それじゃあ、さっさと行って帰ろうか」
「自分から振っといてなによ!」
柚子と遊希は倉庫の扉に手をかけて、勢いよく開ける。
「この卑怯者!」
柚子は沢渡達を見るなりそう言う。等の沢渡はパイを食べていたようで驚いて喉に詰まらせかけていた。取り巻きの連中も柚子達の登場に驚いていた。そんなのお構いなしに二人は宣言するように言う
「どんな手を使っても遊矢を倒すなんて……絶対にさせない!」
「悪いけど、ここでその考えは潰させて貰うよ!」
沢渡は咳き込みながらも、二人を見る。
「ゲホゲホッ!柊柚子と誰だ!?なぜここにいる!?」
遊希はノリノリで名乗ろうとするが
「私の名は……」
「アンタに教える必要ないわ!……パイのカスが口に着いているわよ」
「え!?」
遊希は自己紹介を遮られ、沢渡は口のパイのカスを指摘される。沢渡は取り巻きのハンカチを借りて仕切り直す。
「ふっふっはっはっ!柊柚子、そしてもう一人のお嬢さん。どうやら君達は自ら我々の手に……」
「私達とデュエルしなさい!」
話している途中だが情け無しと言わんばかりに切り込む柚子。それに面食らう沢渡は崩さないように話そうとする。
「飛んで火に入る夏の……」
「あんた達なんかボコボコにしてあげるんだから!」
「勝利の女神はこの俺……」
「どうしたの!?私に負けるのが怖いの!?」
「俺にも喋らせろ!?」
遊希も少し沢渡に同情した。実際に目の当たりにすると可哀想なものだと。
(それに自己紹介出来なかったなぁ)
柚子の勢いに負けてとりあえず黙ってことの成り行きを見ざるを得なくなりつつある遊希がその場にいた。柚子は沢渡の話を聞くことなく
「聞く必要ないわ!この卑怯者!負け犬!二流デュエリスト!」
「二流……だと?」
さっきまでのふざけていた沢渡の雰囲気が変わる。ビクつかせ柚子を見る。柚子は怯む様子もなく
「アンタなんか、二流どころか、三流いや、四流……百流デュエリストよ!」
そう言われた沢渡は拳を強く握り、二人を睨みつけながら
「……言ってくれるじゃん……!そこの女共々後悔させてやる!」
そう言うのと同時に沢渡の取り巻きは倉庫の扉を閉める。逃げ場を無くして柚子と遊希の退路を断つ。
「さっきの言葉を取り消すなら今のうちだぜ?」
「誰が消すもんですか!この卑怯者の百流デュエリスト!」
「御託はいいからさっさと構えなよ!」
「身の程知らずのその態度……後悔させてやる!」
沢渡がデュエルディスクをつけて臨戦態勢をとる。それと同時に
「ぎゃああああああ!!!」
柚子、遊希の後ろから沢渡の取り巻きの悲鳴と倉庫の扉が開かれる音が聞こえた。沢渡の取り巻きはその場に倒れていて、夕日を背に立っていたのは顔をマスクとゴーグルとマフラーで覆った人物だった。その人物は倉庫に踏み入れ、柚子と遊希を庇うように前に立つ。
「なんだ?お前は」
沢渡の問いかけに答えることはなく、柚子と遊希に
「下がっていろ」
と言う。柚子は事態が読めないと言わんばかりに
「何よ貴方」
「いきなり現れてプリンセス達を助けに来た騎士気取りか?」
しかし割り込んだ人物は何を言うまでもなくデュエルディスクを構える。
「変わったデュエルディスクだな……。こっちの問いかけに答える気はないってことか」
「ちょっと何なのよ貴方!いきなり割り込まないで!これは私達の……」
デュエルディスクをつけようとする柚子を制止する覆面の少年。柚子と遊希を見て
「もう……君達を傷つけたくない」
「え?」
「……は?」
その言葉を聞いて二人はキョトンとする。しかし、それ以上に遊希の思考に電流が走る。
(どういうこと!?あの覆面は、ユートで間違いないというのは分かる。そして柚子に言うのは瑠璃と勘違いしているからというのも分かる。だけど……なんでそこに私が巻き込まれているかと言うことよ。まだ、百歩譲って『君も下がるんだ』とか『お前も下がってろ』なら分かる。けど、『君達を傷つけたくない』どうしてそんな台詞が出てくるの!?)
色々な思考が巡っている間にデュエルは始まり、最終的には覆面少年ことユートが勝利を収めた。その際に素顔が出て皆が榊遊矢だと勘違いし始める。そして、柚子のブレスレットが光り出す
(確かこれでユートが消えて遊矢が合流して柚子に迷いが生まれるんだったよね。どう見ても顔は似てるけど、髪色も声も違うのにね)
光は目を開けていられないほどに強烈で思わず目を閉じる。そして次に遊希が目を開けると、そこは港と倉庫ではなく、どこかの路地裏であり、近くにはユートが居た。
「えええええ!?」
どうして自分も一緒に飛ばされているのか、そこはユートだけじゃないのかと頭が許容量オーバーして抱え始める遊希。そんな遊希にお構い無しに
「無事でよかった……!アカデミアの連中から逃げ出せたんだなユイ!!?」
ユートは優しい声でまるで仲間……家族の無事を喜ぶように言い、抱きしめた。
「は?」
だが、ますます頭が混乱する遊希。何故、自分を見て『ユイ』と呼ぶのか。察しが良い遊希は悟るが、何でエクシーズ次元での自分と似た存在がいるのか、どういう関係なのか。この世界でここに来るまでの間に何があったのか。考えれば考えるほど沼に沈むどころか、奈落に落とされる気分だ
「瑠璃はどうしたんだ?隼がユイと瑠璃が脱出してこの次元にいると聞けば喜ぶはずだ……。どうしたんだ?」
様子がおかしいことに気づいたユートが心配そうに声をかける。そして、遊希は爆発したように
「どうなってんのよ!!?私!?」
「どうしたんだ!?ユイ!」
ARC-Vの世界に転生して二度目の驚愕に遊希は発狂しかかっていた。
次回、VSユート!エクシーズ対決!