「・・・マイクチェック、よし。カメラ、よし。・・・準備完了。」
この世界には存在しないはずの金属で作られた頑丈な部屋の中で、「桐島 智樹」は自作したある物の起動テストの準備していた。
「ヴェーダ、録画開始。録画ファイル名は「G1」。え~と、2007年8月。ISg-001「オリジンガンダム」の起動テストを行う。では、早速起動する。」
そこまで言うと、俺はカメラから距離を取る。
「大丈夫、大丈夫のはずだ・・・。こい、オリジン!!」
左の手首に巻いたシンプルなデザインのブレスレットを、強く握りながら俺は自分が初めて作った相棒の名前を叫ぶ。
すると、ブレスレットが強く光り始めてあっという間に、智樹の体を包み込んだ。
光が拡散すると、そこには智樹の姿はなく別のナ二かが直立していた。
所々にスラスターが配された、白を基調とした装甲を全身に施した印象に残る姿。
そして何より、目を引くのは頭の部分だろう。
黄色に光るツインアイカメラと、額にあるV字状のアンテナ。
まごう事はない、その姿は正しく「ガンダム」。
「・・・やった、やったぞーー!遂に、遂に完成した!俺の、俺だけのガンダム!!やべぇ、涙が出て来た・・・。おっと、いけない。起動は出来た、次は歩行テストだ。」
俺はやっと完成して動かすことが出来た喜びを、噛みしめながら慎重に足を運び、歩き始める。最初は、とてもゆっくりと、次第にスピード上げて、最後には部屋の中を走り回る。
「うんうん、歩行も問題ない!次は、飛行試験か・・・。PIC、上手く動いてくれよ・・・。」
頭の中に「床から1mの高さに浮遊する」とイメージをすると、足裏の感覚がなくなって目線が高くなる。どうやらきちんとPIC、パシッブ・イナーシャル・キャンセラーが動いてくれたようだった。
その状態で、前へ後ろへ、右へ左へと空中をすべるように移動する。
「よし、基本的な動作は全て出来るようだ。失敗しなくて、本当に良かった・・・。おっと、忘れてた。ヴェーダ録画停止。」
空中から降り立ち、動画の撮影を終了させると智樹は耳のあたりのスイッチを軽く押して、頭部装甲を収納する。
「なんとか、ここまで来た・・・。後は、各種武装のテストと俺の操縦技術を磨くだけ・・・。やべぇ、想像したらワクワクして来た。前世からの夢が叶うまであと少しの辛抱だ。よーし、頑張るぞ!!」
右手を上げながら、ガッツを入れる智樹。
ここで唐突だが、彼には、「桐島 智樹」には前世の記憶がある。
彼の前世は、極めて普通の人間であった。
一般的に「ガンダムオタク」と呼ばれる人生を謳歌していた、前世の彼だったが交通事故に巻き込まれる形で、若くしてこの世を去ることになってしまった。
そんな彼だが、一つの夢があった。それは、「モビルスーツ、特にワンオフの機体を集めて並べて眺める」というものだった。
そんな彼の夢を神が汲み取ったのだろうか、彼は「インフィニット・ストラトス」の世界に、特典付きで転生することになった。
一つ目の特典が、ガンダム界最強クラスの演算能力を持つ粒子コンピューター「ヴェーダ」。
二つ目は、武器や機体のパーツ、戦艦の部品までなんでもござれの最強の工作機械「AGEビルダー」。
三つ目は、「ガンダムに関する全ての技術が詰まったデータベース」。
四つ目は、「あらゆる設備が整った研究所と太陽系の各地に用意された資源採掘施設」。
五つ目が、「最強の空間把握能力とニュータイプ能力」。
最後の特典が、「特典を余すことなく使うことが出来る天才的頭脳」。
自分に前世があった事と、転生特典があることに気付いたのは、智樹が五歳の時だ。
前世の夢を思い出した智樹は、早速モビルスーツを建造する為の行動に移ろうとしたが、そこに待ったをかけたのが「ヴェーダ」であった。
「ヴェーダ」は、この世界がインフィニットストラトスの世界である事、それを踏まえて上でガンダムをISとして作ることを提案してきたのだった。実物大のモビルスーツを並べることが出来ないのは、智樹としては非常に残念な事だったが、そこは「大きさこそ違えどモビルスーツは、モビルスーツ。」と割り切って行動する事にした。
目標を決めた後、智樹は「その時」が来るまで、各「ガンダム」の世界の技術を再現しながら勉学に励んだ。
そして10歳の時、遂に「その時」がやって来た。
篠ノ之束が、学会にてISを発表したのである。
当時、ISの発表は余りにも滑稽武藤な内容の為に嘘扱いされてしまい、誰も信じなかった。
その為、各報道機関でも全く報道されなかったが、ありとあらゆるネットワークに接続することが出来る「ヴェーダ」がこの歴史的一件を見逃すはずもなく、すぐに智樹にこの事を伝えた。
それを知るや否や智樹はすぐさま、ISの資料を片っ端から集めて、それを熟読した。
オリジナルISを作るうえで、最難関なのが「ISコアの製造」である。発表から10年たった原作開始時点でも、ブラックボックスが解明されることが無かった、最初にして最大の壁であったが智樹の下には超チートコンピューター「ヴェーダ」があった。彼は、転生特典を余すことなく使ってISコア製造に取り組んだ。
そして、智樹はIS発表から二か月後、原作での大きなターニングポイントである「白騎士事件」から一か月後、遂にオリジナルISコア「ISコア TYPEーGUNDAM」、通称「Gコア」を完成させることに成功する。
このGコアだが、いろいろなところがオリジナルより強化されている。
まずは、各種スペックを大幅に強化した。その値、少なくともオリジナルの10倍以上という破格の物である。
また、原作で盗まれまくっている事への対策として、ヴェーダとのリンクアップシステムを導入した。これで万が一、盗まれる事になったとしても、遠隔操作で機能停止にすることが出来る様になった。
最後に、IS最大の弱点である「女性にしか使えない」問題を解決した。これにより、このGコアを搭載したISは男女関係なく、稼働させることが出来るようになる。
Gコアを完成させた智樹は、休む暇もなくオリジナルIS一号機「オリジンガンダム」の製造に取り掛かった。オリジンのコンセプトは、「換装機構を搭載した万能汎用機」。具体的に言うのならば、ストライクガンダムやガンダムアストレイ、インパルスガンダム、ガンダムF90などの、換装機構を搭載した機体の製造を目指したのだった。
設計自体はとてもシンプルだが、智樹にとっても「ヴェーダ」にとっても初めてのIS制作。苦労しないはずがなく、色々な所で躓くことになった。
だが、躓くたびに考え工夫し、形にして解決していった。
白騎士事件から半年後、世間の話題をISが搔っ攫っている時、遂に智樹はオリジナルIS第一号「オリジンガンダム」を完成させることに成功する。
ストライクガンダムとガンダムF90の意匠を取り入れた外見を持つ、オリジナルガンダムが完成した時、そして無事に起動し動いた時、彼の興奮とやる気は最高潮まで達した。
智樹は興奮しながら、オリジンの換装兵装の開発製造に取り組み始める。
「オリジンガンダム」完成の二か月後
「う~~~ん・・・・。どうするか・・・。」
オリジンガンダムが完成してから、俺は様々な装備を制作して実験していた。
いま、制作しているのは近接攻撃に特化した「ゲイルパッケージ」だ。
このパッケージは、ガンダムseedの外伝作品に登場する機体「ゲイルストライク」の装備をパッケージ化(ガンダムseedで例えるのならば「ストライカーシステム」や「シルエットシステム」に当たる物)したもので、対象の固有周波数に対応した超振動を発生させる「ウイングソー」を二振り装備しているのが最大の特徴だが、問題が発生しているのも「ウイングソー」なのである。
「エネルギーの大量消費とそれに伴う高熱の発生か・・・。エネルギーについては供給量を増やせばいいが、問題は熱か。対象を切る時のみ超振動を発生させるか、発生した熱を刀身から放出するか・・・。とりあえず、切る時のみ超振動を発生させる方向でいくか・・・。」
問題解決の為に新たにプログラムを書いていると、机の上に置かれた時計からアラーム音が鳴り響いた。
「あっ、やべ!もう、こんな時間か!?早く、家に戻らないと!!」
俺は慌ててモニターの電源を落とすと、丸い装置の上へと乗る。
機械の電源を入れると、あっという間に自分の部屋へと転移する。
「何気に超技術だよな、これ。なんとか、ガンダム制作に応用したいんだけど・・・。」
智樹は、自室と研究所を繋ぐテレポーテーション装置の解析を目標の一つに入れながら、夕食の為に一階へと降りて行った。
某所
幾つものディスプレイが設置された部屋の中で、変わった服装をした女性がいた。
篠ノ之束、ISの生みの親であり、遺伝子レベルからの天才であり天災。
白騎士事件から半年後、失踪した彼女は世界の各地に用意した秘密の研究所に隠れ住んでいた。
そんな彼女が、一心不乱に見ているディスプレイには一か月前、偶然撮影された映像が映っていた。
太平洋上で撮影されたその映像には、一機のISが写っていた。
全身を装甲で固め、背部に複数の翼と巨大なスラスターを備えたその機体は、唐突に右手に握っているライフルを撃ち始める。
もし発射されたのが実弾ならば、束は気にも留めなかっただろう。だが、発射されたものは緑色に発光するビームであった。
無論、彼女もビーム兵器ぐらいなら作ることが出来るが、片手で携行できるサイズの物となると製作は非常に難しい。しかも、画像から計算してみた結果、ありえないほどの高出力のビームである事が判明した。
信じられなかった、自分に作ることが出来ない物を作る事が出来る人間が存在している事など、彼女には到底信じられない事だった。
更に動画の中のISは、驚くべき装備を持っていた。
そのISは、一通りビームを撃ち終わるとライフルを粒子化し格納すると、背部のスティック状の突起物を握り、取り外す。
何をやっているのだろう?彼女がそう思った次の瞬間、驚くべき光景が写っていた。
取り外したスティック状の物体から、ビームで形成された刃が出現したのだ。
ビーム刃が形成されたとき、思わず束は椅子から立ち上がってしまった。
ビーム刃を形成する武器を開発するのは、ビームライフルを開発するよりも遥かに難しい事だ。
最大の問題点は、「どうやってビームを、ある一定の長さの刃の形に留めておくか」である。
刃の長さを調節できなければ、刃は永遠に伸び続けることになってしまう事は、容易に想像できる。
それが出来ないから、誰もがビームの剣はSF上の存在と考えているのだ。
天災である束でさえも・・・。
それなのに、映像のISはビームの剣を装備している。
間違いなく、束より遥かに技術力の高い人間がいる事の証明である。
しかも、全てのISコアを調べてみても映像の機体に関する情報は一切得られなかった。
一体、誰なのか?どこで、どの様な目的で作ったのか?
自分と一部の人間にしか興味を持たないはずの束が、この謎のISと謎のISを作った人物に大きな興味を持ち始めていた。
「フフフフ・・・・、ハハハハハハッ!!!!面白い、本当に面白いよ!!束さんの知らない技術を持っている奴が、この世界に居るなんて!!絶対に、ぜーったいに負けないんだからね!!」
そして、束が今まで感じた事のない「負けたくない」という気持ちが、彼女の心に現れていたのであった。