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オリジンガンダムが完成した後、智樹は各種MSの装備を元に様々なパッケージを開発、製造し、オリジンガンダムで稼働試験を行った。
最初は、構造が比較的簡単な構造の装備から取り掛かった智樹であったが、どのパッケージでも必ず一回は問題が発生し、彼は問題解決に頭を悩ませながら開発を進めていく事になる。
パッケージの開発に並行して、智樹は新型ガンダムの設計、開発を行っていた。
智樹はこの新型機を、「ISg-002 ガンダムアルテミス」と命名した。
ただこの機体、原作に登場するISと比較してもかなりヤバい代物である。
それはなぜか?
それは圧倒的な機体出力とそれから繰り出される戦闘能力、特に直線における加速性能については、後に「第三世代と互角に戦うことが出来る」と、評価される程の代物だからである。
圧倒的な戦闘能力の秘密、それこそ機体最大の特徴、「エクスプロージョン・プラズマブースター」。仕組みは背部のバックパックに備え付けられた二基の大型ブースターの内部で、推進剤を高出力プラズマ放電によって、爆発的燃焼を発生させて推進力を得るという物である。
この機構によって、破格の加速力を手に入れたガンダムアルテミスだったが。
「全力稼働は5分だけか・・・。これ以上は、機体が空中分解してしまうなんて・・・。」
俺は機体を組み上げながら、画面に表示されているシミュレーション結果を見て唸ってしまった。
画面の中では、まるで限界を超えた加速の為に空中分解を起こしてしまったヅダの様に、爆散してしまったアルテミスが映っていた。
そうアルテミスの最大の弱点は、「余りの加速力に機体が絶えることが出来ない」である。
正しく、「MS-10ヅダ」と同じである。
そのうえ、高出力、高機動性由来の扱いずらい操縦性に加え、一部のパッケージを装備できない欠点を抱えることになったしまった。
「高性能の代わりに、扱いにくい・・・。正しく、王道のガンダムだな!」
一週間後
「・・・性能を落とすか、リミッターを掛けておくべきだったな・・・。イテテッ・・・。」
一週間前の自分の発言に後悔しながら、けがの手当てをする智樹。
前日、ガンダムアルテミスを完成させた智樹は、早速テストを実行したのだがアルテミスの破格の加速力が彼に牙をむいてしまったのだ。
何があったのかというと、「エクスプロージョン・プラズマブースター」に点火した次の瞬間、信じられないほどの加速を初めてしまった。
とても広い試験室内をあっという間に半分ほど飛行した段階で、このままではあと数秒で壁に激突すると判断した智樹は、咄嗟に「エクスプロージョン・プラズマブースター」を切って減速しようとしたが、止まることが出来ずに音速を若干超える速度で壁に激突してしまった。
幸い、ISの搭乗者保護システムが稼働したことで、智樹の怪我は全身の打撲と鼻血程度で済んだが試験室の壁は、月面のクレーターの様に大きく凹んでしまった。
「十秒足らずで、音速を超える加速力か・・・。我ながらとんでもない物を作ってしまったな・・・。「エクスプロージョン・プラズマブースター」を使いこなすことが出来なければ、アルテミスの全てを使いこなす事は出来ない、か・・・。頑張らないと。」
とりあえず、壁を治すことから始めるか、と立ち上がり修繕作業に取り掛かる智樹であった。
なお、ガンダムアルテミスのバカ加速力は、この後も何度も智樹に牙をむき、完全に乗りこなすことが出来るようになるまでには、かなりの時間が掛かることになってしまったのは、また別の話。
そんな世界の最先端の技術を独自開発している智樹だが、まだ彼は子供である。
つまり、学校に行き教育を受けなければならない。
この世界の歪んだ女尊男卑を知っている人からすれば、男子である智樹の身を案じる人がいるかも知れないがそこは心配しなくてもよい。なぜなら、彼の住んでいる町はド田舎と呼ぶのにふさわしい場所なのである。時間が止まっていると表現する人もいるこの町に、大都会での考え方が定着するには時間が掛かる。
それは、なぜか?
それは、この町の数少ない長所の一つとして「助け合い」が活発に行われているからである。
皆で畑の農作物を収穫したり、雪かきをするのは当たり前に行われている。つまり、一つの大きな家族の様なものなのである。
もし、こんなところで女尊男卑を振りかざし、威張り散らす女性がいれば、あっという間に孤立し村八分に近い状態になってしまう。そうなると、とても大変なことになるのは誰にでもわかる事だった。
ISが子供たちの憧れ程度の存在だったことも後押しし、この町はIS発表前と変わらない時が流れていた。
そんな町学校で、智樹が毎日届けられている新聞を読んでいると、気になる記事が彼の目に飛び込んできた。
(「国際IS委員会、世界初となる国際IS大会「モンド・グロッソ」の開催を決定」か。なになに・・・?開催予定国は、現段階最優秀の機体と言われる「ラファール」を開発したフランス。フランスの「ラファール」か・・・。確か、現用の兵器との互換性と安定した操縦性を備えた機体だったな。)
俺は以前、ヴェーダの集めてきた情報を見た時の記憶を思い返す。
ヴェーダが集めて来たのは、各国で開発中の新型ISの性能や特徴である。
例えばアメリカの機体の名前は、「シルバー・ゼロ」。高機動によるドックファイトが得意で、マシンガンを主兵装とする機体。
例えばイタリアの機体、「テンペスト」。ガンダムアルテミスの様に加速性能が高く、一撃離脱戦法を得意とする。
そして、我らが日本の機体は「暮桜」。格闘戦特化機体で、一応射撃兵装も備えているが、剣一本で戦うロマンの塊ともいうべき機体。
(世界の機体を見てみると、とりあえず現行の兵器の発展させてみました感のある機体が多数なんだよな。まあ、全く新しい技術の塊だから仕方ないのかな?ただ、これ大会になるのか?明らかな「ISキラー」がいるんだけど・・・。)
モンド・グロッソは、予選は様々な部門で争い順位を決め、無事に予選を勝ち抜くと一対一で戦う決勝トーナメントに進出することが出来る。
そこで問題になるのが、日本の「暮桜」だ。
この機体には「零落白夜」と呼ばれる能力が備わっているのだが、現行のISにとってとても恐ろしい物なのである。「零落白夜」の能力、それは「自分のシールドエネルギーを消費して、相手のシールドエネルギーを突破する刃を発動させる」である。
しかも、「暮桜」の操縦者は凄腕の剣術家との事である。
つまり、対ISとしては無敵に近い存在なのだ。
(こりゃ、一方的な試合になるぞ~。大した装甲持っていない機体が多いから、下手すれば一発でケリが着くことになるぞ。まあ、ガンダム目線で考えると、一番厄介なのはフランスのラファールかな?)
しかし、「暮桜」の特徴はガンダムには効かないと、智樹は考えている。
まず、一般的なISと智樹の作るガンダムは防御に関して、かなり違った思想を持っている。
一般的にISの防御は、シールド頼みであり装甲が殆ど搭載されていない。まあ、シールドを簡単に破る方法が余りないので、重いものは排したほうが良いと判断されたのだろう。
一方、智樹のガンダムは全身に装甲を配している。
防御方式は敵からの攻撃を堅牢な装甲で受け止め、シールドエネルギーは装甲が破れた時のみ使う。
この方法は、機体の総重量を重くする代わりに、シールドエネルギーに頼らない防御が出来るというメリットがある。
つまり、暮桜とガンダムが戦った場合を簡単に説明すると「暮桜、零落白夜を発動し攻撃」→「零落白夜、ガンダムの装甲に防がれる」→「ガンダムの反撃を受ける」→「暮桜、シールドエネルギーが枯渇し、戦闘不能に陥る」に、なる可能性が非常に高いのである。
実際にはこう上手くはいかない事に、智樹は気付いている。
もしかしたら、暮桜が速度を味方に付けた一撃を以てして、装甲を破ってくるかもしれないし、装甲の薄い関節を狙って攻撃してくるかもしれない。
また、智樹がラファールを厄介と捉えているのは、簡単で「対艦ミサイルや対戦車ロケットを装備して、それをぶっ放されたら、ガンダムとて無事では済まない。」からである。
「・・・PS装甲とナノラミネートアーマーの開発、始めるか。」
智樹はガンダムをより強化する為に新しい装甲技術の開発を決意し、新型機のモデルの選定に取り掛かり始めた。
日本、とあるIS研究所
世間で話題になる前から、ISを研究、開発を行っていた研究所で、とあるハプニングが起きていた。
「何者かに、ハッキングされたかもしれないだと!?何か盗られたか!?」
「それは、分かりませんが「暮桜」の設計ファイルに侵入したのは確かです!」
「なら、早くハッカーを追跡しろ!!暮桜は、我が国の最新鋭機なんだぞ!?」
「無理です!!検知できたのは、0.0001秒以下なのです!検知できたのが奇跡なレベルなんです!」
「クッソーーー!!!」
研究所のメインコンピューターに、何者かが不正規な方法で侵入したことが発覚し、大混乱に陥っている研究員達を横目に、若い女性が部屋を出ていった。
彼女は研究所の屋上に出ると、携帯を取り出し、昨年までいつもそばで過ごしていた友人に電話を掛ける。
「・・・・・あ~~、ちーちゃん?」
「・・・どうした、いつもの勢いがないぞ、束?」
「あれ~~、今何だかちーちゃんに初めて心配された気がする~~?」
普段、呆れるばかりの勢いのあるISの生みの親、篠ノ之束の元気のない声にIS日本代表となったばかりの女性、織斑千冬は困惑の言葉を口にしてしまう。
「はぁ~、軽口を叩けるのならば、問題はなさそうだな。ところで、束?」
「ん~?なに~~?」
「今回の一件、お前の仕業か?」
「ん?何のこと?」
「とぼけるな!IS研究所のメインコンピューターに誰にも気づかれずにハッキング出来るのは、世界広しと言えどお前だけだ!!何の為に、ハッキングした!?お前のせいで、今研究所は大騒ぎだ!!」
「え、え、え!?ちーちゃん、本当に何言っているの!?束さん、ちーちゃんのいる研究所にハッキングした事、一度もないよ!?」
「何だと!?」
犯人だと考えていた束の全力否定に、千冬は思わず驚いてしまう。
束ははぐらかしたり、遠回しな言い方をする事が日常茶飯事だが、嘘だけは言わない。
その事を誰よりも理解している千冬だからこそ、現在の状況を理解することが出来なかった。
「では、一体だれが?」
「・・・もしかして、アイツかな?」
「心当たりがあるのか?」
「うん、顔どころか名前すらわからないけどね。多分、ハッキングしたのは「角付きの全身装甲型IS」を運用している奴だよ。」
「「角付きの全身装甲型IS」だと・・・。」
束が口にした「角付きの全身装甲型IS」。
その正体は、智樹のオリジンガンダムの事である。
無論、その事を束は全く知らないので「角付きの全身装甲型IS」という変な名前で呼んでいるのである。
「そいつがやったという確証は?」
「ないよ。だけど奴の技術力なら可能なはずだよ。口にするのも悔しいけど、奴の技術力は私より遥かに上なんだよ。」
「・・・珍しいな、お前が他人を認めるとは。」
「でも、仕方ないんだよ、ちーちゃん。束さんでも作ることが出来ない、片手で撃てる高出力ビームライフルや、ビーム剣を見せられたら実力に差があることを自覚しないといけないよ・・・。本当にッ、悔しいけどね!!」
「・・・・束。」
「あっ、そうだ。奴の映像、ちーちゃんの携帯に送っておくから確認しておいてね~。それじゃ、バイビー。」
「おい、束!・・・ちっ!切ったか・・・。」
一方的に電話を切った束に、舌打ちしながら千冬は束から送られてきた動画を、携帯の画面で確認する。(ちなみに、束が千冬に渡した映像は、第一話の物とは違うものです。)
動画を一通り見終わった彼女の脳裏には、疑問が浮かんでいた。
(「角付きの全身装甲型IS」・・・。なんという性能だ。暮桜など、足元に及ばない程の性能ではないか。下手したら、白騎士以上かもしれないな・・・。束が悔しがるわけだ。しかし、束ではないとすれば、一体だれが、何の為に作ったのだ・・・?しかし、束に一泡吹かせた奴か。フフッ、一度会ってみたい気がするな。)
千冬は、「角付きの全身装甲型IS」の制作者に若干の興味を持ちながら、階段を下りていく。
一方、ISの生みの親には勝手に悔しがられ、世界最強のIS乗りに興味を持たせた男は、自分の研究所の試験室で、自分の作ったISに振り回されて壁に激突し、通算五回目となる大穴を開けていた。