破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「おやまあ」
つぶやき声。
セーヅからほど近い山中。
雑木林の中に、エルフの少女が座り込んでいる。
ユオン・キナ。
王宮所属の魔導士。
――こりゃまた厄介なものが出てきちゃいましたねえ?
銀髪のエルフは――
杖の先で、土からはみ出しているものをつついた。
紫の水晶……のようなもの。
魔石に似ているが、同じものではない。
ユオンは魔法で、それを地面から引き抜いた。
空中に浮かぶ全容。
紫の水晶で造られた、細長い
ここにバッキーなどがいれば、
「
そんなことをつぶやいただろう。
紫水晶の物体は、内部から砕けている。
中にあったものが、出てきた。
そんな印象。
「地上に出てきたってことは……」
【獲物】が見つかったってことですか――
ユオンは肩をすくめてつぶやき、
<えーと、やっぱりありました。はい。ある意味……あのご令嬢より厄介案件ですねえ。はい。うーん。獲物がいればそれで満足するんですけどね。えー、そうですそうです。獲物に対する執着はとんでもないです。〝世界〟を移動しても、必ず見つけて追いかけますねえ。そうなってくれたら、むしろ楽なんですけど>
あー、あの
そりゃ良い
気もきくし、目端もきいてねえ。
かゆいところに手が届くって感じで。
ええ。
聞いた話じゃあ、よそから流れてきたそうですね。
流民。
そうですねえ、最初見た時は小汚い……。
ああ、いやボロボロで苦労した感じで。
でも。
すれてるとか、世を
そんなのはなかったですだ。
前向きっていうのか。
ある意味、たくましいっていうか。
図太いんだべ?
いや、もちろん良いですよ。
はい。
魔法もねえ、器用に使って。
いえいえ。
そりゃあね?
お連れさんみたいな、すごい治癒魔法みたいなのは使えねえです。
ははは。
あんなぁ、騎士団の凄腕魔導士でも無理でしょうが。
けど。
普通に生きていく分には、もう十分ですだ。
ありゃあ、何がどうなってもちゃっかり生き抜いていく器だで。
そういう意味じゃあ……。
むしろ。
あのイツマのほうが心配だったですだ……。
けどねえ。
あの
だんだん元気を取り戻してきてね?
一時はどうなるかと思ったんですが。
でもねえ。
やっぱり帰してやれるなら、帰してあげてえです。
私もね?
小さな頃、ここらに流れてきて……。
苦労。
ええ、まあ。それなりにはね?
だから、
そういう気持ちはよくわかるんです。
つらいもんですから……。
はい。
え?
いえいえ。
あの
どうするんだって、そのへんをチラッと聞いたですよ。
そしたら。
〝どうせ根無し草だし、一緒に行っても良い〟なんてことをねえ。
かわいいもんですだ。
いえ?
おんなじ女だからわかりますけど。
ありゃもう、完全に惚れてますだ。
見ていてねえ、微笑ましいやら照れくさいやら。
はいはい。
ですから。
ご相談にうかがって、お頼みしたわけでして。
大変失礼ながら……。
ダメでもともと、ということで。
いえ。
そこはですね?
ダメだったらダメだったでねえ。
あの
そう思うだ。
いや。
どっちがもらわれるんだって気にもなりますだが……。
ほほ。
そんくらいのねえ。
気概がなくっちゃあ……。
このヤオアムトで女を張っていけねえです。
微力ながら?
うちのほうでも、これも
世話ぁするつもりですだ。
はい。
はいはい。
本当にねえ。
え?
ああ。
名前ですか。
すっかり忘れておりまして……。
また失礼を。
ノマ。
ノマ・アザコ。
はい。
そういう名前で。
はい。
ええ……。
はいはい。
あらま。
ホントにどうも……。
ありがたく
――胡散臭い。
女主人から話を聞いた後。
カーシャは街を歩いていた。
イツマ、という少年。
いや。
それに引っ付いている少女。
ノマ。
どこか――
危険なものを感じた。
その少年が、ではない。
――周辺。何か1つ間違うと……。
大惨事。あるいは、災害。
「――?」
ふと、カーシャは足を止めた。
ある気配。ある音。
ガッ
ボコッ
「なんだ、その偉そうな目は?」
そこに、行ってみると――
いかにも。
そういう風体の男が、子供を蹴りつけていた。
子供……いや、少年。
そっちは一方的にやられても、眼はどこかギラついていた。
黒い髪。
何より、その風貌。
ドガッ
「ぎゃん!?」
カーシャは、横から男を蹴りつけた。
「~~~~~~~~………」
男は悶絶して声も出せない。
「ふむ」
カーシャは男を軽く蹴って転がしながら、観察。
手の甲に、ギルドの紋章がある。
――冒険者か……。こんなバカをろくにしつけられないとは。
なるほど。
騎士団に負けるわけだ。
カーシャは失笑して、少年に近づく。
どうやら、紋章はない。
つまり、ギルドに所属する冒険者ではないということ。
――冒険者同士ならまだしも、他の所属か、一般人に手を出すとは……。さっさと始末すればいいものを。
冒険者はギルドから色々援助を受けられる。
が。
逆に言えば。
極端な話、生殺与奪を握られているということもである。
ネビズなら、
――あんな真似してれば速攻で捕縛、縛り首ね。
カーシャがアレコレと目こぼしをもらっていたのは……。
あくまで同業者やモンスターが相手であり、その実力が異常だったから。
ただし。
何かやった時はペナルティを喰らって、
――厄介なクエストをさせられたり、ね……。
「……ありがと」
「ありがとう?」
カーシャは少年を肩に担いで、宿に戻る――
その途中で、宿近くの河原に立ち寄った。
カーシャにおろされた後、少年はお礼を言ったわけだが。
「助けてもらったから……」
腫れた顔で、それでも少年は笑顔を向ける。
「ああ」
カーシャは顔を空に向けて、
「まあ、同業の尻ぬぐいみたいなものよ。ああいうのは」
さっさと始末しなければ、ギルドとしても迷惑だろう。
後の言葉は、口に出さなかった。
「それで。あなたが、迷子の男の子、かしら?」
「へ?」
少年は、カーシャの言葉に変な顔をした。
それから。
おおよそのことを、話した後――
「よーするに」
カーシャは冷笑しながら、
「可愛い女の子と仲良くやってる男の子がむかついたから、難癖をつけて痛めつけてたわけねえ……」
どうしようもないバカだ。
ホントにもう、すぐ殺したほうが良いわね。
カーシャは内心で肩をすくめて、
「けど。あなた、爆裂魔法? みたいなスキルがあるんでしょ? 手加減できるならさっさと……」
「撃てないんだ……」
「は?」
「アレ以来、怖くって怖くって……。撃てなくなった……。やろうとすると、体が震えて……」
「ふーん」
そんなこともあるのか――
と、カーシャはどこか不思議な気分になった。
「で。あのゴロツキに殴られてたと」
せっかくのスキルも意味がないわね。
カーシャは淡々と感想を述べる。
「情けないよな」
「半端だからよ」
カーシャは、水色の瞳を微かに光らせた。
「……え?」
顔を上げる少年に、
「何かのきっかけで、2~3人ほど殺してみなさい。すぐ慣れるわ」
「な、慣れるって……」
「そういうものだからよ」
「……い、いや、でも」
「別に――」
カーシャは背を向けながらのびをして、
「ご大層なスキルなんか使う必要もない。槍でも投石でも、要は殺すことに慣れてしまえばいい。それで解決するわ」
「む、ムチャクチャだよ……!」
「そお?」
カーシャは、少しだけ少年を振り返る。
つまらなそうな顔。
「できなきゃ、何かあれば泣き寝入りするしかないわね。それとも、身投げでもする? 首でもくくる?」
「…………!」
「あなたの可愛い〝オトモダチ〟がピンチになっても、撃てませんと泣くわけ?」
「そんなこと……!」
五馬は、噛みつくように叫んだ。
「ふむ」
少年の表情に、カーシャは自分の白い顎をなで、
「なら、割り切るのね」
「割り切る?」
「そ。相手に価値とか、そんなもの認めなければいい。つまりは虫けらか何かと思いなさい。そうすれば、殺すのも吹っ飛ばすも……」
どうってことないわ。
もちろん、死ぬまで殴りつけるのも。
「スキルが使えないなら、毒でも弓でも使えばいい。後ろから、そうね」
と、カーシャは河原に転がる石を指す。
「あれくらいなら、両手を使えば持ち上げられるでしょ? あれで思い切り殴ればいい。1度で死ななければ、何度でも」
「…………」
とんでもないことを――
まるで、日常会話みたいに語る青い乙女。
五馬は絶句するばかりだった。
「それと」
カーシャは意地の悪い笑みで、
「さっきのバカは、手加減したからまたすぐ元気……か、どうかは知らないけど歩き出すでしょ」
そうすると――
何を企んで、しでかすかしらねえ?
陰湿な響きのある、カーシャの言葉。
それに。
少年はハッとして、よろけながらも立ち上がった。
カーシャの令嬢時代関係者で登場するとしたら
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親族(父方)
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親族(母方)
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とりまき
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使用人