破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
今回は若干補足的な短めの番外編です。
「しかし、あいつの
「良いところなのかね?」
バッキーと同郷、みてーなもんだろ?
というマコネの質問に、
「つまんない答えだと思いますけど……良いところもあるし、悪いところもありますよ」
バッキーは苦笑してそう答えた。
「そりゃそうだ」
マコネは笑って、猫みたいな仕草でのびをする。
「あの栗色髪はなかなかしたたかで器用みたいだし、どこだってやっていけそうだぁな」
「ですねえ」
バッキーがうなずいた時、
「おンや?」
マコネは横を振り向いた。
「片づいたわ」
いつの間にか戻っていた、カーシャが言った。
「……なんか、だいぶ暴れたみてえだねえ?」
カーシャの様子に、マコネは驚く。
衣服の汚れや乱れ。
それに、うっすらと感じる雰囲気。
返り血を浴びていないだけに、
――こりゃあ、むしろ? 相手は相当の……。
と、マコネは推測した。
「そうね」
カーシャはうなずきながら、荷物を手に取り、
「かなり、凄いヤツだったわ」
どこか。
感慨深げにそう、ハッキリと言った。
「よろしくお願いします」
と。
頭を下げたその少女。
よく動く、クリクリとした瞳の愛らしい顔。
この珍客――
というよりも、新たな同居人。
曽良夫妻は今さらながら……。
若干ではあるけれど、動揺していた。
3カ月前。
学校からの帰りに、息子の五馬が行方不明となる。
当然。
警察やら何やらが捜索した。
が。
どこに消えたか、足取りすらつかめない。
混乱と焦りの中、ただただ時間が流れた後。
五馬は街の郊外であっさりと発見された。
山のほうから、ひょこひょこと歩いている。
そこへ、通りかかった車が見つけた。
しかも1人ではない。
長い髪の女の子を背負って、山道を降りていた。
2人とも汚れて、服もボロボロの状態。
幸い大きなケガや病気などはなかったものの……。
記憶にかなりの混乱があった。
さて。
それから。
色々と面倒くさいことを終えてから――
五馬は無事家に帰ってきた。
それと同時に、曽良家は妙なことを頼まれた。
五馬と一緒にいた少女。
彼女を、家で預かってほしいという。
何がどうしてそうなったのやら。
よくわからないうちに、とにかくそういうことになった。
彼女は身寄りがなく、偶然知り合った五馬に、
「これもなにかの
頼ることになったらしい。
一応? というのか。
いくらかの財産はあるらしく、
「養育費とか生活費ということで……」
月々にまとまった金額を受け取り、ノマを預かることに。
半分弁護士に言いくるめられるような感じで。
とりあえず。
経済面での負担はないのが救い。
「大丈夫なのかなあ……?」
若い男子のいる家に、よその女の子が……。
と。
母親はいくらか危惧していた。
しかし?
ノマという少女。
彼女はとにかく、【優良物件】だった。
家事はなんでも如才なくテキパキこなす。
実に器用。
料理も――家庭料理ながら実にうまい。
おまけに、とても気がきいている。
仕事から帰った後の出迎えやねぎらいは花丸もの。
これで母親はあっさり陥落してしまった。
ストレス発散のため、時々居酒屋で飲んで帰ることがあったのだが――
「なんかもうね? 家でノマちゃんの料理で飲むほうがずっと良いわ」
となってしまった。
さあ。
そうなると、後はもう問題なし。
父親のほうは、妻がカリカリすることもなくなり、
「家も気持ち良くなったし、うまい料理が食べられるし……」
文句などあるわけがない。
大げさながら。
共働きで何かと家のことはおろそかになりがちだった曽良夫婦にとって、
「救いの天使……」
みたいなもので。
息子との関係も――
というより……。
むしろ五馬との関係が主で、他はおまけみたいなものだった。
しかし。
おまけであっても、その【恩恵】は絶大。
親としても、歓迎するばかりだった。
母親は、
「こうなったら、ノマちゃんにお嫁さんになってもらえば? 私は大歓迎」
などと。
からかい半分で五馬に言ったところ、
「そうしたいとは思ってる……」
照れてうつむきながら。
しかし、ハッキリと言った。
――あらまあ……。これもう、本物、どころじゃないわ……。
照れ隠しで騒ぐかと思えば、この反応。
――確かに、勉強も運動もかなりがんばってるようだけど……。
中学生なりだが、しっかり将来のために励んでいるらしい。
ノマに同じようなことを言ってみると、
「そうなりたいです……」
五馬と同じような反応だった。
ここまでくると。
もはや微笑ましいどころではない。
尊くすらある。
こういう経緯で――
字子ノマは、するりと曽良家へ入り込んでしまった。
月々支払われる【生活費】は、10数万にもなる。
エルフの、祖母と孫。
2人は夜の山を音もなく歩いている。
「いやはや。まあ、どうにかこうにかなって、良かった良かった」
ユオンは肩を揉みながら、苦笑していた。
「ふん」
と。
ゴーギャは鼻で笑い、
「あいつの置き土産は、まあ勝手に使わせてもらうわけか」
「ですねえ」
「しかし……あの女、異世界に行くために、あんだけの魔石を用意してたのかよ」
「はい。冥府石があれば、魔石の調達は簡単ですからねえ。勝手にドンドン増えるから」
冥府石。
つまりは、地球で言う放射性物質のことだが……。
「……そいつがを盗まれたって知った時は、正直驚いたがな」
「まさか、犯人がドゥルジ・ナスとは予想外も予想外でしたが」
「俺は初めて知ったがよ。あんなのがまだいるってわけじゃあ……」
「ありますねえ」
「そいつは剣呑だ」
「私もちょろっとした知りませんが、最低でも70以上はいるらしいです。極端なものだと、総数は10数億なんてぶっ飛んだ説もありますけど」
「おい。そんなにいたら、この世の終わりだろ」
「あくまで一説なので。それに……彼女たちは、世界から世界に渡れますから。ひとところに、全員がいるとも思えません」
「できれば、全員よそに行ってほしいもんだ」
「そりゃあ運次第でしょ」
「はン。誰のだよ」
「ふうむ。はて? 誰の、でしょうねえ」