破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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※つっこみがあったので、少し加筆しました


その93、始末の助勢-6 ヒトの値打ちとタバコの味は……

 

 

 

 

 

 

 

 夕日がきれいだった。

 ガランとした広場、のような場所。

 

 並ぶギルドナイト。

 その後ろで、カーシャは見物をしていた。

 

 少女――カオナは藁でできた服……というより敷物?

 そんなもので体を包まれていた。

 さらに。

 全身を、特殊合金の鎖で拘束されている。

 鎖は地面に突き刺さった杭とつながっており、逃げる術はない。

 

 その姿を見て、ミカリ・バーバは愉快そうにしている。

 

「しかし、吸血鬼(ヴァンパイア)なのに日中でも元気ね。支部長殿は……」

 

「ねえさんは、特別な刻印を体中にしてるからね。だから元気で動けるのさ」

 

 カーシャのつぶやきに応えたのは、ガジカ。

 厚手のパーカー。

 フードを目深にかぶっている。

 

「なるほど?」

 

 

 そんな会話をよそに――

 

 

「ほら、てめえの可愛い愛人(めかけ)だぞ? なんとかしてやれよ」

 

 ミカリは、男を踏みつけながら冷笑した。

 男は、モゴモゴうめくばかりで応えない。

 眼を火箸で潰され、もはやそんな余裕はないようだ。

 

「はっはは。大した【ご主人様】だな? お前、こんなのの飼い犬になってたのか? 大した眼力だな、ヒトを見る目が確かだよ」

 

 お前みてえなスベタには、似合いの相手だ。

 

 ミカリは言いながら、カオナに手を向けた。

 

 ボウッ……

 

 その手に、紅い炎がともる。

 

「~~~~………!?」

 

 カオナは恐怖ですくみ上った。

 無惨に腫れあがり、歯も砕けて折れた顔で。

 

 自分が何をされるのか。

 ギルドに所属していただけに、嫌というほどわかってはいたのだろう。

 

「……!!? ………!!」

 

 必死でもがきながら、叫ぶ。

 叫ぶが――

 もはや、まともな言葉を話せる状態ではなかった。

 

「……!!」

 

 そのうちに、ある一点を見て何か言ったようだった。

 

「――」

 

 視線を受けた相手。

 少年――プリズラクは嘆息する。

 

 言葉は聞き取れない。

 しかし。

 言いたいことは嫌でもわかった。

 

「助けて」

 

 だが。

 こうなれば、もう……。

 プリズラク個人の意思など、意味をなさない。

 

「無理だな」

 

 プリズラクはただ、それだけを言った。

 わずかな憐れみだけしかない。

 そんな声で。

 

「じゃあな。せいぜい苦しんで死ねよ」

 

 ミカリは言って、炎をカオナに投げつけた。

 

 ボッ

 

 炎が、藁を燃やした。

 生きたままの体を、無慈悲に焼いていく。

 

「~~~~~!?!?!??」

 

 火の粉をまき散らしながら――

 少女の体が、踊るように跳ねまわり出す。

 

 巻かれた藁も、ただの藁ではない。

 特別な加工がなされ、激しく、よく燃えるが……。

 簡単には燃え尽きない。

 

 処刑対象が死ぬまで。

 いや、死んだ後も当分は燃え続けるのだ。

 

「ほらほら、もっと踊って見せろよ。損害の分、楽しませろ」

 

 焼かれながら跳ねまわる少女の姿。

 ミカリはそれを見ながら、手を叩いてヤジを飛ばす。

 

 処刑の様子もすさまじい。

 しかし。

 それ以上に、この女の態度も凄まじかった。

 

 ――これはドン引きだわ……。

 

 と。

 内心肝を冷やしている者も多かった。

 

 しばらくして。

 少女は動かなくなり、少女だったものへと変わっていった。

 

「なんだ、もう終わりか」

 

 ミカリはつまらなそうに言って、

 

「次はてめえだが……。喜べよ、再生能力が多少厄介みたいだからな。特別なオモテナシ(・・・・・)をしてやるよ」

 

 男を引きずって、広場の中央に行った。

 

 そもそも。

 ここは、スミオに古くからある処刑場なのだが――

 

 中央には、四角い穴があいていた。

 下に、石炭に似たものが敷き詰められている。

 

「さあ存分に楽しめよ。熱くて過激だ、さぞ気に入るだろうぜ」

 

 ミカリは男をポイっと投げ捨てた。

 

 その途端。

 敷き詰められたものは、赤く光り出した。

 かと思えば――

 燃えながら、どんどん高熱を発していく。

 

「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 全身を焼かれ、男は転がりまわった。

 ズクズクと……。

 あちこちから細い触手が伸びるが、すぐに炎で焼かれ黒く焦げていく。

 

「本当なら薪だの燃料に使うモンだがよ? 今日は特別だ。じっくりゆっくり焼き殺してやる。下手に再生すると……余計苦しいぞぅ?」

 

 悲鳴を聞きながら、ミカリはヘラヘラ笑ってみせた。

 

「おい、てめえの愛人(めかけ)どもも一緒にしてやる。仲良く楽しめ」

 

 ミカリが手を振る。

 これを合図に、先ほど焼け死んだカオナの死体が放り込まれた。

 男の横で、あっという間に燃えていく。

 

 さらに。

 また別の死体と、生首も。

 

 カーシャに殺された、レーヌ・オムナだった。

 

「ガガガガガガガガ……」

 

 男はなかなか死ねずに、もがいて転げまわっている。

 

「……」

 

 その時。

 ミカリは急に真顔になって、空を見て――

 また焼かれている男を見た。

 

 ミカリの肩に一匹のコウモリがとまる。

 何やらチィチィと鳴くコウモリ。

 

「ふん。なるほど、やっぱりまだ兵隊……いや、メス犬どもがいやがったか」

 

 ミカリは穴から離れつつ、小さくうなずいた。

 

「あはははは! こりゃいいや、手間を省いてくれるのかよ? 大助かりだ」

 

 1人で爆笑してから、

 

「おい、どうやらな。こいつの飼い犬どもが集まってきてるようだ。たっぷり歓迎してやろうじゃないか」

 

 と。

 並ぶ部下たちを見まわした。

 

「どうやら、もうひと揉めするみたいねえ」

 

 黙って見物していたカーシャは、小さく肩をすくめた。

 

「なぁに」

 

 ミカリは残忍な顔で(わら)う。

 

「厄介なのは、飼い主のチンポコ脳をのぞけば、数人の手練れだけさ。そのうち2人は始末ずみだ。あんたの加勢がありゃ、まず負けねえさ」

 

「そこまで見込んでくれるとは、ありがたいわね」

 

 そう言うカーシャへ――

 ミカリはニッと笑いかけてから、

 

「1番隊、お前らは残ってこのクソチンポを見張ってろ。火を絶やすなよ? 焼け死んだってかまうことぁねえ」

 

 並ぶ部下。

 ギルドナイトの猛者たちへ命令をくだす。

 

 ――ふうん。

 

 そこで。

 カーシャは改めて、スミオのギルドナイトを見ながら、

 

「しかし? 意外と数が少ないわね。こんな街だからもっと多いと思ったけれど」

 

「ああ……。裏切りやがったメスブタどもに()られたからな。簡単にコマされるマヌケのくせに、無駄に腕が立ちやがったからなあ」

 

 ミカリは吐き捨てるように言った。

 

「あ、そういうことね」

 

 カーシャは納得。

 

「しかも夜襲をかけるたぁ、ますますサービスの良いこった」

 

 ミカリは、ほぼ沈みかけた夕陽を見て肩を震わせ、笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正面の他、あちこちから奇襲をやるつもりらしいよ?」

 

 日が沈んで、暗くなり始めた時刻。

 ガジカは物見台から壁外を見て言った。

 

 薄闇の中で、武装した集団がまっすぐに向かってくる。

 

 これと同時に――

 いくつもの分隊が、あちこちから侵入を試みていた。

 それらの情報は全て筒抜けだったが。

 

「ふん。さすがにそこまでわかってるか。だが、来るのがわかってんならむしろやりやすいってものさ」

 

 ガジカの隣り。

 ミカリは上着を脱いで、ノースリーブ姿。

 腕や首筋。

 他にも、服で隠れた部分に刻んだ呪刻。

 それらが魔力を帯びて怪しく輝き出していた。

 

「うちらをなめくさったこと、後悔させてやれ! 皆殺しだあああっ!」

 

 ミカリは通信機を通じ、各所に配置したギルドナイトに命令を飛ばした。

 

 

 応!!!!

 

 

 ミカリの声と共に、武装したギルドナイトが一斉に動き出す。

 

 (またた)く間に――

 

 街の城壁内外で戦闘が始まった。

 

 

 ――さて、この仕事(クエスト)も大詰めかしら。なら、ちゃんとしなければね……。

 

 カーシャは戦闘の様子を見ながら、標的を決めていく。

 

 ――まずは、アレか……。

 

 荒事の多い街なだけに、ギルドナイトはいずれも猛者ぞろいだった。

 しかも、正々堂々などという手段はとらない。

 おまけに数の上でも有利。

 

 【ご主人様】を助けようと、あるいは、そのような命令を飛ばされたものか。

 とにかく、襲ってきた女たち。

 10人いれば、5人。

 すぐさま、死体となって転がっていった。

 

 だが。

 ギルドナイトに対して、優勢に進めている者もいた。

 

 ――ふうん。確かに厄介か。

 

 カーシャは通りすぎ様、そいつの頭蓋を黒剣で打った。

 

 パン

 

 頭が、ミンチというよりもほぼ液体となって、散らばる。

 

 ――いちいち、腕の良いのを見つけないといけない。なかなか面倒なもんだわ。

 

 胸の内で愚痴りながら、カーシャは夜の戦場を走っていった。

 

 

 

 乱戦の中。

 ミカリは、時おり視線をプリズラクのほうへ飛ばしていた。

 

「てめえの身内の不始末、当分(あがな)ってもらうぞ。死ぬ気で働け」

 

 そう釘を刺しておいたが……。

 

 動くたび、走る度に――

 両手に刃を持った少年は、敵をしとめていく。

 

 かつては実力はあるが、女2人の陰に隠れるような。

 あるいは、隠されていたのか。

 今いち、際立つものは見えなかった。

 

 だが。

 今はまるで、ヒトの形をした刃のようで。

 隙もなく、無駄もなく。

 極めて効率的に、殺傷を繰り返していく。

 

 ――ふん。十分に穴埋めにはなりそうだ。こいつぁ嬉しい発見だな。

 

 と。

 ミカリはカーシャに感謝していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 時間にして、1~2時間の間くらいか。

 

 襲ってきた集団は、いずれも死体となって運ばれていた。

 

「ついでに、全部あの中に放り込んどけ。どうせ墓なんぞ建てねえんだ。きれいさっぱり灰にしちまいな」

 

 ミカリの命令。

 それで、死体は男の焼かれている穴に放り込まれていく。

 

 死体は放り込まれる先から燃えていき――

 翌朝には、全てが灰になっていた。

 

「しかし、あの女連中はどこから集めてきたのかしらね?」

 

「そらあちこちからだろ。どうやら隣国含めて色んなとこのがいたようだ。それに……」

 

 中には、どこぞの正式な騎士様もいたようだなあ。

 

 カーシャの問いに、ミカリはそう答えた。

 

「まあ、こんな様をさらして、メス犬として処分されちゃったわけだが。向こうでも、醜聞の種が消えてくれて、助かってるかもしれねえな」

 

「ありうるわね」

 

 と。

 カーシャはふと表情を変えて、

 

「それはそれとして。この街には公営のカジノがあったわね」

 

「ん? ああ、あるが……」

 

「せっかくだし、ちょっと遊んで帰ろうかしら」

 

「私の立場で言うのも変だろうが、昔から賭博(バクチ)でもうけたヤツはいねえ。せっかく稼いだ金が無駄になるぜ?」

 

「ふふ。払った金がまた街に還元されるのなら、そっちとしては嬉しいのじゃなくって?」

 

「ちがいねえ」

 

 そこで。

 女2人はククク、と笑いあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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