破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
夕日がきれいだった。
ガランとした広場、のような場所。
並ぶギルドナイト。
その後ろで、カーシャは見物をしていた。
少女――カオナは藁でできた服……というより敷物?
そんなもので体を包まれていた。
さらに。
全身を、特殊合金の鎖で拘束されている。
鎖は地面に突き刺さった杭とつながっており、逃げる術はない。
その姿を見て、ミカリ・バーバは愉快そうにしている。
「しかし、
「ねえさんは、特別な刻印を体中にしてるからね。だから元気で動けるのさ」
カーシャのつぶやきに応えたのは、ガジカ。
厚手のパーカー。
フードを目深にかぶっている。
「なるほど?」
そんな会話をよそに――
「ほら、てめえの可愛い
ミカリは、男を踏みつけながら冷笑した。
男は、モゴモゴうめくばかりで応えない。
眼を火箸で潰され、もはやそんな余裕はないようだ。
「はっはは。大した【ご主人様】だな? お前、こんなのの飼い犬になってたのか? 大した眼力だな、ヒトを見る目が確かだよ」
お前みてえなスベタには、似合いの相手だ。
ミカリは言いながら、カオナに手を向けた。
ボウッ……
その手に、紅い炎がともる。
「~~~~………!?」
カオナは恐怖ですくみ上った。
無惨に腫れあがり、歯も砕けて折れた顔で。
自分が何をされるのか。
ギルドに所属していただけに、嫌というほどわかってはいたのだろう。
「……!!? ………!!」
必死でもがきながら、叫ぶ。
叫ぶが――
もはや、まともな言葉を話せる状態ではなかった。
「……!!」
そのうちに、ある一点を見て何か言ったようだった。
「――」
視線を受けた相手。
少年――プリズラクは嘆息する。
言葉は聞き取れない。
しかし。
言いたいことは嫌でもわかった。
「助けて」
だが。
こうなれば、もう……。
プリズラク個人の意思など、意味をなさない。
「無理だな」
プリズラクはただ、それだけを言った。
わずかな憐れみだけしかない。
そんな声で。
「じゃあな。せいぜい苦しんで死ねよ」
ミカリは言って、炎をカオナに投げつけた。
ボッ
炎が、藁を燃やした。
生きたままの体を、無慈悲に焼いていく。
「~~~~~!?!?!??」
火の粉をまき散らしながら――
少女の体が、踊るように跳ねまわり出す。
巻かれた藁も、ただの藁ではない。
特別な加工がなされ、激しく、よく燃えるが……。
簡単には燃え尽きない。
処刑対象が死ぬまで。
いや、死んだ後も当分は燃え続けるのだ。
「ほらほら、もっと踊って見せろよ。損害の分、楽しませろ」
焼かれながら跳ねまわる少女の姿。
ミカリはそれを見ながら、手を叩いてヤジを飛ばす。
処刑の様子もすさまじい。
しかし。
それ以上に、この女の態度も凄まじかった。
――これはドン引きだわ……。
と。
内心肝を冷やしている者も多かった。
しばらくして。
少女は動かなくなり、少女だったものへと変わっていった。
「なんだ、もう終わりか」
ミカリはつまらなそうに言って、
「次はてめえだが……。喜べよ、再生能力が多少厄介みたいだからな。特別な
男を引きずって、広場の中央に行った。
そもそも。
ここは、スミオに古くからある処刑場なのだが――
中央には、四角い穴があいていた。
下に、石炭に似たものが敷き詰められている。
「さあ存分に楽しめよ。熱くて過激だ、さぞ気に入るだろうぜ」
ミカリは男をポイっと投げ捨てた。
その途端。
敷き詰められたものは、赤く光り出した。
かと思えば――
燃えながら、どんどん高熱を発していく。
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!」
全身を焼かれ、男は転がりまわった。
ズクズクと……。
あちこちから細い触手が伸びるが、すぐに炎で焼かれ黒く焦げていく。
「本当なら薪だの燃料に使うモンだがよ? 今日は特別だ。じっくりゆっくり焼き殺してやる。下手に再生すると……余計苦しいぞぅ?」
悲鳴を聞きながら、ミカリはヘラヘラ笑ってみせた。
「おい、てめえの
ミカリが手を振る。
これを合図に、先ほど焼け死んだカオナの死体が放り込まれた。
男の横で、あっという間に燃えていく。
さらに。
また別の死体と、生首も。
カーシャに殺された、レーヌ・オムナだった。
「ガガガガガガガガ……」
男はなかなか死ねずに、もがいて転げまわっている。
「……」
その時。
ミカリは急に真顔になって、空を見て――
また焼かれている男を見た。
ミカリの肩に一匹のコウモリがとまる。
何やらチィチィと鳴くコウモリ。
「ふん。なるほど、やっぱりまだ兵隊……いや、メス犬どもがいやがったか」
ミカリは穴から離れつつ、小さくうなずいた。
「あはははは! こりゃいいや、手間を省いてくれるのかよ? 大助かりだ」
1人で爆笑してから、
「おい、どうやらな。こいつの飼い犬どもが集まってきてるようだ。たっぷり歓迎してやろうじゃないか」
と。
並ぶ部下たちを見まわした。
「どうやら、もうひと揉めするみたいねえ」
黙って見物していたカーシャは、小さく肩をすくめた。
「なぁに」
ミカリは残忍な顔で
「厄介なのは、飼い主のチンポコ脳をのぞけば、数人の手練れだけさ。そのうち2人は始末ずみだ。あんたの加勢がありゃ、まず負けねえさ」
「そこまで見込んでくれるとは、ありがたいわね」
そう言うカーシャへ――
ミカリはニッと笑いかけてから、
「1番隊、お前らは残ってこのクソチンポを見張ってろ。火を絶やすなよ? 焼け死んだってかまうことぁねえ」
並ぶ部下。
ギルドナイトの猛者たちへ命令をくだす。
――ふうん。
そこで。
カーシャは改めて、スミオのギルドナイトを見ながら、
「しかし? 意外と数が少ないわね。こんな街だからもっと多いと思ったけれど」
「ああ……。裏切りやがったメスブタどもに
ミカリは吐き捨てるように言った。
「あ、そういうことね」
カーシャは納得。
「しかも夜襲をかけるたぁ、ますますサービスの良いこった」
ミカリは、ほぼ沈みかけた夕陽を見て肩を震わせ、笑う。
「正面の他、あちこちから奇襲をやるつもりらしいよ?」
日が沈んで、暗くなり始めた時刻。
ガジカは物見台から壁外を見て言った。
薄闇の中で、武装した集団がまっすぐに向かってくる。
これと同時に――
いくつもの分隊が、あちこちから侵入を試みていた。
それらの情報は全て筒抜けだったが。
「ふん。さすがにそこまでわかってるか。だが、来るのがわかってんならむしろやりやすいってものさ」
ガジカの隣り。
ミカリは上着を脱いで、ノースリーブ姿。
腕や首筋。
他にも、服で隠れた部分に刻んだ呪刻。
それらが魔力を帯びて怪しく輝き出していた。
「うちらをなめくさったこと、後悔させてやれ! 皆殺しだあああっ!」
ミカリは通信機を通じ、各所に配置したギルドナイトに命令を飛ばした。
応!!!!
ミカリの声と共に、武装したギルドナイトが一斉に動き出す。
街の城壁内外で戦闘が始まった。
――さて、この
カーシャは戦闘の様子を見ながら、標的を決めていく。
――まずは、アレか……。
荒事の多い街なだけに、ギルドナイトはいずれも猛者ぞろいだった。
しかも、正々堂々などという手段はとらない。
おまけに数の上でも有利。
【ご主人様】を助けようと、あるいは、そのような命令を飛ばされたものか。
とにかく、襲ってきた女たち。
10人いれば、5人。
すぐさま、死体となって転がっていった。
だが。
ギルドナイトに対して、優勢に進めている者もいた。
――ふうん。確かに厄介か。
カーシャは通りすぎ様、そいつの頭蓋を黒剣で打った。
パン
頭が、ミンチというよりもほぼ液体となって、散らばる。
――いちいち、腕の良いのを見つけないといけない。なかなか面倒なもんだわ。
胸の内で愚痴りながら、カーシャは夜の戦場を走っていった。
乱戦の中。
ミカリは、時おり視線をプリズラクのほうへ飛ばしていた。
「てめえの身内の不始末、当分
そう釘を刺しておいたが……。
動くたび、走る度に――
両手に刃を持った少年は、敵をしとめていく。
かつては実力はあるが、女2人の陰に隠れるような。
あるいは、隠されていたのか。
今いち、際立つものは見えなかった。
だが。
今はまるで、ヒトの形をした刃のようで。
隙もなく、無駄もなく。
極めて効率的に、殺傷を繰り返していく。
――ふん。十分に穴埋めにはなりそうだ。こいつぁ嬉しい発見だな。
と。
ミカリはカーシャに感謝していた。
そして。
時間にして、1~2時間の間くらいか。
襲ってきた集団は、いずれも死体となって運ばれていた。
「ついでに、全部あの中に放り込んどけ。どうせ墓なんぞ建てねえんだ。きれいさっぱり灰にしちまいな」
ミカリの命令。
それで、死体は男の焼かれている穴に放り込まれていく。
死体は放り込まれる先から燃えていき――
翌朝には、全てが灰になっていた。
「しかし、あの女連中はどこから集めてきたのかしらね?」
「そらあちこちからだろ。どうやら隣国含めて色んなとこのがいたようだ。それに……」
中には、どこぞの正式な騎士様もいたようだなあ。
カーシャの問いに、ミカリはそう答えた。
「まあ、こんな様をさらして、メス犬として処分されちゃったわけだが。向こうでも、醜聞の種が消えてくれて、助かってるかもしれねえな」
「ありうるわね」
と。
カーシャはふと表情を変えて、
「それはそれとして。この街には公営のカジノがあったわね」
「ん? ああ、あるが……」
「せっかくだし、ちょっと遊んで帰ろうかしら」
「私の立場で言うのも変だろうが、昔から
「ふふ。払った金がまた街に還元されるのなら、そっちとしては嬉しいのじゃなくって?」
「ちがいねえ」
そこで。
女2人はククク、と笑いあった。