破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回の番外編です

会話シーンだけでやってみました


その93・5、悪役令嬢が追放された少し後、王都の片すみで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前さん、こないだのアレを見たかい?」

 

「冗談じゃねえや。こちとら、まだ新しい仕事が見つからねえんだ。そんな見世物にかまってる余裕なんぞあるかよ」

 

「そうか。お前さんはあの屋敷で働いてたんだったな」

 

「おうともよ。しかし……あの性悪のお嬢様があんなことになるとはなあ……。人生ってのはわからねえ」

 

「一寸先は闇ってヤツかね。とんだお家騒動だ。でもさ、お前さんのことだ。抜け目なく小金を貯めてんだろ? なら、そんなにあせることもない。小器用なんだし、腰をすえて探せば仕事なんかいくらでもあるだろ」

 

「バカ言っちゃいけねえや。そんなはした金ぁちょいと気を抜いたら吹っ飛んじまうよ」

 

「ふーん。まあ、そうかもしれないな」

 

「だいたいよう……。ごたいそうに言ってるが、なんてこたぁねえ。落ちぶれた貴族を笑いものにして留飲を下げてるだけじゃねえかい。不正だ何だって、あんな小娘がどれだけ関わってるか」

 

「関わってないのかい?」

 

「結局はよ、くたばっちまった親父の代役だ。哀れなもんじゃねえか」

 

「すると、悪徳だ性悪ってのは、デマかい?」

 

「性悪ってのは本物さ。わがまま放題、贅沢もたっぷりしてやがった。ただよ、その分金払いはきれいだったぜ。乳母日傘で育って、その手の苦労をしらねえから、だろうが……」

 

「お前さんもだいぶ、いただいたってわけか」

 

「そばでお仕えしたい相手じゃなかったが、離れてる分には悪くなかったかもなあ。ちょっとヨイショすればポンとご祝儀をくれたよ」

 

「そりゃあ、知らなかった。知ってればお世辞の10も20も言って、ご祝儀をちょうだいしたんだがなあ」

 

「時すでに遅しってやつだな。しかし……」

 

「どうしたね?」

 

「いやあ、あの親父もな? まあヒトとしちゃあ嫌な野郎だったが、領地のほうはうまく治めてたぜ。仕事がねえってことも、少なかったしな」

 

「へえ。てっきりゴマの油みたいにしぼれるだけしぼってるのかと思った」

 

「だったら、あのお嬢様の贅沢だって知れたもんになってたさ。下を太らせとくほうがもっと旨味を取れる。そのへんをわかってたんだろうな。てめえの欲得ずくだろうが、平民からすればそう悪い領主でもなかった。あの娘、今はお姫様か、あの子は気の毒だったがな」

 

「ひでえいじめをしてたんだって?」

 

「だな。親父はそんな家ン中をほっぽって、仕事か愛人のところか、だ。あんなんじゃ、娘だってまともに育つわけねえ」

 

「しかし? さっきうまいこと領地を治めてたって話じゃないか。それなら娘の教育だって、ちゃんとやりそうなもんじゃねえか」

 

「そうだよ。そこがおかしいんだ。お貴族様なんてのは、家庭教師だ教育係だをちゃんと選んでやらせるもんだが……。雇われてた連中がそりゃもう、ボンクラぞろいでな。あれじゃダメだ、ダメ」

 

「へえ!?」

 

「俺の見たところじゃあ、あの連中、やる気がまるでなかったぞ。給料分のことすらしてねえや。半端(ハンチク)仕事もいいところだぜ」

 

「ひでえのを雇ったもんだなあ」

 

「テキトーに選んだ相手なんぞ、結局テキトーな仕事しかしねえやね」

 

「そんな家でメイド以下の扱いだったお姫様は本当に気の毒だな。今はきれいな銀のドレスで神々しくなってるが……」

 

「……ああ、あのドレスか」

 

「なんだい?」

 

「あのドレスはなあ、聞いた話じゃあ死んだ母親の形見らしいや。ドレスだけじゃねえ、指輪だのネックレスだの、そういう遺品はちゃんと手入れや管理がされてた。あの親父がそうしてたんだぜ? 後生大事によ」

 

「すると、そいつは……」

 

「お姫様の母親ってが、親父の惚れてた相手だからなあ。お姫様が死んだり、国外追放にされなかったのは、そのへんが理由だろうぜ。でなきゃあ、あんな厄介なもん、うっちゃっておくかよ」

 

「それなら、別の場所においておけばいいじゃないか。わざわざ、あんな娘のいる屋敷に置く理由がわからない。やってることがデタラメじゃないか。何がしたいのかまるでわからない」

 

「おう、そうよ。どう見たって折り合いの悪い組み合わせで、しかも娘の気性くれえはわかってるはずだ。どうなることはバカでもわかる」

 

「つまり、なんなんだい?」

 

「そうだなあ。まあ無学な平民の当て推量だが……。愛しい女の娘にゃあ違いねえ。しかしだ、同時に憎い野郎の娘だってことでもある。愛憎半ばってやつだったんだろう」

 

「だから、そんなわけわかんねえことしてたってのかい? 色んな意味で壊れてるよ、そりゃあ」

 

「壊れてたんだろうよ。聞いた話じゃあ、土壇場で、財産や土地の一切合切をあのお姫様に譲って、てめえは自害しちまった。マトモなわけがねえ」

 

「自分の娘は、まるきり無視かい」

 

「……みてえだなあ。こう思い返してみると、どういう家なんだって気分だが……」

 

「やだねえ」

 

「ああ、()な話だよ。それになあ」

 

「まだあるのかい?」

 

「あの親父が失脚して、娘が辺境に追放されて。そのへんが、ただ不正がどうのって話だと思うか?」

 

「まさか、そいつはでっち上げってのかい?」

 

「いや――不正だ賄賂だは本当だろうさ。だがな、そんなものはどこにだって大なり小なりあるもんさ。別にあの親父に限ったことでもねえ。中には、いかにも善政をしいてますってツラで、アコギなことをしてやがる貴族だっていくらもいらぁな」

 

「すると?」

 

「結局はよ、お偉方の権力争いの結果さ。見事悪が滅んだなんて、都合の良い話じゃねえ。うすぎたねえ足の引っ張り合い、権謀術数(はかりごと)の果てってやつよ」

 

「ますます、やだねえ」

 

「やだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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