破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「ホムンクルス?」
「そう。後は、ゴーレムとかな」
と。
カーシャの言葉に、ゴトクはシンプルな返答。
ミルク入りのお茶を飲みながら。
茶やコーヒーをはじめ、色んな飲み物と軽食。
「なかなかに美味いのを食わせるよ、あそこは」
こんな風に――
ネビズでも評判の喫茶店。
2人はそこのオープンテラスで話していた。
「ホムンクルス、といえば……。人造生物」
「そうそう。野山をうろついているモンスターにも、
「へえ」
「中には、知性種族にもそういうのがいる――」
「どこのどんな種族なの、それは……」
「ン? ああ。そういう話もあるってことさ。天地自然に背く、神々の怒りを買う……ってんで、禁呪にされてるところも少なくはないしなあ」
禁呪。
つまり、使うことも学ぶことも禁じられた魔法。
「ふうん……。それで、屋敷の持ち主は、そういう系統の魔法を得意にしていたわけね」
「得意というか、研究だな。その過程でフレッシュゴーレムを造ったこともある……と、本人は言ってたそうだ」
「本人の証言だけじゃあねえ? でも、それはどこで知ったの?」
「記録だよ。領主のお屋敷、そこの書庫にあったヤツでね。ギルドマスターからお借りした」
「ああ」
冒険者をギルドを束ねるギルドマスター。
同時に……。
この辺り一帯を治める領主でもある。
「あのヒトぁ、先代の顔見知りでね。色々融通がきくもんで」
「それはけっこう。で、つまり……。あの、おかしな子はホムンクルスだと?」
「さて、それもなあ……。俺もホムンクルスは何度か見たことはあるが、個人とか流派? で、色々違ってくるもんだから、必ずしもコレコレこうだ、と言えないんだよ」
「なぁんだ。それじゃ、確かなことはなにもわからないんじゃないの」
「まあなぁ」
ゴトクは、ちょっとばつの悪そうな顔。
「ただ、あいつのつけてたウィンプルは、確か魔術の女神……それを崇める教会のもんだな」
「そういえば? 大昔のものだって、言ってたわね、あなた」
「うん。そこだ」
ゴトクは手を軽く打って、
「ちょいと調べたが、あれはやっぱり300年くらい前のデザインだよ。ちょうど、チョーク・ボロンが生きていた頃のな」
「――」
カーシャの目が一瞬、光る。
「その御仁はホムンクルスとゴーレムを研究してたわけだが、晩年ってのかい。その頃には、この2つを一緒にする研究をしてたようだ」
「……。ゴーレムに、
「そういうこった。ホムンクルスってのは、寿命が短かったり、不安定だったり。あと、特殊な容器の中でしか生きられないとか、なかなか思うようにはいかないもんだが……。そのへんも苦慮してたそうだ」
「研究者っていうのも、大変ね……」
「……だなあ。それで悩みすぎたせいか、そのうちおかしなことになっていった」
「なにを?」
「やたらに骨董品を買い集めるようになったんだと。それも何十年、ヘタすると100年近くたってる古物をな」
「……?」
カーシャも、その意味がわからなかった。
「確かに、古い魔道具には過去の技術が残ってることが多いけど」
「いや、そうじゃない」
ゴトクは手をパタパタ振る。
「魔導の技術なんか使われてない、本当にただの骨董を集め出したそうだ」
「本当におかしくなったのかしら」
「かもしれねえなあ。借財も、そっちのほうで重なったそうだし」
「ふん。借金取りが何もかも持っていったというのは――」
「ああ、そうだ。なかなか値打ちものもそこそこあったから、だろうな」
「面白そうではあるけど」
カーシャは、首の裏を掻きながら、
「もう、あの屋敷自体におかしなものはない、のだったわね?」
「ん? そこは保証する」
事前に――
カーシャはゴトクに依頼し、屋敷全体の入念な調査を行わせている。
結果はゼロ。
あるいは、問題はなし。
「別に平地に新しい家を建てても、問題はあるまいよ」
「それもいいけど」
カーシャは、軽く口元を隠しながら、
「あの屋敷の詳しい間取りはわかるのよね? あと、建てられた当時の形とか色々」
「それもわかる。調べる過程で知ったからな」
「なるほど、なるほど。それはけっこう」
「うわ!?」
マコネが叫んだのも無理はなかった。
窓から、下半身が飛び出している。
というか。
窓から上半身を乗り出したかっこう、とするべきだろう。
「お前、なにやってんだ?
「いやー。先ほどですねえ、まことにけっこうなお湯をちょうだいいたしましたのでね? ちょっと体を乾そうかなあと、このように思いましてですね。今こうして、お日様に〝よろしくお願いします〟と、やっているわけなのですね」
「なに言ってんだ、のぼせてトチ狂ってんのかよ」
「おかしいですか?」
「当り前だろ! ったく、洗濯ものじゃあるまいし……。湯は体ふいたらいいだろうが。現にお前、もうちゃんと乾いてるじゃねえかい」
「おやぁ?」
「なにがおやぁだよ。っとに……。だいたいな、お前? 風呂場にもあの汚ねえ尼さん頭巾かぶってたろ? 行水じゃあるまいし、銭湯でそんなことすりゃ叩き出されても文句言えねえぞ」
「すみませんねぇ」
「そう思うんなら、ちゃんと降りろ! いつまでも貧相な
「いやー、まいるなあ」
「こっちの台詞だよ、アホ」
ようやく振り向いたボロンに、マコネは大きなため息。
白い肌に似合う、灰色の髪。
マコネよりは年相応に見えるものの、痩せた貧相な体型。
「なにしろですねえ。お湯というのですか、ああいうものをいただいたのは、初めてだったものでして。ハハー。まあ、カンニンしてください」
「……風呂も入ったことねえのか」
「お外で干されたことはたびたびありますですよ」
「いよいよ洗濯もんだな……」