破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その95、チョーク・ボロンの廃屋-3 研究文書

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホムンクルス?」

 

「そう。後は、ゴーレムとかな」

 

 と。

 カーシャの言葉に、ゴトクはシンプルな返答。

 ミルク入りのお茶を飲みながら。

 

 茶やコーヒーをはじめ、色んな飲み物と軽食。

 

「なかなかに美味いのを食わせるよ、あそこは」

 

 こんな風に――

 ネビズでも評判の喫茶店。

 2人はそこのオープンテラスで話していた。

 

「ホムンクルス、といえば……。人造生物」

 

「そうそう。野山をうろついているモンスターにも、起源(もと)は人造生物ってやつもいるそうだぜ」

 

「へえ」

 

「中には、知性種族にもそういうのがいる――」

 

「どこのどんな種族なの、それは……」

 

「ン? ああ。そういう話もあるってことさ。天地自然に背く、神々の怒りを買う……ってんで、禁呪にされてるところも少なくはないしなあ」

 

 禁呪。

 つまり、使うことも学ぶことも禁じられた魔法。

 

「ふうん……。それで、屋敷の持ち主は、そういう系統の魔法を得意にしていたわけね」

 

「得意というか、研究だな。その過程でフレッシュゴーレムを造ったこともある……と、本人は言ってたそうだ」

 

「本人の証言だけじゃあねえ? でも、それはどこで知ったの?」

 

「記録だよ。領主のお屋敷、そこの書庫にあったヤツでね。ギルドマスターからお借りした」

 

「ああ」

 

 冒険者をギルドを束ねるギルドマスター。

 同時に……。

 この辺り一帯を治める領主でもある。

 

「あのヒトぁ、先代の顔見知りでね。色々融通がきくもんで」

 

「それはけっこう。で、つまり……。あの、おかしな子はホムンクルスだと?」

 

「さて、それもなあ……。俺もホムンクルスは何度か見たことはあるが、個人とか流派? で、色々違ってくるもんだから、必ずしもコレコレこうだ、と言えないんだよ」

 

「なぁんだ。それじゃ、確かなことはなにもわからないんじゃないの」

 

「まあなぁ」

 

 ゴトクは、ちょっとばつの悪そうな顔。

 

「ただ、あいつのつけてたウィンプルは、確か魔術の女神……それを崇める教会のもんだな」

 

「そういえば? 大昔のものだって、言ってたわね、あなた」

 

「うん。そこだ」

 

 ゴトクは手を軽く打って、

 

「ちょいと調べたが、あれはやっぱり300年くらい前のデザインだよ。ちょうど、チョーク・ボロンが生きていた頃のな」

 

「――」

 

 カーシャの目が一瞬、光る。

 

「その御仁はホムンクルスとゴーレムを研究してたわけだが、晩年ってのかい。その頃には、この2つを一緒にする研究をしてたようだ」

 

「……。ゴーレムに、生命(いのち)を与える?」

 

「そういうこった。ホムンクルスってのは、寿命が短かったり、不安定だったり。あと、特殊な容器の中でしか生きられないとか、なかなか思うようにはいかないもんだが……。そのへんも苦慮してたそうだ」

 

「研究者っていうのも、大変ね……」

 

「……だなあ。それで悩みすぎたせいか、そのうちおかしなことになっていった」

 

「なにを?」

 

「やたらに骨董品を買い集めるようになったんだと。それも何十年、ヘタすると100年近くたってる古物をな」

 

「……?」

 

 カーシャも、その意味がわからなかった。

 

「確かに、古い魔道具には過去の技術が残ってることが多いけど」

 

「いや、そうじゃない」

 

 ゴトクは手をパタパタ振る。

 

「魔導の技術なんか使われてない、本当にただの骨董を集め出したそうだ」

 

「本当におかしくなったのかしら」

 

「かもしれねえなあ。借財も、そっちのほうで重なったそうだし」

 

「ふん。借金取りが何もかも持っていったというのは――」

 

「ああ、そうだ。なかなか値打ちものもそこそこあったから、だろうな」

 

「面白そうではあるけど」

 

 カーシャは、首の裏を掻きながら、

 

「もう、あの屋敷自体におかしなものはない、のだったわね?」

 

「ん? そこは保証する」

 

 事前に――

 カーシャはゴトクに依頼し、屋敷全体の入念な調査を行わせている。

 

 結果はゼロ。

 あるいは、問題はなし。

 

「別に平地に新しい家を建てても、問題はあるまいよ」

 

「それもいいけど」

 

 カーシャは、軽く口元を隠しながら、

 

「あの屋敷の詳しい間取りはわかるのよね? あと、建てられた当時の形とか色々」

 

「それもわかる。調べる過程で知ったからな」

 

「なるほど、なるほど。それはけっこう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ!?」

 

 マコネが叫んだのも無理はなかった。

 

 窓から、下半身が飛び出している。

 というか。

 窓から上半身を乗り出したかっこう、とするべきだろう。

 

「お前、なにやってんだ? 投身自殺(とびおり)にしちゃあマヌケなカッコウだぜ」

 

「いやー。先ほどですねえ、まことにけっこうなお湯をちょうだいいたしましたのでね? ちょっと体を乾そうかなあと、このように思いましてですね。今こうして、お日様に〝よろしくお願いします〟と、やっているわけなのですね」

 

「なに言ってんだ、のぼせてトチ狂ってんのかよ」

 

「おかしいですか?」

 

「当り前だろ! ったく、洗濯ものじゃあるまいし……。湯は体ふいたらいいだろうが。現にお前、もうちゃんと乾いてるじゃねえかい」

 

「おやぁ?」

 

「なにがおやぁだよ。っとに……。だいたいな、お前? 風呂場にもあの汚ねえ尼さん頭巾かぶってたろ? 行水じゃあるまいし、銭湯でそんなことすりゃ叩き出されても文句言えねえぞ」

 

「すみませんねぇ」

 

「そう思うんなら、ちゃんと降りろ! いつまでも貧相な(けつ)向けてるんじゃねえよ!」

 

「いやー、まいるなあ」

 

「こっちの台詞だよ、アホ」

 

 ようやく振り向いたボロンに、マコネは大きなため息。

 

 白い肌に似合う、灰色の髪。

 マコネよりは年相応に見えるものの、痩せた貧相な体型。

 

「なにしろですねえ。お湯というのですか、ああいうものをいただいたのは、初めてだったものでして。ハハー。まあ、カンニンしてください」

 

「……風呂も入ったことねえのか」

 

「お外で干されたことはたびたびありますですよ」

 

「いよいよ洗濯もんだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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