破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その96、チョーク・ボロンの廃屋-4 ゴミの中に……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、まいったね。どうも」

 

 屋敷内をうろつきながら、マコネはやや疲れた顔で、

 

「こんなゴミクズも集めなきゃならないのかい?」

 

 (かご)を横に置いて、【ゴミ拾い】をしていた。

 

「ああ、できる限りな」

 

 応えたゴトクも、同じようなことをしている。

 

「しかし、使い魔まで使ってやることかね」

 

「ああ。しかし……何も無いと聞いたが、ゴミだけはけっこうあるな」

 

 と。

 ゴトクは小さな(ほうき)を籠に放り込む。

 

「それに、妙だしな」

 

「なにがさ?」

 

「ここは300年近く空き家だったんだぜ」

 

「それだってね」

 

「だいぶボロボロだが、こんな魔道具でもない日用品がよく形を保ってるもんだ」

 

「日陰にあったからじゃね?」

 

「かもしれないが……。放りっぱなしで、メンテナンスなぞされてるわけでもなし……。虫やネズミだっているだろうに――」

 

 言いかけて、

 

「いや、そうでもないか」

 

 ゴトクはあちこち見まわして首をひねる。

 

「なんなんだよぅ?」

 

「この屋敷、ネズミだの小動物の気配がねえ。それに……」

 

 床の埃を払いながら、

 

「虫の類もほとんどいない。こいつは妙だぜ」

 

「よくわかるな、おい」

 

「まあな」

 

 マコネの言葉に苦笑してから、

 

「魔導士の屋敷だから、色々してはあるようだが……」

 

「そうなンか?」

 

「ああ。特別な建てかたをしてるな。だから、300年ほったからしでも()ってるんだ」

 

「でも、よく今まで誰も手をつけなかったよな。ぶっ壊して更地にするのは簡単だったろうに」

 

「ここは街の中央からも遠いし、住みたい土地でもないからな」

 

「え?」

 

「歴史を調べると、このへんは墓場だったり、処刑場だったり、死体の焼き場だったり。まあ、そんなもんばっかりがあった土地だ。だから、近くにミゾイの家……ほとんど小屋だけどな、それもある」

 

 死霊魔術師(ネクロマンサー)には、色々便利な環境だしな。

 

 そう言って、ゴトクは苦笑する。

 

「え? あのねーちゃん、家なんてあったのか?」 

 

「そりゃな」

 

「ギルドの本部で寝泊まりしてんだと思った」

 

「あははは。そういうことも多いだろうが……」

 

 笑ってからゴトクは立ち上がり、

 

「しかし、形もないような埃や(ちり)も多いな」

 

「全部まとめて焼いちまえばいンじゃね? 死体の焼き場だったんだろ? なら、ゴミクズくらいどうってことねえや」

 

「準備はしとくか」

 

 ゴトクは同意してから窓を開けて、

 

「おーい、コレコレこういう感じで用意しといてくれ。こいつも練習だー」

 

 と。

 外に向かって呼びかけた。

 

「はーい」

 

 庭――にあたる場所で草刈りをしていたバッキーが応えた。

 彼女は、初期レベルの風魔法でそれをやっていたわけで。

 風の刃で刈り、風で草を集める。

 

「そういう地味なのが、基礎的な部分を強くするんだ」

 

 ゴトクの指導によるものだった。

 

「さてと」

 

 バッキーは草刈りを中断。

 杖で地面を突き、呪文の詠唱を始める

 

「************…………」

 

 すると。

 

 ボコリ、ボコリ

 

 地面の土が盛り上がり、形を造っていく。

 やがて。

 それは石のように硬くなる。

 

「ふむ」

 

 出来上がったものを杖でつつきながら、バッキーはうなずく。

 

 土を固めて造った、即席の焼却炉。

 作り方。基本構造。

 そのへんは、前にゴトクから教わっている。

 

 ――便利なもんだよねえ。やっぱり教わって良かった。

 

 バッキーは、何度も思ったことをまた思う。

 

 【チート】でもらった治癒魔法。

 それしかできなかったバッキーだが……。

 ゴトクに師事してから、様々な補助魔法を習得。

 さらに。

 戦闘ではなく、日常、あるいは屋外活動に有用なものも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――で、まだ何も思い出せない?」

 

「すみませんねえ」

 

 何度か繰り返された、カーシャの問い。

 それに、ボロンは同じような返答。

 

 ――ふざけているのでも、とぼけてるのでもない、か。

 

「ただまあ、なんでございますねえ」

 

「なに?」

 

「このおうちに戻ってみると、なにやら、懐かしいような、慣れ親しんだような。こそばゆいものがありますでねえ。ハハー」

 

「へえ。なら、やはりここにずっといたのは確からしい」

 

「わっかりますか?」

 

「あなたが自分で言ってたじゃない」

 

「言いましたっけ?」

 

「言った。」

 

「さようですかあ……。まあ、ええ」

 

「あんまり良くないんだけど」

 

「いやあ」

 

 と。

 ボロンはかぶったウィンプルを撫でて、

 

「わたし、あんまり気づいてなかったんですけれどね。どうぞお笑いにならんように。ちょっとこう、なんでございますねえ。今ひとつぼんやりしてるんです」

 

「……そうね」

 

「しかし、なんでございますねえ。こうして戻ってみると、なんか、わーたくしと同じようなモンがあちこちにおりますねえ」

 

 などと。

 ボロンは部屋の隅にあるゴミを見ながら言った。

 

 ――いる(・・)

 

 その言葉に、カーシャは違和感をおぼえる。

 

「ありゃっ?」

 

 いきなり。

 ボロンが変な声をあげた。

 

「……っ」

 

 その視線の先にあるもの――

 カーシャはすぐに、それに気づいた。

 

 ただの布切れ。

 いや、雑巾らしい。

 魔力も何もない……単なるゴミ。

 

 ――でも、これは。

 

 ボロンを見つけた時。

 あの時と、似たような気配をカーシャは感じ取っていた。

 

 モコリ

 

 不意に、雑巾が膨れ上がった。

 それは止まることなく、どんどん続いて、

 

「どういう仕掛け……?」

 

 まさに、思わず――

 カーシャは思考をそのまま口にしていた。

 

 膨張して、巨大になった古い雑巾。

 それはいつの間にか、巨大な蛇のようになっている。

 

 いや、細長い体に小さいが手足らしきものも。

 背中には、翼。

 

 ――アンピプテラ?

 

 蛇のような胴体に翼。

 確かに、形状はそっくりである。

 違うのは、その小さな4つの足か。

 

 いや。

 

 体全体が、古い雑巾そのままだ。

 

 ――雑巾でできたドラゴン? なんとまあ……。

 

 まるで、たちの悪い冗談(ジョーク)

 あるいは出来の悪い風刺画か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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