破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「しかし、まいったね。どうも」
屋敷内をうろつきながら、マコネはやや疲れた顔で、
「こんなゴミクズも集めなきゃならないのかい?」
「ああ、できる限りな」
応えたゴトクも、同じようなことをしている。
「しかし、使い魔まで使ってやることかね」
「ああ。しかし……何も無いと聞いたが、ゴミだけはけっこうあるな」
と。
ゴトクは小さな
「それに、妙だしな」
「なにがさ?」
「ここは300年近く空き家だったんだぜ」
「それだってね」
「だいぶボロボロだが、こんな魔道具でもない日用品がよく形を保ってるもんだ」
「日陰にあったからじゃね?」
「かもしれないが……。放りっぱなしで、メンテナンスなぞされてるわけでもなし……。虫やネズミだっているだろうに――」
言いかけて、
「いや、そうでもないか」
ゴトクはあちこち見まわして首をひねる。
「なんなんだよぅ?」
「この屋敷、ネズミだの小動物の気配がねえ。それに……」
床の埃を払いながら、
「虫の類もほとんどいない。こいつは妙だぜ」
「よくわかるな、おい」
「まあな」
マコネの言葉に苦笑してから、
「魔導士の屋敷だから、色々してはあるようだが……」
「そうなンか?」
「ああ。特別な建てかたをしてるな。だから、300年ほったからしでも
「でも、よく今まで誰も手をつけなかったよな。ぶっ壊して更地にするのは簡単だったろうに」
「ここは街の中央からも遠いし、住みたい土地でもないからな」
「え?」
「歴史を調べると、このへんは墓場だったり、処刑場だったり、死体の焼き場だったり。まあ、そんなもんばっかりがあった土地だ。だから、近くにミゾイの家……ほとんど小屋だけどな、それもある」
そう言って、ゴトクは苦笑する。
「え? あのねーちゃん、家なんてあったのか?」
「そりゃな」
「ギルドの本部で寝泊まりしてんだと思った」
「あははは。そういうことも多いだろうが……」
笑ってからゴトクは立ち上がり、
「しかし、形もないような埃や
「全部まとめて焼いちまえばいンじゃね? 死体の焼き場だったんだろ? なら、ゴミクズくらいどうってことねえや」
「準備はしとくか」
ゴトクは同意してから窓を開けて、
「おーい、コレコレこういう感じで用意しといてくれ。こいつも練習だー」
と。
外に向かって呼びかけた。
「はーい」
庭――にあたる場所で草刈りをしていたバッキーが応えた。
彼女は、初期レベルの風魔法でそれをやっていたわけで。
風の刃で刈り、風で草を集める。
「そういう地味なのが、基礎的な部分を強くするんだ」
ゴトクの指導によるものだった。
「さてと」
バッキーは草刈りを中断。
杖で地面を突き、呪文の詠唱を始める
「************…………」
すると。
ボコリ、ボコリ
地面の土が盛り上がり、形を造っていく。
やがて。
それは石のように硬くなる。
「ふむ」
出来上がったものを杖でつつきながら、バッキーはうなずく。
土を固めて造った、即席の焼却炉。
作り方。基本構造。
そのへんは、前にゴトクから教わっている。
――便利なもんだよねえ。やっぱり教わって良かった。
バッキーは、何度も思ったことをまた思う。
【チート】でもらった治癒魔法。
それしかできなかったバッキーだが……。
ゴトクに師事してから、様々な補助魔法を習得。
さらに。
戦闘ではなく、日常、あるいは屋外活動に有用なものも。
「――で、まだ何も思い出せない?」
「すみませんねえ」
何度か繰り返された、カーシャの問い。
それに、ボロンは同じような返答。
――ふざけているのでも、とぼけてるのでもない、か。
「ただまあ、なんでございますねえ」
「なに?」
「このおうちに戻ってみると、なにやら、懐かしいような、慣れ親しんだような。こそばゆいものがありますでねえ。ハハー」
「へえ。なら、やはりここにずっといたのは確からしい」
「わっかりますか?」
「あなたが自分で言ってたじゃない」
「言いましたっけ?」
「言った。」
「さようですかあ……。まあ、ええ」
「あんまり良くないんだけど」
「いやあ」
と。
ボロンはかぶったウィンプルを撫でて、
「わたし、あんまり気づいてなかったんですけれどね。どうぞお笑いにならんように。ちょっとこう、なんでございますねえ。今ひとつぼんやりしてるんです」
「……そうね」
「しかし、なんでございますねえ。こうして戻ってみると、なんか、わーたくしと同じようなモンがあちこちにおりますねえ」
などと。
ボロンは部屋の隅にあるゴミを見ながら言った。
――
その言葉に、カーシャは違和感をおぼえる。
「ありゃっ?」
いきなり。
ボロンが変な声をあげた。
「……っ」
その視線の先にあるもの――
カーシャはすぐに、それに気づいた。
ただの布切れ。
いや、雑巾らしい。
魔力も何もない……単なるゴミ。
――でも、これは。
ボロンを見つけた時。
あの時と、似たような気配をカーシャは感じ取っていた。
モコリ
不意に、雑巾が膨れ上がった。
それは止まることなく、どんどん続いて、
「どういう仕掛け……?」
まさに、思わず――
カーシャは思考をそのまま口にしていた。
膨張して、巨大になった古い雑巾。
それはいつの間にか、巨大な蛇のようになっている。
いや、細長い体に小さいが手足らしきものも。
背中には、翼。
――アンピプテラ?
蛇のような胴体に翼。
確かに、形状はそっくりである。
違うのは、その小さな4つの足か。
いや。
体全体が、古い雑巾そのままだ。
――雑巾でできたドラゴン? なんとまあ……。
まるで、たちの悪い
あるいは出来の悪い風刺画か。