破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その11、亜人の謎・怪しい猫

 

 

 

 ミゾイは、ギルドマスターとライワに振り返った。

 

「……つまりは、こんな感じだったわけですねえ?」

 

 ボス亜人の首から死霊を呼び出して、知ってることを話させたわけだが――

 

「ムチャクチャだな、あの女……。まあ、女として正直スカッするところもないでは、ないが」

 

 ライワはため息を吐いた。

 

「女性の不興は買うもんじゃないねえ」

 

 ギルドマスターは言ってから、椅子に座り直す。

 

「ですが、どうなんでしょうねえ? 事情が事情とはいえ一国の王族を殺しちゃったわけで……」

 

「そのへんの判断は、中央がするさ。まあ向こうの国民感情としても、殺されたのは国を売ったお姫様だからねえ。しかも、よくわからん亜人の愛人になっちゃって。気の毒ではあるよ、ほとんどレイプされたようなもんだから」

 

「……ですかね」

 

 ギルドマスターとミゾイは同時に肩をすくめる。

 ボスの死霊が語ったヒーダ王家の恥部というか、お姫様の下半身関係はどこかのエロ小説みたいだった。

 

 転生者である椿ことバッキーが聞いたら、

 

「それはエロアニメかエロ同人の話ですか?」

 

 と言っただろう。

 

 大胆にも王城に忍び込み、まずは女王をたらしこむというか、調教というか。

 とにかく服従させておいて、それを利用して姫を同じようにやったわけである。

 

「……国のトップが裏切って協力してるんだから、そりゃいい様にもされるよなあ」

 

「小説にするなら、美姫凌辱とか英雄姫調教とかそんなタイトルですかしら?」

 

「よせ。くだらない」

 

 ミゾイの笑えないジョークに、ライワは眉をしかめる。

 

「……にしても、こいつらの製造元はどこのどなたなんだか?」

 

 半分の生首を見ながら、ギルドマスターはつぶやく。

 

 死霊からの情報。

 

「つくりぬし……。めいじる」

 

 具体的なことはわからなかったが、どうやらこの亜人たちは人造のもの……らしい。

 おぼろげな話から、そんなことが推測されている。

 

「死霊ってのはただでさえ論理的な思考や会話は不得手ですからねえ。というか、死人の記憶、その残りカスみたいなもんだから。すみませんねえ? ま、あんまりハッキリ意志とか知性があったら操るのは難しいんだけども」

 

 ミゾイは困り顔で言った。

 

「そのへんはしょーがないよ。だけど、こいつら最低でも数十匹はいたんだろ? それだけのものを造れるのは多くない。そのへんもヒントになるだろ」

 

「ただまあ、あいつらが人造のものってことなら、いくらかおかしな点にも納得いくんですがねえ。おそらく、人間をベースにオーガとかオークとか、色んなものの要素を混ぜてこさえたんじゃないかなと……」

 

「根拠はあるのかね?」

 

「あいつ呼び出した時に言ってたでしょ? 姫を孕ませたとかどうとか……。嘘か思い込みかは知りませんけど。ただ事実なら他の種族ベースなら妊娠確率は非常に低いし、まともに生まれることも少ない。何の利点もありませんねえ。単に女とヤりたいだけなら話は別ですけど」

 

「ああ、そういう」

 

 ミゾイの淡々とした解説にギルドマスターは頭を掻いた。

 

「……時に、あの女はどのようにされたのです?」

 

 話を変えるように、ライワはギルドマスターへたずねた。

 

「どのようにも何も。報酬渡して帰ってもらったでしょ。なんか良さそうなクエストでも回しといてって、受付には言っておいた」

 

「放置、ですか」

 

「やったことは凄まじいけどねえ。でも、逆に言うなら優秀な人材ではあるんだ。騎士だの冒険者なんてものは、極端に言うと人殺し……というか、生き物を殺すのが仕事だからさ」

 

 ある意味では適材かもしれんよ、ギルドマスターは言った。

 その時、ドアがノックされる。

 

「はい、どうぞ」

 

 ギルドマスターが返事。ライワはドアを開く。

 

「あのう。王宮からの使者がおいでになっているのですけど……」

 

 おずおずとそうつげるメイドに、3人は顔を見合わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……姐さん、あんた強えんだなあ」

 

 今さら、とっくにわかりきったことをマコネは言った。

 思わず口から出てしまったというのか。

 

「それはどうも」

 

 殺したモンスターの死骸のそば。

 剣にぬぐいをかけて鞘に納めながらカーシャは応える。

 あまり興味もなさそうに。

 自分が誰とどう比べて強かろうと弱かろうと。

 

 ――運が悪ければ死ぬ。

 

 そういう認識のカーシャにとって、強さへの称賛もさほど響かない。

 たとえ幼児(こども)でも、何かのはずみで大人を殺すこともあるのだ。

 

「……あの、私っていります?」

 

 さっきまでゲロを吐いていたバッキーはよろけながら言う。

 

 ギルドから紹介されたクエスト。

 それは、街の近辺に出没するオーガの討伐。

 本来なら3人やそこらのパーティーにまわされるものではない。

 

 でも、カーシャは数匹のオーガを見つけるなりゴミのように始末した。

 おびえて逃げ出した最後の1匹にいたっては、後ろから投石で殺した。

 大ぶりの石をつかんで、投げた。

 それだけだが、当たったオーガの頭は破裂して、『中身』をぶちまけている。

 

 人間ではないと言っても……。

 でも、人間とよく似た生き物の死体がむごたらしく転がっている。

 その光景と臭いで、バッキーは腹ごしらえで食べたものを全部吐いてしまったのだ。

 

「ゆすいどきなよ」

 

 マコネは年上ヒーラーの醜態に、しょうがないという顔で水筒を投げる。

 

「まあ、慣れないときついか。バッキー、育ち良いから」

 

「ううう……しぃません」

 

「別にいるだけってのは、おいらも似たようなもんだからよ。すげえ治癒魔法が使えるんだからいいじゃん?」

 

「……さて。じゃ、帰りましょう」

 

 周辺を確認してから、カーシャは言った。

 

「ま、こんな場所に長居してもしゃーないわな。後の処理はギルドナイトの仕事さ」

 

 のびをしながら、マコネは軽く笑う。

 

 

 その帰り道で――

 

 

「……あのさあ、聞かれてむかつくとかならいーんだけどよ?」

 

「なに?」

 

 少し調子の変わったマコネの声。

 ぶっきらぼうなカーシャの返事。

 

「姐さんは、その色恋とか男関係? そーゆーのはどうだったんだ?」

 

「それはどういう意味? 男と寝たとか寝ないとか、そんな話?」

 

「……い、いや、まあ、ハッキリ言っちまえばそうなんだけどね。姐さん、そのきれいだろ?」

 

「よく言われたわ」

 

「いや、うん。確かに美人ですわ」

 

 バッキーもうなずいた。

 同性から見ても認めるしかない。

 それくらいに、カーシャの容貌自体は優れたものだ。

 

「まともな恋愛ってのは、ないわ。あっても社交界でのじゃれ合いみたいなものよ」

 

「ふーん……」

 

「あとは――男女の関係。それもまともなものはなかったかしら」

 

 カーシャは思い出す。

 あの〝地獄〟でも、いやそんな環境だからこそ性欲を暴発させる男はたまにいた。

 もっとも、そんなことをしていればすぐに殺されるのが、あの場所でもあったか。

 

「ただ、性器に槍の穂先だの剣を突きこまれたことは、何度かあったわ」

 

「ぐはっ……!?」

 

 絶句するマコネ。つぶされたガマみたい悲鳴のバッキー。

 

「……いや、それ死ぬだろ?」

 

「死にそうになったわね」

 

 実際、何度も死んだのだが。

 

「……あ、あの冗談、ですよね?」

 

「悪いけど、実際に体験したことだから」

 

 否定してくれ、という顔のバッキーにカーシャは無情な返事。

 

「……ハードな目にあったんだな、姐さんも」

 

「かもね」

 

「おいらなら、おんなじ目にあったら正気でいられる自信ないわ……」

 

「どうかしらね。体験したくないのはわかるけど」

 

「ぜってー、ごめんだね!」

 

 首を振るマコネを見て、

 

 ――でもまあ、こいつなら私よりも早くあそこに適応できるかもしれないけど。

 

 生来の生命力とか、たくましさ。 

 そういうものは、苦労知らずだったカーシャよりずっと上だろう。

 

 カーシャがそんなグロ話題で2人をドン引きさせている時。

 

「……!」

 

 気配に、カーシャは振り返る。

 ずっと後ろの木陰に、黒い猫が一匹。

 そいつが、カーシャを見て、

 

 ニヤリ。

 

 わらったように見えた。

 

 不快さと苛立ちで剣の鞘に手を伸ばしかけた瞬間には、もう猫は見えない。

 ただ、猫の尻尾が2本にわかれていた。

 それだけが妙にハッキリ目に焼き付いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、王宮所属の魔導士でユオン・キナと申しまして」

 

 腰の低い態度で、眠そうな顔のエルフの美少女は右の手のひらを見せた。

 そこには、王宮魔導士の証明であるマークがある。

 特別な魔法でいれられた、タトゥーのようなものだ。

 そのエルフは、カーシャが半殺しにした『勇者』のパーティーメンバーである。

 無論、ギルドでも顔を見た時に知っていたことだが――

 

「王宮所属とは優秀なんですなあ」

 

「いやあ、まあ色々コネとかありまして」

 

「またまたご謙遜を」

 

「そう持ち上げられても。私、王宮所属でも使い走りみたいなもんですし」

 

 あまり意味のない会話をかわすギルドマスターとユオン。

 

「ごほん……」

 

 なかなか本題に入らない両者に、ライワはわざとらしい咳払い。

 

「あ、失礼しました。あのですね? どうやら代理で任務に就かれた方が戻られたと聞いたので、ちょっとご確認に。いえ、正式な報告書はまた別としまして。とりあえずわかった情報だけでもと上から言われたものでして。本来は私どもが向かうはずだった仕事ですから――」

 

「そうですか。ごもっとですな」

 

 ギルドマスターはうなずいて、大体のことを説明した。

 

「……ははあ。あのヒーダ国が? わかりました。少なくともその首魁(ボス)が討たれたのでしたら、即座に何かある可能性も低いでしょうね、多分」

 

「そう願いたいですな」

 

「ところで、そのボスの(しるし)というのは?」

 

「ナマモノですからね。腐敗が進まないように処理して、保存用の箱に」

 

「後で中央に送っていただく必要があると思いますので、何ぶんよろしくお願いします」

 

「了解しました」

 

「ヒーダとの関係がどうなるのかはわかりかねますけど、そのへんは外交筋のかたがたがお決めになるので。私たちのお仕事はひとまず一段落でしょうか」

 

 そう言って、ユオンはテーブルに置かれた茶菓子を食べる。

 

「――時に、キナ女史?」

 

 後ろのミゾイが声をかけた。

 

「あ、ユオンでけっこうです。女史なんてつけられるほどのモノではありませんので」

 

「今回のこと、裏には何者があると王宮ではお考えですか? やはり、噂の魔王……?」

 

「可能性はあるような、ないような。しかし魔王と呼ばれる脅威を王宮が警戒してるのは本当ですね。でなければ、勇者召喚なんてやりませんから。ただ……」

 

 とユオンは苦笑して、

 

「私も100年前に魔王と呼ばれるモノを他国で見たことがありますけどねえ。それは突然変異で知能が向上したオーガの亜種でしたよ? 人間みたいな組織編成ができたんでそこそこ脅威にはなりましたが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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