破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その97、チョーク・ボロンの廃屋-6 二度あることは

 

 

 

 

 

 

 

 

「妙な、気配ね」

 

 散らばった陶器の残骸。

 カーシャをそれを見ながら、静かに言った。

 

「そうだなあ……」

 

 同じく――

 しゃがみこんで、残骸を観察しているゴトク。

 

「ドラゴンもどきといい、こいつといい。さっきまでは魔力のせいでわかりにくかったが……」

 

 エルフは立ち上がりながら、

 

「魔力とはちがうが……。うっすらと妙てけれんなモノが残ってらぁ。仮に名づけるとすりゃあ、妖しい気配。妖気とでもしておくか?」

 

「妖気ねえ?」

 

 カーシャは首をかしげながら、ボロンのほうを見る。

 

「お前からも、似たようなものが感じるわね。同じように、魔力でわかりにくいけど」

 

「あ、さよか?」

 

「ええ、さようで」

 

 あまりよくわかっていなさそうなボロン。

 少し、疲れた顔になるカーシャ。

 

「一度か二度、ちゃんと知覚できなければ、気づかないか……。あるいは、気のせいだと思うでしょうねえ」

 

「けどなあ? 雑巾だ食器がこんなンなるなんて、聞いたこともねえぜ?」

 

 頭の後ろで組んだマコネが、胡散臭そうに言った。

 

「同感だ。実用性を考えれば、あまり意味のなさそうな技術だよ。かといって、自然に生まれてきたとも思えねえ。何ともはや……」

 

「う~~~~~ん……?」

 

 さっきまで――

 消臭と洗浄の魔法を使っていたバッキー。

 何やら、スッキリしない顔で考えこんでいる。

 

「どしたンだよ?」

 

「何か、思い当たることでもあるのか?」

 

 マコネとゴトクはほぼ同時に問いかける。

 

「いや……それが。どうもなにか引っかかるんですけど、それがハッキリしなくて」

 

「ああ。そういや、バッキーは遠い国の出だったな。すると、さっきのもどっか遠い国の魔法で……」

 

「なるほど。ありうるな」

 

 マコネの意見に、ゴトクも同意。

 

「仮にそうだとしても、なんのために?」

 

 カーシャは誰かに……というよりは、独り言のように言った。

 古い屋敷を見上げながら――

 

「あるいは意図してってことじゃなく、偶然の産物ってこともありうるけれど……」

 

「けどよお? あンなもんが、どうして今まで……」

 

 マコネが言いかけた時――

 

 

「「「「あっ」」」」

 

 

 4人同時に、声を出した。

 いわゆるところの、異口同音。

 

「……私が入った。いや、開放したせいかしらね」

 

 商人の話だと、誰も入ったことがないらしいし。

 

 カーシャはわずかに苦笑して、もう一度屋敷を見る。

 

「すると、お前――ゴーレムだかホムンクルスの類(たぐい)かよ?」

 

 マコネはボロンに質問。

 

「なんでございます?」

 

「だからさあ……。いや、たぶん言ってもわかんねえよな」

 

 ボロンの反応にマコネは諦めた顔でため息。

 

 その時――

 

「……二度あることは、か」

 

 カーシャはつぶやいて、動いた。

 

「へ?」

 

「あれ」

 

 マコネやバッキーが反応した時には、

 

「色々種類がいるようねえ」

 

 カーシャがつぶやきながら、戻ってくるのが見えた。

 片手に、犬くらいの怪物をつかんで。

 

「また……変なもんが出たなあ。イノシシか、これ?」

 

「いや、毛の生えたワニって感じもしますけど……」

 

 女2人が感想を述べている中、

 

「こいつぁ……。ほっといたうちに、外に出てきたのがいるかもしれねえな」

 

 ゴトクはカーシャを見て言った。

 

「これは、失敗だわ」

 

 言いながらも、カーシャは何となく嬉しそうに見えた。

 

 やがて。

 放り出された怪物は、他と同じように縮みだす。

 最終的に変わったモノーー

 それは、汚いボロ靴だった。

 

「雑巾に、食器に靴、か。お前は、なんなのかしらね?」

 

 カーシャはボロンに言った。

 

「いやー」

 

「だから、いやーじゃない」

 

「たしか? 前にも申し上げたようにですね、わたくしは、夜具とか寝具とかですね」

 

「ちょっと黙って」

 

 自分から聞いておいて。

 カーシャはいきなり、ボロンを制した。

 

「……嫌な予想が当たったかもな、これは」

 

「あなたは、残って――いや、見張ってて」

 

 つぶやくゴトクに、カーシャは言った。

 

「やばくなったら逃げるぜ?」

 

「なら、大丈夫ね」

 

 カーシャは、右にバッキー。左にマコネとボロンを抱えて――

 跳んだ。

 

「また、これかよぅ」

 

 空中でマコネは叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい。今度は鳥ってか?」

 

 見上げながら、マコネは言った。

 もはや?

 その顔は状況を楽しんでいる。

 

「鳥っていうか? 布? いや、服でしょうか?」

 

 同じように――

 見上げながらバッキーは言った。

 

 飛び跳ねながら街のほうへ戻ったところ。

 

 魔術の女神を祭った教会。

 その屋根に、得体のしれないものがとまっていた。

 

 形としては人型に近いグリフィン。

 ただ、その体を構成しているのは……。

 バッキーの言葉通り、布か衣服に見えた。

 

 当然。

 周辺には見物人、いや、冒険者やギルドナイトが集まっていた。

 

「どいて」

 

 カーシャはその人垣をわけながら、怪鳥を見上げて――

 

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

 

「またこういうパターンかよ」

 

 カーシャに捕まり、軽く叩きのめされた後。

 動かなくなった怪鳥は、

 

「やっぱり、服?」

 

 バッキーがつぶやく言葉のまま。

 古い、魔導士が着込むローブとなった。

 

「やはり、かなりの年代もの……ね」

 

 ローブを拾い上げながら、カーシャはつぶやく。

 

 さて。

 一緒に連行? されたボロンはというと――

 

「ぶるぶるぶるぶる。ぴか、ぴか、ぴか、しゅしゅしゅ……」

 

 おかしな奇声を発しながら、しゃがみこんだり転がったり。

 

 普通に考えると。

 いきなり猛スピードで移動したり、数メートル跳んだり。

 多少おかしくなっても仕方のない目にあったわけだが。

 

「おま……マジで大丈夫か?」

 

 マコネが背中をさすった時、だった。

 

 

「おええええええええええええ!!!」

 

 

 ボロンは、それをきっかけにするみたいに?

 吐いた。

 

 だが、吐いたのは未消化物とか、胃液ではない。

 

 油紙で包まれた、長方形の物体。

 

「な、なんだぁ!?」

 

「……形というかサイズ的に、なんかの書類とか、本ですかね?」

 

 驚くマコネと、意外に冷静なバッキー。

 

「これはまた」

 

 カーシャはボロンの吐いたものを見ながら――

 無意識のうちに、少し笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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