破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その98、チョーク・ボロンの廃屋-7 つれづれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えらく、汚ねえつうか? 古い本だな、これ?」

 

 マコネはしゃがみこんで、それを見ながら言った。

 

 ボロンの吐き出したもの。

 それはバッキーの言った通り本だった。

 

 計3冊。

 紙を紐で()じたもので、何か筆で書いたらしきタイトル? が……。

 

「しかも、なんだい? ミミズだか蛇だかがのたくったような(・・・・・・・・)文字で」

 

 首をひねるマコネの横で、バッキーは考え込んでいる。

 

 ――おに、ひゃく?

 

 唯一読める部分は、そう書いている……ように見えた。

 

 ――すると、この下のは草書体ってやつ? うわあ……。

 

 さて。

 これはいかなる書物なのか?

 それについて、色々を考察・研究を――

 

 ……という場合ではなくなった。 

 

「おい、えらいことになった! 早く戻ってこい!」

 

 と。

 どこからかやって来た赤猫が叫んだから。

 

「ゴトクの使い魔?」

 

 カーシャはすぐに顔をあげて、屋敷の方角を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなんだよ、この状況は!?」

 

 マコネは手にした短槍で、追いかけたり追いかけられたり。

 

 チョーク・ボロンの屋敷。 

 その周辺には、得体のしれない大小のモンスターが走り回っている。

 

 どれもこれも――

 ギルドのまとめたデータにはないものばかり。

 

「こんなにいるとは……さすがに、予想を超えてきたわね?」

 

 カーシャはつぶやきながら、走っていた。

 モンスターたちを知覚した端から叩き潰しながら。

 

「こんな手間仕事になるたぁ思わなかった。なあ、青いの! これじゃ約束の料金じゃ割にあわねえぞ!?」

 

 ゴトクは印を結んだ体勢で叫ぶ。

 特殊な結界で屋敷周辺を囲い、それの維持をずっと続けている。

 大モンスターたちを外へ逃さないために。

 

「今は黙って結界を張ってなさい。後で追加を払うから」

 

「頼んだぜ、まったく……」

 

 

 

 モンスターの駆除。

 それは割とすぐに終わったわけだが。

 

 

 

「やっぱり、というか……。全部コレか」

 

 ゴトクはモンスターだったものを見ながら、頭を掻く。

 

 (かめ)に傘。ランプ。鏡。鍋。袋。

 その他いろいろ。

 とにかく、欠けたり劣化した古い道具ばかり。

 

 もはや完全なゴミと化したもの。

 それが、

 

「数えてないけど、軽く50はありそうねえ?」

 

 カーシャはあちこちに散乱する古道具を見ながら言った。

 正確には、その残骸だが。

 

「道具に、生命を与えたもん……らしいが。まったく悪趣味つうのか、無意味っつうのか」

 

 ゴトクは欠片を拾い上げながら、迷惑そうに言った。

 

「まるで、付喪神(つくもがみ)だわコレ……」

 

 バッキーはそんなことをつぶやく。

 

「チェック、モアガ……。それも、あなたの国にあったナニか、というわけ?」

 

 耳ざとく聞きつけたカーシャは少し笑う。

 

「つまりは、古い道具がモンスター化したもの、なんですけど」

 

「じゃあ、まさにこいつらのこったな」

 

 マコネは残骸の1つをつま先でつつく。

 

「しかし、こいつぁ……。むしろ、後の始末つうか掃除が大変だな」

 

「いかにも、そうね。で、あなたはこいつらとどういう関係?」

 

 カーシャはボロンの顔を見る。

 

「ン~~……。まあええ」

 

「いや良くないのよ」

 

「……そうですね~~。よくよく思い出してみれば」

 

「なに?」

 

「おんなじ家にいた、ような? そういうような気持ちもしてきましたですね。でも仲良しで遊んでいたとか、おしゃべりをしていたか? そこまでの関係では、なかったと思いますけれどもね」

 

「……まあ、会話のできる相手でもなさそうだけど」

 

 カーシャはボロンのハッキリしない物言いに嘆息しつつ、

 

 ――だいたい……。あなたと会話が通じてるのかも、ちょっと怪しいけどね?

 

 なんとなく。

 その場に、白けた空気が流れた。

 

 この時、だった。

 

「……」

 

 カーシャは屋敷のほうを振り返って、

 

「どうやら、まだいるようね?」

 

 

 ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴ

 

 

 怪しい音が、屋敷から響き渡り――

 

 ド、ゴ

 

 屋敷の壁から、巨大な腕が突きだしてきた。

 

「これまた、でっけえのが……!」

 

 マコネが叫んだ直後。

 

 屋敷を破壊しながら、巨大なモンスターが這い出してきた。

 

 ヒト型と獣を合成させたような異形の巨体。

 しかも。

 裸体ではなく、ボロボロで汚いが衣服? も身に着けていた。

 

 同時に、

 

 

「「「「あ」」」」

 

 

 もともと、メンテナンスもされず老朽化していた建築物。

 これをきっかけに――

 大昔(いにしえ)の魔導士が住み暮らしていた屋敷は、完全に崩壊した。

 

「……まあ、解体する手間が省けた。そういうことにしましょう」

 

 カーシャはため息を吐きながら、異形の巨体と向かい合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ……。またゴミが増えちまったなあ」

 

 マコネはしゃがみこみながら言った。

 

 倒された――

 というよりも、破壊された巨大モンスター。

 それは、今やゴミの山となっている。

 

「さっきの大きさからすれば、わずかな量とも言えるかしら」

 

 ゴミの山を見つめて、カーシャはどうでも良さげにつぶやく。

 

「しかし、片づけるのは面倒ねえ」

 

「ヒトを雇ってやらせたらいいだろ」

 

 ゴトクは言った。

 

「手間賃に気持ち(・・・)を入れといてやればヒト助けになるぜ」

 

「なるほど。それも、一種の社会奉仕かしら? 我ながら似合わないことね」

 

 というような会話の横で。

 

「……」

 

 バッキーは、ボロンの吐き出した本を調べていた。

 

 ――んん? これは……。

 

 どうやら。

 異世界――というか、

 

 ――やっぱり日本の本、だよね。しかも……。

 

 どの本にも、様々な道具が化け物となったものが描かれている。

 草書体の筆文字と共に。

 

 バッキーは、本の表紙をジッと見つめて、

 

「ひゃっきつれづれぶくろ……」

 

 どうにか。

 タイトルを読むことができた。

 

 ページをめくるうちに――

 古いボロボロの布団が化け物となったモノに目がとまる。

 

 名前は、

 

 ――読めない……。

 

 何とか、【暮】という文字を確認。

 ルビ――ふりながは、

 【ろ】と【ん】だけが読み取れた。

 

「ぼ、なんとか?」

 

 それを口にした後。

 バッキーは、後ろでちょこんと座っているボロンを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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