破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「しかし……。よくあんなもんを買い取るよなあ?」
マコネはその様子を見ながら、感慨深げに言った。
チョーク・ボロンの屋敷。
否。
もはや、廃屋ですらない巨大なゴミの山・ゴミの海と化したもの。
その残骸を、大勢の冒険者たちが集めて、運ぶ。
ひたすらに自分の手で運ぶ者。
魔法を使う者。
ゴーレムや使い魔を使役する者。
中には、はいつくばって集めている者もいた。
地面に散らばるわずかな破片を探すために。
さて。
その集めたモノをどうするのかと言えば?
「はいはい。集めた者はこっちへ、こっちへ。すぐに計量しますからねー」
集会用テントの下――
中央から派遣された役人たちが応対していた。
運ばれてきた残骸。
それを、量に合わせた金額の小切手を渡す。
ギルドに持っていくと、現金に換えてくれるのだ。
その中には、
「……ちょっと、あなた? なに、これ? あなたねえ? これ、ほとんどタダのゴミじゃないですか? また、仕分けが面倒な……」
普通のゴミでかさ増しをする不届き者もいた。
それでただ、
「こらッ」
で、すむことはなく、
「ちょっと来い」
待機していたギルドナイトに引っ張っていかれる羽目に。
「すいません、すいません! 金がなくってつい出来心で……」
「はいはい。わかった、わかった」
泣き落としは一切通じることなく――
無情に連行されてしまうのだった。
「……ああいうのって、どうなるんですかね?」
見ていたバッキーは同情の目で言う。
低ランクの冒険者の、大変さは嫌でも目にするものだ。
「まあ、あのくらいなら説教されるくらいですむんじゃねえの? こわもての、おあ兄さん、あお姉さんに」
しゃがみこんで見物するマコネも、若干同情の顔。
「ギルドのルール破りとかクエストでのヘマとか……。たとえSRの冒険者でも喰らうからなあ」
「ああ、そういえば……」
バッキーは、やや遠くに立っているカーシャを見た。
「リーダーも以前は……けっこうそれ喰らってましたね?」
「そーそー。難易度の高いクエストを安い報酬でやらされたりな。ま、あのヒトにとっちゃ……」
スライム退治とあんま変わらねーだろうけど。
マコネはふう、と笑う。
「だけどねえ?」
バッキーは空を見ながら、
「最初の頃……の、今よりピリピリしてたリーダーが、よく素直に受けましたよね」
「まーなぁ? 思い返せば、あの勇者……いや、偽勇者か? あいつらにケンカ売ったのだって、他のヤツならどうなるもんだかな。
片手で首を斬る仕草のマコネに、
「追い出されちゃうんですか?」
「そんな優しい対応してくれるもんか。首をスパンと切られるんだよ、打ち首」
「……えええ」
「
ギルドのルールに従わねーよ。
冒険者ギルドがなんぼのもんじゃい。
「……と、言ってるのとおんなじなわけ。つまり、ギルドをなめくさってますと受け取られるのな」
「あ、そういう……」
「よそから流れてきたヤツらは、それで打ち首やら吊るし首になるのが多いんだ。おいらもけっこう見たわ」
「また気前よく出したもんだな?」
カーシャの横に立つゴトクは、笑いながら言った。
「どうせ大して使い道もないしね」
「だがなあ。今さらだが、お前さんが銭出してまで応援出すことはなかったんじゃないのか?」
「役人任せだと、いつまでかかるわからないもの。あちらも資金繰りは厳しいでしょうから」
「そうか。ああいう研究者も色々派閥があるんだったな」
「ええ。魔法から魔道具、遺跡発掘。それに、異世界から色々召喚するもの。それぞれが資金を取り合っている状況よ」
「だが、屋敷……いやもう土地だけか。そいつでもかなり使っただろ」
「そうねえ」
カーシャは指を追って数えながら、
「まあ、貯金も少なくなったわ。残ったのは、300万くらいかしら」
「おいおい……」
「残骸を売り払ったお金も入るけど……。今後しばらく、あちこち回らないといけないでしょうね。新築の屋敷は、ちょっとお金をかけたいから」
「ドサ回りかい」
「ああ、そういう言い方をするのね」
「そうだな。あちこち行って見て回るのも面白かろうよ。ところで――」
ゴトクはチラッと後ろを見て、
「あの変なお化けも連れてくのか」
面白そうに撤去作業を見ているボロンを親指で指した。
「まあ、ある種責任問題? だから」
「ふーん。で、良いクエストはありそかい」
「ギルドで聞いたら、すぐに色々提示してきたわ」
「そりゃそうか」
やがて。
屋敷の残骸はほとんど撤去されていった。
かなりの大人数。
それが我先にと集めて運ぶのだから、勢いは凄まじかった。
さて。
瓦礫がなくなると、
「うわあ……」
ゴトクは呆れた顔でつぶやく。
今度は、複数・大小のゴーレムを持ち出して屋敷跡を掘り返し始めた。
役人たちが、その作業で指示を出している。
「地下室まで掘り出すのかよ」
「そういうこと。あっちのほうはなかなか神経を使うようだから。解体にも専門の技術者や職人がいるでしょうね」
ごくろうなこと。
カーシャはクスクス笑う。
「まあ、そういうことだから。今日明日に終わるものではないわ」
「だろうな」
「なので、あなたに代理をお願いするわ」
「撤去作業の立ち合い。いや、監視か」
「そ。妙な真似をされたら不愉快だしね」
「別にかまわねえさ。店は使い魔にまかせとばいいしな」
「遠出する時もそうすればいいのに」
「かなり遠国に行くことも多いしな。距離を取りすぎたら、使い魔の精度も落ちる」
「……でも、班長? あの変な
テントの下――
研究員の1人が現場責任者に言った。
「まあ、多分な?」
「唯一無事な個体だから、できれば……」
「バカ! あんなもんに手を出してみろ。あの女、何をするかわかったもんじゃないぞ?」