破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「こンちわー!」
「はいはい。どんなご用ですか?」
「えーと、なんですね。私ぃとこの
「はいはい。新規の登録ですね。だんさん、つまり旦那さんですね。あなたのご主人ですか?」
「あれ?」
「え。違うんですか?」
「いやね? あのかたは、まあ~……つまるところの、ま、なんですね」
「何なんですか?」
「ですから、まあ~いわゆるところの、まあ、とどのつまり……ま、たった一言で申しあげますと、ですね」
「……前置きはけっこうですから、ハッキリ結論だけ言ってくれませんか?」
「ようするに? 私の持ち主ということになる……」
「……持ち主? なんか物騒というか、おかしなことおっしゃいますね? ええと……お気を悪くされたら謝りますけど、あなた、そのかたの愛人かなんかですか? つまり、俗な言い方すればお
「ん~~~?」
「これも違うんですか?」
「いやあ」
「だから、何なんです。あのねえ……受付もあんまり暇じゃないんですから、ハキハキ言ってくださいよ」
「私のお役目としてはぁ……まあ、本来のところは、だんさんのお体にですよ?
「……あなたが【攻め】の立場ですか。…………見かけによらないな、これは」
「しかしまあ~。そのへんのお役目はもらわれてから、一回もありませんですね」
「はあ」
「特にナニしろコレしろと言われるわけでもないのでして」
「気楽なお立場だったんですね……」
「ハハハー」
「はいはい、わかりました。それで今日は登録をなさりに来たわけですね?」
「へ?」
「いや、ですからね。冒険者の登録をなさりに来られたんですよね?」
「んんん~~~~……。これは、弱ったな。いやぁ、困った」
「さっきので何か弱るようなことありましたっけね」
「いや、わたしはね? だんさんから、ちょっと冒険者になってこいと、このように言われてたずねてきました次第でして。〝
「……正式に冒険者になるために、ギルドでその登録をするんです」
「あ、さようですか?」
「そうです……。ホンットに……登録に行くまで汗かいちゃったよ。登録ね……。はいはい。それじゃ、まずこっちの書類に名前と年齢を書いてください」
「あ、名前ですか! くぅ~~~~……!!」
「……何を興奮してるんですか。あなたにも名前があるんでしょう?」
「そうです、そうです。だんさんよりちょうだいした名前が、あ・る・んデス」
「じゃ、それを書いてください」
「わっかりました。え~と、ボ・ロ・ン……と。良い名前ですね?」
「……そうですね。……はあっ。見かけによりませんねえッ。きれいな字ですよ、これは。いやすごい、まさに達筆です。上品なかたちだし」
「いやぁ~。照れるなあっ」
「あの言動からこの文字が出てくるのかしらン……。何かの天才とかはオカシイのが多いとは言うけども。まあ、いいです、いいです。次は年齢を書いてください」
「……年齢ですあ~~。ん~~~。困ったなぁ。いや、困った」
「よく困るかたですね。今度は何をお困りです?」
「あのですねー?
「はぁはぁ、なるほどね。はい、そういうかたもちょくちょくいます。まあ、だいたいのとこでもけっこうですよ」
「だ・い・た・い、ですか。ん~、いや
「……あなたのお仲間ですか?」
「そうです、そうです! わたしとちがって、ハキハキとした機敏なヒトでね。高いところなんか、ピョンピョンーっと」
「……で、そのマッさんはどれくらいだとおっしゃってたんです?」
「お前見た目は12~13だなぁ。おいらよりも年上に見える、と。12~13でお願いします」
「……そんなわけないでしょう?」
「あ、いけませんか?」
「いえ、あなたがどこの種族は存じませんけどねえ? 臭いからしてどう考えても200歳はすぎてますよ」
「そういうようなことがわかりますか?」
「いや、人間とかなら12~13で通りますけどね? あなた、人間じゃないでしょう? だいたいの話、どこの、どういう、何という種族です? それでいくらか見当がつくこともありますから」
「ん~~~………」
「エルフ……じゃないのは耳でわかりますけど。
「おや? あなた、ラミアさんですか? お話にはちょろっと聞いたことがございますけど」
「種族名に【さん】付けはおかしいですね。……何してるんですか。カウンターからのり出さないでくださいよ!
「んんん~~。
「何がおかしいの!?」
「ラミアといったら、下半身が蛇の女性と風の噂に聞きましたけど? あなた、蛇の尻尾じゃなくって、
「何、お尻に手を伸ばしてるのっ! 気持ちの悪い! ……あのねえ? 他の種族と一緒にいる時は、二本足にしてるんです。蛇のままだったら場所とって迷惑になるでしょ!?」
「便利ですね」
「私のことはどうでもいいんですよ! あなたの種族を聞いてるの! ちゃんと聞いてますか?」
「それが頼りないところなんです。か~~、困った」
「つまり自分もわからない、と……。まあそういうかたも時々あります……。だったらねえ、できるだけ古いことで、何かおぼえてることはありませんか?」
「あ、思い出すなぁ」
「早く思い出してください。何かありましたか」
「そうですねえ。前の主人というか持ち主のかたがですね、イズモのほうでなンか
「……ちょっと待ってくださいよ? 大きなヒドラ? イズモのほう……。ああ、お年寄りから聞いたことありますね。イズモで大型……グレートヒドラが出て、すごい被害が出たとか」
「わっかりますか?」
「……あれは確か、**年のことだから……。それだったら、あなた。半端をのぞいても280歳じゃないですか」
「そういうようなことになりますか?」
「なりますよッ。はあ……。あなたがたの寿命は知りませんけどねえ。280歳……。エルフでもそろそろいい年だよ。もうちょっとシャッキリしないもんかなあ……」
「すみませんねえ」
「私が口をはさむことじゃないんですけどね。あなた、今までどういう生活してたんですか?」
「そうですねえ~~~。まあ、地下のお部屋でですね、ベッドの上にゴローッと寝転がって。特にコレということはしてませんでしたね」
「お体でも悪かったんですか?」
「いたって丈夫で通ってました。水洗いをしようが、ひと月ふた月お外に放り出されてても、ぜんぜん大丈夫と、主人からお墨付きをいただいてました」
「じゃ、あなた今までずーっとゴロゴロしてたんですか? 280年も? ……引きこもるにしても限度がありますよ?」
「いやー」
「ホンッとに……。はい、わかりました。280歳と書いてください」
「はい。さらさらさらと……。これでよろしいですか?」
「きれいな字だけに余計腹立ってくるな……。あー、はいはい。これでけっこうです」
「そうですか。いやあ、お世話になりました。サヨナラ!」
「ちょっと、ちょっと、ちょっと!? まだギルドの紋章つけてませんよ!? それつけないと意味がない……行っちゃった……。速い足……。ボケボケッとしてるくせに、こんな時だけ素早く動くなあ。ゴキブリみたい。はあ~あ。……どこの物好きか知らないけど、あんなモノをよく飼っておくよね」
「行ってきました!」
「登録できたのかしら?」
「書類というんですか、紙きれというんですか。それにちゃんと書いてきました。きれいな字ですねえと、称賛をいただきまして」
「ふーん」
「そういうようなわけで、冒険者になってきました。今日から仲間です。仲間です。仲間です!」
「ちょっと手を出してみなさい。あなた、ギルドの紋章がないじゃない。何をしに行ってきたわけ?」
「紋章というと……。そういうようなものが、いるの?」
「バカ。それがなかったら身分証明にならないでしょ」