破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その101、白毛と乙女-1 群れる魔猿

 

 

 

 

 

 

 

「フェイジン?」

 

 カーシャは顔をあげて、相手を見た。

 

 手にした書類には、

 

『マハーリの街、及びその周辺を荒らすモンスターの群れを討伐』

 

 そういう内容の依頼が書かれているのだが――

 

「ええ。そうです。これが非常に厄介で……」

 

 と。

 

 目の前のギルド支部長は、ハンカチで汗をぬぐっている。

 暑い寒いのせいではない。

 どうやら――

 本気で困っているらしい。

 

 ・主に群れで行動する。

 ・大きさは1.8~2メートル弱。

 ・毛皮は打撃と斬撃両方に強い。また耐火性と防寒性を併せ持つ。

 

「まあ強いといっても、あくまで一般人から見てということですけど」

 

「1個体なら、さほど脅威ではないということ?」

 

「はい。準備や対策をしていれば、駆除できないものではありません。他のモンスターに喰われることも多いので」

 

「こりゃ、猿か?」

 

 資料に添付されている画像を見ながら、マコネが言った。

 

 確かに――

 フェイジンなるモンスター、その姿かたちは大型の猿という感じ。

 

「見た目はマントヒヒみたいですね」

 

 バッキーはそんな感想をつぶやく。

 

「こんなのが、お前の故郷(くに)にもいたのか?」

 

「近くの山とかで見るわけじゃないですけど。それに、モンスターじゃなくってタダの動物です」

 

 そんなことをマコネとバッキーが言っている横で、

 

「ふうん……」

 

 カーシャは目を細めた。

 さらに――

 書類と支部長の顔を何度か見比べながら、

 

「でも――それだけなら、他の冒険者でも十分できるのよね?」

 

「まさしくその通りでして……。サイズのでかいボスに率いられてから、どんどん狂暴というか悪質になってきまして……。恥ずかしながら、かなりの被害を出している次第です」

 

「ボスの画は、ちゃんとしたものがないようだけど」

 

 カーシャがいくつかの画像を見ながら言うと、

 

「個体でもかなり強力なうえに、仲間を手足みたいに使う厄介なヤツで……。記録や調査だけでもかなりの労力を使わざるをえないんです」

 

「これを見る限り、他のヤツよりサイズが大きいのはわかるけれど」

 

「フェイジンは、普通なら大きくても2メートルほどですが……」

 

 報告によると、ボスは3メートル近くあったと確認されています。

 

 支部長は苛立ったように首を振った。

 

「ふうん。基本は数で攻めてくるタイプか……。こういうのは面倒くさいわ」

 

「1~2度の襲撃で街や村が壊滅するほどではありません。しかし、それが何度も続けば住民は疲弊するし、経済とか流通にも影響が出てしまうので」

 

 ――真綿で首を締めるみたいに、ジワジワと痛めつけられるわけね。

 

「なるほど、なるほど。で、フェイジンってモンスター……鳴き声に特徴があると書かれているけど」

 

「笑ってるような鳴き声が特徴なので、俗に〝笑い声(ラフター)〟とも言います」

 

「ふん、ふん」

 

「知性種族……特に人間とかエルフを襲うことが多くって。俗説では、女をさらって子供を生ませるとも言われてますが――」

 

「うへ。まるでゴブリンみてーだな?」

 

 聞いていたマコネがオエッと舌を出した。

 

「そうね。ゴブリンにも、そんな俗説があるけど。アレにはそもそも生殖機能がないそうよ」

 

 また聞きだけどね。

 

 カーシャはそう言って、読み終えた資料を置く。

 

「で。今回の場合、実際にそういう被害があるというわけかしら?」

 

「……そうなんです」

 

 支部長はうなだれる。

 

「街や街道、近隣の村などでも、何度か若い女性が連れ去られておりまして……」

 

「獣にしろ、モンスターにしろ? 子供とか若い女を狙うのは珍しくないけどよぉ」

 

 そんなンが、ホントに起こってるのか?

 

 マコネの疑問に、

 

「わかりません。さらわれた者は誰も帰っていないので……」

 

「だったら、喰われたんだか犯られたんだか、ワカンネーな?」

 

「ふうん……」

 

 カーシャはその青い髪を触りながら、

 

「知性種族なら……リスクを冒してまで異種族の女を奪うメリットは少ないけれど……」

 

 少なくとも。

 サキュバスなどがあちこちにいる、このへんの地域では――

 

「それに、猿型モンスターの子供を実際生めたとしても、まともに育てられるのかしら? 女の側からすれば、そんな子供をきちんと育てるモチベーションも利益もないのだけど」

 

「そりゃまそうだよなあ。おいらだって()だもん、それは」

 

「もしかして、モンスターが見張ってたりする可能性は?」

 

 カーシャに同意するマコネ。

 また別の意見をのべるバッキー。

 

「ま? どっちにしろ、私の仕事はモンスターの生態についてゴチャゴチャ考えることもでないか」

 

 カーシャは苦笑して支部長に向き直り、

 

「それで。今現在、一番このモンスターが出現しそうな場所は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 通るもののない道を、ボロンは1人で歩いていた。

 

 何だかよくわからない歌なのか、呪文なのかわからないもの。

 それを能天気な顔で口ずさみながら。

 

 

 

 

「あいつはいったい全体、何を歌ってんだ?」

 

 マコネは首をかしげてボロンを見ながら言った。

 

 ボロンをのぞくパーティーメンバー。

 彼女らは少し離れた場所でボロンの様子を見ている。

 陰に身を潜めながら――

 

「これって大丈夫なんでしょうか?」

 

 バッキーが言った。

 

「さあ。とりあえず、向こうから出てきてくれれば手間が省けるのだけど?」

 

 カーシャは淡々と返す。

 

 つまり。

 ボロンを囮にモンスターをおびき出そうという、極めて安易な作戦だった。

 作戦とすら呼べないかもしれない。

 

「あんな大声出してたら、逆に警戒して近寄らねーかもよ?」

 

「クマじゃあるまいし……」

 

 マコネの言葉に、バッキーはため息。

 

「ボスの居場所がわかれば一番手っ取り早いのだけどね」

 

「だけど、モンスターが総動員で攻めてきたら?」

 

「その場合も、ある意味やりやすいけど。ボスが残ってればまた別の群れを作るでしょうから」

 

 根本的には解決しないわねえ

 

 カーシャはそう言って、ボロンの動向を監視し続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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