破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その104、白毛と乙女-4 【蛇つかい】のタイージャ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっちゃん、肉入りマントゥ10個ほどおくれ」

 

 マコネは紙幣を見せながら、物売りに言った。

 

 肉入りマントゥとは――

 つまりは、現代日本ではコンビニなどでおなじみの肉まん。

 これとだいたい同じようなもの。

 

 ヤオアムトを始めとする文化圏では、昔からある食べ物で、

 

 いつ誰が考えたのか?

 

 それは誰も知らない。

 諸説はあるものの、いずれも真偽は不明。

 これプラス、気にする者はゼロに等しい。

 

「あいよう」

 

 マントゥ売りは愛想良く応えて、紙袋に商品を入れていく。

 

「おっちゃん、いい体してるけど冒険者かい?」

 

「そうだよ。何しろしがない(ノーマル)ランクだからなあ。冒険者一本槍じゃあ食っていけねえ。いや、どっちかといえば、物売り(こっち)が本職だな」

 

 マコネの言葉に、マントゥ売りは苦笑した。

 これは珍しいことではなく――

 むしろ、普通のことだった。

 

 物売りや日雇い仕事。

 あるいは、ギルドから回される雑業。

 

 【1人前】とされる(レア)ランクにしても、その半数は兼業なのだ。

 

「そういやあ、猿モンスターの群れがあちこちに出て大変だよな」

 

「物騒なこった。いやあ、俺もなあ? 近くの村で日雇いをしてた時に襲ってきたもんで……。あの時は、肝を冷やした」

 

「へえ……」

 

 マコネは一瞬だけ目を細めた。

 だが。

 それはおくびも出さず、世間話を続けていく。

 

「女がさらわれたってのは本当かい?」

 

「おう。俺が見た時もな、ありゃあ一般人(カタギ)じゃなくって同業の女だったんだがよ」

 

 そう言いかけた時マントゥ売りは、

 

「ああ、そういえば……。引っ捕まって、連れてかれる途中……。いや、その前だったかな?」

 

 そ、そんなバカな!

 

「……てなことを、言ってたなあ」

 

「? そんなバカな? なんだよ、そりゃあ」

 

「さてなあ。よっぽどてめえの手腕(うで)に自信があったのかねえ? まさか、やられるわけがねえ、と」

 

「へえ~。そのねーちゃんは、そんなに凄腕だったのかい?」

 

「とんでもない」

 

 マントゥ売りははパタパタ手を振る。

 

「あんまり死んだヤツの悪口言うのも野暮だが、まあ~ひと山いくらってとこだな。ま、こちとらもおンなじようなもんだけどよ。もともと? 補助とか後衛専門だったから、正面からの切ったはったは不得手だったのかもしれねえがね」

 

「そのねーちゃん、なんて名前だい?」

 

「なんだ、そんなこと気になるのか? 変なガキだな」

 

「ひょっとすると、パーティー仲間の身内かもと思ってさ」

 

「そうか? えーと……あいつは確か、【蛇つかい】のタイージャとか言ったな。最近、よそから流れてきた女だった。ヤオアムトじゃあ向こうと勝手が違ってたようで、ブツブツ愚痴ばかりたれてたらしいや」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タイージャ……? あー、アレね。

 

 せこいビーストテイマーだったな。

 【蛇つかい】たぁ、言いも言ったりだよ。

 

 魔法で仕込んだ蛇を使ってこせこせしてやがった。

 

 噂じゃ、**から流れてきたって話だね。

 船、海路だろうね、来るのに使ったのは。

 

 最初は何人かの野郎とつるんでたようだが。

 そのうち、てんでにバラバラになったようだね。

 

 あの(あま)ぁ、口やら色気でうまいこと男を使ってたようだが……。

 

 ハハッ。

 

 サキュバスが【商売】やってるとこじゃ、意味もねえわな。

 いや。

 ないこともねえだろうが……。

 

 どっちにしろ?

 そこらの冒険者ならわざわざ女のご機嫌うかがいするより、サキュバスの商売を選ぶわな。

 

 考えようによっちゃあ……。

 雑魚が寄ってこないから助かるんじゃねえのかね?

 知らんけど。

 

 で、あの蛇飼い女は色々うまくいかねえ、美味い話がねえって。

 ちょくちょく酒場でクダまいてたって。

 

 馬鹿な話じゃないのさ。

 

 だったら物売りでも屋台引くなりして、カタギを目指せばよかったのになあ。

 

 あたしだってさ?

 昔はNランクでせこくやってたんだ。

 

 今は何とか床屋でやってるけど。

 

 ン?

 あははは。

 そうだった、そうだった。

 

 あの女はさ、どうも陰でつまらねえことを考えてたか、仕掛けたのか。

 どっちにしろ、一度ギルドナイトに睨まれたようだね。

 

 連中にゃ色仕掛けも袖の下も、ご利益は少ないもん。

 

 そのうちに他国(よそ)へ行くか、やらかして吊るされるか打ち首か……。

 どっちかだろうと思ってたんだが。

 こうすると、はかないもんだよなあ。

 

 なんだって?

 ああ……。

 

 最後に見たのは、なんか女ばかりでつるんでた時だな。

 

 んん?

 うう~ん……。

 さてねえ、あんまり興味もなかったから特に注意しちゃいなかったんだが。

 

 ああ。

 でも、アレはおぼえてる。

 

 虎女(タイガーウーマン)のフーレンさ。

 あいつぁ、あちこち借金があってヤバいって聞いたが。

 

 つるんでたのだって、どうせろくな理由じゃなかろうさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――まあ、こういう感じで」

 

「そいつだけ、どうにも異質ね」

 

 マコネの話を聞き終えたカーシャはそんな言葉を返す。

 手元にある、数枚の資料を指で叩きながら。

 

「すると、どういうこったい?」

 

「ギルドのまとめてた犠牲者のリスト。さらわれたのはみんな若い女で、一般人。中には13歳までいたようね」

 

「タイージャって女も、オバハンじゃなかったようだけど?」

 

「それでも。他に比べると一番年上よ。適齢期で言うのなら、とっくに行き遅れだわ」

 

「まあ、そうか」

 

 横で聞いていたバッキーはちょっと首をかしげ、

 

「えーと。ちなみに、そのヒトはいくつくらいだったんです?」

 

「見た感じじゃ、25から上……。30まではいかねえくらいだったらしいね」

 

「十分若いと思いますけど……?」

 

 バッキーはつい、【現代日本】的な見方で言った

 

「あんたの故郷(くに)じゃどうかは知らねえけどよ。カタギの女なら、25になるまで結婚するのが普通だぜ? まあ、でも冒険者なんてヤクザもんなら、男も女もずっと独身(ひとりみ)ってのは珍しくないが……」

 

「はあ、そういう……」

 

 なんとなく――

 微妙な気分でうなずくバッキー。

 

 さらに。

 その横で、

 

「肉入りマントゥは、おいしいもんですねえ」

 

 マコネが買ってきたマントゥを、ボロンはほぼ1人で食べつくしかけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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