破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その107、白毛と乙女-7 いまむかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 カーシャは、その様子にキョトンとした。

 

「なにそれ?」

 

「……いや、なんなのかね?」

 

 マコネは困った顔。

 バッキーは、無言でばつの悪そうな顔。

 

 ボロンは、正座をして壁を見つめている。

 いや。

 あるいは何も見てはいないのか。

 

 大きく開かれたその瞳。

 そこから、光が放射されている。

 光は、壁に何かの映像を映し出していた。

 

 映像や音を記録する魔法。

 こういった魔導技術はヤオアムトにも存在するが……。

 

 さて。

 映っているのといえば。

 

「まあ別に見るなとかどうとか? 取り締まる立場にもないけど」

 

 カーシャは肩をすくめた。

 

 あっはん、うっふん。

 

 つまるところ、男女のからみ合う場面。

 

 このような?

 ポルノというべきものも、やはりヤオアムトにはある。

 

 そういったものを流す、秘密の【鑑賞会】。

 実のところ。

 カーシャも何度か参加したことはあった。

 

 ――まあ、とはいえ……。

 

 古い時代など。

 性教育の一環として、王族貴族の子女に【実演】を見せることもあったという。

 

 ――ひょっとすると? 今も、王族はそうしてるのかしらね。知らないけど。

 

「いや、実はさあ……」

 

 

 この少し前。

 

 

「なにを言ってやがる、しっかりしろぃ!」

 

 枕を抱えて、枕とアレコレと話しているボロンをマコネはひっぱたいた。

 

 すると――

 

「ぴか、ぴか、しゅしゅしゅしゅ」

 

 ボロンは小さく奇声を発して、目から怪光を放った。

 

 それによって映し出されたのが、

 

 

「……コレというわけね?」

 

 カーシャはうなずきながら、エロシーンを見ていたが、

 

 ――ん?

 

 あることに、気づいた。

 

 ――このベッド、いや、この部屋の間取りや、造り。それに……。

 

 天井や壁、ドアなどの細かい部分。

 

「ああ。するとこれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生まれた時には、すでに父親はいなかった。

 母親も、それについて語ったことはない。

 何度かたずねたことはあったけど、

 

「知らなくっていい」

 

 常に冷たく言われた。

 

 育った場所は、いわゆる苦界……遊郭である。

 母は娼婦であり、その中でも上位に位置する立場だった。

 

 そんな環境下ゆえか。

 自然と男に巧みに取り入って、密かに操る術をおぼえた。

 

 露骨は色気ではない。

 むしろ、地味で一歩さがった、どこか陰のある少女。

 もちろん?

 そこに隠れた美貌も重要である。

 

 男の庇護欲や支配欲をうまく刺激する手弱女(たおやめ)。

 これと同時に……。

 女社会で目の敵にされないよう、心配りをしなければならない。

 

 

 国の方針で遊郭が潰された後。

 さすがに、【助けられる少女】の役だけでは暮らしていけなくなった。

 

 あちこち流れた末。

 たどりついたのが、ヤオアムト。

 

 とにかく生きるために、魔法の技術(わざ)を独学で学んだ。

 筋が良かったのか。

 生来の小器用さがうまく働いたのか。

 

 冒険者稼業でも、そこそこの腕が身についた。

 

 とはいえ。

 かつてに比べると、色んなものがきつい。

 

 そもそもの話。

 

 ヤオアムトという国は――

 技術もあり、文化も文明もある。

 治安の面でも、他国と比べればかなり良かった。

 

 特に、性犯罪というのに厳しい。

 

 しかし。

 女が生きるのにはつらい場所だった。

 

 サキュバスが普通に定住して、【商売】をする。

 娼婦という職は、彼女たちだけに認められた特権。

 他の種族には許されていない。

 捕まれば重罪。

 下手をすれば国外追放である。

 

 サキュバスの存在。

 これのために、女であることに価値はない。

 

 完全なゼロというのは言い過ぎにしても――

 あわよくば、という下心のくっついた親切。

 そういうものは、極めて薄い。

 

 並の女は、並の男と同程度の扱いしかされぬ。

 

 貴族や王族はともかく、平民まして冒険者など……。

 レディー・ファーストなどという概念はないのだ。

 

 そんなものを求めたところで、

 

「お前はどこの貴婦人だ?」

 

 と、嘲笑されるのがオチである。

 

 

 ふとしたことで関わるようになった――

 【蛇つかい】のタイージャもそんな女だった。

 

 彼女はもとの国では、色気と口先でうまく男を操っていたらしい。

 うまく儲けて、なかなかの羽振りだったと語っていた。

 

 しかし。

 ここでは、そうもいかない。

 

 かといって?

 長年やってきたスタイル、あるいはそれで得ていた金やら何やら。

 それらは、簡単に切り替えられるものではなかった。

 

 だから。

 流民の女を捕えて、密かに売るという【商売】を始めた。

 虎女(タイガーウーマン)のフーレンなど、金に困った女たちが集まって――

 そこに男を加えなかったのは、何かしら思うところがあったのか……。

 

 金は入ってくるようにはなった。

 が、金は手に入れば入るだけ、余計に欲しくなるもの。

 

 そこから――

 一般人の小娘をさらい、売るということになった。

 取引相手から、かなりの高額をチラつかされたこともある。

 

 ここから……。

 

 

 

 

「魔法加工したものを処分するのも、なかなか大変でしょう?」

 

「!?」

 

 いきなりの声に、身を震わせて振り返る。

 

 念入りに隠してあった毛皮と頭。

 これを取り出そうとした時だった。

 

「後顧の憂いを絶つため……。用心深いのはいいけど、こんな山の中に放り出しておけば、かえって助かったかもね」

 

 青い髪の女が笑っていた。

 フェイジンの【死体処理】をしていた時、こちらを見ていた女。

 

「いや? その毛皮が見つかれば、おおよそのカラクリは見抜かれたかしら」

 

 笑いながら、女は近づいてくる。

 

 驚くような――

 薄暗いものをまといながら、それを吹き飛ばす美貌だった。

 

「起こした騒動が大きすぎたわね。10匹20匹ならともかく、あんな大軍勢ではいずれ国軍が動いたでしょうし」

 

 いつの間にか。

 周辺を、武装したギルドナイトが囲んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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