破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
結果として――
1人の女がギルドに捕まり、連行されてしまったわけだが……。
そこから。
少しばかり時間を戻すと、
「つまり。この枕から【記憶】を読み取って、映像にしているわけか……」
カーシャは感慨深げにつぶやく。
「まあそうですね」
ボロンは、わかっているのかわからないのか?
どちらとも取りがたい顔でうなずいた。
「なら、これの記憶も読み取れるのかしら?」
カーシャは、布に来るんだ小さなものを手渡す。
「なんだい、そりゃ?」
のぞきこむマコネ。
布を開くと、赤錆びた小さな金属片。
以前に、カーシャがフェイジンたちの根城で拾ったもの。
「まあまあ、聞かせてもらえると思いますですね」
ボロンの言葉通り。
金属片は――
持ち主がどんな相手だったか。
持ち主が何をしていたのか。
そのいくつかを、
破損した1部分であったためか?
記憶は完全ではなかったが――
その姿を知るには十分だった。
一味の中に、
「まあ、ようするに」
カーシャは歩きながら言った。
その足は、一番近い転送ゲートに向かっている。
「安易な考えから始まった犯罪と、凡ミスということかしら」
「と、言いますと?」
バッキーは、青髪の乙女を見上げた。
「あの女、色々器用で半端に知識があったから、大昔のバーサーカー技術をどこかで知ったのねえ」
「バーサーカーというと、こう……正気をなくして暴れまわる?」
「獣の皮をまとって、攻防の能力を数倍に引きあげる技。大昔から、色んなところで使われてたらしいけど。反動というか、消耗も大きい。ついでに、まともな思考ができなくなるから? 最後の最後でヤケクソになって使うものじゃないかしら」
「はあぁ」
ため息をつくバッキーの横で、
「するてえと? 一味の誰かがボスの皮をかぶって群れを操ってたのかい?」
マコネがたずねる。
「いえ。正確にはゴーレムにそれを着せて、ボスに仕立て上げてた。自分たちは、あくまで陰に回って」
「へえ~……」
「話だと、どこかで死蔵されてたボスザルの皮を偶然手に入れて、こういう浅はかなことを考えついたらしいわ。フェイジンに娘をさらわせて、それを売り飛ばす。最初はうまくいったようだけど……」
ここで。
カーシャは少しばかり失笑して、
「けれど。もとから、素人が半端な知識と技でやったことだもの。まともな制御が利かなくなって、無駄に群れが大きくなってしまった。さて、どうしようとトラブルが起こった」
「これかい?」
マコネは親指と人差し指で丸を作ってみせた。
「それもあるけど。一味の中で事態におびえ出す者が出てきて、やめるやめないで揉めだした。この時に、逃げようとした者を始末して、死体をモンスターに喰わせた」
「うわ……」
バッキーは舌を出してげんなり。
「この時使った刃物が、何かの拍子に破損して岩の間に転がったのね」
それで――
あいつは自分もいちぬけすることを考えた。
だけど、【蛇つかい】の女が邪魔。
殺しに来るかもしれない。
だから、フェイジンたちを使って始末した。
「【蛇つかい】はあいつをバカにしてたから、油断をつくのは簡単だったそうよ」
「そいつは……元から、隙をうかがってたんだな、きっと。いざって時に、
「でしょうね」
カーシャはマコネに笑いかけ、肩をすくめてみせた後、
「そんな時、支部は私を雇ってフェイジンたちを始末させた」
噂にたがわぬ、悪鬼のような戦闘能力。
これは、すぐさまあちこちに伝わり、
――あの女に、全部おっつければいい……。
と。
そう考えたようだ。
集まりすぎたフェイジンの群れ。
この時には、もうコントロールが難しくなっていた。
もとから。
モンスターを自在に操れるほどの経験もスキルもなかったようだ。
下手に放り出せば、自分にも被害が及ぶ。
どうしようかと頭を悩ませていた。
それを、カーシャが簡単に片づけてくれたわけである。
後はもう素知らぬ顔でいればいい。
街に残ったのは、
――あわてて逃げるより、堂々としているほうが怪しまれない。
こう考えたため。
「でも? 私はボスを始末するまでクエストは終わらないと言ったものだから」
問題の毛皮を処分するしかなかったのだろう。
「毛皮が見つかった場合、専門家に調べられて足がつきかねないし。どっちにしろ、そろそろギルドにも怪しまれてたようだし……」
タイージャが死んだことで――
フーレンは、あわてて逃げ出した。
「それじゃ余計なことを言いかねないってんで……」
「こう、ぐいっと」
マコネは上を見上げ、バッキーは無表情でのどでもしめるような仕草。
「ただねえ」
カーシャは皮肉な顔で、
「〝商品〟が流民だけだったら、ギルドも知らん顔してた可能性もあるわ」
「そんな……」
バッキーは顔を上げる。
「欲を出して、ちゃんとした国民にまで手を出したのが運の尽き。いや、フェイジンの制御も怪しくなって、どっちみち破綻したかしら?」
「でも、そんな、女同士で、女の売り買いって……」
「何を今さら」
カーシャは、納得しきれないバッキーをどこか憐れむように、
「あなたの
「う」
これに、バッキーは沈黙。
確かに女同士で共感しあったり、助け合うこともあった。
しかし。
――女がみんな、良いヒト、気があるヒトって、そんなことはなかったしなあ……。
「なんか、今回は妙に気疲れした感じだ……」
マコネは大きくため息を吐いた。