破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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番外編、特にバッキーの夢は箸休め的な感じで
書いてる分には楽しいんですが……
色々考えるところもありますね

読んでくださるかたがたには
アメコミのホワットイフみたいな感じで面白がってくれると嬉しいですが




その108・5、番外・黒蠍精-2 神のみぞ知る

 

 

 

 

 

 

 

「つまり――」

 

 と。

 カーシャは黒い石を見る。

 

「このまま放置すれば、これは自然に砕けて予測された未来は変わる」

 

「まあ、そうですね」

 

 バッキーはうなずいた。

 その表情は複雑で、なんとも言いがたい。

 

「というより。これを破壊しなかった未来を知らされたというべきかしら」

 

「……」

 

「それで、あなたは悩んでいる」

 

「ええと……」

 

「なぜ?」

 

「うん、と……。それは、あれ? なんでだろ……」

 

 問われ――

 バッキーはしゃがみこんだ。

 

「ふむ? 確かに、コレを封じなければ手に負えないバケモノを解き放つことには、なる」

 

「はい……」

 

「もっと先の未来で、そいつが何をしでかすのか。それはわからない」

 

「はい……」

 

「とりあえず、場所を変えましょう。ここは神社。一応聖域だから」

 

 

 こういうわけで。

 2人は神社を出て、車も人も通らない道を歩き出す。

 

 

「でも、そうねえ」

 

 カーシャは空を見上げた。

 

「ひとつの国を単体で滅ぼせるようなモノを解放する。考え物であるのも、うなずける」

 

「そうです。トイレに落書きするような気楽さで……」

 

 高層ビルを吹き飛ばしたり。

 大量虐殺をしでかしたり。

 

 しかも、

 

「こっちには、止める手段はない。まさに運任せ。神のみぞ知るということ」

 

 カーシャは補足するように言った。

 

「ふむふむ。もうちょっと加えると? 存在を認知された時のほうがより危険度は増す、か」

 

「……えらいヒトたち(・・・・・・・)ほっとかないですよね、絶対」

 

 バッキーはカーシャを振り向いた。

 

「当然」

 

 カーシャは肩をすくめる。

 

「そんなもの、仕方がないな、で誰が放置するものですか。是が非でも、そいつを捕獲か、あるいは懐柔する。国の防衛、治安維持。あるいは、新しい利権や軍事力。諸々のことが一緒くたになって」

 

「いや、まあ……? そのへんはしょうがないと言えるんでしょうけど。でも、その」

 

「適切な対話が、できるのか」

 

「はい……」

 

「あまり、期待はできないでしょうねえ」

 

 カーシャは皮肉な笑み。

 

「見た目は、人間の女にしか見えないし? おそらく、その能力(ちから)をほんの少ししか出さないでしょうから。未知の部分を警戒するにしろ、あくまで常識的(・・・)な範囲ね」

 

「ですよねー……」

 

「その気になれば、一国の最高指導者だろうが直接命を奪える。いえ? むしろ、じわじわと嬲りものにするかしら? 陰湿な性格してるみたいだし」

 

 いえ?

 他人(ヒト)のことをえらそうに言えないけど。

 

 カーシャはカラカラと、楽しそうに笑った。

 ひどく無邪気で、快活な笑い声。

 

「……」

 

「ああ」

 

 その後――

 カーシャはポンッと手を打って、

 

「この場合、その権力者がヤケクソになりかねないわね? 死なばもろともと、核ミサイルを乱射するとか。さすがに、周囲は止めるでしょうけど、1発2発は発射されるかも」

 

「いやいやいや」

 

 バッキーは手を振って、

 

「そうなったら、終わりじゃないですか!?」

 

「ええ」

 

 カーシャはその意見を肯定。

 

「当然。私たちだって、逃げることはできない。一緒に地獄行き」

 

「わかってるんなら……」

 

「しかし」

 

 カーシャは、顔を真っ赤にしたバッキーを片手で制して、

 

「これを封じた場合。罪のない女の子が犠牲になる」

 

「……そうですよ」

 

「解決策として」

 

 暗い表情でうつむくバッキー。

 カーシャはその顔をのぞきこむようにして、人さし指をピンと立て、

 

その男(・・・)を、今のうちに殺すという手もある」

 

「……!」

 

 バッキーは顔をこわばらせて、カーシャを見つめた。

 

「いえ。そこまでいかなくっても、半身不随か、あるいは両足を使えなくする。いやいや、〝去勢〟というのも、悪くないかしら? 殺したり、寝たきりにするより、まあ人道的じゃない?」

 

「う……」

 

「去勢の場合? 向こうの親族もさほど迷惑にはならないでしょう。医療費だなんだのお金もかからないし」

 

「ふむ。かなり魅力的なアイデアと思ってくれたかしら?」

 

「う……」

 

 カーシャの指摘に、バッキーの心臓は跳ね上がる。

 

「といっても。この案も落とし穴はあるけれど」

 

「落とし穴?」

 

アンコ(・・・)というの、知っているかしら」

 

「……おまんじゅう?」

 

「そうじゃなくって」

 

 バッキーの返事にカーシャは苦笑してから、

 

「刑務所で、つまり男だけの閉鎖空間で性欲処理に使われる男のこと。ヤクザの親玉なんかは、こういうのを何人か作っておくらしいわ。いや、刑務所の外でも作るんでしょうね。主に下っ端ヤクザを対象に」

 

「……なんで?」

 

「アンコにされた男は、たいてい性的不能になる。おまけに、周りから見下される。そうなると、どうすると思う?」

 

「ど、どうなるんです?」

 

「見返すために、男を上げる。つまり、どんな危険な仕事にも飛び込んでいくということよ。敵対者の暗殺、いわゆる鉄砲玉が多いんでしょうねえ」

 

「…………うわぁ」

 

「他にも中国の宦官を知ってる? おとなしくなるどころか、血で血を洗う権力争いに明け暮れた」

 

「聞いたことあるような……」

 

「性的不能という抑圧とコンプレックス。下手をすればより凶悪かつ凶暴な行動もやりかねない。そのへんも、まあ運任せ、神のみぞ知るところね」

 

「…………」

 

「と、なれば」

 

 カーシャは腕を組んで、遠くの田園を見ながら、

 

「やっぱり。今のうちに殺すというのが一番確実ではある、か……」

 

「それ、は……」

 

「でも」

 

 カーシャは、田園のほうを見つめたまま、

 

「果たして、私たちの封印がどの程度通じるかしら」

 

「え?」

 

「アレが動き出したのは、あの男の存在を感知したからでしょう? つまり、何かあればそれを知るかもしれない」

 

「え? え……?」

 

「自分の餌を台無しにされた場合、バケモノはどういう行動に出るか。封印が通じれば良し。通じなければ……あまり、考えたくはないわねえ」

 

「うううう……」

 

「つまり。どれを選んでも最終的には――」

 

 運任せ。神のみぞ知る。

 

 カーシャは淡々と言ってから、

 

「それで、どうする?」

 

 表情の見えない顔で、バッキーに問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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