破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「そいつはまた、ロマンティックなお話だ。まさか、新しい芝居のあらすじじゃなかろうね?」
おおよその話を飲み込んだ後――
ゴトクは苦笑で応える。
「せやったら、まだよろしいわ」
ジロは小さくうなりながら、
「そうなったら、もう旦那は大わらわちゅうやつで。あっちゃこっちゃへ使いをやって、その
「見つけてどうするよ。その家は準男爵の爵位をもらってるそうだな?」
ゴトクは空の茶器を片づけながら、ジト目を返す。
「へえ。なんでも、今の旦那で2代目。将来若旦那が継ぎなはったら3代やそうで」
「相手が、似たような家か。金持ちの商人ならいい。だが、もっと上流の貴族ならどうするよ。2代や3代の準男爵なんぞ、あっちからすりゃ金持ってるだけの平民と同じだぜ」
「そうなんですか?」
「ああ。騎士なんてのは、腕自慢の冒険者なんぞがもらう。準男爵は金持ち物持ちだ。飾りみてえなもんだが、それでも箔はつく。つくがなあ、まあそれだけとも言える」
「はあ……」
「その若旦那が、あの青いご令嬢みてえなドラゴンスレイヤーの英雄とかなら別だが。そうだとしても、相手の爵位次第じゃ無理なこった」
「ううーん。困ったなあ……。いや、しゃーけど? まだ貴族のお嬢様と決まったわけでもありまへんで?」
「ふむ。それもそうだな。おともを2~3人で、安くはないが平民が出入りするような喫茶か。お忍びってこともありうるが、あまり爵位の高い家でもなさそうだな」
ゴトクはふむ、と鼻から息を出す。
「ほんなら――」
「とにもかくにも、そのお美しいおかたが、どこの誰かを調べないことには」
始まらねえか。
ゴトクは苦笑して、立ち上がった。
「ほお」
バッキーはため息を吐き、本を閉じた。
買ったばかりの
表紙はきれいな男女が描かれたものだ。
ひと目でジャンル:恋愛だとわかる
「また絵草紙かい?」
マコネは本の表紙を見ながら、
「あれ? 今回は衆道ものじゃねーのか? 男同士で尻を……」
「ちょ、ま……!!」
バッキーがあわてたところで、
「そういう、野暮なことはあまり言わないものよ」
ひとり、カードゲームをしていたカーシャは言った。
ゲームも色々ある。
2人で対戦するも他、3~4人、そして1人でやるタイプも。
「他人の性癖なんて、トイレの最中を覗き込むようなものだから」
「言われてみりゃあ、そうだよなぁ。悪かったよ」
マコネは素直に謝った。
「へ、いや、まあ、それは……」
逆に。
バッキーのほうが
「でもさ? いや、けなすつもりはねえけど、そんなに衆道ものってオモシレーのか?」
「ふへっ。ま、まあけっこう?」
「私もいくらか読ませてもらったけど」
カーシャは、机上に並べたカードから目を放さず、
「まあ
「え。そりゃまあ……」
バッキーはちょっと水を差された気分。
「実際の衆道は、それほど平和なものじゃないそうよ。色子をめぐって血みどろの争いが起こったこともある」
「え、そうなんですか?」
「あと、南のほうでは尚武の気質が濃厚だけど、それと一緒に女への見下しが強いわね」
「男尊女卑ですか」
バッキーは顔を少し曇らせた。
女として、あまり好ましい言葉ではない。
「あっちではね。といって……ヤオアムト周辺では女の価値そのものは、まあ低いらしいけど」
「低いんですか?」
「血も涙もないことを言えば――」
カーシャは、カードを一枚置いて、
「男の価値は武力と労働力。女の価値は子を産んで育てること」
「ひゃあっ」
「金の稼げない男、弱い男。そんなのは基本見捨てられるか、見下されるわ。同様に子供を産めない、世話をできない女にも価値はない。補うプラス要素がない限りね」
「そんなもんかねえ」
マコネは、今ひとつわからないようだった。
「あんたは元から、どこでも生きていけるタイプだから。魔導の技。歌舞音曲などの芸。あるいは男並かそれ以上の武力。色気、いえ下半身の需要はサキュバスが独占してるからね」
「ほえー」
「貴族の場合は、家同士、他国とのつながりに使えるから。そこに価値がある」
「………」
バッキーは、
「不服そうね?」
「それは、はい……」
「でも、あなた。お金も力も、ついでに見た目も人並みかそれ以下。こういう男を恋人や夫にしたい?」
「え? あの……」
いきなりの質問に、バッキーは動揺した。
それは、考えるまでもなく……。
「つまりはそういうこと」
カーシャは、淡々と言った。
やはり、カードのほうを見たままだ。
「といって、南よりはマシ。なにしろ……女は不浄とさえ言い切る連中もいるのだから」
「えええ……」
「だからかしら? 性愛の対象に男を選ぶのはまあ普通。そういうのは硬派。逆に女を選ぶのは軟派。当然、硬派のほうが良しとされている、ようね」
「あの。じゃ、じゃあ女性は……」
「基本、子供を産むだけのものね」
「そんなの、ひどい」
「同意はする。私だってそんなところは嫌よ。といって……人並み以下だから、逆に責任はあまり要求されない。せいぜい出産と家の雑務ね。多少のことは、所詮女だから、ですむ」
「……」
「ペットの猫や犬に、大仰に義務だ責任だを叫ぶバカもいないからね」
「下手すりゃ家畜以下だな」
「だから、飼い主の気まぐれで殺される場合もあるし、飼い主がいなくなれば路頭に迷う。ただ、ペットを殺すヤツは社会的に嫌悪されるか、避けられるけど」
「ああ、そういう……」
「ただねえ?」
そこで。
カーシャは初めてバッキーたちのほうを向いて、
「尚武だなんだと言うかたわら、美少年を女装させてそれをありがたがったり、囲ったり。鼻で笑いたくなる面もあると聞くわね」
「それ、フツーに女じゃいけねーのか?」
マコネは素直な疑問を口にした。
「ダメらしいわね。理解はできないし、する気もないけど」
*構成やエピソードの順序変更、台詞や単語の変更……
やることも多くと、なかなか進まないもんですね