破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

139 / 357
その109、ズーム・ボベラの詩-2 女たちは衆道を語る

 

 

 

 

 

「そいつはまた、ロマンティックなお話だ。まさか、新しい芝居のあらすじじゃなかろうね?」

 

 おおよその話を飲み込んだ後――

 ゴトクは苦笑で応える。

 

「せやったら、まだよろしいわ」

 

 ジロは小さくうなりながら、

 

「そうなったら、もう旦那は大わらわちゅうやつで。あっちゃこっちゃへ使いをやって、その女性(おかた)を探せ、おっしゃってねえ」

 

「見つけてどうするよ。その家は準男爵の爵位をもらってるそうだな?」

 

 ゴトクは空の茶器を片づけながら、ジト目を返す。

 

「へえ。なんでも、今の旦那で2代目。将来若旦那が継ぎなはったら3代やそうで」

 

「相手が、似たような家か。金持ちの商人ならいい。だが、もっと上流の貴族ならどうするよ。2代や3代の準男爵なんぞ、あっちからすりゃ金持ってるだけの平民と同じだぜ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ。騎士なんてのは、腕自慢の冒険者なんぞがもらう。準男爵は金持ち物持ちだ。飾りみてえなもんだが、それでも箔はつく。つくがなあ、まあそれだけとも言える」

 

「はあ……」

 

「その若旦那が、あの青いご令嬢みてえなドラゴンスレイヤーの英雄とかなら別だが。そうだとしても、相手の爵位次第じゃ無理なこった」

 

「ううーん。困ったなあ……。いや、しゃーけど? まだ貴族のお嬢様と決まったわけでもありまへんで?」

 

「ふむ。それもそうだな。おともを2~3人で、安くはないが平民が出入りするような喫茶か。お忍びってこともありうるが、あまり爵位の高い家でもなさそうだな」

 

 ゴトクはふむ、と鼻から息を出す。

 

「ほんなら――」

 

「とにもかくにも、そのお美しいおかたが、どこの誰かを調べないことには」

 

 始まらねえか。

 

 ゴトクは苦笑して、立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほお」

 

 バッキーはため息を吐き、本を閉じた。

 買ったばかりの絵草子(マンガ)

 

 表紙はきれいな男女が描かれたものだ。

 ひと目でジャンル:恋愛だとわかる

 

「また絵草紙かい?」

 

 マコネは本の表紙を見ながら、

 

「あれ? 今回は衆道ものじゃねーのか? 男同士で尻を……」

 

「ちょ、ま……!!」

 

 バッキーがあわてたところで、

 

「そういう、野暮なことはあまり言わないものよ」

 

 ひとり、カードゲームをしていたカーシャは言った。

 

 ゲームも色々ある。

 2人で対戦するも他、3~4人、そして1人でやるタイプも。

 

「他人の性癖なんて、トイレの最中を覗き込むようなものだから」

 

「言われてみりゃあ、そうだよなぁ。悪かったよ」

 

 マコネは素直に謝った。

 

「へ、いや、まあ、それは……」

 

 逆に。

 バッキーのほうがへどもど(・・・・)して、へなへなになってしまう。

 

「でもさ? いや、けなすつもりはねえけど、そんなに衆道ものってオモシレーのか?」

 

「ふへっ。ま、まあけっこう?」

 

「私もいくらか読ませてもらったけど」

 

 カーシャは、机上に並べたカードから目を放さず、

 

「まあ創作(おはなし)よね」

 

「え。そりゃまあ……」

 

 バッキーはちょっと水を差された気分。

 

「実際の衆道は、それほど平和なものじゃないそうよ。色子をめぐって血みどろの争いが起こったこともある」

 

「え、そうなんですか?」

 

「あと、南のほうでは尚武の気質が濃厚だけど、それと一緒に女への見下しが強いわね」

 

「男尊女卑ですか」

 

 バッキーは顔を少し曇らせた。

 女として、あまり好ましい言葉ではない。

 

「あっちではね。といって……ヤオアムト周辺では女の価値そのものは、まあ低いらしいけど」

 

「低いんですか?」

 

「血も涙もないことを言えば――」

 

 カーシャは、カードを一枚置いて、

 

「男の価値は武力と労働力。女の価値は子を産んで育てること」

 

「ひゃあっ」

 

「金の稼げない男、弱い男。そんなのは基本見捨てられるか、見下されるわ。同様に子供を産めない、世話をできない女にも価値はない。補うプラス要素がない限りね」

 

「そんなもんかねえ」

 

 マコネは、今ひとつわからないようだった。

 

「あんたは元から、どこでも生きていけるタイプだから。魔導の技。歌舞音曲などの芸。あるいは男並かそれ以上の武力。色気、いえ下半身の需要はサキュバスが独占してるからね」

 

「ほえー」

 

「貴族の場合は、家同士、他国とのつながりに使えるから。そこに価値がある」

 

「………」

 

 バッキーは、どんより(・・・・)と、加えてげんなり(・・・・)とした顔。

 

「不服そうね?」

 

「それは、はい……」

 

「でも、あなた。お金も力も、ついでに見た目も人並みかそれ以下。こういう男を恋人や夫にしたい?」

 

「え? あの……」

 

 いきなりの質問に、バッキーは動揺した。

 それは、考えるまでもなく……。

 

「つまりはそういうこと」

 

 カーシャは、淡々と言った。

 やはり、カードのほうを見たままだ。

 

「といって、南よりはマシ。なにしろ……女は不浄とさえ言い切る連中もいるのだから」

 

「えええ……」

 

「だからかしら? 性愛の対象に男を選ぶのはまあ普通。そういうのは硬派。逆に女を選ぶのは軟派。当然、硬派のほうが良しとされている、ようね」

 

「あの。じゃ、じゃあ女性は……」

 

「基本、子供を産むだけのものね」

 

「そんなの、ひどい」

 

「同意はする。私だってそんなところは嫌よ。といって……人並み以下だから、逆に責任はあまり要求されない。せいぜい出産と家の雑務ね。多少のことは、所詮女だから、ですむ」

 

「……」

 

「ペットの猫や犬に、大仰に義務だ責任だを叫ぶバカもいないからね」

 

「下手すりゃ家畜以下だな」

 

「だから、飼い主の気まぐれで殺される場合もあるし、飼い主がいなくなれば路頭に迷う。ただ、ペットを殺すヤツは社会的に嫌悪されるか、避けられるけど」

 

「ああ、そういう……」

 

「ただねえ?」

 

 そこで。

 カーシャは初めてバッキーたちのほうを向いて、

 

「尚武だなんだと言うかたわら、美少年を女装させてそれをありがたがったり、囲ったり。鼻で笑いたくなる面もあると聞くわね」

 

「それ、フツーに女じゃいけねーのか?」

 

 マコネは素直な疑問を口にした。

 

「ダメらしいわね。理解はできないし、する気もないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





*構成やエピソードの順序変更、台詞や単語の変更……
 やることも多くと、なかなか進まないもんですね

 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。