破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回も隙間にあたるものです。
予定より長めになった感も。





その12・5、ユオンはギルドへの報告す

 

 

 

 

 

 

 

 

「調査の結果は、やはり本物だと出ました。まあ、やれやれですね」

 

 ギルド本部へ報告に来たユオンは、ギルドマスターにそう報告した。

 

「あの勇者様はどうなってるんです?」

 

「んー。いくら敗れたといっても、能力はやはり本物ですし。ケガも治っているのでやることはやってもらおうってことで。上としては消費された魔力の分だけでも働いていただかないと、いうことらしいです。今は次の任務を選定中ですけど」

 

「その間、あなたも別件でお仕事ですか」

 

「一応勇者様のお目付け……じゃない、サポート役を命じられたんですけどねえ。あははは」

 

 ギルドマスターは少し考えて。

 

「――実際の話、王宮じゃあのご令嬢をどう思ってるんですかね?」

「さあ? えらい人のお考えまではわかりかねますが……私の大雑把で個人的な推測ですと、ぶっちゃけ辺境や地方で多少何かしようが中央まで影響なければ、放置……でしょうかね」

 

「そりゃえらく半端な」

 

「でもですねえ? 調べれば調べるほどにあの人は厄ネタですから。ただ殺人にまるで躊躇がない代わりに殺人嗜好があるわけでもない。なくすものがないから、下手なことすれば何するかわからない。あの人が暴れ狂って有用で貴重な人材やお金が失われるのは避けたいと思いますよ。そのへんは、勇者様の件で決定的になりました――」

 

「密かに消えてもらう、というのは?」

 

 後ろで控えていたライワが、そんなことを言った。

 

「それもねえ……? 敵対しますよと相手に言ってるようなものじゃないですか。大体彼女は人望がなかったし、かついで利用するには人気がなさすぎた。イメージも最悪ですからね。旗印にするには不向きですよ。それを今さらかつぎ出す人もいないでしょう。いたとすればよほどのアイデアがあるか、考えなしか……」

 

「それをおっつけられたほうは迷惑ですが……」

 

「すみませんねえ」

 

 露骨に嫌な顔のライワに、ユオンは頭を下げる。

 

「まあ、現状では危険人物ではあるけど、有害というほどもないですなあ」

 

「しかし、一体どうやって短期間とさえ言いがたい時間で、あんな力を……」

 

 そんなライワの疑問に、

 

「うーん。確かに一晩で凡人を達人に変える秘術というのも噂では聞いたことありますが――。実際にはただの都市伝説の類ですねえ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「んー。参考になるとは思えませんが、ある国でこんな伝説があるそうです。ある修業中の魔導士が昼間は役人の下働きとして働き、夜には井戸から冥界にくだって修業を行った。それによって彼は七日で並ぶもののない大魔導士となったそうです」

 

「ほー。そんな話が……」

 

 ギルドマスターは興味深そうに目を細めた。

 

「冥界は現世と時間の流れが異なり、一番浅い……つまり、地上に近い層でも地上の1日が500年になるそうです。そうなると日没から夜明けまででもものすごい時間ですね。それが七日となれば、これはもう……」

 

「そんなもの、あっという間に寿命で死ぬんじゃないですか……? 長命種ならともかく」

 

 

「生きた者は地上と同じ、つまり500年なら一日分の年しかとらないそうです。それに、500年といったら、エルフだってかなりの年ですよ。若く見えるってのは外見だけのことでして、魔力も衰えてくるし、子供だって産めない。仮に妊娠してもかなりの高齢出産ですね。神に近いとされるハイエルフならともかく……」

 

「ハイエルフか。話に聞いているが……」

 

「はるか海のかなたのエルフヘイムに住むとされるエルフの上位種、だそうですね。ただ、実在するとしても本当に一般的なエルフと種族的なつながりがあるかどうかは、かなり疑問ですが」

 

「あなたがたにとっては、祖先というか神のようなものでは?」

 

「いやまあ、そういう風に思うかたがたもいるでしょうが、私は一族も部族もない、はぐれエルフな者ですから。あまり……。旧弊なエルフたちは、人間の下で働くことすら考えませんでしょう」

 

「そういえば、私どもにもそういったエルフの知人はおりますなあ」

 

「おそらくそのかたもはぐれエルフなんじゃないですか? 人間社会で生活しているのは、そういうのがちょくちょくいると思いますよ」

 

「言われてみれば……そんなようなことを言ってましたねえ」

 

 少し上を見ながら、ギルドマスターは言った。

 

「――ねえ、ミズ・ユオン?」

 

「なにか?」

 

 ミゾイが唐突にユオンに話しかけ、ユオンも応える。

 

「こいつは、何となくの当てずっぽうですけれどねえ。あなた、調査がどうとか以前からあの令嬢が本物だって確信してたのでは?」

 

「ははあ。まあ私の意見はあまり上の判断には関係ないでしょうけれど。個人的にはそうです」

 

「それは何か心当たりでも?」

 

「――というほどのものではないですけど」

 

 と、ユオンは魔導タブレットを出してきた。

 見た目的にも用途的にも、それは現代社会のタブレット型パソコンのようなものだった。

 ただし、パソコンほどに一般社会に流通しているものではないが。

 

「これは、個人的に撮ってたあるパーティーでのものですけれども」

 

 映像は豪華な料理。豪華な衣装をまとった貴人たち。

 そんなもので構成された場所。

 ネビズではあまり見られない大規模なものだった。

 

<――あらあら、あなた……こんな場所でコーディネートがなっていないわねえ? 私がちゃあんと仕立てて差し上げるわ>

 

 映っているのは、カーシャだった。

 青を基調としたおとぎ話みたいなドレスをまとった美貌の令嬢。

 ただし、やっていることは下の身分であろう少女に、頭からワインをぶっかけていた。

 

「うわ」

 

「……」

 

 ミゾイは興味深そうに目を見張り、ライワは顔をしかめる。

 

<ほら、こんなアクセサリーが似合うんじゃなくて? ほうら、ぴったり>

 

 カーシャは笑いながら、さらにドレスに調味料の液体などをふりまいている。

 完璧な悪役というか、憎まれ役の行動だった。

 

<よく似合ってるわよぉ? あっははっはははっはは!!!>

 

 勝ち誇って高笑う顔の、それは憎たらしいこと。

 

「こりゃ人望がないのも仕方ないですなあ……」

 

 ギルドマスターがため息をつく。

 

「……まあ、これは一例のようですけどね。私が撮ってたのはたまたまで」

 

 ユオンは言いながら、タブレットの表面を軽くつついた。

 すると、場面が切り替わる。

 

 そこにはバルコニーで一人でたたずむカーシャの姿があった。

 顔は、人前でえらそうにふるまっている時とは、まるで違う。

 暗く冷たい、どこかゾッとするようなものをたたえた瞳だった。

 その目つきは、今のカーシャとどこか通じる何かがある。

 

「……こっちが本質ですかね?」

 

 ギルドマスターは言った。

 

「さあ、それは断言できません。けれども、間違いなく彼女の一部ではあるんでしょうね。だからまあ、そのへんから同じ人間だと思っただけなんですが」

 

 言いながら、ユオンはタブレットをしまう。

 

「ああいう表情(かお)は、亡くなった元・公爵殿とそっくりなのですねえ」

 

「ふむ……。やはり、親子ということですか」

 

「ですかねえ? しかし、あのお父上というかたも色々困ったというか、複雑なかただったようで。兄弟を謀殺した後、ろくな葬儀もしなかったようなのですが――それよりも以前に亡くなっていた夫人……まあ、つまり現・妃殿下のお母上なのですが。彼女のお墓は密かに手入れがなされ卑しからざる扱いがされていたのも見てますよ」

 

「……こじらせちゃってた感じですなあ」

 

「そのようですねえ。まあ、その夫人も出生は子爵家の出でして、正直身分差があったようで。このへんにも複雑な事情はありそうです。はい。そも、元・公爵さんは魔導士としてエリートではなかったですが、為政者としては決して無能というわけじゃなかったと思いますよ? そうじゃなきゃ、簒奪なんかして公爵家をおさめるなんてのは無理な話ですから。ただまあ、ご兄弟との差がありすぎちゃったのが、ねえ?」

 

「いっそ、箸にも棒にもかからない人材だったら、まだマシだったかもしれんですな」

 

「かもしれません。ま、その分というのもおかしな話ですが、実の娘に関してはかなりいい加減な扱いだったようで。貴族に乳母とか教育係なんてのはつくのは当然ですけど、その人選はどこだって相当気を使いますし、可能な限り厳選しますよ。まして、あのご令嬢は一人娘だったわけですから。それがまあ、何というか……あんまり断言はしづらいですけど」

 

「そのへんもちゃんとしてたら、彼女もマシな育ち方してたかも、ですか」

 

「多分ね。子供は割と敏感で敏いものですから、大人の視線とかそんなものには気づきますよ。もちろんのこと、本人の自己責任だって大きいですけれども。当たり散らされるほうは迷惑ですもん」

 

「親の因果が、結局子供へと回ってしまったわけ、ですか」

 

 ギルドマスターは、困った顔でまたため息を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

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