破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
下手するとメモを読んでもよくわかんない時も……
「しかし……。そのあたりの日時で、ヒチュタの街ねえ?」
改めて話を重ねている途中――
ゴトクは金髪を掻きながら、ふと表情を変える。
「なんか、思い当たることでも?」
「いや――あまり確かなことは言えん」
期待のこもったジロの声に首を振りながら、
――確か、あの女もクエストで変装することもあるらしいが……。ヒチュタの街……。そういや、あの時期に行ったあたりは……。
そこで、ゴトクは髪から手を放して、
「ヒチュタから、わりと近いな」
と。
つぶやいた時――
トン
ゴトクの肩に、猫……使い魔が飛び乗った。
「ネイテク様がヒチュタより魔導通信で」
「噂をすればというか、話が来たと思えばか」
ゴトクは苦笑してジロを振り返る。
「そういや、こないだのさ。大猿モンスターの」
「ああ。アレ」
マコネの言葉に、カーシャは声だけの返事。
使っていたカードをきれいにしまいながら。
「ドタバタしたけど、帰りはなかなか面白かったよな」
「もののついでだったけど。思わぬ臨時収入だったわね」
マハーリでのフェイジン関係のクエスト。
これを終えた後――
近くの街で、
『ワイアーム出現:緊急クエスト』
……が発令した。
物のついでというわけで、それも片づけて帰った。
「姐さんを見てると、感覚がおかしくなっちまうけど。ドラゴン種なんざ、1匹倒せば英雄、一攫千金だからなあ」
当然。
報酬も段違いだった。
さらに、
「あの蛇は、色々貯めこんでたしよ」
モンスターの中には、黄金や宝石などを集める習性――
これを持つモノがいる。
ワイアームやグリフィンなどがその例だ。
巣穴に貯めこんでいた宝物類。
ワイアームの死体はギルドへ引き渡したが、これはカーシャのものとなった。
「けど。あの後、ヒチュタへより道した時さあ。面白かったよなぁ」
マコネがくくくっと笑うと、
「うぐ」
バッキーは赤面する。
「どうだい、これからもちょくちょく。みんな喜ぶぜ?」
「それは、ちょっと……」
マコネの言葉に、バッキーは軽く手を突き出して拒否した後、
「あ、あれ? ボロンはいったい、どこ行ったんですかね?」
「なにゴマかしてんだ。あいつなら、おつかいに出したとこじゃねーか。アレコレ、多少は慣れてもらわねえと」
「わざわざ、魔導通信まで使ってくるたぁ、よほど急いでるらしい」
通信機を手にしたゴトクは、やや硬い声で言った。
直接通話の魔導通信。
これを民間で扱う場所は少ない。
ギルドを除けば、商売を許可された専用店だけだ。
ゴトクは、そこからの呼び出しを受けている途中で――
<それがねえ? 例の若旦那、あのお嬢様が来たとか、見つけたとか。そんなことを言ってるらしいんですよ>
「なに?」
<それが普通の場合なら、手がかり足がかりになるんですが……>
「普通じゃあないってわけかい」
<ええ。若旦那以外に、そのお嬢様を見た者は――>
いません。
通信機の向こうで、ネイテクは困った声で言った。
「そりゃ、とうとう思い余って幻でも見るようになったんじゃないのかよ?」
<わかりませんなあ。いや、問題はそれだけじゃないんです>
「まだわいて出たってか」
<若旦那、夜な夜などこかに行ってしまうんですよ>
「……その若旦那ってのは、忍びの術でも心得えてんのか?」
<まさか。家の者が見張ってても、どこをどうしたもんだかいつの間にか出ていって……ふらふら~、とどこかへ行ってしまうようで。朝になれば帰ってくるか、道ばたでウロウロしてるのを発見されるんですな>
「目くらましか、何か魔法でも使ったのか。いや、魔導士に調べさせりゃあいいだろうよ」
<いやあ、そのお役目を不肖私が、ね>
「そうかい。で、何かわかったか?」
<魔法とは違いますが、何かしら妙な魔力や気配の残滓はありますなあ。それがどういうものか、まではわかりません>
「まるで幽霊にもとっつかれてるみてえだな」
ゴトクは苦笑して、やつれた若旦那がフラフラ歩いている姿を想像する。
<あるいは、本当にそうかもしれません>
「そうなると
つぶやいた後、ゴトクはふと窓の外を見て……。
「*****~~~~~~~♪♬」
誰に教わったのか。
安酒場で聞こえてきそうな、趣味の悪い
灰色の、古い僧衣の尼僧姿。
「妙な偶然ってのかな……」
苦笑を漏らした。
マコネは神殿を見上げながら、首をかしげた。
「……にしても、妙てけれんな話じゃねーか?」
商売の神を祭った由緒ある神殿。
ヒチュタの名所? とも言える場所だが――
「その、恋わずらいの若旦那さんが惚れたっていう女? 最初うちの姐さんだって疑ってたんだって?」
「正直なところ、少しな。時期も重なってた」
ゴトクは神殿の前には、お守りや護符、あるいは神像を売る店がある。
その他にも食べ物屋、土産屋などの店々があった。
「確かにこの街へは来たけど、ここにはこなかったわね」
「ああ。川のほうで遊んではきたけどな」
カーシャの言葉に、マコネはウンウンとうなずいた。
「わざわざ、ここまで来る意味あったのか?」
「さてな?」
自分のほうを見るマコネに、ゴトクは肩をすくめる。
「あるかどうか、確証は何もない。だが、何かしら
「それまた。あんたにゃしちゃ珍しく、頼りない話だなぁ」
「――ふうん。まあ、そういうおかしなこともある世の中なんでしょうけど」
カーシャは神殿のほうへと視線を送り、
「あの
バッキーと並んで、神殿を見上げているボロンを見た。
「
ボロンは、田舎から出てきた観光客みたいな反応で、
――ほええ。教会とかもなんかちがってたけど……。こっちも、イメージしてたギリシャっぽいのとはちがうなあ?
バッキーは神殿の形態や雰囲気に嘆息している。