破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
書いてみると整合性? がとれないので弄る……
毎回のようにあるけどなかなか面倒ですね
思わぬことになるのが面白かったしますが
――ふん。確かに、まともな状態じゃあねえな。
夜の闇。
そこに隠れたゴトクは、若旦那の後ろを追いながら目を細めた。
やせ細っていた若旦那だが……。
昼間、バッキーの治癒魔法で活力を取り戻した。
起き上がるなり、
「ひどく、お腹がすいたねえ」
とまあ。
呆れるようなことを言って、起き上がった。
家の者の話では、日に日に食が細くなっていたらしい。
まるで失った精気を取り戻すように、食べて飲んで。
満腹すると、また眠ってしまった。
「ひと晩中うろうろマゴマゴしてたんだから、無理もねえか」
これに、ゴトクは苦笑するしかなかった。
そして、今現在。
やはり厳重な見張りをすり抜けて、若旦那は家を抜け出した。
――まるで吸血鬼だな……。
霧となり、気配を隠し、相手の意識を乱し誤らせて影のごとく歩む。
さすがに霧に変化することはないが、
――結界つっても、そのへんの魔導士、しかも個人単位じゃ限界もあるわな。
魔法の結界も、より巧みに魔力を操る相手には効果が薄い。
あるいは、無力化されてしまう。
――しかし。それにしても、どっか違和感あるな?
ゴトクはそんな疑問を抱えながら、つかず離れず追跡を続ける。
やがて。
――む。
急に、周辺が
――やっぱり妙な魔力を含んで……。いや、むしろ魔力そのものか。
ゴトクは若旦那を追いながら、顔をしかめた。
視界だけではなく、聴覚や嗅覚も鈍くなるのを感じる。
――こいつぁ、鼻や耳の利く種族でもたまらねえな。
マダネッカの使用人には、獣人系もいくらかいた。
それに魔導士の援護があっても、姿を見失ったということか。
――なんだ? 結界か?
前方に、通常の空間を封鎖、あるいは区切るような【壁】がある。
空間をねじり、異なる場所を造り出す力。
――入り込むのは……少なくとも、こっそりってのは難しそうだ。
結界を入り口を観察しながら、ゴトクはため息を吐き出した。
――他の連中は、どうしたもんか。まさか、あの女……力ずくでこじ開けたりしねえだろうな?
ポテポテ、ポテポテ
靄の中を、ボロンは恐れげもなく歩いている。
先に何があるのかは知らないが、
――ま、なんとかなるでしょう。
何ひとつ根拠もないまま、尼僧姿の少女――
いや。
魔性は
「おンや?」
ボロンは立ち止まった。
目の前に、うっすらと見えてきたもの。
小さな屋敷。
いや。
貴族か、あるいは金持ちの別荘らしい。
手入れの行き届いた小さな庭。
小さな白い丸テーブルが置かれている。
そこに、2人の男女が座して何事か語り合っていた。
「はてな?」
ボロンは、何も考えずに近づこうとするが、
グイッ
と。
横から腕を引っ張られて物陰と連れていかれた。
「あー、どなたかな?」
「それはこっちの言いたいことなんだけど?」
ボロンを引っ張ったのは、左右におさげをたらしたメイド。
見た目は、ボロンのそれと同じくらい。
つまり、12~3歳ほど。
「あなた、どこから来たの?」
「えー、あちらから」
ボロンは、自分のやって来た方向を指す。
「どうやって……?」
「歩いてきましたですね」
「やれやれ……」
「はー、どっこい」
「あなた、なんなの? 普通はここに入ってくることはできないはずなのに」
「さあ~……?」
メイドの不審そうな眼に、ボロンは首をかしげるだけ。
「……あなた、どこの種族? 今まで見たこともない」
「いやぁ、お恥ずかしい。どうぞお笑いにならんように。わーたくしにもよくわからないのデス。あははは」
「なにその変な
メイドが呆れている横で、
「あのお2人は、いったい何をなされているのでしょう?」
ボロンはコソコソと男女の様子を見る。
痩せ気味だが、品の良い美青年。
亜麻色の髪をした、美しい乙女。
「あー、あの
「邪魔をしないの。お2人は一時の逢瀬をなさっておられるの」
「お~せ、てなんデス?」
「あなたホント、ガキンチョね」
「いやぁ、まいるなあ。どうぞお笑いにならんように。
「そんなヒト、私知らない」
「知らんって。ほら、髪の毛が赤くって、こう身軽な」
「だから知らないってっ」
メイドが声を潜めながら怒っているところへ、
「おい。なんだ、そいつは」
ぶっきらぼうな声がした。
短髪の、目元が涼しい美少年が立っている。
メイドと同じくらいの年齢で、貴族の従者らしい服装。
「知らない。いつの間にか入り込んでたの」
「
言うなり――
少年はボロンのえり首をつかんで引きずり出した。
ボロンは靄の中へ引きずり出され、
「二度と来るな」
少年の声を受けながら、放り出された。
「わぁあ」
マヌケな声を出しながら空中へ投げ出されたボロン。
その体は、地面に落下する前に――
「……変なところから出てきたのね?」
軽々とキャッチされた。
「あ、
「お前自体も、オカシイ存在ではあるけれど」
ボロンを抱えたまま、カーシャは目の前を見る。
月明かりの下。
小ぶりな家が見える。
庭もあり、大きい。
しかし【お屋敷】という印象ではない。
貴族のそれとは違い、機能性のみを重視したというのか。
「あんたら、何かご用か?」
屋敷から灯りと共に迷惑そうな声が響いた。
ランタンを手にした男が、声と同じ迷惑そうな顔で歩いてくる。
――ドワーフか。
カーシャは、男の外見的特徴からそれを察する。
「いえ。うちの者が夜中に歩いているので、捕まえに来たの」
「何でもいいが……。ここ最近どうも落ちつかんで、こっちゃ迷惑しておるのよ。近所じゃ、どこぞの……金持ちのバカ息子がフラフラ歩いとると言うしな」
「それはそれは――」
ドワーフの言葉に、カーシャは驚いた。
実に、わざとらしい顔で。