破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
解明編に迫ってきた感じです
「なるほどねえ?」
家の周辺を歩きながら、ゴトクはうなずいた。
「確かにうっすらとだが、魔力の
と。
ゴトクはカーシャを振り返りながら、肩をすくめる。
「何せ、魔法を使うでも威力を発揮するでもないからなあ。それこそ、屁みたいなもんだ。昼になる頃には消え失せちまうわな」
「変なところでお土産を買う羽目になったけど。別に偏屈というわけではなかったわよ、あのドワーフ」
カーシャは小さな小箱を手に、ドワーフの家を見た。
「
「あのオッサンは、エルフが好きじゃないらしいからな。まあ、
「他から聞いた話だと、あのドワーフは細工物が得意でお金持ちかつ暇な趣味人にアレコレ造ったり、
カーシャが小箱を開けると――
精巧に造られた、古風な屋敷の模型が入っている。
「他にも1000年前のお城とか、色々あると言っていたわね」
その夜は、星も月もない闇夜だった。
だが。
若旦那はフラフラとしながらも、転ぶことも迷うこともなく歩いていく。
「いやホント、なんかにとっ
近くの建物――屋根の上。
マコネは野良猫みたいに身を伏せていた。
「そこも、近いうちにわかるでしょ。たぶん」
片膝をついたカーシャは、静かに応えた。
「あのエルフが、どうにかすると言ってたし。腕のほうは、確実に信用できる男だからね」
「ふん。確かに、わかりやすくなったぜ」
ゴトクは気配を消しながら、一定の側で進む。
背中にボロンをおぶった状態で――
「おや? なんか、ゆうべとおンなじような感じになってきましたですねえ?」
「しっ」
次第に濃くなっていく
あっという間に視界はおおわれてしまうが、
「お前さんのおかげで、昼間よりも楽なもんだ」
「あ、さよか」
「さようでござるよ」
そんな会話の途中。
視界が少しずつ開いていき、昨夜と同じ別荘が見えてくる。
「なるほどねえ……?」
ゴトクは身を潜めながら、庭の様子をうかがった。
ボロンひとりの時とは違う。
身を隠し、気配をなくしての隠形。
「また、おいでになってしまったのですね……」
亜麻色の髪が揺れる。
水色の瞳を伏せながら、乙女は悲しそうに言った。
「あなたのことを思うと、自然に足が向いてしまうのです」
乙女の手を握り、若旦那は言った。
静かな声だが、強い熱がこもっている。
「ムロッカ様――」
乙女は若旦那の名を呼んだ。
ムロッカ・マグヌス・ナダマッカ。
若旦那の正式な名前。
「これ以上お会いしては、あなたは……。今も命が削られていくのが、おわかりになりませんか?」
「あなたに会うためなら、命など惜しかろうはずがありません」
若旦那は乙女を抱き寄せる。
しかし。
乙女は白い手で、小さくそれに抗った。
「……あなたがお求めになる限り、私には拒むことなどできないのに」
「私がお嫌いなら、仕方もありません。ですが……」
「……そのように言えるほどの、強さがあれば良かった」
「なら、何をためらうことがありましょうか」
ゴトクはあの乙女を遠目に見て、
――どうやらあのお嬢様、どなたかの囲い者らしいな。
囲い者。
つまりは愛人ということだ。
雰囲気や所作から、そのように推測する。
――しかしまあ、古い田舎芝居じゃねえぞ……。
ゴトクは2人のやり取りに苦笑しながら、ゆっくりその場を離れる。
それから。
別荘の周辺をゆっくりと探り始めた。
もちろん?
ボロンを抱えたまま。
――なるほど、けっこう前の造りだな。女ひとりを囲っておくには、それなりに贅沢か……。
家屋を観察して、そんなことを思う。
――にしても……。魅了で引き込んだにしては、ちょいと妙だな。
先ほど見た乙女の様子。
というよりは、その周辺から感じる魔力の質など。
相手を誘い込み、
――そもそも、あの美人さんにゃ主導権ってものがないようだがな……。なら、それを持ってるのは誰だ?
ゴトクの頭で色んな情報や推論が行き交う途中、
「誰だ」
「おっと……」
声と共に、目の前に立った相手。
ゴトクはそれを見ながら、わずかに後退する。
昨夜。
ボロンを追い払った美少年。
「またお前か。しかも、今度はちがうヤツまで」
少年はボロンを不愉快そうに睨む。
「なるほど。近くで見るとハッキリわかった。お前さんたち、何の未練で這い出てきた?」
なあ、幽霊さんたち。
ゴトクは少年を見つめながら、目を光らせた。
「黙れっ!」
少年は言葉をさえぎるように、どこからか片端の剣を抜いていた。
「こいつは物騒だ!」
ゴトクは腰を落とす。
「おやぁ?」
だが、しかし。
場の空気をまるで無視したボロンの一声。
同時に、
バキ
メリ……
空間から、一本の腕が突き出てきた。
その腕はボロンをむんず、と
「な、なんだぁ!?」
少年が顔をこわばらせて叫ぶと、
「ありがてえ」
ゴトクも、それに続いて【外】へ飛び出していった。
「いやはや。おかげで助かった」
飛び出したゴトクは立ち上がりながら、礼をのべる。
「妙な気配はあるけど、こんなところに
ボロンをつかんだまま、カーシャが応える。
「おいらぁ、てっきりとどっかのお墓かと思ってたけどな。怪談じゃよくあるパターンだろ?」
マコネがそう言うと、
「さてねえ。もう少し調べてみないとハッキリしないな、こりゃあ……」
ゴトクは腰に手を当てて、暗い夜空を見上げた。
後日。
「こ、これは……」
若旦那は、目の前に出てきた物に顔色を変えていた。
亜麻色の乙女が持っていた、あのコンパクトに。