破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その109・5、番外・ヒトの縁(えん)-2

 

 

 

 

 

 

 カーシャたちとクーラが再会したのは――

 チュービでのクエストを終えて、その帰りに『勇者』とのトラブルを起こした後。

 

「お帰りのすぐ後で悪いけどね? ちょいと付き合っちゃもらえないかい?」

 

 街に入りなり、ギルドの死霊魔術師(ネクロマンサー)が出迎えた。

 蛇相の女、ミゾイ・シーダ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひいいっ」

 

 ベッドで呆けていた少年――クーラは、カーシャを見るなり悲鳴をあげた。

 他のベッドには、同じような少年少女。

 中には、顔を包帯でおおい隠した者も。

 

 白い建物。

 ギルドの医療院。

 本来は、ギルド直属のギルドナイトや兵士たちを治療する施設だが……。

 

「本来だったら、危険も嗅ぎ取れないバカはほっとくんだがね。新米ヒーラーどもの練習台になるだろうってんで、ここで世話してる」

 

「ふうん」

 

 カーシャの反応は冷淡である。

 同じような経験など、〝地獄(むこう)〟でさんざん味わっていた。

 

「といっても、新米は新米。傷をふさぐのがやっとだ。おかげで、傷のせいで死ぬことはないが……。まあ、このままじゃ冒険者どころか、まともに生きられもしないわな」

 

 ミゾイは切れ長の目でケガ人たちを見ながら、

 

「で。あんたが組み入れた新人さんは、えらく腕が良いらしいじゃないのさ」

 

「……ひぇっ」

 

 ミゾイの視線に反応して――

 バッキーはカーシャの後ろに隠れるように身を引いた。

 

「ずいぶん、話が早いのね」

 

「チュービにだって、緊急用の魔導通信があるんだよ。ある程度のことは、連絡してくるさね」

 

「なるほど。で、どうする?」

 

 カーシャは、自分の後ろで〝()()()()()〟いるバッキーにたずねかけた。

 

 

 結局……。

 バッキーは治療を引き受けた。

 あれこれ考える以前に、目の前にいるケガ人……。

 それも、このままでは重度の身体障害者になるのは確実。

 

 放置する選択肢はなかった。

 

 バッキーの中では、善悪というより罪悪感への恐怖からだ。

 

 また。

 チュービでの経験が、いくらかの自信をつけさせてもいた。

 

 

 

 シュウウウウウ……

 

 魔法の光が、破壊された肉体を治癒していく。

 

 いや。

 それはもはや、復元しているとすべきか。

 さながら、時間を巻き戻すように――

 

「す、すげえ……!?」

 

「立てる……!」

 

「痛みも、ぜんぜんない!」

 

「顔、私の顔……!!」

 

 

 感涙にむせぶ、というやつだろう。

 若い冒険者たちは――

 絶望から救いに、お互いに抱き合って喜んでいた。

 

「はあ……」

 

 治療を終えると、バッキーは椅子に座り込んでため息。

 顔には、バカでもわかるような疲労の色。

 

「見事だね」

 

 ミゾイは笑って、バッキーを見た。

 

 ニコッ

 

 そんな擬音が文字となって浮かびそうな……。

 キャラに似合わない爽やかな笑み。

 

「ふひ。ど、どうも……」

 

 バッキーは、動揺を隠すみたいに頭を掻いた。

 

「とはいえ。まだ不慣れみたいだねえ? もう少し練習を重ねれば、疲れにくくなるだろうさ。そいつは……」

 

 魔力の消費じゃなく、気疲れらしいからねえ。

 

 ミゾイは言って、目を細めた。

 

「ふうん」

 

 カーシャは、顎を指で撫でるようにしてから、

 

「なら。もう少し実地で訓練をしてみる?」

 

 バッキー……というよりは、ミゾイに言った。

 

「え?」

 

 どういうこと? と、顔を上げるバッキーを半ば無視して、

 

「だいたい、どの程度までならいけるのか。試してみても良いかもしれないわね」

 

「ふむふむ。そりゃあ確かに」

 

 ミゾイはカーシャの提案に同意しながら、

 

「たとえば、目玉ならどの程度治せるのか。気になるねえ」

 

 とんでもないことを言った。

 まるで、昼食をどうするか? というような気安さで。

 

「確かに」

 

 カーシャの言葉。

 これが終わった後か、その途中か。

 

 グリュ

 ブチリ

 

「……あ? え? え……?」

 

 バッキーが呆然としている中、

 

「…………***********!!」

 

 文字では表現できない悲鳴。

 それを吐き散らしながら、クーラは転がりまわった。

 

 カーシャの手。

 その上に、2つの眼球がコロコロと弄ばれていた。

 

「疲れているところを悪いけど、またお願いするよ」

 

 ポン

 

 と。

 ミゾイはすまなさそうに、バッキーの肩を叩いた。

 

 少なくとも――

 表面上は、そんな表情で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時は、本気で死んだと思いました……」

 

 目玉をくり抜かれたこと。

 それを思い出してか、クーラは青い顔で言った。

 笑ってはいるが、明らかに無理をしている。

 

「でも、あんな目にあっても、そこからがんばれるなんて、君はすごいと思うよ?」

 

 私なら絶対無理だもの。

 

 バッキーは本心から、尊敬を込めてクーラに言った。

 

「いやあ、むしろアレで覚悟が決まったようなもんです」

 

 クーラは照れた顔で、

 

「あんな目にあって、あんなおっかないヒトに殺されかけて。でも、その後はどんな時でも冷静になれましたから」

 

「そうなの?」

 

「はい。どんなモンスターだって、どんなピンチだって。あの時味わった事に比べたら、ものの数じゃない――」

 

 クーラは、拳を少し握り実感を込めて言った。

 

「まあ……。仲間は半分以上諦めて、地道にやるって切り替えましたけど」

 

「そっか……」

 

「けど。別に間違いでも、負けってわけでもないと思います。やり方が違うだけだ」

 

「じゃあ、クーラ君はまだ上を目指して?」

 

「はい。死ぬかもしれなけど、行けるとこまで行ってみたいから」

 

「……すごいね」

 

「いやあ」

 

 少年を見送った後、バッキーは少しだけ笑う。

 

 それから。

 朝食をどうするかと、再び考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――しかし……。

 

 バッキーと別れた後、クーラは首をひねりながら、

 

 

 ――()()()()と一緒に、普通にパーティー組めるんだから……。すごい胆力だよなあ、あのヒト……。

 

 と。

 青い髪の悪鬼を思い返して、身震いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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