破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-1 望まれぬ来客たち

 

 

 

 

 

 

 

「まるで、観光客の団体だなあ?」

 

 3階の窓から見える様子。

 マコネはそれを見ながら、首をかしげていた。

 奇妙な見世物でも見るような顔つきで。

 

<まあ? 若干手間のかかることになってるんですね、これが>

 

 画面のユオン・キナは苦笑していた。

 

 部屋の中に設置された、特別魔導通信機。

 見た目美少女のエルフは、それを通して話しているわけだが。

 

 ――つまり、オンラインでビデオ通話するような道具かあ……。

 

 バッキーは少し離れた位置でしげしげと観察している

 

「こういうのは、中央……国が率先してやるものじゃないかしら?」

 

 カーシャは淡々と、しかしどこか冷たい眼でそう言った。

 

<こっちとしても、そうしたいんです。もちろん、調査や監視を行う人員はすでにいるでしょう? でも、どういう隠し玉を持ってるんだか、わかんないですからねえ>

 

 と。

 ユオンは肩をすくめる。

 

<過去に、複数の国を巻き込んで崩壊させかねない、そんなのを持った〝お客様〟もいたと記録にあります。なので、できるだけ事前の対策はしておきたいんですよ>

 

「わたしだって、あっさり殺されるか――」

 

 カーシャはトントン、と頭をつつきながら、

 

「洗脳されて、奴隷にされるかもよ?」

 

<その場合は、仕方ありません>

 

「へえ?」

 

 ユオンの返答に、カーシャは小さく笑う。

 

<もし、あなたを支配して使いこなせる相手なら、こっちが何をしても意味はなさそうですから。せいぜい王族を逃がすことくらいです>

 

「それはまた……」

 

 カーシャは肩をすくめた。

 これとほぼ同時に――

 バッキーはマコネと並んで下の様子を見る。

 

 ブレザーの制服姿。

 おそらく高校生であろう男女が、数人。

 わいわいと、落ちつきなく騒いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり……。あの連中は、異世界から召喚された実験動物、ということかしら?」

 

 研究施設の魔導士たちの話。

 それを聞き終えてから、カーシャはつまらなそうに言った。

 

「そういうわけでも、ないんですが。何分(なにぶん)、事故のようなものでして――」

 

 カーシャの言葉に、魔導士たちは困り果てたという顔。

 

「でも、その。異世界から誰かを召喚する魔法を研究してたんですよね……?」

 

 バッキーは、探るようにたずねる。

 

「ええ。王宮でも、昔から研究を重ねてきたもので……」

 

「そんなのを、民間でやってるんですか?」

 

「とんでもない。うちは、れっきとした王宮直属の研究機関です。今回の実験だって、王宮からの命令でやっていたことなんですから……」

 

「実験であんなにたくさん連れてきちゃったんですか?」

 

「だから、事故だったんですって……。召喚先の固定や特定、調査のためにやってたんです。過去におかしなものを呼び出してトンデモないことになった事例もありますから」

 

「ですよね……」

 

 バッキーがうなずいていると、

 

「そもそも、召喚じゃなくって異世界の様子を見るためのものですし……」

 

「いわゆる、【遠見】の拡大版、みたいな」

 

「はい。まさしく――」

 

「ただこっちに来ちゃっただけ?おかしな疫病なんか持ってないでしょうねえ?」

 

 カーシャは魔導士に冷たい声で言った。

 

 ――確かに……。そりゃ大問題だよ……。ジロさんとか、大丈夫だったのかな? 最初寝込んじゃったって聞いたけど。

 

「そのへんは大丈夫です。専用の調査(スキャン)魔法を多重で使用しましたから」

 

「施設の大型魔道具もフルで使いましたので、安全は保証しますよ」

 

 魔導士たちはどこか自慢げに説明。

 

「まあ、安心だと判断しなければ外になんか出さないか……」

 

 カーシャは、窓から見える【日本人高校生たち】に視線を送ってから、

 

「で? あの連中はなにかしら特技を持ってるのかしら」

 

「はい。こちらに来る際、いわゆる〝スキル〟を付与されたそうです」

 

「……誰から?」

 

「全員に聞き取りをしましたが、なんでも女神からもらったとか……」

 

「あいつら、変なクスリでもやってるんじゃないでしょうね?」

 

 カーシャは露骨に嫌な顔をしたが、

 

「いや。そういうこともあるかもしれない、か。で?」

 

「あそこでは、とりあえず非戦闘型スキルの保有者たちを集めて、聞き取り調査などを行っているところです」

 

「なるほど……」

 

 確かに――

 高校生たちの間を、魔導士たちが歩き回ったり話をしたり。

 実に忙しそうな状況だった。

 

「あのー、スキルってどんなのが?」

 

 バッキーが好奇心からたずねると、

 

「まあ色々ですが……。えーと、あそこの痩せすぎで顔色の悪い子とかは、お菓子を自由に召喚できます」

 

「……え? あの、いや」

 

「食べて大丈夫なんでしょうねえ?」

 

 反応に困るバッキーの横で、カーシャは冷たく言った。

 

「もちろん。食べ物ですからね。特に念入りに調べました。これといって害はありませんが……。大半は、あんまり美容や健康にいいものじゃありませんね、アレは。お菓子なんて嗜好品だから、良いと言えば良いんですが」

 

 苦笑する魔導士。

 そこに別の魔導士……性別:女性が口をはさみ、

 

「でも、練度を上げていけばかなり質の高いものが召喚できることもわかりましたよ? 一度、ギンザ? とかの一流店のケーキを出してもらったけど、いや、驚きました。あのお味……かなりのものでした!」

 

「それで魔力を消耗してグロッキーになったけどな?」

 

 話を聞きながら、カーシャとバッキーは何となく顔を見合わせて、

 

「緊急時に役に立つと思えば、案外大したものかもしれないわ」

 

「そうですねえ……」

 

「いや、そもそも。食べ物をポコポコ出せるとなれば、反則とも言える能力(ちから)ね」

 

 カーシャは腕を組んで、小さくうなずいた。

 

「あのう。ところで私はなにをどうすれば???」

 

 バッキーはとまどい気味に言った。

 

「――あ。今回、ミズ・バッキーには、調査や聞き取りなどでご助力を願いたいと」

 

「ええと。確かお生まれが彼らの国と近しいと、ユオン魔導官が」

 

 魔導士たちの返事に、バッキーは微妙な顔になる。

 

 ――なんだろ? こう……なんというか、ものすごい、気まずいんだけど?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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