破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-2 「ぶっちゃけ不審者です」

 

 

 

 

 

 

 

 ――しかし、なんかお堅いっつうか。辛気臭いつうか、地味っつうか? 色気も食い気もねえ街だな。

 

 大通りを歩きながら、マコネはそんな感想を抱いていた。

 

 今回。

 ユオン・キナからの直接依頼で、この街……オグに来ているわけだが。

 

 街中には、本や道具屋、魔法や魔道具に関わるアレコレ。

 そんな店ばかりが目立つ。

 

 魔導士の街。

 というよりは、学者や研究者の街というべきか。

 

 あちこちに色んな研究施設があり、郊外には、

 

 ――王宮が金出してる、でっかい研究所か。いや、それはどーでもいいとして……

 

 マコネは周辺を見まわして、

 

「あの尼僧(シスター)もどき、どこに行きやがった」

 

 途中ではぐれたボロンの姿を探していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……?」

 

「まあまあ、ちょっとこっちへ。いえ、そのスキルをもうちょっとお聞きしたいので」

 

「いや、だから、これは……」

 

「まあまあまあ」

 

 3人の魔導士が、困惑している少年をグイグイと連れていく。

 

「――なんです、あれ?」

 

「……彼のスキルは、特殊な異空間に色んなものを収納、保存しておけるものなんですよ」

 

 バッキーはその様子を見て、ヒソヒソと質問。

 魔導士もヒソヒソ声で返答。

 

「……すごい便利ですね」

 

「……それどころの話じゃありませんよ。下手に使うとどうなるか。過去に同じ系統を持った転移者がいたそうですが、スキルの解析途中で死んじゃったから……」

 

「……なにやったんです? まさか」

 

「……変な誤解しないでください。寿命ですよ。享年107歳」

 

「……ああ、そういう」

 

「……魔導の研究や発展にものすごい貢献はした、したんですが、まだまだ不完全、研究途中でね。そもそも、慎重に慎重を期さないと大事故が起こるから」

 

「……その点お菓子は安全なほうですねえ」

 

「……いやあ、アレだって。どっからどういう原理で召喚してるのか、まるでわからんのですから。研究していけば、食料供給の革命が起きるかもしれない」

 

「……なるほど。けど、なんで屋外で?」

 

「密室に閉じ込めたりすると、不安や不信感をもたれやすいですからね。こういう場所で気楽な感じにやるほうが良い場合もあるんです。それに……」

 

 魔導士は声を潜め、

 

「ちゃんと監視や警護はしてますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ……」

 

 カーシャは、薄く笑った。

 今は、他の魔導士たちと同じ服装をしている。

 

 巨大なドームの中、その刃は金属の壁を真っ二つに切り裂いた。

 まるでパンケーキでも切るように。

 

「いわゆる、剣聖のスキルだそうです」

 

 魔導士は何かをメモしながら説明。

 

「それはすごい」

 

 カーシャの言葉に、嘘はなかった。

 自分のようなドロドロした、腐肉と血の海で育てたものではない。

 きれいで、濁りのない――

 

 ――英雄の剣、とはこうあってほしい……という感じかしら。

 

 と。

 

 ボロリ

 

 【剣聖】の持っていた剣が、砕けて落下した。

 

「鋼鉄製なんですけど、やっぱりもちませんでしたね」

 

 魔導士は特に驚くでもなく言った。

 

「まあ、力を制御すれば普通の武器で十分だと思いますが」

 

 この言葉が終わった後、【剣聖】はゆっくりと振り向いた。

 

 栗毛のポニーテールが揺れて、強い意思の見える瞳。

 芯の強そうな、整った顔立ちの少女。

 

 ――まあ、裏を返せば頑固で強情ってことだろうけど。

 

 カーシャはそんな評価をしながら、パンパンと手を叩く。

 

「凄いものですね。()()()()()同じことをすれば、かなりの技術や魔力が必要でしょう」

 

「いえ」

 

 少女は照れたように顔をそらして、

 

「なし崩しで、手に入れたものですから」

 

 謙虚なことを言った。

 

「奥ゆかしいのですね」

 

 カーシャは、首をかしげるような仕草をして微笑した。

 

「それで――私たちは、元の世界に帰れるでしょうか?」

 

 少女は赤面しかけたのを誤魔化すように、ややきつい口調で魔導士にたずねる。

 

「無責任かつ楽観的なことを言いたくないので、ハッキリと申し上げれば……極めて難しいです」

 

 魔導士は首を振った。

 

「あなたがたの話を聞くに、女神によって送り込まれたとのことですが、私たちは神様ではないので。同じレベルのことを要求されても困るのですよ」

 

 ――間違いなく、本当のことよね。

 

 カーシャは内心肩をすくめる。

 次元を越えて、知的生物を移動させたり、奇妙な【能力(スキル)】を付与したり。

 まさしく、神の御業としか言いようがない。

 

「……そうですか」

 

 少女は表情を隠すように下を向いた。

 

「少なくとも、衣食住は保証します。でも、ここでのあなたたちはいきなり我が国に入ってきた不審者集団です。そこのところは理解しておいてください」

 

 あなたが理知的なかただと思うから、言うのです。

 

 魔導士は同情的ながら、それでもハッキリと言った。

 

「わかります」

 

「来たくて来たわけじゃない、というのもわかりますけどね」

 

「そうですね。自称女神さまに変な力までもらっちゃって……」

 

 苦笑する。

 

「もうひとつ、嫌な現実を申し上げますと――」

 

 黙ってみていたカーシャは、ピンと右の人差し指を立てて、

 

「女神から授けられた能力(スキル)のおかげで、今の対応があることもお忘れなく。それがなければ、あなたたちはいよいよ不審者集団、いえ不法入国者です。ハッキリ言えば被差別階級みたいなものですね。まともに扱われないし、街に入れてもらえないこともありうる」

 

 カーシャの言葉に、少女の顔は強張る。

 脅しでも何でもなく、厳然たる事実なのだから仕方がないけれど。

 

「ある程度安定して暮らすには、冒険者になるしかありません。それだって、ギルドのルールに逆らえば殺されることもありうる。うまくいっても、命の保証などありません」

 

「そう、なんですか」

 

 少女の額に、冷や汗が流れる。

 

「はい。なので、そのスキルは大事にしてください」

 

 カーシャはそう言って、()()()微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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