破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-3 退屈はしないであろうスキル

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ」

 

 少年は芝生の上に座り込んで、ため息。

 暗い表情もプラスして、実に辛気臭い。

 

「なんてひどいガチャだろ……」

 

 手を開いて、少しだけ目を閉じる。

 淡い光。

 それが消えると、手に一冊の本。

 

 小学生時代熱中していた、少年漫画の単行本。

 外観も中身も、真新しい新品。

 ただし。

 内容は以前と変わっていない。まったく同じ。

 

 ――漫画本を召喚できる能力(スキル)かあ……。

 

 少なくとも、戦闘で使えるとは思えない。

 工夫次第で、思ったが。

 1回で出せるのは、1冊だけ。

 次を出すには、多少の時間が必要。

 

「あのー、ちょっとこっちを見てもらえませんか?」

 

「?」

 

 いつの間にか、近くにいた魔導士が言った。

 顔を上げると、そこへ手をかざされる。

 魔法陣が出現して、ゆっくり回転していたが、

 

「特に、悪いところもないようですが……。何か飲み物でも?」

 

「い、いえ……」

 

 少年は苦笑して手を振った。

 気を使われている。

 それを察すると、余計みじめになった。

 

「俺のスキルって、何か役に立つんですかね?」

 

「それは即答しかねますけど」

 

 魔導士は紙コップを手に首をかしげてから、

 

「どうです? アルコールなしの簡易コーディアルですけど」

 

「あ、ど、どうも」

 

 少年は差し出された紙コップを受け取り、周りを見る。

 近くにキッチンワゴンがあり、そこに紙コップや飲み物の容器が載っていた。

 

 一気に飲み干した。

 リンゴのような味。美味い。

 

「こんなのまで、あるんですね……」

 

 空になった紙コップを見て、少年は力なく笑う。

 

「国内でも、国学でも、あんまり流通してませんけれど。便利ではあるはずなんですが」

 

「そう、ですか」

 

 少年は一度うつむいてから、

 

「こんなんを召喚するだけのスキルって、どうなんですかね? 意味あります?」

 

 漫画を魔導士に見せた。

 

「さっきも言ったように即答はできませんけど……」

 

 魔導士は少し間を置きながら、

 

「紙なんて自然界に転がってるものじゃありません。それに、これほどきれいに製本されたものを一瞬で取り出す。こんなことは、普通できません。言いかたは悪いですが、研究対象としては絶対手放したくないですね」

 

「はあ……」

 

「それに、詳しく調べないと断言はできませんが。あなた、というより、あなたのスキルは召喚ではなく模造というほうが正確かもしれない」

 

「模造???」

 

「ええ。つまり、その絵草子、いえマンガですか。それの情報を受け取って、こちらで大気中なんかの物質からコピーを生成する。これはスゴイことです」

 

「え、そうなんですか?」

 

「モチロンです」

 

 魔導士はうなずいた。

 

「加えて。あなたはこうも思ってるんじゃないですか? 別に自分で努力したわけでもない、なし崩しで得た反則技だと」

 

「……」

 

「もうひとつ。素のお前は、そのへんにいる雑魚で何の価値もないとか」

 

「……」

 

「だけどねえ? 才能に恵まれること、美貌に秀でること。高貴な血筋であること。そんなもの、全て運否天賦じゃないですか。もちろんそれを生かしたり、無いなら無いで工夫していく――それも良いことですよ。堅実です。運は自分で引き寄せるものだという意見もあります。これも正しい。が――」

 

 努力で得たものじゃないから。

 だから。

 財産を捨てる。

 顔を醜くする。

 頭を悪くする。

 そんなことをする者がどれだけいますか?

 

 魔導士は静かに言ってから、

 

「それに、生まれた血筋はどうしようもない。身分や境遇に負けないことはできる。でも、根本的な、そう生まれついてしまった現実は変えられない。変えられるなら、それこそ神業です。………あ、スミマセン。くだらないことを長々と言ってしまいましたが、つまりですね」

 

 赤面して咳払い。

 

「そのスキルをどう生かすか。重要なのはこれだと愚考する次第」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおお……! すごいですぞ! そっくりでありながら、違う匂いも感じられるっ。」

 

 と……。

 おかしな口調でしゃべる男子。

 わざとなのか、もともとそういう口調なのか。

 仮に1号とする。

 

「いやまあ……。でも、なんか自分が生成AIにでもなったみたいで……なんか、さあ」

 

 応えたのは、紙に何かの絵を描いている男子。

 仮に2号とする。

 

 紙には、あるアニメのキャラクターが描かれているが――

 まるで。

 本職が描いたかのような、見事な絵。

 

 2号のスキル。

 それは、自分の描きたい絵を理想通りに描けるというもの。

 他人の絵柄をそっくり真似ることも自在。

 

「だいたい、これって異世界で役に立つのか?」

 

「何をおっしゃる。そういう一見ダメそうなスキルで大成功するのが、こういうモノの鉄則ですぞ!?」

 

「そうかなあ……」

 

 2号は首をかしげながらも、描くのはやめない。

 正直、面白くてたまらなかった。

 

「それに吾輩のスキルを加えれば、天下をとれますな!」

 

 1号はそう言って手をかざす。

 空中に、何かの映像――

 

 それは、ある映画……。

 古典の名作ファンタジーを実写映画化したものだった。

 

「いやあ、まさか異世界で映画もアニメも見放題とは……! 思わぬ収穫!」

 

「普通にサブスクでもいいと思うけど」

 

 アレコレ言いながらも?

 1号は2号は映画を観てしまう。

 

 映画が序盤からだんだん盛り上がり始めた頃、だった。

 

「ぜんぜん知らんお話ですけど、面白いもんですね」

 

 かわいい声がした。

 

「なにっ!?」

 

「……なんだぁ?」

 

 2人が振り返れば。

 そこには古いシスターみたいな服を着た少女。

 ボロンである。

 

「いやぁ、お話がなかなか面白いっ。今日はもう、ずっとこれを鑑賞させていただこう」

 

「え、だれ???」

 

 唖然とする2号の肩を叩き、

 

「見てごらんなされ! さっそくに美少女の登場ですぞ!!」

 

 1号はやたらに興奮していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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