破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「……しかしねえ?」
カーシャは戦闘記録を読みながら、魔導士たちを見る。
「ざっと、
「それはまあ……」
「私たちも同感ではあるんですけど」
魔導士たちは、ややばつの悪そうな顔。
「しかし、中央からの指示なので。勝手なことをするわけにもいかんのです」
「貴重な存在では、なかったのかしら?」
少しだけ、肩をすくめるカーシャ。
「正直、戦闘型というのはかなり前例、データも多いんですよ」
1人が頭を掻きながら、言いにくそうに言った。
「ああいう、スキルを持った転移者は過去に何度も発見されてまして――」
「最古の記録では、1200年前までさかのぼりますね」
「ただ、歴史書の記録から推察するに、それこそ建国以前から……」
「それに転移者は我が国だけに現れるわけでもないですし。そうなるともう」
「他国と戦争した際に捕獲したり、殺害した例もあります」
触発されたのか、他の魔導士たちも口々に言い始める。
「なるほど、なるほど……。で、そういうのには、戦闘型が多かった。いえ?」
目立ったのかしら?
性質上、嫌でも目立ちやすい存在でしょうから。
カーシャは、クスクスと意地悪い笑みとなる。
頬を指で掻くような仕草と共に。
「まあ、そうです。そういうものから、かなりの新技術が開発されているわけで」
「……ふうん。つまり、データそのものはもうたくさんある。だから多少危険でも、実戦データをよこせと」
「……中央の意図することは、そうだと思います」
魔導士たちはうなずいたり、やや興奮しながら、
「ただ、そのスキルを再現できるかというと、まだまだ無理ですけど」
「確かに威力は凄まじいものではあります。ありますが……」
「国軍の意見では、軍事力としては半端というか扱いにくい代物だそうで」
「そういうものなの?」
カーシャの問いに、
「使い捨ての捨て駒ならともかく、と……」
「また、そんなものを下手に再現して、スキルを与えた相手に逃げられたらどうなるか?」
魔導士たちは、軍から言われたであろうことを語った。
「確かに。でも、聞くかぎりだけどスキルを持ったお客様たちの子孫が、あちこちにいるわけねえ。そのスキルも受け継がれるわけ? 正直聞いたことがないのだけれど」
「あ。そこですか。はい、スキルそのものは、基本一代限りのようです」
「しかし? そのスキルで培った経験や、肉体への影響――そういうものは、子孫に遺伝していくらしいですな」
「いえ。そもそもの話、先祖の経験が子孫へ伝わっていくのは、どの種族でも同じかと」
「へえ」
カーシャは曖昧な返事をしながらも、
――貴族、いえ王族にもそういう【スキル持ち】の先祖がいる可能性は、高いのか……。
支配階級に、色んな才能に優れた者が多いのは教育や環境のみならず?
――血から伝わったモノが影響している、のかもねえ。
そう考えると、何だか
「あなたたちはそういう、いつどこに現れるかわからないモノを研究し続けるわけ? まあ、大変な仕事ねえ」
「転移者については、可能な限り調査や監視はしていますよ。実際には専用の者がやりますけど」
と。
何気ない顔で言った魔導士に、
「ふーん? つまりは、
「え。あ、はい。そうですね」
魔導士たちの反応はあっさりしていた。
「……それにしては、放置されてるようだけど?」
「彼女の場合は、本人じゃなくって治療した対象を調査する方針だそうです」
「うちとは違うチームが研究してます」
「えらくのんびりしてるのね?」
「友人から聞いた話ですが、研究所で囲い込むではなく、あくまで自然な状態の成長や変化を知りたいとか」
「――それだけ?」
「ええと……」
友人から聞いた、と語った魔導士は困った顔で、
「その、ですね? あなたのパーティーメンバーですし、トラブルになりかねないから、あくまで観察にとどめるとも……」
「おやまあ。気を使っていただいて、光栄ですわ」
カーシャはコロコロと笑う。
「しかし、そんな不確定なお客様をよく見つけられるものだこと」
「いえいえ」
魔導士たちは手を振りながら、
「もちろん100%とはいきません。見落とす場合もあります。また、他国のことはどうしようもないですし」
「セーヅの一件みたいに、誰かに隠匿されたりする例もありますから」
「ああ」
カーシャは、セーヅにおける少年と少女の一件を思い出す。
さらに、
「言われてみると、私もその転移者に心当たりがあるかもしれないわ。そう……」
ジロ、とか言ったかしら?
カーシャが、黒髪の半エルフと共にいる男について言及した。
「あー、あの
魔導士の1人が手を打ってうなずいた。
「ネイテク氏との契約で情報はもらってますし、彼の調査もやりましたね。ま、それとはわからないよう、多少の工夫はしましたが。あと、彼の場合は転移者というより、不運な漂流者だったようです」
「へえ? その
「異世界からこっちへ、いきなり来てしまった場合――何らかの処置を事前にしなければ、そうたとえば召喚魔法とか。でないと魔素への反応で体調を崩します。発熱や嘔吐など、風邪に似た症状が出ますね。これで、死んだというケースはないようですけど」
「でも、何らかの能力を持った者でも、そうなるケースはありますが。この場合は、こっちに来る過程で何かしらの影響で、肉体などが変質してしまったようなものですかねえ。一種の環境適応とも言えます」
「だから、意図的に付与されたスキルとは別種のものですな」
などと――
あれこれ話が飛び交っているところへ、
リ・リ・リ・リ……!!
部屋に設置された通信機がけたたましくなった。
<大変です……! 城壁外のグループが……も、モンスターが襲撃して……!>
どうやら?
緊急事態が起こったようだった。