破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-5 裏の話

 

 

 

 

 

 

 

「……しかしねえ?」

 

 カーシャは戦闘記録を読みながら、魔導士たちを見る。

 

「ざっと、()()()()()の奮闘を見学させてもらったけど、正直あのレベルをいきなり実戦に放り込むのは、無茶だと思うわよ。下手をしなくっても、死ぬ可能性が高い」

 

「それはまあ……」

 

「私たちも同感ではあるんですけど」

 

 魔導士たちは、ややばつの悪そうな顔。

 

「しかし、中央からの指示なので。勝手なことをするわけにもいかんのです」

 

「貴重な存在では、なかったのかしら?」

 

 少しだけ、肩をすくめるカーシャ。

 

「正直、戦闘型というのはかなり前例、データも多いんですよ」

 

 1人が頭を掻きながら、言いにくそうに言った。

 

「ああいう、スキルを持った転移者は過去に何度も発見されてまして――」

 

「最古の記録では、1200年前までさかのぼりますね」

 

「ただ、歴史書の記録から推察するに、それこそ建国以前から……」

 

「それに転移者は我が国だけに現れるわけでもないですし。そうなるともう」

 

「他国と戦争した際に捕獲したり、殺害した例もあります」

 

 触発されたのか、他の魔導士たちも口々に言い始める。

 

「なるほど、なるほど……。で、そういうのには、戦闘型が多かった。いえ?」

 

 目立ったのかしら?

 性質上、嫌でも目立ちやすい存在でしょうから。

 

 カーシャは、クスクスと意地悪い笑みとなる。

 頬を指で掻くような仕草と共に。

 

「まあ、そうです。そういうものから、かなりの新技術が開発されているわけで」

 

「……ふうん。つまり、データそのものはもうたくさんある。だから多少危険でも、実戦データをよこせと」

 

「……中央の意図することは、そうだと思います」

 

 魔導士たちはうなずいたり、やや興奮しながら、

 

「ただ、そのスキルを再現できるかというと、まだまだ無理ですけど」

 

「確かに威力は凄まじいものではあります。ありますが……」

 

「国軍の意見では、軍事力としては半端というか扱いにくい代物だそうで」

 

「そういうものなの?」

 

 カーシャの問いに、

 

「使い捨ての捨て駒ならともかく、と……」

 

「また、そんなものを下手に再現して、スキルを与えた相手に逃げられたらどうなるか?」

 

 魔導士たちは、軍から言われたであろうことを語った。

 

「確かに。でも、聞くかぎりだけどスキルを持ったお客様たちの子孫が、あちこちにいるわけねえ。そのスキルも受け継がれるわけ? 正直聞いたことがないのだけれど」

 

「あ。そこですか。はい、スキルそのものは、基本一代限りのようです」

 

「しかし? そのスキルで培った経験や、肉体への影響――そういうものは、子孫に遺伝していくらしいですな」

 

「いえ。そもそもの話、先祖の経験が子孫へ伝わっていくのは、どの種族でも同じかと」

 

「へえ」

 

 カーシャは曖昧な返事をしながらも、

 

 ――貴族、いえ王族にもそういう【スキル持ち】の先祖がいる可能性は、高いのか……。

 

 支配階級に、色んな才能に優れた者が多いのは教育や環境のみならず?

 

 ――血から伝わったモノが影響している、のかもねえ。

 

 そう考えると、何だか可笑(おか)しくなってくる。

 

「あなたたちはそういう、いつどこに現れるかわからないモノを研究し続けるわけ? まあ、大変な仕事ねえ」

 

「転移者については、可能な限り調査や監視はしていますよ。実際には専用の者がやりますけど」

 

 と。

 何気ない顔で言った魔導士に、

 

「ふーん? つまりは、()()のヒーラーもその対象ということかしら」

 

「え。あ、はい。そうですね」

 

 魔導士たちの反応はあっさりしていた。

 

「……それにしては、放置されてるようだけど?」

 

「彼女の場合は、本人じゃなくって治療した対象を調査する方針だそうです」

 

「うちとは違うチームが研究してます」

 

「えらくのんびりしてるのね?」

 

「友人から聞いた話ですが、研究所で囲い込むではなく、あくまで自然な状態の成長や変化を知りたいとか」

 

「――それだけ?」

 

「ええと……」

 

 友人から聞いた、と語った魔導士は困った顔で、

 

「その、ですね? あなたのパーティーメンバーですし、トラブルになりかねないから、あくまで観察にとどめるとも……」

 

「おやまあ。気を使っていただいて、光栄ですわ」

 

 カーシャはコロコロと笑う。

 

「しかし、そんな不確定なお客様をよく見つけられるものだこと」

 

「いえいえ」

 

 魔導士たちは手を振りながら、

 

「もちろん100%とはいきません。見落とす場合もあります。また、他国のことはどうしようもないですし」

 

「セーヅの一件みたいに、誰かに隠匿されたりする例もありますから」

 

「ああ」

 

 カーシャは、セーヅにおける少年と少女の一件を思い出す。

 さらに、

 

「言われてみると、私もその転移者に心当たりがあるかもしれないわ。そう……」

 

 ジロ、とか言ったかしら?

 

 カーシャが、黒髪の半エルフと共にいる男について言及した。

 

「あー、あの馬面(うまづら)の中年ね」

 

 魔導士の1人が手を打ってうなずいた。

 

「ネイテク氏との契約で情報はもらってますし、彼の調査もやりましたね。ま、それとはわからないよう、多少の工夫はしましたが。あと、彼の場合は転移者というより、不運な漂流者だったようです」

 

「へえ? その根拠(エビデンス)は?」

 

「異世界からこっちへ、いきなり来てしまった場合――何らかの処置を事前にしなければ、そうたとえば召喚魔法とか。でないと魔素への反応で体調を崩します。発熱や嘔吐など、風邪に似た症状が出ますね。これで、死んだというケースはないようですけど」

 

「でも、何らかの能力を持った者でも、そうなるケースはありますが。この場合は、こっちに来る過程で何かしらの影響で、肉体などが変質してしまったようなものですかねえ。一種の環境適応とも言えます」

 

「だから、意図的に付与されたスキルとは別種のものですな」

 

 

 などと――

 あれこれ話が飛び交っているところへ、

 

 リ・リ・リ・リ……!!

 

 部屋に設置された通信機がけたたましくなった。

 

<大変です……! 城壁外のグループが……も、モンスターが襲撃して……!>

 

 どうやら?

 緊急事態が起こったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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