破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
そこは――
オグの街から、ほんの少しだけ離れた場所である。
王宮所属の研究所。
その
森の一部を切り開き、時間や金をかけて建造されもの。
目立ちにくく、かなり注意をしなければ外からはわからない。
危険性の高い実験や研究を行う場所でもあった。
さて。
そんな施設の、庭に当たる場所へ……。
ボオオォ……ッッ!!
巨大なモンスターが、凶悪な前脚で防壁を叩きつけている。
オウルベア。
打たれた壁は、揺れる。
特殊な合金と防御魔法で加工処理された防壁。
オウルベアの攻撃でも破れることはない。
ないのだが――
いるのは、オウルベアだけではない。
子供でも駆除できるから小型。
危険だが、食肉として狩りの対象ともなるモノ。
さらに、ゴブリンやオーガの姿まで。
「こりゃ嫌でも籠城になりそうですね……」
3階の窓から状況を見て、魔導士が言った。
「統率されてないのが、救いと言えば救いだけどね……」
その言葉通り。
集まったモンスターたちは、それぞれ勝手に行動している。
中には争ったり、小型を喰っているものもいた。
共通しているのは、
「どれも、ひどく興奮して凶暴化してるってことですな」
「おかげで同士討ち……いや、別に仲間でもないのか」
状況を観察している魔導士たちへ、
「いや、なんでそんなに冷静なんだよ!?」
近くにいた少年が叫んだ。
ほぼ半泣きになっている。
「落ちついて、落ちついて。場所がら相応の対策はしてますし」
「この施設には警備も整えてありますよ」
「我々も魔法に関しては、それなりのことができます。応援も呼んでますから、ここは冷静に」
対する魔導士たちは、のほほんとしている。
少なくとも、少年にはそう見えた。
「だいたい……何なんだよ、あの変なクマ……いや、鳥? ムチャクチャだ! デカすぎる!!」
「オウルベアですな。確かに危険なので、あまり刺激しないほうが得策です」
「まるで怪獣じゃないか! 何メートルあるんだよ!?」
少年は魔導士の答えに、逆切れしたように怒鳴る。
「平均で6メートルほど。あれはやや大きいみたいですね」
「重さは軽くても、10トン以上かと」
「~~~~~~~~!?」
少年は声もなくわめきながら、グルっとある場所を向いた。
そこには、先ほど彼が召喚したモノが台座に置かれている。
89式5・56mm小銃。
モンスター襲撃前までは、これの調査が行われていた。
少年はしばらく銃を睨んだ後、
「あんなのに、こんな銃が効くもんか……!」
床を叩いて怒鳴った。
「いや、まったく効果がないとか、それはないでしょうけど」
「でも。あのサイズだし、それなりの魔力を持ったオウルベアには効果は薄いですかね」
「しかしねえ?」
魔導士たちは幼児に言い聞かせるように、
「銃火器の召喚スキルはすごいものですけど……。あなた、ちゃんと扱えるんですか?」
「素人が下手にいじくると大事故になりますよ?」
「うぐう……」
指摘されて、少年は反論もできなかった。
彼のスキルはあくまで〝召喚〟。
剣聖や槍戦士のように、武器を扱えるわけではない。
少年の様子を見ながら魔導士たちは、最初のスキル調査を思い出す。
「え? 銃を知ってるの?」
「いや。まあ、そりゃあ――」
「それはあの、魔法とかを弾に込めて撃つとか、そういう」
「そういうタイプもありますよ。弾丸に魔法をプラスするとか、魔法そのものを発射するとか」
「えええ……」
こういった会話があったのだが――
――まあ、調べた結果あくまで物理的破壊力しかないのはわかったけど。矢返しや矢除けの魔法を使われたら無意味だぞ、これは。兵器としては非常に優秀であるけど。
この少年は、死ぬまで軟禁されるだろうな。
魔導士たちの意見は一致していた。
それはさておき。
何故、こうなったのかというと。
「――性質として、ヘイト・コントロールに似たもののようですねえ」
魔導士の言葉に、少女は首をかしげた。
「何それ?」
「簡単に言うと、モンスターを自分のほうに引き寄せる魔法ですね。つまり、囮になるわけで」
「そういうのがあるんだ?」
「危険なので、そのまんま使うことはほぼないですが。自分の使い魔とか、ゴーレムを通して使用することがほとんどです」
「え? ってことは、使ったらモンスターが寄ってくるわけ? ヤバいじゃん!」
「はい。だから、今まで使うのを禁止させてもらってましたでしょう?」
「……それで? ずーっと私に張り付いてたわけ?」
少女は嫌な顔をする。
スキルが確認されてから、食事から就寝、入浴。
さらにはトイレの時監視役がついてまわっていた。
「はい。それだけ危険なので。しかし、女同士ですし」
「いくら女同士ったって、ヤだよ!」
「まあまあ」
怒る少女をなだめて、十分な監視のもと使用されたスキル。
それは、
「――つまりは、古い言葉で口笛のことですが……」
これが使用された、数分後。
研究所は、モンスターの群れに囲まれてしまった。
「こりゃ、ホントに警戒してて良かったですねえ……?」
魔導士の1人が、肩をすくめた。
使い魔を通して外の状況を確認している。
「ほぼ自爆スキルとも言える」
「しかしまあ……。あの
「それも、極めて厳重な、ね。気の毒な話じゃあるけど」
「で、外の様子は?」
「喰い合いはまだ続いてるけど、どれも逃げる様子はないなあ……」
「つまりスキルの影響がそれだけ長いわけか。こらますます厄介だ」
「ドラゴンでも呼ばれたら国が傾くなあ」
「念のために、大型爆裂魔法の……」
そう言いかけた時――
モンスターの群れが、弾けた。
オウルベアが頭を砕かれ、倒れる。
その地響きの中、文字通り血の海ができあがっていった。
まるで、巨大なハンマーで叩き潰されるように。
「うわあああ……」
しばらくして。
モンスターを駆除した女が、黒い剣を手に研究所のほうを向く。
「まさに、バケモンだな……」
「いわゆる魂の力、オーラを使っているようだけども、あんなのは……」
「上が彼女の研究しろっていったらどうする?」
「辞表を出すか、トンズラするね。死にたくねーもん」