破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「やっぱりですねえ。この一件は事故だと思うんですよ」
と。
バッキーは腕を組んで言った。
かなり、重々しい表情をしている。
「こちらの実験でも、別に召喚……それも、あんな大勢を、変なスキルまでくっつけて呼ぶなんて、ぜんぜん考えてなかったはずですよね?」
この言葉に、
「そりゃ当たり前ですがな」
「ンなことがホイホイできるなら、もっとうまくやりますよ」
「王宮が武力も金もフルに使って、万全の用意をして……から、じゃないと許可おりないですね」
「召喚魔法を発動する以前に、その準備だけでも莫大な予算がかかるでしょうし」
魔導士たちはうなずき合う。
「つまり、あくまで小規模な実験と、女神様? のやったことが運悪く重なるかして――」
バッキーが両手の人差し指を1本ずつ立てて、
「本当なら、来るはずのなかったあの子たちが、こっちに来ちゃったと」
こういう感じだと思うんです。
「で……。そのダイノヘイムって、どこにあるわけ?」
「えーとですねえ」
カーシャが視線を送ると、魔導士のひとりがワンドをモニター画面に向けて、
「ここがヤオアムトでして……」
と。
真ん中あたりから半分横線で区切られた下側――
その右上あたりを拡大させた。
「問題のダイノヘイムは、ユオン女史のお話から推測するに……」
大陸地図が斜め下に移動していき、東南の一部分が光った。
「大よそ、この辺りだと」
「……遠いわね」
「はあ。このあたりになると、もー交易もクソもありませんし。陸海空、どのルートでも行くのは困難ですねえ。途中でモンスターに襲われて全滅は必至。その他、自然環境で遮られてます。転送ゲートでも使えば別ですが」
「そういうのが、あるんですか?」
「ありません。少なくとも、この国には」
バッキーの問い。首を振る魔導士。
「それに、今わかってる情報もあくまで伝聞ですからねえ……。どこまで当てになるのやら」
「……ユオン女史なら、行き来する方法を知ってるんじゃなくて?」
「まさか……」
「いくらなんでも……」
カーシャの意見に、魔導士たちは否定的。
「ふむ。方法があったとして、わざわざ向こうまで送る義務もない、かしら?」
カーシャはすぐにそう言った。
「そらま、そうです」
「向こうさんは困ってるかもしれんですけど。こっちも意図的に割って入ったんじゃありませんから」
しばらくの間。
場に白けた空気が漂っていたが――
「しかし、世界を救うねえ? ずいぶんとスケールの大きいこと」
カーシャは、思い出したように言って少しだけ笑う。
「……その世界というのは、どこまでの範囲なんですかね?」
そう発言した魔導士のひとり。
なんとなく?
場の視線は、そこへ集中していった。
「この大陸全体なのか、あらゆる大陸や海、我々の知らない未知の領域まで含めて? それを救うってどういうことなんでしょうか……」
この発言に、他の者も刺激されてか、
「いやいや、ンなことを言ったら……」
「待った待った、そもそも、何をどうやって何から? 彼らのスキルは、戦闘にしても技術にしても中途半端で、少なくとも大陸規模で災厄をもたらすモンスターに太刀打ちできるとは――」
「モンスターとの戦闘で、絵を描いたりお菓子を出す能力がどう役に立つンですか?」
「……」
「……」
「……」
「……」
「なんだか、変な相手に化かされてるみたい……」
いいかげんで疲れてきたバッキーは、そんな弱音を吐く。
「古い言い回しで語るなら、【百面相】の踊りを見たような、というヤツかしら」
カーシャは肩をすくめる。
「ひゃくめんそう?」
「百の顔を持つ
「ははあ……」
何となく、意味を察してバッキーはうなずく。
――日本で言うと、狐につままれたような……って感じかしらん?
「まあ、確かにそういう感じですが……」
魔導士たちも疲れた顔で、
「ナルテホッパーのせいだとするほうが、気が楽ですね」
「案外、彼らを呼び寄せた女神というのも、ナルテホッパーの化身じゃないですか?」
「かもしれないや。あははは……」
と。
半分ヤケクソみたいな表情で笑い合っている。
「なるて、ほっぱ?」
聞きなれない単語に首をひねるバッキーへ、
「さっき言った百面相の正式な名前ですよ。100、あるいは1000の顔とか化身を持つというイタズラの神よ。物語や詩にもよく出てきますな」
「世界の根源である、闇、あるいは混沌を象徴する神ともされてますが。まあ、色んな神様や迷信がごたまぜになった結果でしょう。原型は道化、トリックスターだとされてます」
魔導士たちは簡単な説明を語る。
「ふうん……」
バッキーが、
――どっかで聞いたような、ないような?
そんなことを考えていると、
バン!!
いきなり、だった。
叩き壊さんばかりの勢いで、部屋のドアが開かれた。
「え、えらいこってす!!」
飛び込んできた、その人物――
ひとりの魔導士が、凄まじい形相で叫ぶ。
滝のような汗を流して、目が血走って狂人のようだった。
「ど、どうした……連絡なら通信で」
「い、い、いや、現物を見てもらわないと!!!」
叫ぶ魔導士は、連れてきたらしい少女を腕をつかんでいる。
転移者のひとりだ。
「お、折れるううう……!」
少女は苦痛でうめいていた。
「わかったから、落ちつけ!」
少々の騒ぎ。
この後――
「い、インターネットだ、これ……」
バッキーは、少女の持っていたスマホを見て震えあがる。
そのスマホは、どういう原理か……。
「何語だ、これ!」
「いや待て。トリヤマ氏のアレじゃないか?」
「すると、これは……」
向こうの世界、日本とつながっていた――