破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-10 混沌

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりですねえ。この一件は事故だと思うんですよ」

 

 と。

 バッキーは腕を組んで言った。

 かなり、重々しい表情をしている。

 

「こちらの実験でも、別に召喚……それも、あんな大勢を、変なスキルまでくっつけて呼ぶなんて、ぜんぜん考えてなかったはずですよね?」

 

 この言葉に、

 

「そりゃ当たり前ですがな」

 

「ンなことがホイホイできるなら、もっとうまくやりますよ」

 

「王宮が武力も金もフルに使って、万全の用意をして……から、じゃないと許可おりないですね」

 

「召喚魔法を発動する以前に、その準備だけでも莫大な予算がかかるでしょうし」

 

 魔導士たちはうなずき合う。

 

「つまり、あくまで小規模な実験と、女神様? のやったことが運悪く重なるかして――」

 

 バッキーが両手の人差し指を1本ずつ立てて、

 

「本当なら、来るはずのなかったあの子たちが、こっちに来ちゃったと」

 

 こういう感じだと思うんです。

 

「で……。そのダイノヘイムって、どこにあるわけ?」

 

「えーとですねえ」

 

 カーシャが視線を送ると、魔導士のひとりがワンドをモニター画面に向けて、

 

「ここがヤオアムトでして……」

 

 と。

 真ん中あたりから半分横線で区切られた下側――

 その右上あたりを拡大させた。

 

「問題のダイノヘイムは、ユオン女史のお話から推測するに……」

 

 大陸地図が斜め下に移動していき、東南の一部分が光った。

 

「大よそ、この辺りだと」

 

「……遠いわね」

 

「はあ。このあたりになると、もー交易もクソもありませんし。陸海空、どのルートでも行くのは困難ですねえ。途中でモンスターに襲われて全滅は必至。その他、自然環境で遮られてます。転送ゲートでも使えば別ですが」

 

「そういうのが、あるんですか?」

 

「ありません。少なくとも、この国には」

 

 バッキーの問い。首を振る魔導士。

 

「それに、今わかってる情報もあくまで伝聞ですからねえ……。どこまで当てになるのやら」

 

「……ユオン女史なら、行き来する方法を知ってるんじゃなくて?」

 

「まさか……」

 

「いくらなんでも……」

 

 カーシャの意見に、魔導士たちは否定的。

 

「ふむ。方法があったとして、わざわざ向こうまで送る義務もない、かしら?」

 

 カーシャはすぐにそう言った。

 

「そらま、そうです」

 

「向こうさんは困ってるかもしれんですけど。こっちも意図的に割って入ったんじゃありませんから」

 

 しばらくの間。

 場に白けた空気が漂っていたが――

 

「しかし、世界を救うねえ? ずいぶんとスケールの大きいこと」

 

 カーシャは、思い出したように言って少しだけ笑う。

 

「……その世界というのは、どこまでの範囲なんですかね?」

 

 そう発言した魔導士のひとり。

 

 なんとなく?

 場の視線は、そこへ集中していった。

 

「この大陸全体なのか、あらゆる大陸や海、我々の知らない未知の領域まで含めて? それを救うってどういうことなんでしょうか……」

 

 この発言に、他の者も刺激されてか、

 

「いやいや、ンなことを言ったら……」

 

「待った待った、そもそも、何をどうやって何から? 彼らのスキルは、戦闘にしても技術にしても中途半端で、少なくとも大陸規模で災厄をもたらすモンスターに太刀打ちできるとは――」

 

「モンスターとの戦闘で、絵を描いたりお菓子を出す能力がどう役に立つンですか?」

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

「なんだか、変な相手に化かされてるみたい……」

 

 いいかげんで疲れてきたバッキーは、そんな弱音を吐く。

 

「古い言い回しで語るなら、【百面相】の踊りを見たような、というヤツかしら」

 

 カーシャは肩をすくめる。

 

「ひゃくめんそう?」

 

「百の顔を持つ悪戯の神(トリックスター)が、おかしな踊りで周りを混乱させた。古い神話を元にした言葉よ」

 

「ははあ……」

 

 何となく、意味を察してバッキーはうなずく。

 

 ――日本で言うと、狐につままれたような……って感じかしらん?

 

「まあ、確かにそういう感じですが……」

 

 魔導士たちも疲れた顔で、

 

「ナルテホッパーのせいだとするほうが、気が楽ですね」

 

「案外、彼らを呼び寄せた女神というのも、ナルテホッパーの化身じゃないですか?」

 

「かもしれないや。あははは……」

 

 と。

 半分ヤケクソみたいな表情で笑い合っている。

 

「なるて、ほっぱ?」

 

 聞きなれない単語に首をひねるバッキーへ、

 

「さっき言った百面相の正式な名前ですよ。100、あるいは1000の顔とか化身を持つというイタズラの神よ。物語や詩にもよく出てきますな」

 

「世界の根源である、闇、あるいは混沌を象徴する神ともされてますが。まあ、色んな神様や迷信がごたまぜになった結果でしょう。原型は道化、トリックスターだとされてます」

 

 魔導士たちは簡単な説明を語る。

 

「ふうん……」

 

 バッキーが、

 

 ――どっかで聞いたような、ないような?

 

 そんなことを考えていると、

 

 

 

 バン!!

 

 

 

 いきなり、だった。

 

 叩き壊さんばかりの勢いで、部屋のドアが開かれた。

 

「え、えらいこってす!!」

 

 飛び込んできた、その人物――

 ひとりの魔導士が、凄まじい形相で叫ぶ。

 滝のような汗を流して、目が血走って狂人のようだった。

 

「ど、どうした……連絡なら通信で」

 

「い、い、いや、現物を見てもらわないと!!!」

 

 叫ぶ魔導士は、連れてきたらしい少女を腕をつかんでいる。

 転移者のひとりだ。

 

「お、折れるううう……!」

 

 少女は苦痛でうめいていた。

 

「わかったから、落ちつけ!」

 

 少々の騒ぎ。

 

 この後――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「い、インターネットだ、これ……」

 

 バッキーは、少女の持っていたスマホを見て震えあがる。

 

 そのスマホは、どういう原理か……。

 

 

 

「何語だ、これ!」

 

「いや待て。トリヤマ氏のアレじゃないか?」

 

「すると、これは……」

 

 

 

 向こうの世界、日本とつながっていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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