破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-11 悪いけどできることはない

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドタバタしてたようけど?」

 

 カーシャは、一同を見まわしてから言った。

 

「はい……」

 

「あの、騒いでたスキルとやらはどうしたのかしら?」

 

「……転移者も、調査報告書も、何もかもぜーんぶ、中央が持ってちゃいました」

 

「どっちにしろ、向こうからの指示だし、報告も提出も決まってたんですが」

 

「未練はありますよ、異世界との通信可能なんてことは……」

 

 はあ、と辛気臭いがため息がそこら中で吐き出される。

 

「……スキルを持っている娘(こ)はどうなるんでしょうか?」

 

「滅多なことにはならんと思いますけど……」

 

 バッキーの問いに、魔導士たちは困った顔。

 

「でも、そんな隔離みたいな……」

 

 言いかけてバッキーは、渋い顔になってうつむき、

 

「下手に、他の子が知ると混乱が起きる……ですか」

 

「でしょうね……」

 

 ――逆に、困ったことになっちゃったのか……。

 

 下手に希望みたいなものが出てくる。

 そのせいで、余計にこじられる可能性は高いのだ。

 

 ――ネット通信ができるからって、人間がそっくり行き来できるとは限らないんだよね……。

 

「もうひとつ、気になってるのは向こうで起こってるというパンデミックですか」

 

「……あ」

 

 魔導士の言葉に、バッキーは顔を上げた。

 

「疫病が流行していた?」

 

 カーシャが、わずかに目を大きくする。

 

「彼らが召喚される前、あっちではよくわからない病気が流行(はや)っていたそうですが――これの、症状が……」

 

 転移者がこちらに来てしまった時に起こる、生体反応とよく似てる、いやそっくりなんですな

 

 魔導士たちは言いながら、顔を見合わせる。

 

「ま、それは大気中の魔素に肉体が反応、同時に適応する過程で起こる症状で」

 

「疫病じゃないんですね」

 

「あっちでも、原因は不明だとかで社会不安にもなってると」

 

「……ひょっとして、向こうに魔素が発生してる、とでも?」

 

「あるいは、そうかもしれません」

 

 カーシャの返事に対して、魔導士は妙な顔でうなずく。

 

「病気?」

 

 バッキーはわずかに身を乗り出した。

 

「こっちに来れるということは、向こうに行けるとしても不思議はない。その中で……魔素がくっついていたとすれば?」

 

「でも、だからって……そんなにたくさんの?」

 

 バッキーが反論すると、

 

「魔素というのは、あるものに反応して増殖する性質があります」

 

「確か、向こうの呼び方だと【ほうしゃせん】でしたか」

 

「……なっ!?!」

 

 いきなり出てきた、とんでもない単語。

 バッキーは目を見開いて、

 

「いや、それって確か、どこにだって……?」

 

「はあ。ちょいとインターネットなるもので、調べましたが、そうらしいですね。多分こっちでもそうなんでしょう」

 

「違うのは、こっちには昔から普通にあるものだけど……」

 

「向こうには、いきなり入ってきた未知のモノになりますねえ」

 

「それで、向こうは魔素のせいで滅ぶとでも?」

 

「少なくとも、混乱は免れないでしょう」

 

「人間はともかく、他の生物にどう影響するのか……」

 

 カーシャの言葉に、魔導士たちはうなずき合い、

 

「気になっているのは、こういった情報です」

 

 と。

 ひとりが空中に画像を映し出した。

 

 様々な言語で書かれた文章。

 そして。

 画像、映像。

 

「モンスター?」

 

 それを見て、カーシャは首をかしげた。

 

 巨大なクマ。

 巨大な魚。

 巨大な犬。

 巨大な猿。

 巨大な虫。

 

 とにかく、異様なサイズの生物。

 こういったものが、無数に……。

 

「いえ。これは既存の生物が魔素に過剰適応したものでしょうな」

 

「正確に言うなら、モンスターとなる過程ですか」

 

「これらは、あくまでいくらかサイズが大きくなっただけでしょう」

 

「現に……」

 

 魔導士がワンドを振ると――

 

 兵士に囲まれ、地に伏した巨大クマの画像が映る。

 

「向こうの銃器などで十分に駆除できるようです」

 

「虫なんかでも危険っちゃあ、危険ですが。その分攻撃しやすいとも言えます」

 

 確かに。

 カマキリやバッタ、甲虫など。

 大きくはなった分動きは鈍いらしい。

 

 バットで殴り殺される動画。

 車で轢きつぶされる動画。

 

「サイズの分、極端な繁殖もできないし、餌もいる」

 

「そも、体の構造がサイズに合ってないから、負担も大きいですね」

 

「もっとも、これは陸地の話で……」

 

 次の映像。

 それは、海上に見える巨大背びれ。

 海底で蠢くタコ、カニ。

 いずれも異常なサイズ。

 

「水中ではかなりの巨大化が見られます。地上よりも負担が少ないんでしょう」

 

 ――まるで、モンスターパニックだ。これ……。

 

「それと、一番気になるのはこれ」

 

「これは……!」

 

 次に映ったもの。

 それに、バッキーは思わず身を乗り出した。

 

 巨大な、地下へと続くであろう門……いや、入口。

 

「ダンジョン?」

 

「はあ。どうも、ダンジョンまで発生しとるようですね」

 

「場所は、トーキョー、ギンザ、都心部の中みたいだ。こりゃ厄介な」

 

「最後に確認した情報だと、モンスターが出てきてる様子はないから……」

 

「発生して日は浅いんでしょう」

 

「しかし、あちこちで発生が確認されてるから……」

 

「そのうち、どんどん発生するのと違いますか?」

 

「ど、ど、ど、どうなるんですか!?」

 

「いや、どうなるって言われても……」

 

 バッキーが大あわてで詰め寄り――

 魔導士たちは及び腰になる。

 

「情報源の()()()も、スキルを持った相手も連れていかれちゃったし、私たちにはどうにも……」

 

「それに」

 

 カーシャは淡々とした声で、

 

「この国にも、何かする義務も責任もない。交流も何もない、見も知らぬ国のことだから」

 

「……」

 

 その言葉に、バッキーはうなだれるばかり。

 

「いや、でもですな」

 

 魔導士のひとりが若干わざとらしい声で、

 

「あちらの兵器、そのレベルを考えるならモンスターも致命的な脅威ではないでしょう。グリフォンやヒドラだって十分に……」

 

「じゃ、街中で()()()()()()()()をバカスカ撃つんですか……?」

 

 バッキーは暗い顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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