破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「ドタバタしてたようけど?」
カーシャは、一同を見まわしてから言った。
「はい……」
「あの、騒いでたスキルとやらはどうしたのかしら?」
「……転移者も、調査報告書も、何もかもぜーんぶ、中央が持ってちゃいました」
「どっちにしろ、向こうからの指示だし、報告も提出も決まってたんですが」
「未練はありますよ、異世界との通信可能なんてことは……」
はあ、と辛気臭いがため息がそこら中で吐き出される。
「……スキルを持っている娘(こ)はどうなるんでしょうか?」
「滅多なことにはならんと思いますけど……」
バッキーの問いに、魔導士たちは困った顔。
「でも、そんな隔離みたいな……」
言いかけてバッキーは、渋い顔になってうつむき、
「下手に、他の子が知ると混乱が起きる……ですか」
「でしょうね……」
――逆に、困ったことになっちゃったのか……。
下手に希望みたいなものが出てくる。
そのせいで、余計にこじられる可能性は高いのだ。
――ネット通信ができるからって、人間がそっくり行き来できるとは限らないんだよね……。
「もうひとつ、気になってるのは向こうで起こってるというパンデミックですか」
「……あ」
魔導士の言葉に、バッキーは顔を上げた。
「疫病が流行していた?」
カーシャが、わずかに目を大きくする。
「彼らが召喚される前、あっちではよくわからない病気が流行(はや)っていたそうですが――これの、症状が……」
転移者がこちらに来てしまった時に起こる、生体反応とよく似てる、いやそっくりなんですな
魔導士たちは言いながら、顔を見合わせる。
「ま、それは大気中の魔素に肉体が反応、同時に適応する過程で起こる症状で」
「疫病じゃないんですね」
「あっちでも、原因は不明だとかで社会不安にもなってると」
「……ひょっとして、向こうに魔素が発生してる、とでも?」
「あるいは、そうかもしれません」
カーシャの返事に対して、魔導士は妙な顔でうなずく。
「病気?」
バッキーはわずかに身を乗り出した。
「こっちに来れるということは、向こうに行けるとしても不思議はない。その中で……魔素がくっついていたとすれば?」
「でも、だからって……そんなにたくさんの?」
バッキーが反論すると、
「魔素というのは、あるものに反応して増殖する性質があります」
「確か、向こうの呼び方だと【ほうしゃせん】でしたか」
「……なっ!?!」
いきなり出てきた、とんでもない単語。
バッキーは目を見開いて、
「いや、それって確か、どこにだって……?」
「はあ。ちょいとインターネットなるもので、調べましたが、そうらしいですね。多分こっちでもそうなんでしょう」
「違うのは、こっちには昔から普通にあるものだけど……」
「向こうには、いきなり入ってきた未知のモノになりますねえ」
「それで、向こうは魔素のせいで滅ぶとでも?」
「少なくとも、混乱は免れないでしょう」
「人間はともかく、他の生物にどう影響するのか……」
カーシャの言葉に、魔導士たちはうなずき合い、
「気になっているのは、こういった情報です」
と。
ひとりが空中に画像を映し出した。
様々な言語で書かれた文章。
そして。
画像、映像。
「モンスター?」
それを見て、カーシャは首をかしげた。
巨大なクマ。
巨大な魚。
巨大な犬。
巨大な猿。
巨大な虫。
とにかく、異様なサイズの生物。
こういったものが、無数に……。
「いえ。これは既存の生物が魔素に過剰適応したものでしょうな」
「正確に言うなら、モンスターとなる過程ですか」
「これらは、あくまでいくらかサイズが大きくなっただけでしょう」
「現に……」
魔導士がワンドを振ると――
兵士に囲まれ、地に伏した巨大クマの画像が映る。
「向こうの銃器などで十分に駆除できるようです」
「虫なんかでも危険っちゃあ、危険ですが。その分攻撃しやすいとも言えます」
確かに。
カマキリやバッタ、甲虫など。
大きくはなった分動きは鈍いらしい。
バットで殴り殺される動画。
車で轢きつぶされる動画。
「サイズの分、極端な繁殖もできないし、餌もいる」
「そも、体の構造がサイズに合ってないから、負担も大きいですね」
「もっとも、これは陸地の話で……」
次の映像。
それは、海上に見える巨大背びれ。
海底で蠢くタコ、カニ。
いずれも異常なサイズ。
「水中ではかなりの巨大化が見られます。地上よりも負担が少ないんでしょう」
――まるで、モンスターパニックだ。これ……。
「それと、一番気になるのはこれ」
「これは……!」
次に映ったもの。
それに、バッキーは思わず身を乗り出した。
巨大な、地下へと続くであろう門……いや、入口。
「ダンジョン?」
「はあ。どうも、ダンジョンまで発生しとるようですね」
「場所は、トーキョー、ギンザ、都心部の中みたいだ。こりゃ厄介な」
「最後に確認した情報だと、モンスターが出てきてる様子はないから……」
「発生して日は浅いんでしょう」
「しかし、あちこちで発生が確認されてるから……」
「そのうち、どんどん発生するのと違いますか?」
「ど、ど、ど、どうなるんですか!?」
「いや、どうなるって言われても……」
バッキーが大あわてで詰め寄り――
魔導士たちは及び腰になる。
「情報源の
「それに」
カーシャは淡々とした声で、
「この国にも、何かする義務も責任もない。交流も何もない、見も知らぬ国のことだから」
「……」
その言葉に、バッキーはうなだれるばかり。
「いや、でもですな」
魔導士のひとりが若干わざとらしい声で、
「あちらの兵器、そのレベルを考えるならモンスターも致命的な脅威ではないでしょう。グリフォンやヒドラだって十分に……」
「じゃ、街中で
バッキーは暗い顔でそう言った。