破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「送還の術」
見た目、エルフの美少女――
ユオン・キナはふうん、と天井を見上げた。
「言いかたを変えると、こちらから向こうへ移動する魔法とも言えますか」
「可能、ではないようだね」
バルコニーから外を見る国王は、静かに言った。
「そうですね。
「神にでも祈るしかないのかなあ」
「さてはて。神様は気まぐれですからね、果たして都合よく祈りを聞き届けてくださるものか……」
「困ったねえ……。でも、それはわかった。向こうとつながってるというのは?」
「あくまで、通信のみですね。言語は今までの研究もあって十分わかります。正直、情報の海、大海ですよ。嘘も真もごちゃまぜですが」
アハハハと、ユオンは笑った。
「笑いごとではない!」
王のそばで控えていた宰相は渋い顔で怒鳴った。
「それで、ユオン。何か対策はあるのか?」
「スキルを封じるだけなら、所有者に死んでもらえばすむ話です。問題なのは、今後も研究をしたい場合、ですかねえ?」
「む」
「余計なことを考えたりしないように、ちょっと
ユオンの言葉に、宰相は黙り込んでしまった。
「そういうのは、もっと困るな。王太子の結婚式も近いし、ゴタゴタと騒ぎを起こしたくない」
と。
国王はため息を吐いて振り返った。
「先ほどは、無理、と申しましたが……」
そんな君主にユオンは軽く頭を、撫でるように掻きながら、
「そもそも――勇者召喚の魔法も、古代から伝わるものを改良に改良を重ねたものです。原型は神々に祈って、勇者を送ってもらうというものだそうで」
「……古文書などでは、そう伝わっているね」
「このへんは、実のところ現状も変わっていない。いや、根本的な部分に組み込まれて、外すこともできないんですよね。いや、基本構造はおんなじというんですか? しかし……」
「何か、あるのかい?」
国王はジッとエルフを見た。
「時間と労力をかけて、何世代もへて、召喚する側に都合の良い相手を選別できるようにした」
「ふむ」
「ですが、伝承を神話の域まで
「……」
「なので。やって来たモノが荒ぶる神だった場合に備えて、
「今には伝わっていない、ということは。必要ではなくなったからかな?」
「でしょうねえ。その魔法は、召喚以上のコストがかかった可能性が高い。時には、高貴な血の生贄まで必要なほど……」
「そんな不確実なものに、予算も人員も割けるものか! おまけに、生贄だと?」
宰相は目を怒らせてユオンを怒鳴った。
「ですよねー……。やれと言われましても、具体的なことはなんにもわかりませんし」
と。
ユオンは頭を下げた。
「ただですね」
「まだ、あるのか!?」
宰相はついに、うんざりとした顔となる。
「あるいは? 本来彼らが行くはずだった、彼らを召喚したであろうダイノヘイム。そこでなら、まだ送還の魔法は健在かもしれません」
「だからなあ……」
「いや、別に。大金を使って来訪者たちを帰す必要もありませんけど。厄介なものを、どこかに飛ばす魔法でもある、ということでして。文字通り、厄介払いですねえ」
「……なにを」
言いかけて、宰相は黙り込んだ。
すると。
国王がゆっくりと片手をあげて、
「そういうことは、
「あ、はい」
「ところで、そのスキルを持った少女は?」
「まさか王都やその近くに置くわけにもいかないので? キサウンの特殊研究施設へ移送いたしました」
国王の問いに、ユオンが答えた直後――
「「「研究所が爆発した!?」」」
その報告に、国王と宰相、そしてユオン――3人は同時に叫んでいた。
「なにこれ?」
モニターに映る風景に、カーシャはめんどくさそうに言った。
その場――
カーシャの他には、リーダークラスの魔導士数人。
プラス。
急遽やってきたユオン。
これだけである。
「街ですね」
「あまり見たことがないけど?」
「いやあ、それが昨日? タオスの僻地にいきなり出てきちゃったもので……」
ユオンは思案顔で、両腕を組んでいる。
「ああ、そう――。じゃあ、もうひとつ」
カーシャは画面を指して、
「私にいったいどうしろと? まさか」
町の住民を殺せとでも言うつもり?
そんなのは、軍を出せばすむ話でしょう。
と。
カーシャは極めて物騒な発言。
「それとも、街の住民全員がおかしなスキルでも持っていると?」
「さすがにそれはないようですが……。どんなおかしなものを持ってるか、まだわかりませんし」
「軍隊でもいると?」
「治安維持の組織はあるようです。もっとも、装備も人員も貧弱なもんです。事前にインターネットで集めた情報などで、大よそのことはわかりますけどね」
「なら――」
「あの街だけなら、いいんですが。もしも、国そのものと関わることになった場合、こりゃあ極めて面倒なことになりますからねえ?」
そう言って――
美少女エルフは肩をすくめた。