破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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※前話で出た地名を、ちょっと変更しました。


その110、オグ事件-13 しばらくたって

 

 

 

 

 

 

 

「おやまあ」

 

 街の様子を見ながら、カーシャは意外な気分だった。

 てっきり、ボロボロになって全滅でもしているのかと思えば……。

 

「もう順応してるんじゃない?」

 

「お前だって、よく言ってるだろ。〝慣れるもんだ〟ってな」

 

 応えたのは、頭の後ろで腕を組むゴトク。

 

「確かに?」

 

「無論のこと、アレコレと手は貸したがな。国としても、こういうケースのデータやらノウハウはあったほうが良いだろうと。そう判断したんだろうよ」

 

「あなたも、手を貸したひとりなわけね」

 

「多少はな。こっちの払いも良かったし」

 

 と。

 ゴトクは人差し指と親指で丸を作ってみせた。

 

 歩くうちに――

 街の中を杖を持った少女たちが歩いてきた。

 

「あ、先生」

 

「こんにちは~!」

 

 少女たちはゴトクを見て、口々に挨拶をする。

 近づいて来ようとするのだが、

 

「……」

 

「……え、と」

 

 隣のカーシャを見て、ギョッとなる。

 

 ――殺気、いえ、気配を感じ取った……というのではないわね?

 

 カーシャがそんな判断をしていると、

 

「あー。こっちは俺の知人というか、お客さんでね。本業のほうで色々取引してる」

 

 ゴトクは気さくな態度で、カーシャの紹介をした。

 

「そ、そうなんだ?」

 

「こんにちは……」

 

 少女たちは、おっかなびっくりという態度で愛想笑い。

 

「どうも」

 

 カーシャはそれだけ言って、

 

「なるほど。あなたの生徒というわけ?」

 

「先生と言われるほどのもんではないがね」

 

 ゴトクは肩をすくめて、

 

「教える側としても色々勉強になってる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 街の【漂着】より2か月。

 カーシャはずっと居続けたわけではない。

 他の仕事であちらこちらへ行っていた。

 

 ここでの一件も、ある程度の情報は他へ流れている。

 

 ただ、その精度は……。

 大勢の流民がキサウンのほうに来た。

 その程度の精度である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「女は始祖になれるが王になれず――」

 

 去っていく少女たちを見ながら、カーシャは言った。

 

「女は誰しも最初の魔導士にはなれるけど、帝王にはなれない。古い(ことわざ)だけど」

 

「ヤオアムトの長い歴史には、女が実権を握ったことだってあるだろ?」

 

 ゴトクが指摘すると、

 

「そう、実の部分では。でも、おもて……名の部分では決してなれない。お飾りにすらね」

 

 カーシャは皮肉げに笑う。

 

「しかし……。話では知ってても、完全に資質のない者は……」

 

 言いながら、カーシャは色々思い出し、考える。

 

 魔導の才能。

 あるいは魔力を巧みに操る資質。

 世の中には、そういう者もいる。

 

 少なくとも。

 魔導大国であるヤオアムト、その周辺ではほぼ見られない者たちだが……。

 

 そんな者が魔導の力を得るには?

 特殊な魔法で肉体を変質させる必要があった。

 

「けど、それが可能なのは女だけだってな」

 

「エルフみたいな種族には、無縁の話でしょうけどね。といって、それはあくまで最初のひとりに限った話で」

 

 後の世代には、男女は関係ないし。

 

 カーシャは手のひらを上にして、肩をすくめる。

 

「まして、サキュバスとの子供なんて、下手な人間よりも高い資質を持ってるものでしょう?」

 

「……そんな連中は、この国にはそこら中にいるってか。いや、数の上では人間同士の子よりも上か」

 

「ここの連中には、気をつけてたほうがいいかもねえ」

 

「うん?」

 

「魔力を得て格が上がったと吹きあがっていれば、そのうち男の赤ん坊を殺すか、堕胎するバカも出てくるわよ。アマゾネスみたいに」

 

「アマゾネスが男の子を殺すってのはデマだがね。単に女しか生まれないってだけだ」

 

「へえ、そうなの。知らなかった」

 

「そのへんを気を配るのは、国の役目だが――ま、大丈夫だろ」

 

「根拠はあるのかしら」

 

「食い物やら治安の維持やら、何やかんや。手を貸したのは、国というよりサキュバス連中だぜ?」

 

「ああ」

 

 言われて、カーシャは納得する。

 

「不法入国者の群れに対して、ずいぶんと手厚いケアだと思った」

 

 街の様子――

 インフラも、ヤオアムト式に変わりながらも十分に整備されている。

 荒廃した気配はゼロ。

 

「けど。そんな慈善を、無償で行うわけもないわね」

 

「そりゃそうだ」

 

 と。

 ゴトクはある場所を親指で示した。

 

 そこでは。

 中高生らしい少年たちを、それ以上の数のサキュバスたちが囲んでいる。

 

「遠目でよくわかるほど、()()()()()()()こと」

 

 カーシャはクスクスと笑う。

 

「仕方ないさ。あいつらには、まったくの未体験だろうしな。サキュバスにしても、商売ぬきで男を()()()んだからお互いに損はなし。良い取引だよ」

 

「いずれサキュバスと街の女が争うんじゃないの?」

 

「昨日今日魔法を学んだばかりの連中に、サキュバスをどうにかできると思うか?」

 

「無理ね」

 

「そういうこった」

 

「あ」

 

「なんだよ」

 

「いえ? 通信でつながったという、()()()()はどうなったのか、とね」

 

「さてなあ。あんたが知らんなら、俺がしるわけもねえや。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 **地方の、大型都市を中心とした大規模な地域。

 

 それの()()()

 完全に地形、自然環境の変質したその地域を調査中――

 

 地下より巨大な生物の出現により、調査は中断された。

 

 ……どころではない。

 

 体高はおよそ10メートル。

 生物の形状は、言うなれば1本の角を持ったヒグマ。

 いや。

 完全なクマそのものではないが、フォルムはそれに近かった。

 ただ、長い尾がある。

 体毛と共に、体の各所に硬質の鱗があり2足歩行。

 

 さらに、口から火炎まで吐き出した。

 もはや怪獣としか言えないような異形。

 

 極めて攻撃的なその生物は、自衛隊の総攻撃でどうにか駆除された。

 けた外れに頑強な肉体と、攻撃力。

 犠牲者の数は、自衛隊員だけでも凄まじい数となる。

 

 日本人、いや、地球人が――

 その生物が、()()()()で【熊竜】と呼ばれる存在だとは知るよしもなかった。

 

 

 

 ちなみに、この事件を機に諸外国は――

 

 特に何も言うことはなかった。

 

 自国でも、異常な生物の出現が日常化し、他国に干渉する余裕などなかったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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