破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
※前話で出た地名を、ちょっと変更しました。
「おやまあ」
街の様子を見ながら、カーシャは意外な気分だった。
てっきり、ボロボロになって全滅でもしているのかと思えば……。
「もう順応してるんじゃない?」
「お前だって、よく言ってるだろ。〝慣れるもんだ〟ってな」
応えたのは、頭の後ろで腕を組むゴトク。
「確かに?」
「無論のこと、アレコレと手は貸したがな。国としても、こういうケースのデータやらノウハウはあったほうが良いだろうと。そう判断したんだろうよ」
「あなたも、手を貸したひとりなわけね」
「多少はな。こっちの払いも良かったし」
と。
ゴトクは人差し指と親指で丸を作ってみせた。
歩くうちに――
街の中を杖を持った少女たちが歩いてきた。
「あ、先生」
「こんにちは~!」
少女たちはゴトクを見て、口々に挨拶をする。
近づいて来ようとするのだが、
「……」
「……え、と」
隣のカーシャを見て、ギョッとなる。
――殺気、いえ、気配を感じ取った……というのではないわね?
カーシャがそんな判断をしていると、
「あー。こっちは俺の知人というか、お客さんでね。本業のほうで色々取引してる」
ゴトクは気さくな態度で、カーシャの紹介をした。
「そ、そうなんだ?」
「こんにちは……」
少女たちは、おっかなびっくりという態度で愛想笑い。
「どうも」
カーシャはそれだけ言って、
「なるほど。あなたの生徒というわけ?」
「先生と言われるほどのもんではないがね」
ゴトクは肩をすくめて、
「教える側としても色々勉強になってる」
街の【漂着】より2か月。
カーシャはずっと居続けたわけではない。
他の仕事であちらこちらへ行っていた。
ここでの一件も、ある程度の情報は他へ流れている。
ただ、その精度は……。
大勢の流民がキサウンのほうに来た。
その程度の精度である。
「女は始祖になれるが王になれず――」
去っていく少女たちを見ながら、カーシャは言った。
「女は誰しも最初の魔導士にはなれるけど、帝王にはなれない。古い
「ヤオアムトの長い歴史には、女が実権を握ったことだってあるだろ?」
ゴトクが指摘すると、
「そう、実の部分では。でも、おもて……名の部分では決してなれない。お飾りにすらね」
カーシャは皮肉げに笑う。
「しかし……。話では知ってても、完全に資質のない者は……」
言いながら、カーシャは色々思い出し、考える。
魔導の才能。
あるいは魔力を巧みに操る資質。
世の中には、そういう者もいる。
少なくとも。
魔導大国であるヤオアムト、その周辺ではほぼ見られない者たちだが……。
そんな者が魔導の力を得るには?
特殊な魔法で肉体を変質させる必要があった。
「けど、それが可能なのは女だけだってな」
「エルフみたいな種族には、無縁の話でしょうけどね。といって、それはあくまで最初のひとりに限った話で」
後の世代には、男女は関係ないし。
カーシャは手のひらを上にして、肩をすくめる。
「まして、サキュバスとの子供なんて、下手な人間よりも高い資質を持ってるものでしょう?」
「……そんな連中は、この国にはそこら中にいるってか。いや、数の上では人間同士の子よりも上か」
「ここの連中には、気をつけてたほうがいいかもねえ」
「うん?」
「魔力を得て格が上がったと吹きあがっていれば、そのうち男の赤ん坊を殺すか、堕胎するバカも出てくるわよ。アマゾネスみたいに」
「アマゾネスが男の子を殺すってのはデマだがね。単に女しか生まれないってだけだ」
「へえ、そうなの。知らなかった」
「そのへんを気を配るのは、国の役目だが――ま、大丈夫だろ」
「根拠はあるのかしら」
「食い物やら治安の維持やら、何やかんや。手を貸したのは、国というよりサキュバス連中だぜ?」
「ああ」
言われて、カーシャは納得する。
「不法入国者の群れに対して、ずいぶんと手厚いケアだと思った」
街の様子――
インフラも、ヤオアムト式に変わりながらも十分に整備されている。
荒廃した気配はゼロ。
「けど。そんな慈善を、無償で行うわけもないわね」
「そりゃそうだ」
と。
ゴトクはある場所を親指で示した。
そこでは。
中高生らしい少年たちを、それ以上の数のサキュバスたちが囲んでいる。
「遠目でよくわかるほど、
カーシャはクスクスと笑う。
「仕方ないさ。あいつらには、まったくの未体験だろうしな。サキュバスにしても、商売ぬきで男を
「いずれサキュバスと街の女が争うんじゃないの?」
「昨日今日魔法を学んだばかりの連中に、サキュバスをどうにかできると思うか?」
「無理ね」
「そういうこった」
「あ」
「なんだよ」
「いえ? 通信でつながったという、
「さてなあ。あんたが知らんなら、俺がしるわけもねえや。」
**地方の、大型都市を中心とした大規模な地域。
それの
完全に地形、自然環境の変質したその地域を調査中――
地下より巨大な生物の出現により、調査は中断された。
……どころではない。
体高はおよそ10メートル。
生物の形状は、言うなれば1本の角を持ったヒグマ。
いや。
完全なクマそのものではないが、フォルムはそれに近かった。
ただ、長い尾がある。
体毛と共に、体の各所に硬質の鱗があり2足歩行。
さらに、口から火炎まで吐き出した。
もはや怪獣としか言えないような異形。
極めて攻撃的なその生物は、自衛隊の総攻撃でどうにか駆除された。
けた外れに頑強な肉体と、攻撃力。
犠牲者の数は、自衛隊員だけでも凄まじい数となる。
日本人、いや、地球人が――
その生物が、
ちなみに、この事件を機に諸外国は――
特に何も言うことはなかった。
自国でも、異常な生物の出現が日常化し、他国に干渉する余裕などなかったのだから。