破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「これ、あんまり面白くないですねぇー?」
そのアニメを見ながら、ボロンは辛辣ながら正直な感想を言う。
「前に見た、なンとかボ~ルみたいな、ドカンバカンとわっかりやすいものは、ありませんか?」
「ぐ、ぐむう。ボロンさんにはちと難しかったですかな? それと、ボールではありません。ドレイクオーブ! 日本が世界に誇るシリーズですぞ? 原作の……」
相手をしている少年は、ちょっと顔をしかめている。
が。
ボロンは意にも介していない。
あるいは、その表情に気づいてすらいないのか。
「あー! マンガのほうも面白いですね、アレ。アニメのほうは、なーんかのんびりしてましたけど。あははー」
「いや、あれは尺かせぎ……いえ、それは別によろしい、こっちへおいときましょう。ならば? 次はこのハリウッドの古典名作、童話を原作にしたものをば――」
そんな両者のやり取りを、
「あいつも飽きねーなー?」
マコネはあきれ顔で見ている。
部屋の窓から、庭のほうを。
「あちこちウロつかないなら、余計な手間がなくっていいわ」
カーシャはそう言いながら【今回】のクエストで得た報酬を確認している。
「それはいいけどよ? 姐さん、稼いだ金ここにだいぶつぎ込んだんだろ?」
「屋敷のほうはそろそろ完成するしね。代金も色を付けて前払いしてるから心配はいらない」
「だけどなあ。狙ったモンスターだけ狩れってのは……」
「ま? ここのは多少面倒だけどね。魔道具の補助もあるし。さほど時間もかからない」
ブレスレット型の魔道具を見て、カーシャは静かに言った。
・高難度ランクのモンスターを選んで狩る。
それが、今回受けたクエストだった。
以前は居住者のない荒野であった場所――
モンスターの数は多く、その危険性ゆえに野盗もいなかった。
いや。
潜むことも、できないというべきだろう。
「野盗に身を落とすなんて連中は、冒険者稼業でもやっていけない、ギルドのルールにも従えない。そんな連中だからな。まあほとんどが、社会性も何もないアホばかりだ。長生きできるのはほぼいねえ」
ゴトクはそのように語っていた。
「仮に冒険者になっても、ギルドに逆らうかどうかして、処分されると思うがな」
とも。
「そいで。ここのギルドはどんなんだった?」
【事故】によって、来てしまった街。
色々あったのち、ヤオアムトの統治下に入ったわけだが。
その前――
「事情はどうあれ? あなたがたは不法入国者の集団なので……」
国民として扱うことはできません。
悪しからず。
交渉の場に立ったユオンは、そう言った。
当然ながら?
あれこれ揉めたのだが、
「あ、けっこう。では、勝手になさってください。ただし? 他の町や村への勝手な出入り、交易などは一切できませんので。見つけた場合は相応の処罰を覚悟なさってくださいね。必要な場合は国からの正式な許可を取るように――」
また。
こちらからの、そうあなたがたの言葉で言う〝
そういったものは、期待なさらないように。
はい。
一切行いません。
自衛や食糧確保のため、モンスターを狩る。
この点は、特例として許可しましょう。
逆にその被害に関しては、こちらは一切関知するところではありません。
では、お
かくして?
切り捨てられかけた直前、市長や市警察などはあわてて統治を受け入れることとなった。
「といっても? 平民からすりゃ、上が変わった程度かもな」
ゴトクは皮肉そうに語っていた。
警察や市役所などなど。
そういった仕事はそのまま引き継がれた。
「仕組みもきっちりしてたからな。無理に壊すのも面倒だったんだろ」
一番変わったのは、
「まあ、冒険者ギルドが入ったことだが。は、何しろ獣を狩ったこともない連中の集まりだ。モンスターと戦うノウハウはない。けーさつとかいう連中も、あくまで人間専門だ。普通の獣すら対処に困ってた」
「で? あんたみたいなのが呼ばれたと」
「あとは、ほぼサキュバスだがな。完全に素人で魔法に縁もゆかりもなかった連中を大勢、初心者レベルまで教えなきゃならん。骨が折れたよ。なかなか、やりがいはあったがね」
ゴトクはそう笑っていた。
「でも、低ランクなら子供でも狩れるモンスターもいるわよ? 大人が数人いれば……」
「そのガキ以下の体力しかなかったんだよ、ここの連中は」
「おやおや」
「大人が10人かいたって、マコネにだってボロカスにされるわな」
「へえ。逆に面白いわね」
「だがちゃんと指示できるヤツがいれば、意外に統率のとれた動きができる。やれることがあると、自発的に動くヤツも多い。ひ弱ならひ弱で役に立ってくれるヤツもいる。年寄り連中もいくらか補助してやれば、きちんと働く」
「訓練すれば、どうにかなったと」
「まだ途中も途中だがな。国のほうはやりやすくって助かってるだろうよ。他は……そうだな、宗教も揉めることは少なさそうだ」
「街のあちこちに、神殿みたいなものがあったわね。ヒトの気配はなかったけど」
「基本は多神教だが、他にゴチャゴチャ言うこともない。よそはよそ、うちはうちってな。そこはこっちの流儀とおんなじだ」
「崇める神のちがいは面倒だものね」
「違うモン同士が下手に関わり合うと、それこそ血みどろの殺し合いになるからなあ……」
カーシャが思い返していると――
「まいったねえ……」
当の本人、ゴトクがブツブツ言いながら歩いてきた。
「おや
「からかってくれるなよ。妙なゴタゴタで、こっちはまいってるんだ」
「お疲れらしい」
「精神的にな」
ゴトクはため息をついて、
「近所の家が、一家そろって引きこもりになったと言われてな。知恵を貸せ、何とかしてくれと。そんなもん、どうしろって話だ」
「心でも病んだのかしら」
「さあね。何だか知らんけど、ひとつの……いや、唯一絶対、本物の神様だけを崇める家だとさ」
「なにそれ」
「一神教ってやつだ。あんまりはやらんやり方だがな」