破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-15 向こうではそうらしい

 

 

 

 

 

 

 

「あんたも、物好きだなあ……」

 

「別に解決とか仲裁なんてするつもりはない。ただの、見物よ」

 

 カーシャはゴトクと並び、()()の家を見ていた。

 

 外観は、どこにでもありそうな――

 ごく普通の、平凡な家屋。

 

 もっとも、カーシャにとっては見慣れない異国風(エキゾチック)な代物だが。

 

「どうやら? 完全に封鎖してるようねえ?」

 

 窓もドアも、全てが内部から板張りにされているらしい。

 自分たちから完全に孤立を選んでいるようだ。

 

「ほっとけば? そのうち、餓死して終わりでしょ?」

 

「そーもいかねーらしいや。法律、いや今は街の決まりか? 色々あるんだとさ」

 

「面倒なこと」

 

 カーシャとゴトクが話している横で、

 

「このようなものを、前に見た白黒の()()()()()ですか()()()ですか? そういうようなもので、見ましたですねえ?」

 

「うーむ。確かに。まるで、ゾンビ映画みたいですな?」

 

 例の少年は、ボロンと一緒にのんきなことを言っている。

 

「つうか、何であいつらついてきてるんだ?」

 

「さあ? 半分ボロンが引っ張ってきたようなものだけど」

 

 カーシャたちの視線に気づくこともなく、

 

()()()()は、この場合どのような判断をくだしますですか?」

 

「難しいですなあ……。おそらくですが、家の住人は我々がバケモノみたいに見えているのではと、推測しますぞ?」

 

「オバケですか?」

 

「専門家でもないので、確かなことは言えませぬが……。吾輩の愚考するところでは、住人の信仰している教えでは異世界なんてもの自体が、悪魔の罠になるのでは」

 

「あくま、てなんです?」

 

「やや。これまた、難しい質問ですが……。一般的には神に敵対する人外の存在となりましょうか?」

 

「人間じゃないっていうなら、わーたくしもそうですけれどね?」

 

「これはしたり。こちら風に言うと邪悪な神とか悪霊とでも申しますか」

 

「なんか、ようわかりませんね」

 

「すみませぬ。恥ずかしながら、浅学の身でちゃんとしたことを言えません。お笑いくだされ」

 

「あは、あは、あは」

 

「おっと。本当にお笑いになるとは、ボロンさんもきついですな」

 

「笑ってほしいのと、ちがったんですか???」

 

 ふざけているとしか思えない会話だが……。

 2人にはそういう意識もないらしかった。

 

「なにやってるのかしら、アレは」

 

「まあ犬のじゃれ合いみたいなもんだろ」

 

「でも、面白いことも言ってたわね?」

 

「――やめときな」

 

「なにが?」

 

「あんたが近づけば、あいつはまともにしゃべれなくなるぞ」

 

「女が苦手、というわけでもなさそうだけど?」

 

 ボロンと話している少年を見て、カーシャは首をかしげる。

 

「アレは、言っちゃ悪いが半分犬猫みたいなもんだからなあ。だから、内側に入り込みやすいんだよ。スルリとな? 

それでどうするという悪知恵も働かんようだけど」

 

「なるほど、確かにね」

 

「それに。あいつは、ああやってふざけて道化をやってなきゃやってられんこともあったんだろうさ」

 

「……」

 

「ま、それはいいさ。時に」

 

「なに?」

 

「バッキーのヤツはどうした?」

 

「オグの一件に関わってから、寝つきが悪いとか不眠症とかでダウンしてるわ」

 

「そりゃあ、お前……」

 

 ゴトクは何か言いかけたところで、急に黙り込み――

 音もなく、動いた。 

 

 それから、すぐ。

 家の裏手から何かを引きずって戻ってくる。

 

「ちょっと、ここから離れるぞ」

 

 ややきつい口調でボロンたちに言うゴトク。

 引きずっているのは、痩せた子供。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふうん。外は悪魔の世界だから出ちゃいけないってか?」

 

 ゴトクは、重湯をすすっている子供を見ながら、困った顔。

 

「――で、空腹に耐えかねて逃げ出してきたと。餓死するくらいなら悪魔の側につきたいか」

 

 カーシャは呆れたように言いつつも、

 

「飢えはどんな苦痛よりも苦しい。仕方がないわね」

 

「しかしなあ?」

 

 ゴトクはため息を吐いて、

 

「食い物はともかくお前んところでも〝でんき〟や〝すいどう〟は使えてたんだろ? そりゃ外で色々インフラの整備がされてたからだぞ」

 

「……」

 

 子供は何か言ったようだが、発音が不明瞭で聞き取りにくい。

 また?

 ちゃんと意味や筋の通った内容でもなさそうだ。

 

「そういえば、こっちでは魔石式発電とかになってるそうで」

 

 横から()()()()が口を挟んだ。

 

「ああ。この街のはずれに、魔石を量産できるもんがあったからな。そいつも収入源になってる。ありがたく思うんだな」

 

「量産? 鉱床みたいなものが?」

 

「違うね。お前が言う〝げんしろ〟、〝げんぱつ〟だ。いや、正確には〝ほうしゃせいぶっしつ〟か」

 

「ごはっ!?!?」

 

 ゴトクの言葉に、()()()()は腰を抜かしてへたり込んだ。

 それを見ながら――

 

 ――その気なら、街の連中を残らず始末して原発(あれ)を押さえちまうって手もあったろうがな。

 

 ――王太子の結婚。その慶事が近い中で血生臭いことは避けたかったわけね。いえ、こいつらの害が少なそうだからと判断してかしら?

 

 ゴトクとカーシャはそれぞれ物騒なことを考えていた。

 

「そ、それはそれとして? あの一家はどうしたものですかな?」

 

 気を取り直してか、あるいは現実逃避か。

 ()()()()がそんな質問をすると、

 

「ンなことは街の行政が決めることだ。俺にもお前にも、権限も義務もねえ」

 

「……ま、まあそうですな?」

 

「家のうちなら何をやろうが、勝手だ。まあ引きこもって死んでくれるなら後腐れもない」

 

「悲惨なことを言われますな……」

 

「しょーがねえさ、それが現実だからな」

 

 だからな、お前――

 

 と。

 ゴトクは子供を見ながら、

 

「今後どうするかは、お前次第だ。親の元に帰るなら止めん。逃げ出すなら……まあ、街が色々面倒見るだろうさ。今すぐにとは言わんが、考えておくんだな」

 

 静かに、噛んで含めるように言いながら、家のあった方角を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、あの転移者はなんて名前だったかしら。いちいちおぼえてなかったけど」

 

「あー。確か連中の文字では……」

 

 泥田坊 固丸。

 カーシャの質問に、ゴトクは空中へ5文字の【漢字】を浮き上がらせ、

 

「こんな風に書く。どろたぼー、かたまる。そういう名前らしい」

 

「また発音のしにくい……」

 

「バッキーは、『ペンネームみたいな名前』とか言ってた。向こうじゃ変わった名前なんだろうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

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