破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-17 トラブルはいけません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中年女が走り出そうとした――

 その直後。

 

 手が、女の頭をつかんだ。

 

 ゴッ

 

 そのまま、女は鼻から地面に叩きつけられる。

 鼻が潰れて、砕けた歯が散らばった。

 

 さらに。

 脂肪でふくれた腹に、つま先が突き刺さる。

 

 体を丸めて、痙攣(けいれん)するようにのたうつ。

 声にならない悲鳴をあげながら。

 

「おや?」

 

 凄まじい暴力の目の当たりにしながら、ユオンは首をかしげた。

 

「もうギルドナイトの到着ですか。いやはやなんとも」

 

 中年女を一方的に痛めつけたその相手は、侮蔑の視線を向けながらロープを取り出す。

 

 褐色の肌をした若い……せいぜい20代の女。

 黒髪で短いポニーテイル。

 簡素なレザーアーマー。

 

 だが、その表情には年齢に不釣り合いな、()()()()がある。

 

「隊長! やめてください!」

 

「やりすぎですよ!?」

 

 遅れて駆けつけてきた警官たちは止めようとするが、

 

 ギロッ

 

 警官たちは一瞬で石のように硬直、動きを止めてしまう。

 女の視線を受けただけで――

 

 女より年上の者もいた。

 しかし、女のそれは年齢差以上の貫禄がある。

 

「前々から、何度も、念入りに通達していたはずだ。お前らは全員冒険者扱いだとな!!」

 

 女の一喝が空気を震わせる。

 

「そうだったかしら?」

 

 いつの間にか――

 ユオンの隣に立っていたカーシャが静かに聞いた。

 

「そうですね。なんだかんだで、不法移民ですから。今の扱いが特例でして、身分としては冒険者です。正式な国民と認められるのは、まだ先でしょう。個人差もありましょうし。なので」

 

 ルールについても、冒険者ギルドのそれが適用されるのですよ。

 ま?

 住民全員が冒険者なので、正式な一般人はいないのですけれど?

 

「だいたいな。こいつが騒ぎを起こしたのは3度目だぞ!? とち狂ってタワゴトをほざくのは勝手だがな、路上で刃物を振り回すバカにかける情けなぞあるものか!!」

 

 褐色の女は、中年女を踏みつけながら警官たちを睨んだ。

 凄まじい怒号。

 警官ばかりでなく、野次馬たちも震えあがり、氷のように固まる。

 

「貴様らがぬるい対応をしているから、こういうバカが勘違いをするんだ!!」

 

 カーシャは興味深げにその様子を見ながら、

 

「あの肉塊、前にもなにかしたのかしら?」

 

「前にうちのほうへ怒鳴り込んできたのよ、変なプラカード持って」

 

 横から応えたのは、ひとりのサキュバス。

 

「つまり、サキュバス街に? なにしに?」

 

「知らないわよ。何か風紀がどうとか青少年がどうとか」

 

「なにそれ」

 

「こっちが聞きたいわ。まあすぐにつまみ出したけど。そしたら、またやってきてさ。利用されてるとか、〝せーてきぎゃくたい〟がどうとか、これまた意味不明なことをほざいてね。私たちに目を覚ませとか、立ち上がれとか……」

 

 言ってから、サキュバスは肩をすくめる。

 

「困るのよねえ、人間のアレコレを私らに当てはめて騒がれても」

 

 そして、

 

「ちょっと、ギルドのかた? 迷惑だからさっさと連れていってくれない?」

 

「……ああ、そうだな」

 

 褐色の女は憂鬱そうにため息を吐いて、

 

「このバカを連行しろ。手間をかけさせやがって……」

 

 警官たちに命令を飛ばす。

 

「あの、応急手当を……」

 

「いるか、そんなもの。死んでなきゃそれでいい。死んでもかまわんがな」

 

 かくして。

 凶行に走った中年女は、ゴミのように引きずられていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんじゃ、ここの市長ってのかい? そいつは支部の副長さんがやってんのか」

 

「ああ。そういう仕事は得意分野らしくてな。他にも、あちこちから呼ばれた連中が隊長、管理職としてギルドナイトを率いてる」

 

 マコネの言葉に、ゴトクは市庁舎のほうを見ながら応えた。

 

 と。

 

 前の道路をパトカーが走っていく。

 塗装が変わり、**県警察――に代わって『ギルド:サトナ支部』と書かれている。

 内部も改造され、ガソリンではなく魔石を動力としたものに変わっていた。

 

「また、どっかのバカがやらかしたみたいだな……」

 

 ゴトクはチラリとパトカーを見て、疲れた顔でため息をつく。

 

「この街の連中って、そんなにやらかすのか? 平和そうに見えるけどな」

 

 マコネはゴトクの横顔を見ながらたずねる。

 

「ごく一部、だよ。とにかく、色んなところでギルドの基本ルールを事前に伝えてるんだがな……。今ひとつ、理解できんバカもいるんだよ」

 

 そのへんは、どこだっておんなじだが――

 

 ゴトクは疲れたように首を振って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・一般人に危害を加えてはいけません。

 ・他人の物を盗んではいけません。

 ・他人の成果、他人のゲットしたアイテムなどを横取りしてはいけません。

 ・女性に性的暴行を加えてはいけません。やった場合去勢刑、ないしは死刑です。

 ・許可なしでアイテムなどの売買をしてはいけません。売買は許可の下りた店などで行いましょう。

 ・ギルドの施設内でトラブルを起こしてはいけません。

 ・路上、公共施設などで暴れたりしてはいけません。

 ・パーティーメンバーをただ働きなど搾取してはいけません。正当な報酬をきちんと分配しましょう。

 ・法律、ギルドルールは順守しましょう。

 

 ・他人の崇める神、その神殿、ご神体、行事などを破壊や妨害してはいけません。

 ・自分と同じ神を崇めるように他人へ強制しては()()にいけません。

 ・前述の2つは特に気をつけましょう。

 ※これはニッポンの神についても同じです。

 

 違反者は拷問、投獄、罰金、懲罰クエストなど罪状に応じたペナルティがあります。

 

 

 

 〇サトナ市住民へ。

   お前たちは今現在冒険者として登録されています。

   正式な国民として認められるよう努めなさい。

   仕事をはじめ、相談事はギルド支部:旧市役所へ。

 

   くれぐれも余計なトラブルは起こさないように。

   ここはニッポンではありません。

   ヤオアムトの法律、文化、習慣などを尊重しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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