破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-18 バッキーは同情する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ひとつの都市、いや土地まるごとの拉致というのだから、どうも」

 

「向こうは事故だ、不法入国者だから当然の措置だと言ってますがね」

 

「ふざけやがって……」

 

「問題なのは、それ以上にアメリカをはじめとした他国の動きですよ」

 

「市内には外国人だってそれなりにいましたからねえ……」

 

「アメリカさんは、向こうを新しい開拓地(ニュー・フロンティア)と言ってますな」

 

「ポジティブというか何というか……」

 

「向こうに核ミサイルを撃てと吠えるパフォーマーもいますしね」

 

「しかし、戦争する余裕があるんですか?」

 

「アメリカさんも所帯が大きいだけに、モンスターやダンジョンで大わらわでしょう」

 

「そこはどこも同じですよ、大なり小なりね。日本(うち)だって例外じゃない」

 

「何というのか。現代兵器でファンタジーを圧倒するとなれば、どっかのアニメか漫画ですけど」

 

「仮にそうなったとして、後の統治はどうなるんです? いや、そもそもできるんですか?」

 

「少なくとも、かの国はかなりの軍事力や技術を持っている。これは確実です」

 

「現にインターネットからこちらの情報を相当量集めているものと……」

 

「某国は、出入り口を通じて向こうに侵攻することも計画中とか?」

 

「まあ国民に強い国家をアピールせにゃなりませんからね」

 

「あそこだって、特殊害獣……モンスターの対策で軍が走り回っている状況でしょう?」

 

「地方都市や農村部などは、モンスターの襲撃で甚大な被害を出している場所もあるようです」

 

「我が国も、民間から銃の規制緩和を求める声がネットのみならず、デモで叫ぶ人間が大勢います」

 

「モンスターのせいで在来種の生態にも大きな影響がありまして……。鹿の数がかなり減少していると」

 

「まあ、キョンなんかは数が減ってくれて助かりもしますけど?」

 

「そんなのんきな……!」

 

「落ちついて。向こうと交渉するとしてどこに落としどころを持ってくかですよ。」

 

「賠償だ謝罪だが通りますか?」

 

「望み薄ですが、自衛隊を派兵するわけにもね……」

 

「そこも見透かされてるんじゃないかと」

 

「向こうの自然環境がどうなってるのか、ろくにわかってません。派兵なんて無謀です」

 

「下手すれば、ガ島の失敗がもう一度ってことにもなりかねない」

 

「自衛隊の報告では、モンスターの中には、火器による爆風などに反応して近づいてくるタイプもいます」

 

「おかげで、戦車や歩兵なんかが襲われてる」

 

「警察を特例で武装強化させても、人手が足りない」

 

「イスラム圏では、ダーティー・ボムを使った報復テロを試みたという情報も」

 

「効果あるんですかね。それ」

 

「魔素が放射線で増殖するのは明らかになってますけど……。向こうでも怪獣が大量発生するとか?」

 

「学者の意見では、向こうにおける魔素は大気中にごく普通に存在している物質だとか。同じようになるかは疑問だと」

 

「おいおい。エネルギー資源を増やすだけか?」

 

「いえ。急激な大量増殖で、場合によっては異常気象が発生する可能性もあるそうです」

 

「台風や竜巻でも起こるのかねえ」

 

「それは何とも」

 

 

 

 

「……………」

 

「……………」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんちゅう不吉な……」

 

 仮眠から、目覚めた後――

 バッキーは最悪な気分で首を振った。

 

「古井さん、今大丈夫ですか?」

 

 そこへ。

 ノックと共にやや焦った声がドアの向こうから響く。

 

「また急患ですか?」

 

 早足で歩きながら。

 バッキーは嫌そうな顔で相手を見た。

 

「はあ。研修中のヒーラーが出払っているもので」

 

 相手――若い警官は申し訳なさそうに言う。

 

「みんな? そんなにケガ人が多いんですか?」

 

「いや、その。ちょっと治療が出来そうにないヒトも多いので」

 

「それはまた、どうして?」

 

「立ち合いの時に、ショックを受けて……だそうです」

 

「え。でも看護師さんや女医さんでしょう? 適正はありそうじゃないですか」

 

「血とかケガはまあ、いいんですが。リガサ隊長がかなり無茶をやったもので」

 

「?」

 

「捕まえた違反者を、そのわざとケガさせて、それを治療させるっていう」

 

「ああー……」

 

 バッキーも体験した、かなりアレな練習である。

 

「殴る蹴るは当たり前。鼻を潰したり、爪をはがしたり……。そりゃもうひどいもので」

 

「……」

 

「いくら犯罪者といっても、未成年とか若い連中ですからねえ。そんなのが拷問みたいな暴力振るわれてたら、たまりませんよ」

 

「なにやったんです? いや、だいたいそこまでされるって」

 

「その、どう言ったらいいんですか。陳腐な言いかたをすると非行少年っていうやつですかね」

 

「あ、そういう。でも……」

 

「いえまあ、ギルドの対応はわりと穏やかだったし、我々警察……元ですが、対応に回されることも多かったので。市民も何とか冷静さを保ってたわけ、なんですけど」

 

「ギルドのルールを破っちゃったんですか。あれ、でも、あの基本ルールって」

 

「はい。普通の常識がある人間なら、まあ守って当たり前のことばっかですけど」

 

「そっか。そういうのを破っちゃう子だから……」

 

「最初は我々が対応してて、ベテランの警官がかなりきつく言ったんですが……。いや、もちろん全員じゃないですよ? こういう状況だしバカをやめてちゃんとしようってヤツも多いんです。けど」

 

「とうとう、隊長クラスのヒトが怒っちゃったんですね?」

 

「はい。いえね? 前々から犯罪行為をする連中もチョロチョロいて、こっちも必死で対応してたんですが。こっちでは、モンスターの駆除もしなけりゃならんでしょう? そのために訓練とか勉強で時間や人手が足りなくって」

 

「わかります」

 

「他にも半グレとか色々いて……。それで、まあかなり乱暴な取り締まりをやりましてねえ……。途中で叩き殺された連中もかなりいました」

 

「ありゃあ……」

 

「まいってますよ。ヒトの命が軽いというのか……」

 

「……余計なお世話でしょうけど、覚悟なさっておいたほうがいいです。そのうち、犯罪者の死体が吊るされることもあるかもしれませんので」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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