破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-20 それでいいのか悪いのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――こちらの男性になるんですけどね?」

 

 と。

 ユオンは空中に2枚の画像を映し出した。

 

 ひとりの、若い男。

 少なくとも、二十歳になるかならない、という年齢。

 その、【顔写真】と【全身写真】。

 黒髪に、深い青系の瞳。

 顔立ちは整っており、体躯もスラリとして涼やかだった。

 

「身長体重などはコレコレでして……。年収は、まあ一定はしにくいのですが、? 若くして大きな成功を収めたかたでして、昨年は手取りで2000万ジュラでした」

 

 ユオンは書類を見せながら、説明を続ける。

 

「……こ、このヒトとお見合い、いえ結婚できるの!?」

 

 女が鼻息荒く迫るのを、

 

「まあまあ落ちついてください。さきほど説明したように、我が国では事実上の一夫多妻が認められておりまして。結婚した場合、あなたはそのおひとりに加わることになるのです。そこは、おわかりでしょうか?」

 

 ユオンは静かに抑えながら、

 

「……むむむむうう」

 

「抵抗があるのは同じ女として同意いたします。ですが、これはもう仕方のないことと、妥協していただかないと。代わりと言ってはなんですが、多くの妻を持てば扶養義務と同時に税金の控除があります。つまりより収入も増えるわけですね」

 

 どうです?

 

 銀髪のエルフは、静かに問うた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、ゴトクじゃないか。相変わらず忙しそうだねぇ」

 

 ゴトクが少し早めの夕食をとっている時――

 カウンターから、女が声をかけてきた。

 

 場所は、どういうことのないラーメン屋。

 こちらに来てから。

 仕入れを含めて色んなものが困難となり、途方に暮れていたそうだが……。

 現在は持ち直して、客も増えているらしい。

 

 紅いウェーブヘアの女だった。

 ふるいつきたくなるような、美女。

 肉感的だが、全体的に引き締まった力強さがある。

 エルフだった。

 

「ねえさんこそ、だいぶ稼いでるって話を聞いたぜ」

 

「あははは。まあ、せわしくなくクエストをこなしてるよ。所帯がちょいと大きいんでね? 数をこなさなきゃ儲けが出ないのサ」

 

 女はゴトクのテーブルに移動しながら、肩をすくめる。

 手には酒瓶と、酒の入ったコップ。

 

「前のパーティーは? いや、聞くまでもねえか」

 

「ああ。リーダーは見込みがあるヤツへ任せたよ。だいぶこなれてきたしねえ、まあ()()()ってやつさ」

 

「そろそろカタギになる気はないのか? 実績もあるし、財産(おたから)も貯めてあるんだ。商売もすぐ始められるだろ」

 

この国(ヤオアムト)はなかなか住み心地も良いし、それもいいかと思うけどねえ」

 

 前にも、そう100年ほど前さ。

 引退しかけたけどねえ、退屈でさァ。

 

 女は苦笑して、追加の酒と料理を注文する。

 

巨島大魚(ファスティトカロン)のイエーカはまだ健在ってわけかい」

 

 ファスティトカロン――。

 太陽の生息する、島のように巨大な魚類型モンスターのこと。

 その排泄物などが栄養豊富な餌となるため、周辺には無数の魚が群れる……。

 と、されている。

 

 実在するかも不明な、謎ばかりのモンスターだが。

 

 

 世間話をするうちに、話題がまた変わり、

 

「リバオ・ヨーム?」

 

 ゴトクは少し首をかしげてから、

 

「あー、話には聞いてる。**から流れてきた腕利きだってな。金を貯めて、羽振りも良いんだったか」

 

「商売のほうもやってて、そっちも調子が良いねえ。元は貴族の生まれだが、ミソッカスでね。家じゃ冷や飯喰いだったと言ってたよ」

 

「その、成功者がどうしたって」

 

「今に爵位も(たまわ)ろうって逸材で、当然ながら女を何人もはべらせてる」

 

「成功者とか富裕層が、女性を多く囲うのは事実上の義務だろ。社会貢献というやつだ」

 

 ゴトクは言ってから、目を見開き、

 

「まさか」

 

「あいつが成功したのは、実力や工夫、がんばりもあるよ。だけど、貴族やギルド支部長の協力や後押しも理由のひとつさね。つまりは、恩もあれば義理もあるってこと。下級貴族の娘も女のひとりだしさ」

 

「おいおい」

 

「他にも、だ。そういう成り上がり、まして元は外国人(よそもの)。当然風当たりも強い。貴族や支部長の助けもあって、うまくやれてるが……限界もある。難癖なんざつけようとすれば、いくらでもつけられる。たとえば――」

 

 儲けを税でガボガボ持ってくとか。

 

 言って、イエーカは苦笑をもらす。

 

「……」

 

「けど、中央だってバカじゃない。それならそれで、有効活用さ。税金免除の代わりに、社会貢献しろってね」

 

「ひでえ話だな、あまりもの女を成金におっつけるってことかよ?」

 

「そりゃ正妻にはならないだろうけどサァ。形の上だけでも結婚できる。若い亭主を持てる。生活費も出る。良いことしかないじゃァないか」

 

「あんたなぁ……」

 

 微笑を浮かべるイエーカに、ゴトクはげんなりした顔で、

 

「本気で言ってるのか? 揉め事が起こらんわけがねえだろう。いや、わかって言ってるな?」

 

「さあねえ。まあおとなしくしてれば食うにも困らない。そいつは確かだろ」

 

 応えながらイエーカは酒瓶をゴトクに向けて、

 

「ひとつ、どうだい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姐さん、これって面白いのか?」

 

 おいらにゃよくわかんねーんだけど……。

 

 マコネは後ろからカーシャに言った。

 

「どうかしらね。でも、退屈もしない」

 

 カーシャは映像を見たままそう返す。

 ソファーに座り、ジッと――

 映像の中で繰り広げられる物語。

 

 モノクロの映像。

 

 傲慢な男と、その被造物の物語だった。

 

 男に創造された醜い巨人。

 善悪の理解も乏しい、力だけの怪物。

 怪物は無知ゆえに罪を犯し、人々に追われる。

 

 やがて。

 

 炎の中に怪物は消えた。

 

 創造者の男は、女と共に幸福な結末(ハッピーエンド)

 

「……()な話だな、これ」

 

 なんだかんだで最後まで付き合っていたマコネは、嫌そうな顔で言った。

 

「そうね」

 

 カーシャは同意して、

 

「……そういえば、アレは原作の小説もある、とか言ってたかしら」

 

 ボロンとつるんでいる転移者を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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