破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-21 暴発す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、こういう感じでですね」

 

 ユオンは、空中のボードへ説明内容を表示しながら、

 

「引き取り手……いえ、コホン。婚姻可能、あるいはOKだとおっしゃるかたがたのリストとなります」

 

「ふうん? やっぱり、あまり数はいないか」

 

 トーザ侯爵夫人――

 ジャコーは組んだ手のひらに顎をのせ、物憂げ(アンニュイ)なため息。

 

「いやあ、ミズ・カーシャが男性だったらお頼みしたいところですが」

 

「無理があるわね、それ」

 

「自分でもそう思います」

 

「とはいえ、千人もいるというわけではなし……。さばけないこともない、かしら?」

 

「えーと。言いにくいのですが」

 

 ユオンはジャコーに対し、言葉とは裏腹にハキハキした声で、

 

「お店の会員以外にも、結婚希望女性はそれなりにいるんですよねー。若い世代も将来的にはどうなるか」

 

「先行きも不安というわけ? 困ったわねえ」

 

 ジャコーはテーブルに置かれたカップを取り、お茶をひと口飲む。

 困ったというのは、本音らしい。

 

「とはいえ、女性ですから。魔導士の卵としてはそれなりに価値があります、そういう点では男性のほうが()()()はききませんね」

 

「体力もない。さらに若くもない層は困ったちゃんね」

 

「手に職のあるかたもいますけど、ないのもけっこういます。あるいは、こっちでは役に立たない経歴とか」

 

「で。それについては――」

 

「若年層や肉体労働者などを中心に、色々〝創意工夫〟の最中です。外付けとか、まあ色々」

 

「そこは主人の領分ねえ」

 

「はい。事前にご報告をさせていただきました」

 

「けっこう。しかし……」

 

 ジャコーは静かにカップを置きながら、

 

「街の住民も含め、あの【お客様】たち、なかなか騒がしくなりそうねえ。また主人の仕事が増えるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トラブル?」

 

 帰り支度をしかけたところ。

 急な報せを受けて、カーシャはわずかに目を細めた。

 

「……ギルドナイトがすぐ対処に当たってますが、念のために待機をお願いしたいと」

 

「別に、外部の者が横から出ていく必要もないと思うけれど? まさか、ここのギルドはそれほどレベルが低いの?」

 

 言いながら、カーシャはセーヅで醜態をさらしていた支部を思い出す。

 

「いえ。新規とはいえ、人選には十分注意したそうですが……」

 

 ギルド職員が弁解するように言う。

 

 しかし?

 カーシャはそれを無視するように窓の外を見た。

 

 そこへ、

 

「……姐さん! 面倒が起こったぜ!?」

 

 窓ガラスを軽く叩きながら、いきなり叫ぶ声。

 いつの間にか――

 マコネが、外から部屋をのぞいている。

 

「ボロンのヤツが、なんかケンカに巻き込まれたらしいッ」

 

「は?」

 

 この報せに、カーシャは首をかしげる。

 

「そういうのとは、縁の遠い子だと思ってたけど」

 

「あのバカ、興味本位で首つっこんだみてーでよ? 今、ゴトクが間に入ってるんだけど……」

 

「なるほど」

 

 確かに、トラブルのようね。

 

 カーシャは軽く伸びをして、ふわりと窓から飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この日――

 ギルドナイトのリガサは、休日だったのだが、

 

「どうだい、日頃ストレスのたまることばっかなんだ。美味いもので食いに行こうじゃないか」

 

 と。

 同じくギルドナイト所属の男に誘われた。

 吸血鬼(ヴァンパイア)族。

 キャリアもリガサより長い。

 

「せっかくだが、ハーミット――余計な金を使う気分じゃない」

 

 リガサは、男の名を言いながら不愛想に返した。

 

「ははは。思った以上にためこんでるようだな? 安心しろ、今日は先輩のおごりだ」

 

「……」

 

「近頃紹介された店で、なかなかに食わせる。()()って料理だがね」

 

「……。ああ、話に聞いてるが」

 

「いらないよ、生魚を食うなんて気色の悪い」

 

「そうかい? だったら、卵を焼いたのや火を通したのもあるぜ」

 

 

 こういう経緯で――

 リガサは昼食へと行ったわけだが……。

 

 

「このエビや魚は火を通してある。こっちは卵だ。ワサビはぬいてるから安心しな」

 

「ワサビ?」

 

「ツンと辛い、まあスパイスだな。苦手なヤツも多いから抜きにしてもらったよ」

 

「ふうん……?」

 

 まあ、おごりなら。物は試しともいう。

 そんな心境で食事という直前、

 

 ブゥン……

 

 と。

 リガサのつけた腕輪が鳴った。

 いわゆる、携帯電話のような魔道具なのだが、

 

「おい。なんだ休みの日に……」

 

 言いながらも。

 リガサは報告される内容を、ある程度察してはいた。

 

<大変です……! その、魔法訓練中らしい女性たちが暴れてまして……。一般のもと警官じゃ手に負えないんです>

 

「はあああっっ!?」

 

 それでも。

 さすがに、これは予想の上を行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ことが起きる前……。

 

 ボロンは、()()()()こと泥田坊固丸とアニメ映画を観ていた。

 1950年代に製作されたもの――

 木で造られた人形が命を得て、人間になるべく様々な経験を経て成長していく物語。

 

「いやあ、面白かったですねえ! 今までの中で一番じゃなかろうかと、思いますですよ?」

 

 気安く固丸の背中を叩いて、ボロンは絶賛。

 固丸……。

 以降、ヤオアムトで呼ばれる愛称の、〝ドロー〟とする。

 

 ドローとボロンは、公園の中でそんなことをやっていたわけだが、

 

 

 ボムッ……

 

 

 すぐ近くで、爆発音と光が走った。

 

 振り返ってみれば。

 道にへたり込んだ少年へ、少女が魔導士の(ロッド)を突き付けていた。

 

 ――むう。あれは**高の……。

 

 ドローは着ている制服で、同じ市内の高校生だとわかる。

 

 また?

 ヤオアムト人が少女の杖を見れば、

 

 ――ああ、習い始めの初心者か。

 

 すぐに理解できるもの。

 

「やめろ、なんだ、なんなんだよ!?」

 

 少年は片手を突き出して、何とか後ずさり。

 

「うるさいっ!」

 

 少女は何か叫んでいるが、今ひとつ要領を得ない。

 半分以上は、言葉になっておらず意味不明の金切り声。

 

「………!!?」

 

「……! …………!!」

 

 少年少女はお互いに怒鳴り合っている。

 

 というよりは、一方的に攻撃している少女に、少年は疑問と抗議を叫んでいるわけだが。

 

 

「ん~~……。これはまた、思いもよらぬ活劇ですねえ?」

 

「何をのんきな……」

 

 ウンウンとうなずいているボロンに、ドローは呆れ顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




大晦日が近づいておりますが
さて来年はどのようになることやら……
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