破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件 作:らくべえ09
「まあ、こういう感じでですね」
ユオンは、空中のボードへ説明内容を表示しながら、
「引き取り手……いえ、コホン。婚姻可能、あるいはOKだとおっしゃるかたがたのリストとなります」
「ふうん? やっぱり、あまり数はいないか」
トーザ侯爵夫人――
ジャコーは組んだ手のひらに顎をのせ、
「いやあ、ミズ・カーシャが男性だったらお頼みしたいところですが」
「無理があるわね、それ」
「自分でもそう思います」
「とはいえ、千人もいるというわけではなし……。さばけないこともない、かしら?」
「えーと。言いにくいのですが」
ユオンはジャコーに対し、言葉とは裏腹にハキハキした声で、
「お店の会員以外にも、結婚希望女性はそれなりにいるんですよねー。若い世代も将来的にはどうなるか」
「先行きも不安というわけ? 困ったわねえ」
ジャコーはテーブルに置かれたカップを取り、お茶をひと口飲む。
困ったというのは、本音らしい。
「とはいえ、女性ですから。魔導士の卵としてはそれなりに価値があります、そういう点では男性のほうが
「体力もない。さらに若くもない層は困ったちゃんね」
「手に職のあるかたもいますけど、ないのもけっこういます。あるいは、こっちでは役に立たない経歴とか」
「で。それについては――」
「若年層や肉体労働者などを中心に、色々〝創意工夫〟の最中です。外付けとか、まあ色々」
「そこは主人の領分ねえ」
「はい。事前にご報告をさせていただきました」
「けっこう。しかし……」
ジャコーは静かにカップを置きながら、
「街の住民も含め、あの【お客様】たち、なかなか騒がしくなりそうねえ。また主人の仕事が増えるわ」
「トラブル?」
帰り支度をしかけたところ。
急な報せを受けて、カーシャはわずかに目を細めた。
「……ギルドナイトがすぐ対処に当たってますが、念のために待機をお願いしたいと」
「別に、外部の者が横から出ていく必要もないと思うけれど? まさか、ここのギルドはそれほどレベルが低いの?」
言いながら、カーシャはセーヅで醜態をさらしていた支部を思い出す。
「いえ。新規とはいえ、人選には十分注意したそうですが……」
ギルド職員が弁解するように言う。
しかし?
カーシャはそれを無視するように窓の外を見た。
そこへ、
「……姐さん! 面倒が起こったぜ!?」
窓ガラスを軽く叩きながら、いきなり叫ぶ声。
いつの間にか――
マコネが、外から部屋をのぞいている。
「ボロンのヤツが、なんかケンカに巻き込まれたらしいッ」
「は?」
この報せに、カーシャは首をかしげる。
「そういうのとは、縁の遠い子だと思ってたけど」
「あのバカ、興味本位で首つっこんだみてーでよ? 今、ゴトクが間に入ってるんだけど……」
「なるほど」
確かに、トラブルのようね。
カーシャは軽く伸びをして、ふわりと窓から飛び出した。
この日――
ギルドナイトのリガサは、休日だったのだが、
「どうだい、日頃ストレスのたまることばっかなんだ。美味いもので食いに行こうじゃないか」
と。
同じくギルドナイト所属の男に誘われた。
キャリアもリガサより長い。
「せっかくだが、ハーミット――余計な金を使う気分じゃない」
リガサは、男の名を言いながら不愛想に返した。
「ははは。思った以上にためこんでるようだな? 安心しろ、今日は先輩のおごりだ」
「……」
「近頃紹介された店で、なかなかに食わせる。
「……。ああ、話に聞いてるが」
「いらないよ、生魚を食うなんて気色の悪い」
「そうかい? だったら、卵を焼いたのや火を通したのもあるぜ」
こういう経緯で――
リガサは昼食へと行ったわけだが……。
「このエビや魚は火を通してある。こっちは卵だ。ワサビはぬいてるから安心しな」
「ワサビ?」
「ツンと辛い、まあスパイスだな。苦手なヤツも多いから抜きにしてもらったよ」
「ふうん……?」
まあ、おごりなら。物は試しともいう。
そんな心境で食事という直前、
ブゥン……
と。
リガサのつけた腕輪が鳴った。
いわゆる、携帯電話のような魔道具なのだが、
「おい。なんだ休みの日に……」
言いながらも。
リガサは報告される内容を、ある程度察してはいた。
<大変です……! その、魔法訓練中らしい女性たちが暴れてまして……。一般のもと警官じゃ手に負えないんです>
「はあああっっ!?」
それでも。
さすがに、これは予想の上を行っていた。
ことが起きる前……。
ボロンは、
1950年代に製作されたもの――
木で造られた人形が命を得て、人間になるべく様々な経験を経て成長していく物語。
「いやあ、面白かったですねえ! 今までの中で一番じゃなかろうかと、思いますですよ?」
気安く固丸の背中を叩いて、ボロンは絶賛。
固丸……。
以降、ヤオアムトで呼ばれる愛称の、〝ドロー〟とする。
ドローとボロンは、公園の中でそんなことをやっていたわけだが、
ボムッ……
すぐ近くで、爆発音と光が走った。
振り返ってみれば。
道にへたり込んだ少年へ、少女が魔導士の
――むう。あれは**高の……。
ドローは着ている制服で、同じ市内の高校生だとわかる。
また?
ヤオアムト人が少女の杖を見れば、
――ああ、習い始めの初心者か。
すぐに理解できるもの。
「やめろ、なんだ、なんなんだよ!?」
少年は片手を突き出して、何とか後ずさり。
「うるさいっ!」
少女は何か叫んでいるが、今ひとつ要領を得ない。
半分以上は、言葉になっておらず意味不明の金切り声。
「………!!?」
「……! …………!!」
少年少女はお互いに怒鳴り合っている。
というよりは、一方的に攻撃している少女に、少年は疑問と抗議を叫んでいるわけだが。
「ん~~……。これはまた、思いもよらぬ活劇ですねえ?」
「何をのんきな……」
ウンウンとうなずいているボロンに、ドローは呆れ顔。
大晦日が近づいておりますが
さて来年はどのようになることやら……