破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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今回は間の話。

次回よりまた動いていく予定?


その14・5、バッキーこと古井椿「サキュバス???」

 

 

 

 

 ――しんどい……。

 

 並んでいるケガ人たちに、何回も何回も治癒魔法(ヒール)をかける。

 いつの間にか……。

 私のところに運ばれてくるのは重傷の人ばかりになってた。

 これだけの人数に魔法を使っても、魔力自体は余裕がある。

 

 問題なのは……。

 精神というか、心? いや脳みそなのか?

 陰キャで非リアの身には、知らない人ばっかの仕事は色々きっつい……。

 中には見るも無残な大やけどの人だっていた。

 治療をしている間にも、苦しそうなうめき声があちこちから……。

 子供の泣いてる声も飛びかってる。

 

 うううう……。

 きっつい……。

 

 

 異世界転生。

 逆ハーレムとか玉の輿(こし)溺愛とか、そんな大それたものは望んでなかったのに。

 こんな医療系の仕事はハードすぎるっす……。

 でも、私回復職のヒーラーだもんなあ。

 嫌だとか不向きとか、言ってられないわけで……。

 

「あんた、すげえな……!! もうダメかと思ってたのに、こんなカンペキ元通りに……!!」

 

「アリガトゴザイマス。オダイジニ。ハイ、ツギノカタ……」

 

 なんか、もうただヒールをかけるだけのロボットになった気分……。

 

 それでも。

 やればやるだけ、慣れていく。

 どんどんコツがわかってくるのが、なんか怖い。

 良いことをしてる、とは思うんだけど……。

 なんでだろ?

 人の不幸を踏み台にしてるような気分だよ……。

 

 

 ……。

 

 

「お疲れ様です……! おかげで、重傷者が大勢助かりました!! 少し、休んでください」

 

 誰かにそう言われて、奥にいったん引っ込んで。

 

「はあああ~~~~~~~~………」

 

 魂が抜けそうな気持ちで、ため息。

 

 けっこう助けたと思うけど……。

 手遅れ……つまり、すでに死んじゃった人もたくさんいた……。

 この回復チートでも、死んだ相手はどうにもできない。

 いや、心臓が止まった状態ってだけなら、条件次第でなんとかならんこともないけど。

 首がなかったり、下半身がどっかいっちゃったようなのはさ……。

 

「無理なんだよお……」

 

 多分、私は半分死人みたいな顔だったんだと、思う。

 

「おいバッキー、大丈夫……じゃねえな。ゾンビみてえになってるぞ?」

 

 そう言われてあわてて目をこすった。

 マコネがそばに立ってる。

 

「……ア、ドーモ」

 

「なんだよ、からくり人形みてえな動きして……しっかりしろぃ。俺よりもずっと役に立ってるんだからよ?」

 

「そーすかね……?」

 

 あんまり、そんな実感なかったけど……。

 

「腹へってるだろ、食えよ」

 

 マコネは袋に入った何かを押しつけてくる。

 甘くって美味しそうな匂い……。

 

「この街の名物の菓子パンだってよ。うめーぞ」

 

 一口食べると、確かに。

 

「おいひい……」

 

 ハチミツの香りがして、味も最高……。

 あああ。疲れた体に甘みが染みる……。

 

「ううう……おいしい」

 

「おー、どんどん食え食え。いくら食ったって文句言わせねえ働きしてんだからよ」

 

 マコネはカラカラ笑い、近くにあったポットからお茶をカップに注ぐ。

 

「ぬるくなってンな。ま、飲みやすいから悪くねえだろ、ほれ」

 

「ありがと……」

 

 お茶を飲んで、パンを食べる。食べる。またお茶を飲む。

 ふう……。

 一息、ついてから。

 

「マコネさん……」

 

「あン?」

 

「たくさん魔法使ったけど……死んじゃった人もたくさんいたよ……」

 

「そりゃあしゃーねーさ。ドラゴンが襲ってきたんだぜ? この程度ですんだのはラッキーだ。おめーはすげえけど、神様じゃねえんだからよ。気に病むこたぁねーって」

 

「……うん」

 

 うん、とは言ってみたものの。

 それで割り切れるもんでもなくって。

 あっちこっちで、泣き声がしてた。

 完全に丸焼けになった死体が運ばれてるのも見ちゃった。

 ああ……。やっぱり。

 色々、きっつい。

 

「多少耐性? みたいなのもついてきた気分だったけど……ぜんぜんあかんですよ」

 

 笑ってしまった。

 ……笑うしかないよ、これ。

 

「おめーさんがいたのは、よっぽど平和なとこだったんだなあ……」

 

 どこか不思議そうに、マコネは言った。

 

「かもですね……」

 

「おいらは元々よそからの流れ者だけどよ? この国に来る前、ドラゴンに焼かれた街を見たぜ? どこもかしこも焼け落ちててさ。死体がゴロゴロしてるわ、生き残った連中もゾンビか、盗賊みてーになってるわで……。この世の終わりみてーだったぞ。それに比べりゃ、ここはのんきなもんさ。焼け出された連中に飯くばる余裕まであるんだからな」

 

 言われて、私は顔を上げた。

 あちこちで炊き出しがされてる。

 パンとかスープとか、色々配られてるみたいだ。

 日本でも、地震の時なんかにニュースで見たな……。

 

 ……うん?

 

 炊き出しをやってるのは主に女性たちだったけど。

 その人たち……。

 なんか、みんな美人や美少女ばっかりで……。

 いや、それもあるけど。

 

 背中にコウモリみたいな翼。

 頭に角で、お尻には尻尾……。

 悪魔? 悪魔娘?

 そんな感じのキャラみたいな人たちが中心にやってる……。

 

 いや、ファンタジー世界だし?

 そういう種族もいるんだろうとは思うけど。

 ネビズにも、エルフとかいるし。

 

「ン? ああ……サキュバスが珍しいのか?」

 

「サキュバス?」

 

「なんだ、知らねえのか?」

 

「いやその、名前とかは知ってるんだけど……。その、私の知ってるのと同じものかどうか……」

 

 ファンタジーではお馴染みだけど。

 作品ごとに設定とか違ったりもするしなあ。

 

「へー。じゃあ、お前さんの故郷にはいなかったのか?」

 

「多分……」

 

 ていうか、架空の存在だったし。

 

「ならよ? お前さんとこじゃあどんな風に言われてたんだ?」

 

「ん-……。確か、こう。夢の中で男に近づいて精気を吸う魔物ですかね」

 

「ふーん。そういや、あいつらは夢を操ったりや幻術を得意にしているって話だな。というか、魔法全般が得意技だけどよ。よそじゃあ悪魔とか魔女とか呼ばれて嫌われてるとこもあるらしいや」

 

「よそって、この国では違うんですかね?」

 

「そりゃ大っぴらに歓迎はされてねーよ。けど、裏に回ればそれこそ色々あるみてーだぜ。その証拠に、少し大きめの街には、どこだってサキュバス街ってのがある。ネビズにだってあるぞ? 知らなかったんか?」

 

「初耳でした……」

 

 いや? 待った、待った。

 ……そういえば。

 クエスト以外では宿に引きこもってばかりで、あんまり街を出歩かなかったかも。

 そりゃわからんよねえ……。

 反省……。

 

「……で、そのサキュバス街ってどんなところですか?」

 

「そりゃースケベな男どもが喜んでいくエロい店が集まってる場所だよ」

 

「……ああ、そういう」

 

 つまり、風俗店ですね。ありがとうございます。

 マジわかりやすい。

 そうなると、一応性別女の私にはあんま関係ないのかなー?

 

「――あ、それと。バッキーは心配ねーだろうけど、念のために言っとくがな? この国だと女を売るのも

買うのもダメだからな? バレたらしょっぴかれるぞ」

 

「は? え。いや、でも……」

 

 私がチラッとサキュバスたちのほうを見ると、

 

「あいつら相手なら、病気とか心配ねーからな。だからそういう商売はあいつらの特権なの。ま、もっとも? エロ店の売り上げもけっこうな額が税金として持ってかれるらしいけどよ。もうけ自体はそんなにねーのかもなー。せちがらいわ」

 

「……それってサキュバスたちは不満もたないんですか?」

 

「しらね。ただなあ、あいつら下手な魔導士よりもハイレベルの魔法をポンポン使えるからよ。たいてーのことは自分でどうにかできるんだ。で、その魔力の元は男どもから吸い取った〝スケベ汁〟だしな。多分金はおまけなんだろ」

 

「……ほえ~~」

 

 これは、共存してるってことなのかしら???

 

「でもお高いんでしょ?」

 

「そりゃ値段はピンキリだわ。つっても、一番安い相手でもサキュバスだからな。病気持ちやバァサンが出てくる心配はねーから、ま、男にとっては安心なんだろなー。それにな、素人の女に悪さしてみろ? 下手すりゃ玉と竿をちょん切られるぜ。それが浮浪児のガキ相手だったとしてもな」

 

 ふーん。

 なんか意外な気も……。

 つまり、性犯罪への罪が重いのか……。

 女性としては、それは喜ばしいな。うん。

 

「じゃ、サキュバスは治安の役にも立ってると」

 

「おいらにゃ、こ難しいこたぁよくわからんけど。サキュバス街のある場所は治安がいい。そいつは確かだな」

 

 ところ変われば、なんとやら……だけど。

 面白いというのか、不思議というのか。

 

「でも、マコネさん詳しいですねえ」

 

「ンまあ……。何度かあそこで下働きして小づかい稼ぎしたことがあってよ」

 

「人間なのに?」

 

「そら別に客とるわけじゃねーもん。年食って引退した冒険者も、あそこで下働きや客引きしてることも多いんだぜ」

 

「……なんか、すごい話」

 

 そんなこと話してたら。

 リーダーのカーシャさんもやってきた。

 

 

 

 

 

 ドラゴンが他に来ないようだったら、またすぐネビズに戻るんだろう。

 

 と、思っていたのだ。

 この時は……――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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