破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-22 友達、だったらしい

 

 

 

「よいせっと」

 

 ボロンがひょいっと両腕を突きだした――

 

 その瞬間。

 

 シュルシュルシュルシュルシュルシュル

 

 手、いや服の袖なのか?

 古い布地がするすると、高速で伸びた。

 

「はっし、と」

 

 尼僧姿の少女がおかしなかけ声を出したと同時に、

 

 シュルリ

 

 布が少年の体に巻きついて……。

 

「あッ」

 

 ふわりと空中に浮きあがった後。

 少年はボロンのそばで尻餅(しりもち)をついていた。

 

 ――何と……。男子高校生ひとりを軽々と持ち上げて、こっちに引っ張ってくるなんて……。それに……。

 

 のんびりとした、緩慢そうな動きでありながら……。

 ほんの一瞬で行動を終わらせていた。

 

「あー、このような場所で喧嘩口論はいけませんぞ? 何事も、落ちつきが肝心なので」

 

 ボロンは、普段とは若干異なる口調で言った。

 何か、誰かの真似でもしているような口調。

 

「あーた、あの女子(おなごっ)さんになにかケシカラヌまねをなさったのですか?」

 

「するわけないだろ!?」

 

 まだ状況をよく呑み込めていないのか。

 少年は悲鳴みたいな声で言った。

 

「お友達だとちがうのですか?」

 

「いや、それはなんというか……」

 

 少年は、微妙な顔をする。

 

 ――ワケあり?

 

 横で見ているドローは何かあるらしいと感じるが、

 

「逃げんな!!」

 

 少女は叫んで、ボロンたちに杖を向けた。

 魔力が光りながら収束していく。

 

「あぶな……!」

 

 ドローが思わず叫びかけ、目を閉じた。

 

 ボヨン

 

「……?」

 

 だが。

 聞こえたのは予想とまるで違う、妙な音。

 

「うわ~~~~………」

 

 ボロンは驚いた声を発する。

 彼女の袖が、大きく広がって前をおおっていた。

 どうやら?

 これが少女の魔法を防いだらしい。

 

「あー、そのような悪ふざけ(てんごう)はいけませんぞ? ()()()()()()のかたがたにどつかれますでなあ」

 

 一応。

 相手を説得している、つもりなのか。

 あるいは、何も考えていないのか。

 

 ボロンはそんなことを言ったわけだが、

 

「*******!!」

 

 少女はそのまま、甲高い声と共に魔法を乱発した。

 狙いも何もかもムチャクチャ。

 空や道路、周辺の建物にまでとんでいく。

 

「うわ、うわ、うわあ……」

 

 ボロンは間延びした、悲鳴なのかあくびなのかわからない声。

 

 ――ど、どうなるんだ……これは!?

 

 ドローは身をかがめてアタフタしていたが、

 

「……。おや?」

 

 ボロンは不思議そうに少女を見ている。

 

 少女は急に膝から崩れたかと思えば、横から倒れてしまった。

 

「……な、何が起こった、のですかな?」

 

「おなかでもすいたのとちがいますか?」

 

 ドローの疑問に、ボロンはこれまたのんきなことを言ったが、

 

「いや、そんな……」

 

 言いかけてドローは、以前ゴトクが生徒らしい女性……大学生くらいか?

 それらと話していた内容を思い出す。

 

 

 調子に乗って、魔法を乱発するなよ?

 あっという間に魔力切れ……――

 どころか、体力まで食いつぶしてぶっ倒れるぞ。

 

 

 ――もしかすると、魔力の消費ってのは、カロリー消費がバカ高い? だとしたら……。

 

「ちょ、なんなのよ!?」

 

「へ?」

 

 大声に、ハッと前を見るドロー。

 

 3人の女子高生が倒れた少女を囲んでいた。

 全員、同じような(ロッド)を持っている。

 

「あんたら、なにしたわけ!?」

 

 運が悪いというのか。

 向こうは、ボロンたちに敵意を向けていた。

 

「まあまあ、そうコーフンなさらんように。私どもはあくまでも? 喧嘩口論、いえ暴力はいかぬとお止めしていた次第で」

 

 ボロンはにこやかに対応するが、

 

「なにヘラヘラしてんのよ!」

 

 逆効果だった。

 

「……あいつ、茂林寺じゃない?」

 

「ホントだ」

 

「まだトミーにつきまとったわけ?」

 

 と。

 女子高生たちは被害者であろう少年を見つけて、

 

「お前、なにやってんだよ!」

 

「キモッ! なんか勘違いしてんじゃない!?」

 

 ――いや……。何を言ってんの、こいつら???

 

 おかしな展開。

 事情も何もわからないドローは、降ってわいた災難に困惑するばかり。

 

「あーた、あの倒れちゃったヒトにつきまとってたんですか?」

 

 ボロンは不思議そうな顔で、()()()と言うらしい被害者へ問いかける。

 

「そんなことしてないって!」

 

「でも、なんかお知り合いみたいな感じですけど」

 

「だからそれは……」

 

「そんなのは後で!」

 

 ドローは叫ぶ。

 女子高生たちは――

 さっきの少女同様に杖を振り回し始めたからだ。

 

 しかし。

 息まいていた女子高生たちは、次の行動に移らない。

 いや。

 移れなかった。

 

 3人とも、円形の魔力……。

 拘束魔法で呪縛されていたからだ。

 

「バカな騒ぎを起こしやがって……」

 

 ゴトクが嫌そうな顔で歩いてくる。

 

「言っておくがな? ギルドナイトにしょっ引かれても俺は何もできんぞ。する気もないがな」

 

 動けない女子高生たちへ、ゴトクは淡々と言う。

 

 と。

 

「あらま。もう終わってたの」

 

 拍子抜けしたような声。

 ボロンたちの横を、青い髪の美女が通り過ぎた。

 

「おお、これはご主人」

 

「マヌケな騒動に関わったのね、あんたも」

 

 カーシャは呆れた顔でボロンを見てから、

 

「……典型的な魔力切れ。ここまで無様なのを見たのは初めてだわ」

 

 少女を見おろしながら感心したように言った。

 

「えーと、()()()()。もっかい聞きますけれども、あの暴れてたヒトはお友達ですか?」

 

 場は収まっていく中、ボロンは同じことを茂林寺少年へたずねる。

 

「もっさん? い、いや、昔はそうだったけど……」

 

「今はちがうのですか?」

 

「うん、まあ……」

 

 茂林寺(モッさん)は、どこか虚しそうな顔で加害者少女を見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 後にドローが知ることだが……。

 

 魔力切れ、と呼ばれるのは一種のハンガーノック現象らしい。

 

 体内に貯蔵された魔力がある程度減少する。

 すると。

 肉体は大気中の魔素を吸収して、魔力へと変換する。

 この過程で、相当なカロリーを消費するらしかった。

 

「だがまあ……。訓練とか生まれついた資質で、効率というか燃費はまるで変わってくるがな」

 

 魔法どころか、魔力を扱いはじめたばっかなんざ、そりゃあひでえもんさ。

 調子に乗ればすぐにへばるか、失神。

 下手すれば死ぬな。

 

 説明したゴトクはそのように語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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