破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-23 別に好きじゃないよ

 

 

 

 

 

 

 これは後でマコネが語ったことだが――

 

「まあ、なんちゅうのかねえ?」

 

「横から聞いてた話だと、あいつらは古い友達、幼馴染ってやつらしいやね」

 

 茂林寺(もりんじ) (たしぐ)

 それが、被害者少年の名前だった。

 

 友井(ともい)和樹(かずき)

 これが加害者少女の名前。

 

 両者は同じ近所で、幼稚園から現在の高校まで同じ学校。

 

「小学生、の2年生くらいかな。それまでは、まあ友達だったよ」

 

 そう炊は語っている。

 このへんは、ギルドの正式な調査でもわかることだった。

 

 小さな頃の和樹は……。

 名前のせいもあり男子と間違われるような、趣味で容姿だった。

 

「つまり、男のガキが面白がる遊びとかオモチャとか、そんなんが好きだったらしい」

 

「ふーん」

 

 カーシャはどうでも良さそうな反応だったが、

 

「話の感じからすると、成長するにしたがってお互いに距離が出てきた。いや、女のほうが離れていったのかしら?」

 

「よくわかるなー?」

 

「よくある話だもの。まあ婚約者同士ならともかく、だいたいそんなものらしいわね」

 

 私も他人(ヒト)の話ぐらいでしか知らないけど。

 

 カーシャは肩をすくめてから、

 

「でも、男のほうは未練があった。いや、片想いでもしてたんじゃないの」

 

「おっと。それも当たりだ。多分だけどな。あの口ぶりだと、そんな感じだろ」

 

「ふーん……。で、そんなダラダラした状態の中で、街ごとこっちにきてしまったか。なるほど、なるほど……」

 

 カーシャはきれいな、形の良い額を指先で撫でつつ、

 

「さらに。来てみればサキュバスがウジャウジャいる環境だった」

 

「向こうにゃ人間以外の知性種族はいねーらしいからよ。だいぶ驚いたんじゃねーかな」

 

「でしょうね」

 

 応えながら、カーシャは皮肉げに笑う。

 

「どしたンだよ?」

 

「いえいえ。なんとなく、察するものがあったから。まあ同じ女としていくらか同情はできるわねえ」

 

「?」

 

「まあ確かに、女は資質のないものだって儀式を行えば魔導士にはなれる……。なれるけれど」

 

 女そのものの価値は極めて低くなるのよね。

 ここらの地域では――

 

 カーシャは芝居がかった仕草で、上を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界、この国ヤオアムト。

 転移してからの混乱は数限りなかったが……。

 ここでは(たしぐ)を中心とした一部を見る。

 

 当初、核戦争後の世紀末世界みたいなものを予想し、恐れおののいたが?

 

 ふたを開けてみると、案外治安は良かった。

 ただし。

 それを乱す者への取り締まりは過酷だったが。

 

 通っていた高校でも、授業内容は一変。

 というより。

 軍事訓練や奉仕活動みたいなものの連続。

 街のインフラ整備や、何やらで若者は駆り出される。

 腕力や体力の低い者は補助や食事係に回された。

 

 炊はまあ中間クラスであったために、肉体労働。

 何度か食事係にも回されたが、

 

 ――あれはあれで大変だった……。

 

 炊はそんな感想。

 このへんは、他の経験者も同様。

 

 では、女子は何をしているのかといえば?

 

 魔導士となる儀式魔法を受けていた。

 これがすんでも、

 

「はい。今から魔法使いですよ」

 

 とは、ならない。

 ゲームのごとく、レベル1でも魔法の1つ2つ使えたりはしない。

 

「魔力の使い方を、1どころか(ゼロ)から教えなきゃならん」

 

 指導員としてギルドに雇われたゴトクはそう語っている。

 

 当然。

 みんながみんな、苦労の連続。

 一回の訓練が終わった後には疲労困憊(ひろうこんぱい)

 

 若い世代はともかく、中年以降はより苦労する。

 ……というのでもなかった。

 若者と違って、操れる魔力が少ないだけに、

 

「暴発させずに、かえってゆっくり丁寧にできたりする。まあ将来性は低いけどな」

 

 これもゴトクの弁。

 

 

 さて。

 それはさておき。

 

 

 ちょっと落ちついて来ると――

 男子たちを狙って、サキュバスたちが動き始めた。

 それ以前も水面下で動いていたようだが。

 

「そっちは精を提供する。こっちはその見返りに得た魔力で色々協力する。ギブアンドテイク。お互いに損はないでしょ」

 

 これはサキュバスたちの言い分。

 

「あけすけに言ってしまえば、乳牛みたいなもんですな。我々は、ミルクを出す代わりに餌をもらうようなもんだ」

 

 市議会の席で、某議員はこう語っている。

 

 炊の高校においても、大半の男子生徒は【乳牛】となってしまった。

 とはいえ。

 実質や実態がどうあれ?

 いや、そうだからこそ……。

 サキュバスからの【お誘い】を断る理由はなくなってしまった。

 

 肉体労働や訓練の後。

 いそいそと、サキュバスたちに油を吸い取られる。

 

 学校で目立つ運動部員や、クラスの中心グループ。

 逆に、クラスの隅っこのいる階層。存在すら認知されないような生徒。

 こうしたものとはまるで無関係、無差別に。

 

 その結果……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局は……」

 

 カーシャは、茶葉の缶を手に取りながら半笑いで、

 

「自分がうまくいかないのに、見下していた相手が楽しくやっているのが許せなかった。それだけのことよ」

 

「どういうこったよ?」

 

「……だから、ね。向こうではそこそこ男にモテていたんでしょう、あの女。でも、こっちに来てから価値は暴落した。自分のステータスでもあった()()()にも振られた」

 

「サキュバス連中は、さすがに特定の相手がいる男にゃ手を出さねえからなあ」

 

「そう。逆を言えば? 恋人や妻がいる限り、サキュバスとよろしくはやれない。その程度で壊れる関係性でもあったんでしょうけど」

 

「だったら、グズグズしてねーで次行けばいいじゃんか」

 

「こっちでそれが簡単にいくと思う? 今まで尻尾を振ってた男どもだって、もう知らん顔でしょうよ」

 

「ああーー……」

 

「そういう時に、あの男がサキュバスとデートしてるところでも見たのかしらね? まあ、なんにしろ」

 

 さぞかし……。

 自分に惨めに思えて、プライドを傷つけられたことでしょう。

 

「ふーん。じゃ、やっぱあの男に未練があったわけでもねーんか」

 

「そんなの、あなただってわかってたでしょ?」

 

「まあね……」

 

「といって全部推測というか、邪推だけど」

 

 カーシャはいれたばかりお茶をマコネの前に置き、

 

「別に真偽を確かめるほどでもなし、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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