破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-27 まちのぼす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女は、カーシャを見ている。

 年齢的には、少女から女へ移ったばかり。

 そんなところか。

 

 視線は強い。

 しかし、勝気そうというよりは

 

 ――恨みがましい、か。

 

 その点は、何となく親近感をおぼえる。

 カーシャは密かにそう評して、つい笑いそうになった。

 

 ――しかし、ちがう相手から似たようなことを頼まれるなんて……。

 

 ふっ、と少しだけ表情が緩むのを実感した。

 

「あの、なにか?」

 

「いえ。お気になさらずに」

 

 カーシャはソファーから立ち上がり、外の景色を見る。

 

 あちこちに小さなビル。

 外周には緑や、住宅地らしきものが広がっている。

 

 ――いえ、そうでもないわね?

 

 家もひとも、街の規模に反して圧倒的に少ない。

 

「立派な街ですわね。まだ、人口(ひと)が少ないようだけど」

 

「はい。これからです」

 

 女はそう答えた。

 

 (わたり) 緋釈(ひしゃく)

 以後は、ヒシャクとするが……。

 

 それが女の名前。

 

 カーシャと、ヒシャク。

 2人の女が話している間、マコネは後ろのほうで退屈そうにしていた。

 今にも、あくびでもしそうな雰囲気。

 

「お話は確かにうかがいました」

 

 カーシャはヒシャクを振り返りながら、

 

「ミズ……失礼、発音が少し難しいのでワティー。ミズ・ワティーとお呼びしてもよろしい?」

 

「ええ。大丈夫ですよ」

 

 ヒシャクはちょっと驚いた顔を見せたが、すぐに快諾。

 

「それならけっこう。ただ、私どもはこの街も、ここの住民もよく存じません。だから、自分の眼で確認して、それからお返事をしたい。いかが?」

 

「……」

 

「ふむ。ならひとつ約束をしましょう。是非に関わらず、この街と敵対することはしません」

 

「ま、まあ、あなたほど実力のあるかたがそういうのなら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 女の街――

 住民たちはそう呼んでいる。

 

 確かに歩いているのも、仕事をしているのもみんな女だ。

 しかし。

 全体としてはやはり、閑散としている。

 

「つまるところ? 男に抑えつけられてまともに扱われねえから、男に支配されねえように自分らだけの国を作るってことかい?」

 

「長々と愚痴やら恨み言をまぜこんでいたけど、要点をしぼればそうなるわね」

 

 奇妙な街を歩きながら、カーシャとマコネは語り合う。

 先ほど、街を創始者である女から聞かされた話を。

 

「そりゃあまた、ドでかいことを考えたなあ……。野望つうかなんつか……」

 

「野望ねえ」

 

 カーシャはわずかに苦笑を漏らす。

 

「まあ確かに、この国で女はあまり価値はないわ。人口を増やしたければ、サキュバスがいればいいもの。もちろん、極論だけれど」

 

「そーいう話なら……。ほら、あのナントカという」

 

 マコネは以前、似たようなことを言った貴婦人を思い出す。

 

「夫人、ね。あの女性(ひと)も、どの程度本気だったかはわからないけど……」

 

 少なくとも、ここまで思い切ったことはしないでしょう。

 あるいは、考えなしとも言うのかしら。

 

 カーシャは淡々と語り、髪をかき上げる。

 

「同じようなことができたとしても、独立した都市国家にするわけがないわ。そうねえ、話してた内容を思い返すに……」

 

「どうすると思うんだい?」

 

「流民なんて基本的に、学も身分もお金もない。だから基本的な魔法の技を教えて、職業訓練をさせる。女なら資質がなくても、魔力を扱えるよう変えられる」

 

「あ~。サトナでもそんなことやってんな? 50すぎのオバチャンとか70近いバーサンが喜んで魔法の訓練してた」

 

 マコネは手を打ち、うなずいた。

 

「まあ~。ホントに魔法が使えるようになるなんて!」

 

「わたし、子供の頃魔法使いサニーちゃんに憧れてたのよ~!」

 

「腰の痛みもなくなったし、もうちょっとがんばってみようかしら!」

 

「孫にもお小づかいあげたいしねえ」

 

 と。

 こんな具合に――

 治癒魔法で体の自由がきくようになった高齢女性。

 そんな人々がちょっとずつ奮起していた。

 

「まあ、その治癒魔法も初心者の訓練なんだけど」

 

「あはは。足腰治すのはついでかよ?」

 

「別に誰も損をしていないわ」

 

「みんな得するってわけかい。うまいこといったモンだなあ」

 

 そこで、マコネがフムと頬を指で掻きながら、

 

「じゃ、ここもそんな感じでいくのかね?」

 

「さあ? ただこの街は大きいだけの箱庭みたいなものよ。少なくとも、現状ではね」

 

「確かに人口(ヒト)は少ないよなあ」

 

「街の防衛は結界の中だから良しとしても、食べ物に着るものはどうするのかしら。畑も家畜小屋もまだないようだけど」

 

「そりゃ畑耕したり、豚やニワトリ飼ったりするんじゃねえの? ンなものガキやバァサンだってしてらあね」

 

 マコネは不思議そうに言った。

 別に、悩むことも考えることもなかろう、と。

 

「ええ。その通り。けれど、あの女にそれができるのかしら。あるいは、できる人材を集められるのか」

 

「は?」

 

 カーシャの言葉に、マコネが脱力した顔。

 

「いや、だから。そんなの魔法も魔力もいらねーじゃん。農家の女が何人かいて、そこそこ数が集まればフツーにやれるだろ?」

 

「そう、フツーはね。農家出身なら、農作業用のゴーレムも使える可能性は高い。これがあれば作業効率は何倍にもなる。スカウトできればだけど」

 

「集まらないってのかい?」

 

「それは知らない。でも、得体の知れない異国人が勝手に造った街。そんな怪しい場所へ、少しでも知恵が回れば行かないと思うけれど」

 

「んー……。そら、怪しいっつーか、胡散臭いっつーか」

 

 マコネは微妙な顔となる。

 それから、少し目を閉じてから、

 

「冒険者にしても、下手すりゃギルドどころか国を敵に回しそうなとこに行くわけねーか。ん……?」

 

 それじゃもう、最初っから詰んでるじゃんか。

 

「多少なりとも賛同者というか、住人がいることが奇跡かもしれない」

 

 カーシャは歩きながら、どうでも良さそうにそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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