破滅した悪役令嬢がいたので殺人マシーンにしてみた件   作:らくべえ09

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その110、オグ事件-29 魔法のランタン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――しかし?

 

 街の中央まわりを見て回った後、カーシャは上を見て思う。

 

 ――こんなものを造って、当然のように維持している。どうやって? あの女には……。

 

 それだけの知識も技術もある。

 

 ……。

 

 ――ようには、とてものことに思えないのだけど? 

 

「なあ、姐さんはさ? どうするか決めてるのかい?」

 

「ン」

 

 カーシャを見ながらたずねるマコネへ、

 

「そうね。まあ私が加勢すれば、まあだいぶ話も変わってくるかもしれないけど」

 

「いやー? そりゃ当然だけどよ?」

 

「こっちには物資が足りない。労働人口が足りない。お金が足りない。何もかも足りない。だから、それを寄越せ――と。ヤオアムトに要求することもね」

 

「いや……それ」

 

「もちろん? まともな人材や労働力が集まって、それを統括できる指導者でもいれば別だけど」

 

「あのねーちゃんができるのかね、それは」

 

「どこをどう見たって無理よ」

 

「…………」

 

「ただ、見物する側としては面白くもあるわ。だから、さっき言ったように敵対はしない。味方にもならないけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおー、まさにこんな感じのものでしたな!」

 

 精密に描かれたそれを見て、ドローこと泥田坊固丸は感嘆の声。

 

「見たところ、大昔のランタンみたいだが……」

 

 絵を見たゴトクは妙な目つきで言った。

 

「なんか由来でもあるのか?」

 

「さあ……。あの時を思い出すに、蔵のすみっこに他のものと一緒に木箱に入ってましたな」

 

「実物がないから判断しづらいが……」

 

 ゴトクはその髪を無造作に掻いて、

 

「俺が生まれる前、300か400年ほど昔か。その時の記録に、似たようなものがあった」

 

「す、すごい話ですな……。さすが、エルフ」

 

「願いをかなえるランタン。強力な魔神が封じられてるとか。どう考えても、与太話か酔っ払いの冗談みたいな話だが」

 

「ふーむ!? それはまるで、魔法のランプみたいなものですか」

 

「ランプ?」

 

「はあ。内容はほぼ同じで、ランプかランタンかの違いだけでして」

 

「……じゃあ、ますますデタラメじゃねえか。ンなものが、そこらに転がっててたまるもんかよ」

 

「ですよねえ」

 

 ゴトクの指摘に、ドローは照れ笑い。

 

「いたとしても、中にいるのはロクでもないもんだぞ。ほぼ間違いなく」

 

「そうなのですか?」

 

「こっちの伝承では、女の魔神(ドゥルジ・ナス)が眠りながら解放されるのを待ってるとか言われてるな」

 

 ゴトクは言って、絵を返した。

 

「そんなヤツが、定命の種族に都合良く動くもんかよ。必ず落とし穴がある。まあ、願いを言ったヤツが自滅するのはしょうがないとして」

 

「じ、自滅は決定事項なのですか……?」

 

「注文通り願いが叶っても、その後までは面倒みてくれんしな。分をこえた願いってのは、本人も周りにも災厄をまき散らすんだよ……」

 

 どこか。

 妙に実感のこもった声で、ゴトクはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――!!」

 

 その気配に、少女は総毛だって剣を構えた。

 

 モンスターも、不審者らしき者もいない。

 

 ただ。

 公園のベンチに、女性が座っているだけ。

 その隣りには、小柄な少年が座っている。

 

 ――いえ……?

 

 たぶん、()()ではない。

 男装でもしているようだが、

 

 ――女の子だ、きっと。

 

 この判断は確かに間違いはなかった。

 

「あなた」

 

 涼しい美声が響く。

 

「え」

 

「確か、不幸にもこっちに連れてこられた転移……【お客様】のひとりかしら」

 

 美声がすぐそばで――

 

 目の前に、暗い青髪の女が立っている。

 

 ――い、いつの間に……!?

 

 まるで。

 女神か悪魔みたいな美貌だった。

 

 ただ。

 白人のそれとは異なる。アジア系ともまた違う。

 あえて言うなら?

 複数の人種や血統がいくつも混じって重なり続けた末。

 その先で生まれた、ホモ・サピエンスの領域を超えた美しさ。

 

 ――なんてきれいな女性(ひと)だろう……。

 

 ただ、そう思って見惚れるしかない。

 こんな風貌の女が現れれば、社会は震撼するだろうか。

 

「私は、カーシャ。一応冒険者ギルドに所属している身ですわ」

 

 カーシャは片手を胸に当てるような仕草。

 そこから、流れるような動作を礼をとった。

 

「あ、あの。私……!」

 

 舌がもつれるカンナを、水色の瞳が見ている。

 

「なんというの、かしら?」

 

 カーシャはそっと街の様子に視線を送る。

 

「あなたは、ご招待されてここに来たの?」

 

「……それは」

 

「私も、同じ立場ですのよ」

 

 カーシャは静かに、送られてきた手紙を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 ………。

 

 

 

 

「……はあ。勝手なことして、半殺しにされた、ねえ?」

 

 話を聞き終えたマコネは、微妙な顔。

 

「そりゃーさあ。ンなことしてたら、そうもならぁね」

 

「いや、だって」

 

「こっちの姐さんだって、負債を片づけるのにだいぶクエストやってるしよ」

 

「……そういうこともあったわね」

 

 カーシャは言いながら、青い髪を撫でる。

 

「その後始末というか、ペナルティーのために外国まで行ったこともあるわ」

 

 お互いに利用し合う関係というのかしら?

 トラブルを起こしたら、その分色々とね……。

 

「楽しくもないけど、別に嫌でもなかった。まあ、それならそれで、というところ? 大してすることもなかったから」

 

「暇つぶし、ですか?」

 

 少女――伯耆(ほうき)カンナは驚きの声。

 若干の非難を込めた視線。

 

「それでも、分配はそれなりにちゃんとしてきたつもりだけど」

 

「まー、おいらたちは後ろにくっついてただけってのも、よくあったからなあ。モンスターの死体やら返り血を体中にひっかぶったなんて、いっつもだし」

 

 マコネは初期を思い出し、苦笑。

 

「とはいえ。アレで何十万ジュラももらえるなら安いもんだ」

 

「それは良かった」

 

 カーシャは肩をすくめてから、

 

「他で、何度も言われたかもしれないけれど。この国では、ただ女であるだけでは何の価値もないの。特に、正当な国民でもない流民や不法入国者にはね」

 

 貴族の嫡男だって、適性がないとなれば放り出されるわ。

 分家から、優秀なのを養子に迎えればすむのだから。

 

「…………」

 

「自国民より、そんなの優先してみなさい。あっという間に家は取り潰し。下手をしなくても、コレね」

 

 カーシャは指で、喉を切り裂く仕草をしてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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